セバスチャン。気がついたらボクはパリにいるぞ。どうしてなんだ?
----- どうしてかでございますか? それはワタクシの方が聞きとうございます。ハノイにいたはずの旦那さまが、いったいなぜパリにいるのでございます?
いや。それを今ボクが聞いたんだ。
----- 夜行列車で怪我をしてフランス系の病院に行かれたことも、すねてカフェ・ド・パリでビールを飲まれたことも、みんなセバスチャンは存じております。旦那さまの記事はチェックおりますからね。
それが急に「気がついたらボクはパリにいるぞ。どうしてなんだ?」でございますか…… 極めて不自然でございます。
ハノイの街で拉致されて、パリに連れて行かれたのですかね。
あ、それあるよ。カフェ・ド・パリに行く前にバゲットサンドを食べたって言っただろ。その店で隣に座ったフランス人カップルが、怪しかった。
----- 印象に残ったのでございます?
あぁ、印象に残ったさ。リラックスした服装の観光客の中で、その二人は妙にきちんとしていたんだ。まるで公務員の様だったな。カップルの様でありながら、二人とも目が全然にこやかじゃない。男は女を「ボルドー・ルージュ」と、女は男を「トリコロールのパンサー」と呼んでいたな。
----- なるほど。その二人でございますな。旦那さまを拉致してパリにまで連れていったのは。
それにしても分かりやすいスパイでございます。まるで凍てつく冬のモスクワの街角でトレンチコートの襟を立てた男がスパイなのと同じくらい分かりやすくございます。
っていうより、なんでボクが拉致されなくちゃならないんだ? セバスチャン。
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----- ところで、そこは本当にパリなのでございますか?
パリだよ。ボクの故郷だよ。ほら、これが証拠の写真だよ。
----- 絵はがきでございますね。サ・セ・パリー! でございますね。
絵はがきだけじゃない。ホテルのキーも写ってるだろ? 「ホテル・サンピエール」って、ちゃんと書いてあるじゃないか。
----- 地方のラブホでございましょう。
ラブホちがうよ。誤解を招くような発言はやめろよ、セバスチャン。カルチェ・ラタンの宿だよ。安宿だけど。
ほら、こんな写真もある。ボクの左手の小指がちゃんと写ってるじゃないか。そしてその背景には、パリのメトロのマークが…… ん? ちょっとボケ過ぎだけど、わかるだろ?
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そんなこんなで、今ボクはパリにいます(たぶん)。
どんな経緯でパリにいるのかは、ま、おいおいおね。
とりあえず指はこんなだけど、今回の旅の「ヨーロッパの部」の始まりのご報告まで。
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↑ Ça, c'est Paris! by Mistinguett