マリコフの最期 | SFショートショート集

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SFショート作品それぞれのエピソードに関連性はありません。未来社会に対するブラックユーモア、警告と解釈していただいたりと、読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。長編小説にも挑戦しています。その他のテーマもよろしく!!

本編は「ジミー危機一髪」・・・続編です。

 

 ジミーが遂にカーラに”i作戦”始動のサインを送った。


 

 ”i作戦”とはインテグレーションのこと。つまり一体化するとういう意味だ。


 

 マリコフのサイコパワーがジミーのパワーを上回ると、バックグラウンドでは、アンチパワーの処理が常に働いているので、サイコパワーが休む時間は無く、常に何割かはアンチパワーの処理に使われる為に、アンチパワー処理にサイコパワーの全リソースを注ぎ込めないのがネックになってくる。そこで、サリームのパワーがジミーに加担することで最大の意味があるのだ。

 相手のパワーを取り込んでも、サリームのパワーが加担している状況なら、ジミーのパワーは全開で使用できることになる。当然相手へのサイコパワー返球も増大できる。何よりも「ジミーのアンチパワーを全開にできる」事がとても大きな意味を持つんだ。これでマリコフの強大なサイコパワーをきちんと受け止めて返球できるようになるだろう。

 

 

 この作戦のシミュレーションはできていた。遂にその時がやってきたのである。ジミーがカーラに”i作戦”始動のサインを送った瞬間、サリーム全員がジミーを中心に円陣を組んだ。そして、精神をジミーに同調させて、アンチパワーを受け入れた。

 

 開始と同時にマリコフのパワーはジミーに吸い取られていく。まるで吸引機に吸い込まれるようにパワーをなくして消滅するようにしぼんでしまった。驚いたマリコフはさらにパワーアップを図ってきた。ジミーはマリコフのパワーをちらし続けていたが、彼女のパワーアップを感知すると、マリコフに警告した。

「マリコフ・・・これ以上パワーを上げると危険だよ!僕は今、サリームと一体化している。だから、僕のアンチパワーはあんたのパワーを十分吸収できている。あんたが止めないなら僕はパワーをそのままあんたに返すしかなくなる。自分のパワーを自分で受け止める自信はあるの?」


 

・・・だがマリコフは聞く耳を持っていなかった。


 

 マリコフが止めないのなら反撃するしか方法はない。マリコフのパワーは常軌を逸している。そのままパワーを返球すれば、マリコフ自身がどうなってしまうのかジミー自身保証できなかった。それを承知でジミーはマリコフにパワーを返した。

 その瞬間マリコフの身体が強烈に光り輝き絶叫し始めてしまった。原子同志がぶつかって新しい原子ができる。その核融合反応からできるエネルギーによって生まれたマリコフのサイコパワーがマリコフ自身に降り注ぐ様はまるで超新星爆発のようである。

 超新星爆発は地球から見ると新しい星ができたように見える。この強烈な輝きは、内部で核融合の燃料となる物質を使い果たすと、星を支えていた圧力が下がり、内側につぶれようとする力が強くなってしまう。すると中心部が一気に崩壊し、とつぜん大爆発をおこす。それが超新星爆発だ。その中心にはブラックホールのようなものができる。それとおなじことが目の前でマリコフの身体で起こってしまったと言えるのである。


 

 マリコフは消えてしまった。まさしく消滅してしまった・・・”ブラックホール”となったと言っても過言ではないだろう。


 

 ジミーはマリコフが目の前からいなくなったことを確認すると、振り返り早速カーラの肩に飛び乗った。

カーラが

「ジミーちゃんお疲れ~!」

「僕・・・やったよ!」


 

…続く