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/// H A I H A I S M ///

あわてない、あわてない。赤ちゃんが「はいはい」するように、のんびりゆっくり進みましょう。

メトロの中で、2人連れの酔っぱらいのおじさんに出会った。

その内の1人は、競泳用のキャップとゴーグルを付けていた。彼はとても愛想が良く、駅で乗客が乗って来る度にあいさつをする。パリの地下鉄4号線での話だよ。

ボンジュー、ムシュー! ボンジュー、マドムアゼル! サヴァ・ビアン? コムシ・コムサ?

こんなちょっと困ったおじさんは東京の電車の中でもたまに見かけるけどね。でもヨーロッパの地下鉄での方がだんぜん遭遇率が高いと思うんだ。

おじさんに話しかけられた乗客は、たいてい返事をせずにそっとその場から離れてしまう。
そんな中、ある駅から20代後半の女の子が乗って来た。いや、彼女の容姿について詳しくは語らないけどさ。とてもキュートな子で、むしろボクがキャップとゴーグルを借りて話しかけたいくらいだったよ。

マドムアゼル、ご機嫌かい? 今日もまた可愛いね。

もちろん、ゴーグルおじさんは話しかけた。彼女は反応しないけど、おじさんは続ける。

そう。そうなんだよ。おじさんは魚なんだな。いつ水に入ってもいいように、こうしてキャップをかぶってゴーグルを付けているんだよ。一緒に泳いであげてもいいよ。
あれ? 彼が許してくれないって? 彼氏いるの? 結婚してんの? おじさんが結婚してあげてもいいんだよ。


ま、たぶん、こんな感じね。

話しかけられた彼女の方は、不愉快そうな顔をするでもなく、なにか不思議なものを観察するみたいにおじさんの方をずっと見ている。軽く笑顔と言ってもいい。

無視されたりあからさまに嫌悪感を示されたりしたら、おじさんもすぐに話しかけるのをやめてターゲットを別の人に移すんだろうけど、彼女にずっと顔を向けられてるものだから、話すのを止めるに止められない様子なんだ。

これが結構、面白かった。
おじさん、普段はそんな長い会話にならないものだから、まぁ会話って言っても一方通行なんだけど、話しのネタがそんなに多くないんだな。もう、なにを話して良いものやら場が持たなくなってきちゃって、舞台で受けなかった若手芸人みたいになって来ちゃって、自分のゴーグルを外して隣のおじさんにつけて、すこし引っ張って顔にパッチン! なんてしてた。

ちょうどその時、駅に到着して扉が開くと、その彼女が何事もなかった様にすーっと降りていった。

おじさん2人からなんとなく漂う安堵感。そして周りの乗客達も、その安堵感を共有してるのがよくわかる。


いや何がすごいって、その彼女の「微笑み殺し」って言ってもいいワザだよ。片道1.27ユーロ(10回券買ってるから、ちょっと割引)で見た、なかなかのパフォーマンスだったと思う。


【今日の小指】

さてお待ちかね。大好評の「今日の小指」のコーナーです。

今日も小指は固定されっぱなし。シャワーの時はテーピングと固定器具を外していいんだけどね。でもその間の無防備な小指が、何かに当たってはいけないんだ。
狭いシャワールームで小指に全神経を集中させてるから、全然リラックスしないんだよ。

今日蚤の市で、割と気に入ったので娘のお土産にピンズ(ピンバッヂ)を買おうと思ったんだけど、これに値札10ユーロとか付いている。高い!
そう思ってた時にちょうどお店のお姉さんが、「どう?気に入ったのある?」ってな感じで話しかけて来た。これ気に入ったんだけど高いよなぁ、ってな返事をした。

高くないわよ。いくらなら良いの?

そうだなぁ、2ユーロぐらいなら3つ買うけどね。

2ユーロ!?

そのイントネーションに、「なんか心外だわ」ってニュアンスを感じたものだから、「そうさ。2ユーロって言ったのさ」って表そうと思って指を2本出した。

ぷぷぷ。3ユーロってこと? それともこの太いの1本は5ユーロなの。あ、ごめんなさいね。怪我してるの笑っちゃって。でも1つ7ユーロまでなら、おまけしてあげてもいいわ。

$///   H A I H A I S M   ///-2ユーロ

つまり、こんな具合になってたワケです。
小指が曲がらないと、他の指の動きも全て滑らかじゃない。


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セバスチャン。気がついたらボクはパリにいるぞ。どうしてなんだ?

----- どうしてかでございますか? それはワタクシの方が聞きとうございます。ハノイにいたはずの旦那さまが、いったいなぜパリにいるのでございます?

いや。それを今ボクが聞いたんだ。

----- 夜行列車で怪我をしてフランス系の病院に行かれたことも、すねてカフェ・ド・パリでビールを飲まれたことも、みんなセバスチャンは存じております。旦那さまの記事はチェックおりますからね。
 それが急に「気がついたらボクはパリにいるぞ。どうしてなんだ?」でございますか…… 極めて不自然でございます。
 ハノイの街で拉致されて、パリに連れて行かれたのですかね。


あ、それあるよ。カフェ・ド・パリに行く前にバゲットサンドを食べたって言っただろ。その店で隣に座ったフランス人カップルが、怪しかった。

----- 印象に残ったのでございます?

あぁ、印象に残ったさ。リラックスした服装の観光客の中で、その二人は妙にきちんとしていたんだ。まるで公務員の様だったな。カップルの様でありながら、二人とも目が全然にこやかじゃない。男は女を「ボルドー・ルージュ」と、女は男を「トリコロールのパンサー」と呼んでいたな。

----- なるほど。その二人でございますな。旦那さまを拉致してパリにまで連れていったのは。
 それにしても分かりやすいスパイでございます。まるで凍てつく冬のモスクワの街角でトレンチコートの襟を立てた男がスパイなのと同じくらい分かりやすくございます。


っていうより、なんでボクが拉致されなくちゃならないんだ? セバスチャン。

*****

----- ところで、そこは本当にパリなのでございますか?

パリだよ。ボクの故郷だよ。ほら、これが証拠の写真だよ。

///   H A I H A I S M   ///-Paris 1

----- 絵はがきでございますね。サ・セ・パリー! でございますね。

絵はがきだけじゃない。ホテルのキーも写ってるだろ? 「ホテル・サンピエール」って、ちゃんと書いてあるじゃないか。

----- 地方のラブホでございましょう。

ラブホちがうよ。誤解を招くような発言はやめろよ、セバスチャン。カルチェ・ラタンの宿だよ。安宿だけど。

ほら、こんな写真もある。ボクの左手の小指がちゃんと写ってるじゃないか。そしてその背景には、パリのメトロのマークが…… ん? ちょっとボケ過ぎだけど、わかるだろ?

///   H A I H A I S M   ///-Paris 2

*****

そんなこんなで、今ボクはパリにいます(たぶん)。
どんな経緯でパリにいるのかは、ま、おいおいおね。


とりあえず指はこんなだけど、今回の旅の「ヨーロッパの部」の始まりのご報告まで。


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↑ Ça, c'est Paris! by Mistinguett
フエからハノイまでの夜行列車をあまり楽しめなかったのは、そんな出来事があったから。
そんな出来事ってのは、ようするに左手の小指をしこたま車両に打ち付けて、なにやら正常じゃない状態になっちゃったってことね。 ●ここ

子供が泣き疲れて寝入っちゃうように、いや、大人が気分を害してふて寝をするように、ハノイまで心配して過ごすよりも寝てた方が得だって(無意識的にも)そう考えたんだと思う。
車内ではとにかく眠ってた。


ハノイ駅に着くとすぐにタクシーを捕まえて、前日に目を付けてあったホテルまで行った。
ホテルのエントランス扉は閉まっていたけれど、呼び鈴を何度か押すと眠たそうな表情の青年が出て来た。朝早いけど部屋を用意してよ。そう言いながらフロントに向かうと、ロビーに敷いたマットレスの上で別のボーイがまだ眠っていた。

部屋は空いていますが早朝チェックインなので半日分をチャージしますよ。オッケー、オッケー、とにかく部屋に入れてくれればいいよ。部屋には電話があるんでしょ。そりゃありますよ。ってな会話をして部屋に入った。

さてまずは電話だな。
こんな時のためにいつも旅行保険に入っているんだ。でも今まで、一度も使った事がない。
どこか適切な病院を紹介してもらわなくちゃ。
保険契約書に書いてある番号に電話をした。

事情を説明してどこの病院に行くのが一番いいのか尋ねると、お客様の方に特に希望が無い場合当社の提携病院をご紹介します。提携先なのでキャッシュレスで診察を受けることが可能です。と言う。

おぉ、それはいいじゃないか。
いったい治療にいくらかかるんだろうって心配していたけれど、そんな心配しなくていいんだ。
その上予約も取ってくれるらしい。ボクは予約時間の30分前に保険証書とパスポートを持って受付に行けばいいらしい。

至れり尽くせりだな。

最後に、「受付カウンターで、日本語通訳を呼んでもらって下さい」って言われた。

日本語通訳まで付くのか。

「脱臼」とか「突き指」とか英語でなんて言うんだったけ。そのくらいは調べて行ったほうがいいな。なんて考えていたんだけど、なぁーんだ日本語通訳まで付くんだ。

ほんと、至れり尽くせりだよ。

*****

こうしてボクは、ハノイ到着の日に医者に診察してもらえることになったのね。

病院の名前は L’Hôpital Français de Hanoï ハノイ・フレンチ・ホスピタル。おフランスの病院ざますな。

受付をしてしばらく待っていると日本人女性に名前を呼ばれた。
医学の知識があってベトナム語が操れるスタッフが居るんだ。頼もしいぞ!
彼女が付いていてくれれば大丈夫。こんなに曲がった指だって病院を出ることにはもうまっすぐピンピンだ。そんな気分になった。


整形外科の診察室に入ると「ボンジュー」って挨拶された。医師はフランス人だった。
ボクの指を見て、うなだれた小指の先を伸ばしたり曲げたりしながら、何時怪我をしたのか、痛みはあるのかなど英語で尋ねてきた。
見立ては早くてね。すぐに診断が下されたんだけど、これが何を言ってるのか分からない。

通訳の女性がベトナム語で聞いてみたけど、彼はどうもベトナム語があまり得意じゃないらしく、やっぱりよくわからない。そこで彼女はフランス語の通訳を連れてきた。
こうして医者とボクとは通訳2人を介して話をすることになったんだ。これが何とも不思議な気分だったんだな。

まずは先生が、フランス語で話す。

診断名はマレット・フィンガー。
小指を伸ばすための腱が、突き指時の衝撃で切れてしまって自力では指を伸ばす事ができない。
放っておけば治らず、ずっと曲がったままで固定されてしまう。
手術をすれば治る。この患者の場合は昨夜怪我したばかりだから、すぐに手術をすればほぼ元通りになるはずだ。

まぁこういうことなんだけど、おそらくそんなことなんだろうなってことは、ボクの知っているフランス語の単語と、医師のジェスチャーと、緊急時に発動するボクの特殊能力でなんとなく分かった。

でも先生は、ホントはもっとたくさんのことを話していたんだと思う。おそらく、術式なんかも説明してたんだと思うな。

先生は、フランス語通訳のベトナム女性の小指を使って、あれやこれや説明している。
 つまりここが、この筋が、ブチンって切れちゃってるわけだな。
 だからここをこう切開をして、ペンチで切れて縮こまってる腱を引っ張りだして、
 ここんとこに縫い付けるわけだよ。

なんて感じでね。きっとね。

ベトナム人通訳の女性は、顔を歪めながらその説明を聞いている。うわっ!先生、そんなことするんですか?良かったわぁ、私じゃなくて、みたいな。
おい、おい。そんなスゴイ手術をするのか?

その後、ベトナム人通訳は日本人通訳にベトナム語で伝える。
 なんか腱が切れてるから縫い付けるらしいわ。あんな細かいところ作業できるのかしら。痛そうでやあね。
 この患者ニコニコしてるけど、怖くないのかしら。鈍感なのかしらね。

なんて感じでね。まぁ、たぶん。

日本人通訳がボクに伝えてくれる。
 手術をした方がいいらしいです。しますか?

だんだんと短くなってる。情報量がどんどん減って来てる。どうもそんな気がしてしかたがない。
もっとたくさん話していただろ!おい!って気持ちがちょっとあったのは確かなんだけどさ。ボクは彼女にすっかり頼る気分になっちゃってるから「手術します!」って即答しちゃったよ。


手術をするに当たっては、契約書を結んでいただきます。
3000万ドン強の契約書にサインをした。

レントゲンを撮ります。
撮った。

全身麻酔になりますから、麻酔医の診察を受けてもらいます。
身長体重を申告したら、少しやせなさいとベトナム人女医に注意され、ビールを飲む量を伝えたら、オヤオヤという顔をされた。

手術ですから、HIVの検査も含めて血液検査をしていただきます。
赤いのを見るのが大嫌いなんだけど、何サンプルか血を採られた。血を抜かれるところを見るのがイヤで、窓の外の景色を眺めていたからナースの顔を覚えてない。

これで終わりです。630万ドンです。これが予約票です。
現金を払う代わりに、サインをした。

3000万ドンだろうが、3億ドンだろうが、どんと来い! この時のために保険に入っていたんだ。
ベトナムとフランスの最新の技術で指を治してくれ。

そんな気分だった。
凹んでいるんだか、ハイになっているんだか、わからん気分だった。


こうしてほぼ半日を病院で過ごし、ホテルに戻るタクシーに乗り込んだ頃にはもう辺りが暗くなり始めていた。
統一鉄道が到着したハノイ駅から旧市街のホテルに向かうタクシーの中から見た風景は、凛とした早朝の空気の公園で太極拳をする人たちだった。今見る風景は、街に灯りが灯り始め、行き交う自動車とバイクのクラクションで満ちていて、ザワザワとしたアジアの都市だった。

本当だったら、ハノイで流行っていると言う回転一人鍋屋さんに行こうと思っていたんだ。そこが満員だったら、地元客ばかりのステーキ屋に行ってみようかと思っていた。そして腹ごしらえの後は、仕事帰りの男達で賑わうベトナム風のビアホール「ビアホイ」に行こうかと思っていた。

でも、全部やめちゃったよ。
ハイな気分が徐々におさまって来ると、まがった指に凹んだ気持ちの方が勝って来て、どこでもいいや、なんかおとなしく食べられるところで軽く食べて、ビールでも飲んで早くホテルで寝ちゃおう。
そんな気分になって来た。

宿の近くのレストランでバゲットサンドを食べて、近くのカフェドパリでビールを飲んだ。
カフェドパリの内装はフランス風だった。ウエイトレスはボクに背を向けてカウンターに肘をついたままで、1本目のビールが空になってもまったく気がつかなかった。
今日はもうおしまいさ。ボクはビール1本分の代金をテーブルにおいて、そのままホテルに戻る事にした。

$///   H A I H A I S M   ///-カフェドパリ


フランスの病院にパリのカフェ…… ちょっとだけ、旅が進んだってことかな。


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前日の夕方5時にフエを出発した統一鉄道SE4列車は、定刻通り朝の5時、薄明かりのハノイに到着した。

普段のボクだったら、出発する列車の車窓から夕暮れ時の景色を眺めたり、同じコンパートメントの乗客の行動を面白がったり、途中駅の物売りをからかったりするのに、今回の列車でな何にもなしだ。ハノイに到着するのすら直前まで気がつかずにいて、コンパートメントがザワツキ始めてようやく目が覚めた程なんだ。

ワクワク楽しむはずの夜行列車で、なぜ? それは……

*****

話は前日に戻るけど、フエの宿で朝目が覚めた時、なんとなく気力がダウンいるような気がした。
あ、これはそんなに珍しいことじゃないのね。一人で旅行していると気力のアップダウンが結構あるもので、それにはそれなりの対処法が身に付いている。

まずは朝食を工夫することが大切でさ。
地元の人たちで賑わっている食堂に入って彼らに交じってローカルな朝食を取ったりすると、経験値も気力アップするんだな。でも、うっかりすると腹を壊したりするかもしれない。気力が落ちている時に慣れないものを食べると胃腸の調子に変調をきたしちゃうことが多いし、胃腸の調子がイマヒトツだとそれがまた気力ダウンにつながるんだ。負のスパイラルに陥っちゃう。

だからといって欧米風のこぎれいなカフェを探して、ジュースとパンとコーヒーなんかで済ませると、確かに胃への負担は少ないんだけれど、なんだか戦う前に逃げ出しちゃったみたいな気分になる。
自分が不調なのを自分で認めちゃったみたいな敗北感。

この辺のバランスについて考えながら、ベッドの上で作戦を立てていた。ガイドブックに、地元で人気の「しじみ粥(コム・ヘン)」の店があるって書いてあった。フエの街を貫くようにフオン川という川がが流れていて、その川中島のあたりではしじみ漁がさかんらしい。

地元民に人気の朝食で、その上粥なら胃に優しいし、ホテルからは歩いて5分程。
さっそく行ったさ。


田舎の駄菓子屋みたいな風情の建物には、幼稚園児用くらいの高さの、プラスッチックのストールとテーブルが並べてあって、どのテーブルも満席だった。
壁にはメニューの様なものが書いてあるけど、なにがなんだかわからない。OL3人組が席を立ったのを見つけて、店頭でしゃがみこんでいる店の主人風の男性に座っていいかと指と目で確認して、とにかく席を確保した。
さてどうやって注文しようか…… と考えている内にもう「しじみ粥」が出された。
きっと朝のメニューはこれだけなんだ。

///   H A I H A I S M   ///-コムヘン屋

「しじみ粥」は美味かった。
ナッツや、香草や、日本の粥には入っていないようなものも色々入っていたけれど、基本的には粥のやさしさがあって、しじみの出汁もとてもよく出ていた。量も少なめでさっぱり。

///   H A I H A I S M   ///-コムヘン
↑ 小皿は、唐辛子となにやらわからんものの塩辛

もちろん、気力がアップした。

店はお世辞にも清潔とは言いかねる。
ボクの座ったテーブルは、上も下も、前の客の食べ残しが散乱していたし、食べる前に、どんぶりの縁もスプーンもボクはティッシュでぬぐった。

でも大丈夫さ!
今まで海外で腹を壊したことは数える程しかない。
それも、地元の人も飲まない水道水をうっかり飲んじゃったりしたんだから、自分の不注意だ。
今回は注意深く行った。

*****

昼過ぎ、なんとも言えない疲労案に襲われた。急激にね。
なんて表現したら適切なんだろう。30メートル先の店に入ってお茶でも飲みながら休憩しようと思っついても、その30メートルを歩く事すらしんどい。

店に入って休んでいてもなかなか疲労感が抜けない。それどころか、だんだんとお腹の調子がおかしい。店の女の子にトイレを貸してくれと頼むと奥の厨房に連れて行かれ、その奥の、厨房との間を布のカーテンで仕切っただけのトイレを貸してくれた。

落ち着かないよ。出るものも出ないよ。

しかたがないから、納まらない腹をかかえながら、フエで一番の高級ホテル「インペリアル」に駆け込んだんだ。そこで2時間、調子が悪くなるとキレイに清掃されているトイレを借りて、小康状態の時はロビーの座り心地の良いソファーで休憩だよ。

時々腕時計を覗き込んでみたりしてた。これ、人待ちであることをアピールするためね。

*****

結局、夕刻の列車の出発まで、ほとんどこんな風に過ごすことになった。

フエの駅に着いてみると、SE4列車に乗り込む客で待合室は一杯だった。
ボクの体調は夕方になるにつれて回復し、体調が回復するにつれて気力もだんだんアップして来て、待合室で楽しそうに騒いでいるシンガポールからの学生の団体のことを、微笑ましいと思いながら眺められるほど気分は良くなっていた。

彼らはみんなすごく荷物を持っている。きっと旅行ももう終盤で、ハノイから母国に帰るところなんだろうな。スーツケースの中には家族や友人へのお土産がたくさん入っていて、そして旅行の想い出は、これから何十年もの間、彼らの糧になるんだろうな…… そんな風に考えていた。


列車の到着時刻が近づいて改札が始まり、みなそれぞれ自分の乗るコンパートメントが停車する位置に移動し始めてみると、彼らもまたボクの乗る第10車両の乗客であることがわかった。

列車が到着し乗り込み始めたものの、彼らは荷物が多いものだからなかなか乗り込めない。他の車両の乗客が全て乗り込んだ後も、まだ15人くらい乗り込めずにプラットホームに残っていた。
見かねた駅の係員が、学生団体の後ろに並んでいたボクを含めた数人の外国人客に対して、こちらの入り口から入れとジェスチャーで指示している。急げ、走れ、と。

小走りに急いだ。
前の客が乗り込むのを待って、自分の荷物を車両に持ち上げた。
ちょっとした力のかけ具合がいつもと違ったんだと思う。荷物は持ち上がりきれずにこちらの方に転がり落ちてきた。
それをあわてて手で受け止めようとして、たぶん、車両に小指を叩き付けた。

自分のコンパートメントに入り、あの叩き付けた指はどうなっているんだろうと見てみると、あらぬ角度で曲がっていて、自分の力では伸ばすことができなかった。

こんな感じ。

///   H A I H A I S M   ///-負傷直後
↑ そこそこ衝撃映像なんで小さくしておいた。興味がある人はクリックしてみてね。

驚いたな。
最初は突き指だと思ったんだけど、痛みは全然ないし腫れもない。
そっか脱臼したんだって思って、脱臼なら指をひっぱっておこうとぐいぐいと引っ張ってみたけど、引っ張るのを止めるとまたダランと指は下を向く。

いったいどうしたんだろう。ボクの指は。
もう列車は動き始めていて、明日ハノイに着くまではどうしようもないな。
でも、なんか気持ち悪いな。まっすぐにして置いた方がいいのかな。

そう思って、ショルダーバッグに入っている紙テープ(マスキングテープ)で応急処置をした。
ま、隣の薬指にくくりつけただけだけどね。

こんな感じ。

///   H A I H A I S M   ///-応急手当
↑ そんな衝撃映像じゃないけど小さくしておいた。興味がある人はクリックしてみてね。

可愛いテープでしょ?
我が家ではこの柄のテープがボクの持ち物を表すってルールになっているんでね。どこに行くにも連れていってるワケ。

さて、この指がどうなっちゃうかは、次回に続く!

COMING SOON !


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$///   H A I H A I S M   ///-タントアン橋
↑ 晴れている時のタントアン橋

ホイアンからダナンに戻り再び統一鉄道に乗って3時間、19世紀ベトナム阮朝の首都でユネスコ世界遺産の街、ベトナム中部の都市フエに来ました。
ベトナムの国土は南北に長く引き延ばされたS字型をしているんだけど、そのS字の中心あたりだよ。

この辺りは、まるで背骨の様にベトナムを南北に貫く山脈が南シナ海に迫っているところで、ずっと海に近い平地を走ってきた統一鉄道も、ダナンからフエに向かう途中ハイヴァン峠という峠を越える。

この峠を越えると気候も変わる。事実フエはホイアンよりずっと涼しく過ごしやすかった。
峠を境に人の性格も変わるらしい。

*****

ダナンからフエまでの列車はすっごくローカル感があったのね。
ホーチミンシティからダナンまでは一等寝台だったけど、今回は普通席だったせいだな。

列車に乗ってみると、ボクの席にはベトナム人のおっさんが座っていた。チケットを見せて自分の席だってアピールしてみたんだけど、彼は通路を挟んで反対側の空いている席を指差して、そこに座れって言ってる感じなんだよね。
ま、言葉分かんないですけど。

いや、ちがうんだよ。それじゃダメなんだよ。
ハイヴァン峠からの美しい景色を見るためには、進行方向右側じゃなくちゃならないんだよ。そのためにボクはワザワザ席の予約までしたんだよ。

でもね。空いている席があるのに無理矢理どかせるのも気が引けて、その空いてる席に座ったんだ。

列車が出発するとすぐに車掌が検札に来た。
このままここに座っていて良いか聞いてみると、この席も予約されているから自分の席に座らなくちゃだめだって言う。事情を理解した車掌さんが、ボクの席に座っているおっさんとその隣のじいさんに話をしてくれたんだけど、どうもじいさんの座っている通路側の席がおっさんの席で、じいさんの席はボクの席の前の小さな女の子が座っているところで、その小さな女の子は隣のお母さんの膝の上に乗る予定だったらしい。4人は家族なのね。

こうして車掌さんのおかげで1席空いたワケだけど、ボクの席に座ってるおっさんは窓側をどかないんだよ。別にいいだろ?って顔してるのさ。

しかたがないさ…… 


ボクの前の席の子供はずっと泣き通しなんだ。
で、お母さんは大きな声で子供を叱りっぱなし。
じいさんとおっさんは、全く無視。

本当はボクが座るはずの席に座ってるおっさんは、靴下を脱いで足の裏を窓ガラスにぺたんと付けて寝始めちゃった。身体は当然ボクの方に傾いている。頭の後ろで手を組んでるからヒジがコツコツとボクに当たる。

子供を泣き止ませようと母さんが子供に飯を食わせたら、その子ゲロしちゃったよ。
母さんは車内販売のホビロン(ふ化前あひるの玉子のゆで卵。ひなごとゆであがってる)を食い初めて……

ってまぁこれは食文化だから、「ウゲ」ってなったボクが悪いんだけどね。


でも、ハイヴァン峠を越える時の車窓の風景は美しかった。
視界の中にはおっさんの素足がいつも見えていたけど、でも美しかった。
山が海に迫っているのが、中腹を走る列車から良く見える。
青い海と、白い波と、黄色い砂浜と、緑の山とが、澄んだ光を浴びて美しいコントラストを成していた。
複雑な入り江にキレイに弧を描いたビーチが広がってた。


窓の外側は絶景。内側は混沌。それはそれで面白いってもんだよ。

*****

こうしてフエに到着した翌日、ボクはバイクタクシーをチャーターして観光しちゃった。
絵探しの旅の途中は観光はしない! って心に(ゆる~く)誓っていたんだけどね。

ホテルのレセプションの子がすごくフレンドリーで笑顔が可愛い。ホイアンのホテルのレセプションが無愛想だったから、なんかそれだけでもホッとしたんだ。
そのホッとした表情を見逃さなかったんだろうな。
彼女の言うに、フエの見所は歩いて回るには遠すぎる。一人だったらバイクタクシーがお得よ♪ って。
そんなオファーに、ついふらっとした。

いや出来心って言うんじゃなくてさ。そろそろ観光もしたいなって、まぁそんな感じ。
決して彼女のオファーなら何でもOKしちゃうワケじゃないんだよ。だってボク、妻子持ちだもの。


バイクタクシーでの観光は、楽しかった。
街はずいぶん涼しくて、バイクの後ろに乗って風を感じながら走るのが気持ちよかった。
あ、今観光しているんだ! ってそんな気分に満ちあふれてボクはご機嫌だった。

ティエンムー寺を見て、王宮を見て、ランチを食べて、トゥドゥック帝廟を見て……

トゥドゥック帝廟を見終わるころ、ポツリポツリと雨が降って来た。
もちろん雨のことはちょっと頭をよぎってたんだよ。天気予報では雨マークが出てたからね。
でもきっと何とかなるよって思っていた。

このくらいなら、大丈夫なんじゃない?

いや、レインコートがないと大変なことになるよ。

そんなに降るの? だったらホテルに戻った方がいい?

いや、まだあとカイディン帝廟と、タントアン橋が残っている。

ドライバーは、ボクが最初に交渉した時に決めた場所を全て回らないと満額もらえないと思ったんだろうな。レインコートを売ってるお土産屋さんに立ち寄って、半ば強引に買わされちゃった。

でも買って良かったんだ。
その後、カイディン帝廟を見終わった頃にはもう土砂降り。その土砂降りの中をペナペナのゴミ袋みたいな膝丈のレインコートをまとってバイクでタントアン橋まで行った。30分くらい。

メガネが曇ってしまうものだから胸のポケットに押し込んで、
あごのベルトの金具がバカになっているので飛ばされないようにヘルメットを片手で押さえて、
中のデジカメを濡らさないようにショルダーバッグをお腹に抱えて、
誰も歩かず、何も走らない田んぼの中の一本道を、ドライバーとボクの二人乗りのバイクだけが進んで行った。

雨にけぶるあたり一面の田んぼの風景は、すっごく美しかった。
うぉぉぉっ! って叫びたいほどの興奮だった。

*****

ホテルに戻ってみると、ボクはずぶ濡れ。
ビショビショのまま部屋に戻って、シャワー浴びて、身体を乾かして、さて近くのレストランで食事をとろうって思ったんだけど…… 靴はビショビショ、グジュグジュ。
まるで幼稚園の時、わざと水たまりに入りながら家に帰った時のようにね。


そのグジュグジュの靴を素足にはいて、一歩一歩グジュグジュ言わせながら、レストランまで行ったとさ。


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