バンコクのスワンナプーム空港からのフライトは、エキサイティングで、インタレスティングで、実にワンダホーなものだった。みなさん、こんにちは。
ヤッホーとか、ラリホーとか、ワンダホーとか、アンビリーバボーとか…… なんか語尾が間抜けな言葉を使ってみたかっただけです。「
なつむぎ」です。
バンコクから次の街に向かう飛行機は、優先搭乗の客が先に機内に案内された後も、ボクの番がなかなか回ってこなかったのね。後ろの方の席から10列ごとに区切って、順番に乗客を搭乗させていたからなんだ。ボクの席は エコノミークラスの中で一番前だったから、機内へと案内されたのは一番最後だった。
乗り込んでみると機内は既に満席。
凍えそうなくらいキンキンに冷えていて、全体にスパイシーな香りが立ちこめている。
そして何よりもびっくりしたのは、機内全体の人間の密度が、なにかしら濃い。
いや、決して普通より客を詰め込んでいるってワケじゃないんだよ。人間の数が多いんじゃなくて、なんだか人間活動の濃い人たちが集まってる、そんな感じだったんだな。
こういう濃い人たちは、やっぱり後ろから順番にゆっくり詰めていかなくちゃんらないんだろか……
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自分の席を探している時、持ち込んだランチボックをもう広げていて、中から取り出した大きなイチゴをほおばろうとしている老婦人と目が合った。
彼女の後方では何人ものビジネスマンが、 なんとも重厚な、昔ラップトップって呼んでたようなマシーンを広げてもう仕事をしている。
きっとあいつらは激しく重い。あれを膝の上に乗せて仕事をしたら、きっと膝の骨がくだける。
絶え間なく奇声を上げながら、落ち着き無く動いている子供がいる。
母親とおばあさんと思われる2人の女性がなだめようとするんだけど、手渡すお菓子やおもちゃを彼はすべて放り出してしまって、全く納得しようとしない。
すると彼はライフジャケットを取り出して来た。ボクは乗客がライフジャケットをいじっているところを初めて見たよ。本当に椅子の下にはライフジャケットがあるんだ。緊急時に着水してもこれで安心だ。
彼はライフジャケットがずいぶんと気に入った様子で、それを見た母親はこれで静かにしてもらえると思ったのか、その包装を開けてしまった。
それに気付いてあわてるキャビンアテンダント。キャビンアテンダントにライフジャケットを取り上げられて、また奇声をあげ始める子供、それら一連の出来事の隣で、貧乏ゆすりをしながら機内誌を読んでいる父親。
通路をはさんでボクの隣のビジネスマンは、飛行機が滑走路に向けて動き始め、全ての電子機器の電源を落とすようにとアナウンスがあった後も、PCを使うのを止めなかった。CAに注意されてようやくPCを閉じたと思ったら、こんどはスマホをいじりだした。
放っておいていいのかな? さてどうしたものだろう……
そう思いながらボクはきっと、じーっと彼のスマホを見ていたんだろうね。それを察した彼がなんか居心地悪そうにし始めて、それに気付いたボクが彼の方をちらっと見ると、二人は目が合っちゃった。
しかたがないから指のジェスチャーで「ダメなんじゃん?」って指摘した。
離陸してしばらくすると、後ろの方で男達の大笑いがずっと続いている。
トイレに行く途中に見てみると、ヒゲ面の男4人がトランプに興じていた。しかも4人1列ならんで座席に座ってね。いいおっさん達が手札を相手に見られないようにしている仕草が、なんとも可愛いって言うか……
そうこうしている内に食事の時間になった。
普通ならカートで運んですぐに配り始めるのに、なかなかそうならない。CAが機内食のトレイを1つずつ何往復も運んで行くんだ。機内食を特別にリクエストした客がずいぶんと多いんだって感じたな。種類は皆それぞれ違うみたい。メインディッシュを覆うアルミホイルの色がみんな違う色だった。
豚がだめだったり、牛がだめだったり、そもそも肉がだめだったり、アレルギーだったり、好き嫌いだったり、そんないろんな種類の人が乗っているんだ。
それからしばらくしてようやく、特にリクエストのない一般の人たちに機内食が配られ始めた。
そうか、これだったんだ! 機内に満ちていたスパイシーさの原因は。
食事として皆に配られると機内のスパイシーさは10倍増し。そして食べ始めると香りが鼻腔に広がってさらにまたその10倍増し。そしてこれがすごく辛い。
もちろんバンコクに滞在していた時も辛い料理は食べたよ。
でも何って言うんだろう…… タイの辛さがチクチクと刺される様な辛さだとすれば、この辛さは鈍器で殴られた様な辛さなのだ。
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不思議なことと言えば不思議だな。
機内食を食べ進む内にずっと漂っていたスパイシーな香りに全く違和感を感じなくなってきたし、毛布を胸までかけて過ごしていたくらいに冷え過ぎだった温度も、ちょうど気持ちいいと感じるようになって来た。
あぁそうか。調和してたんだ。気がつくとイチゴの老婦人も、ライフジャケットの一家も、スマホのビジネスマンも、トランプのヒゲ面も、みんな美味しそうに機内食を食べている。子供も静かになったじゃないか。なんだか満ち足りた平和な空気だ。
いち早く食事を終えた貧乏ゆすりの父親は、からだを少しひねり、膝にPCをのせて仕事を始めていた。貧乏ゆすりをしていないのは、あのでかい膝を砕くほどのPCが重しの役目をしているに違いない。
あぁ、やっぱり全ては、こういう風に調和してるんだ。物事はね。*****
そんなローカルな乗り合いバスのようなフライトだった。
3時間まったく退屈なし。
そしてボクは、どこか「
それでいいのだ!」的ムードを漂わす国に到着したんだけど、それがどこかは次の記事でね。
そろそろボクの、ビールタイムです。
宿の近くのレストランの、Happy Hour が始まります。
ビールを頼むと、ポップコーンを付けてくれるんだってさ~
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