/// H A I H A I S M /// -2ページ目

/// H A I H A I S M ///

あわてない、あわてない。赤ちゃんが「はいはい」するように、のんびりゆっくり進みましょう。

この2週間の旅行中に、ボクは自然の中ではあんまり落ち着いて物事を考えられないんだなって気がついた。やっぱり都会の中の居心地のいい場所じゃないとだめなんだな。
でも、今治から尾道まで「しまなみ海道」を自転車で移動したのだけは、自然の中にいることを楽しめた気がした。

しまなみ海道」ってのは、尾道と今治を、その間にあるざっくりと6つの島とざっくりと7つの橋で結んだルートで、本四架橋のいちばん西のルートなんだ。この橋は、徒歩や自転車でも渡ることができるようにデザインされている。


今治駅前でレンタサイクルを借りようとすると、ここにはママチャリしかないと言われ、ママチャリで80キロを走るのはさすがに疲れるだろうと思い、一番今治側のサイクリングステーション(自転車の貸し出しを行っている拠点で、しまなみ海道沿いの要所要所に用意されている)で、スポーツタイプの自転車を借りた。
担当のおじさんが持って来た自転車の、一応ブレーキがちゃんと効くのを確認して、これから数日間こいつと一緒に旅をするんだな、だったら愛着を持てる名前を付けてあげなくちゃならないな、と思って「空海号」と名付けた。
もちろん、弘法大師様の空海だよ。何かを考えるために出かけたお遍路の旅の道連れには「同行二人」のお大師さまがいちばん相応しいって思ってね。

///   H A I H A I S M   ///-空海号
↑ 空海号勇姿 渡し賃は10円

まぁ、ボクは物に名前を付けることが多い。愛着を持つためにね。
前も記事に書いたかなぁ。我が家には革製の大きなサイの置物があるんだけれど(犬で言えばセントバーナードくらい)こいつの名前は「カバ」って言う。そして、旅行中一番豪華だったホテルのベッドの上には抱き枕があったんだけど、こいつがどうも通常の太さより細かったものだから「南極1.5号」って名前を付けた。

*****

さて「空海号」なんだけど、走り出してみるとなんともポンコツなんだ。特にポンコツ感にあふれているのがギアまわりの整備不良のところで、ボクに自転車の知識があれば調整できる範囲だったのかもしれないけれど、ギアのチェンジが上手くできない。
坂道の勾配に会わせてギアを変えようとすると、その旅にギシギシと音を立て、ガラガラとチェーンとギアとが噛み合ずに滑る音がして、で結局もとのギアに戻したりしてた。

まぁたまには上手くギアチェンジができることがあるんだけど、もっとイライラするのがペダルを3漕ぎ、4漕ぎするとその度にチェーンがギアから外れて空回する。この頻度で空回りされると、爽快なサイクリングというワケには行かないんだな。

それでも坂道をくだり降りる時なんかは、風が爽快で、青空に光る海や島々や、白い橋梁の姿が美しいって感じて、なんともハイな気分になった。こんな多くの小さな島々がバラバラと海に浮かんでる風景を見たのは初めてだな。波は静かで、海なのだか、大河なのかわからないくらい。

登り坂では空回りするギアにイライラしながらも一生懸命漕ぎ、下り坂では風と風景を堪能しながら、ポンコツ「空海号」と一緒に、ある島のある集落まで到着した。
久しぶりに長距離ののサイクリングを、そサドルの柔らかいママチャリじゃない、それなり仕様の「空海号」でしたものだから、サドルがあたる尻の部分が痛い。激しく痛い。しまったな。サイクリング用のパンツを買っておけばよかった。いや、明日はパンツを3枚重ねではいて「空海号」に乗ろうかな。

その宿には大浴場があることを聞いていて、大きな浴槽で身体をたっぷりと伸ばせば、ひさしぶりのサイクリングで疲れた身体もきっとリラックスするだろう。サドルにあたって痛い(おそらくアザになっている)尻も、きっと喜ぶだろう。
宿に着いてチェックインをする時に、宿の女将に「お風呂は4階のを使って下さいね。当館のお風呂は24時間風呂になってますんで、午後の4時からお入りになれます」と言われた。 ← ん?

部屋に入ってみると宿の案内に、大浴場は1階と4階にあり、午後4時から夜の9時までは1階が男性用、4階が女性用だと書いてあった。午後9時に男女が入れ替わって、翌朝の9時まで入浴できるというシステムなんだ。温泉宿に良くあるシステムだよね。

でも、宿の女将は4階の風呂に行けって言ってたよな。まさか女だと思われたのか?こりゃ確認が必要だ。下手に4階に入って行ったら女性の先客が居て、痴漢扱いされたらたまらない。しばらく旅に出て色々と人生について考えて来ると言って出かけたボクが、瀬戸内の小さな島で女風呂に入ろうとして警察につかまったなんて知った家族は、きっとガッカリする。まぁたぶん。あの人ならやりかねないわ、とは思わないと思う。

そこで、帳場に言って確認した。4階に風呂で良いんですよね。すると女将は、あらごめんなさいね。今日は4階しか風呂は開けてないんですよ、と ← ん?

ということは、今日の宿泊客は男性だけですか? それとも混浴ですか? と確認するのがためらわれて、ならそうすればいいやと4階の風呂でリラックスした。

風呂上がりに、宿の近くの、客がボクだけの中華料理屋に行って軽くビールを2杯飲んだ。コップ2杯じゃないよ。ジョッキで2杯。ところがそのジョッキが1リットルは入りそうなでかいジョッキだった。こんなでかいジョッキを見るのは、ほぼ20数年振りだ。20数年前、吾妻橋のたもとにあったアサヒビールのビアホールで生大を頼んだら、このくらいのジョッキだったっけ。

///   H A I H A I S M   ///-デカビール
↑ デカイ大生 600円

で、気持ちよくなって宿に戻ってみると、宿の客室の灯りは一部屋も灯っていない。
宿泊客が他には居ないんだ。ボクだけなんだ。だから大浴場も1つしか開けていなかったんだ。

ボクのためだけに夜中の間もずっとお湯を流し続ける大浴場になんか申し訳ない思いで、こりゃ夜中も数回風呂に入ってやらなくちゃいけないかな、とも思ったけれど、客がボクしか泊まってない宿で、夜中を廊下を歩くのはちょっと怖いよ。
結局その夜は部屋から出ずに、どうか怖い思いをしないで朝を迎えられますようにって、願いながらおとなしく寝た。

それにしても、24時間風呂ってのはどういう意味なんだろうな。夕方の4時から朝の9時までは17時間なんだけどね。

*****

特に恐ろしい思いをしないで済んで迎えた翌朝8時。昨日より痛みを増した尻を「空海号」のサドルに載せて尾道に向かった。

健脚ならば1日で走破する「しまなみ海道サイクリングコース」を、ボクはいろいろと寄り道しながら3泊4日くらいで行こうって思ってたんだけど、「空海号」はポンコツだし、尻は痛いし、もういい!って思って必死にこいで、1日半で尾道まで着いた。

まぁレンタサイクルなんてそんなもんさ、と思うことにした。「空海号」は絶好調とはいかなかったけど、この旅の中でいちばん想い出に残ったのが、この「しまなみ海道」サイクリングの旅だったんからさ。


ブログランキング・にほんブログ村へ  click me!

とは言え、このサイクリングの途中で○○銀行やらママリンから携帯に電話がかかってきたワケだ。 ●ここ
全てが上手く行くってことは世の中には無いんだ。たとえ「空海号」の調子が悪くても、尻が痛くても、オレオレ詐欺騒動があったとしても、このしまなみ海道の旅は面白かった。

全てが上手くいかなくても、十分楽しむ事ができる。

これは、当たり前のことかもしれないけれど、ボクにとっては目から鱗。
結局のところ小豆島3日目の朝、「よし!今日この島を出よう」って決めて宿に主人に伝えたんだ。

「あのぉ、3泊する予定だったんですけど、予定を早めたいって思いまして…… ここはとても居心地が良くて静かなところで、ゆっくり考え事をしたいってボクの目的にはぴったりなんですけど、そのつまりボクの方に問題がありまして、あまり静かだとゆっくり考え事ができないって言うか、えっと雑音は自分の中にあるって言うか……」


港に向かうバスに乗ると、盲導犬を連れた女性がバスに乗っていた。盲導犬(ラブラドールの黒)はバスに乗り込んだボクをじーっと見ていた。ボクもじーっと見返して、本当だったら耳をくりくりしたり、口のなかに指をつっこんでベロをつかんだり、まるごとひっくり返してお腹をなでまわしたりしたいところだったんだけど、彼は仕事中だったんで止めておいた。
止めておいたかわりに、彼と彼がガイドする女性が降りた停留所で一緒に降りた。

そこが、高松行きのフェリー乗り場だったんだ。高松行きと岡山行きのフェリーは、バス停で1つ離れている。こんな経緯でボクは高松を経由して愛媛県の今治で自転車を借りて、広島県の尾道までひたすら自転車をコギコギして渡り、そして列車に乗って福山に来た。

われながら、あっぱれな成り行き任せっぷりでした。

$///   H A I H A I S M   ///-ラブ

*****

さて、今治から尾道までの、ポンコツレンタル自転車「空海号」での自転車旅についてはまた書くとして、その旅の途中携帯に電話が入った。

----- もしもし、なつむぎ様の携帯電話でよろしいでしょうか? わたくし、〇〇銀行△△支店支店長の××と申しますが……

----- あれ、支店長。うちのセバスチャンから連絡いかなかった? まいったなぁ。ここしばらく仕事関係の電話は受けたくないんだよ。

----- それがその、是非お伝えしたいことがありまして。

----- どうしたの? また、ボクの資産が目減りしたの?

----- いいえ、そうではないのですが。たった今、なつむぎ様のお母様が窓口にお見えになって、多額の現金を引き出されようとされてまして……

----- 多額の現金? 5億くらいか? ん?ちがう? まさか50億か! まぁ別にいいじゃないか、自分の金を自分で引き出すんだから。

----- いえ、500万円でございます。何にお使いですかとたずねると、ご子息にお渡しになると言うようなことを、非常にあいまいに……

----- わ! 500万も! そんなに貯金あったんだ! ←マジ

----- で、なつむぎ様に確認した方がよろしいかと思いまして。

----- ちょ!ちょ! あのさ、今そこに母は居るの? ちょっとかわってくれない?

しばらくして……

----- なつむぎちゃん?

----- あ、ママリン(*)? ね、なんで500万円もおろすの? 生活費に必要なの?

----- あの…… だって…… なつむぎちゃんから電話があって、それで……

----- え? ボク電話してないよ。

----- なつむぎちゃんから電話があって、なつむぎちゃんが困ってるって言うから。それより、なんで今電話がつながってるの?

----- なんでって、銀行の人がボクの携帯に電話をしてくれたんだよ。

----- だって携帯電話の番号、変わったんでしょ?

----- 変わってないよ。だから今こうして話してるんじゃないか。

----- でも今朝なつむぎちゃんが、3週間だけ携帯電話の番号が変わるって。ママリン、ちゃんとその番号をメモしたのよ。それに具合が悪くて咳が出て、これから病院に行くって。

----- あのさぁ、ボク電話してないよ。具合もいいし(まぁ気力的にはあれやこれやあるけど)。それ、ボクじゃないよ。

----- でもね、「声がちょっと変だけど、なつむぎちゃん?」って聞いたら、そうだよ、なつむぎだよ、って言ってたし。


えっと、なんだかんだこれ以降20分くらい母との会話は続くんだけど、つまりはその朝、息子を名乗るオレオレ詐欺師が母に電話をかけて来たらしく、それをすっかり信じちゃった母は銀行に貯金をおろしに行ったってワケね。

〇〇銀行とはボクも付き合いがあるし、どうも母の言動が怪しいって思ったらしく、すぐに電話がかかって来たんだ。

*****

ボクは「決めない」旅を実行中なんで、詳細については妹に母へのヒアリングをしてもらった。それによると……

1 朝、男の声で母に電話かかる。「なつむぎちゃん?」「そうだよ」のやりとりがある。
→ だってなつむぎちゃんって言うから、そう思うじゃない(ママリン談)

2 実は半年前、未公開株の投資に手を出し友達と1,000万をつぎ込んだ。だから500万を支払わないといけないのだが、金が無い。サラ金で借りようと思う。とボク(ニセ)が言う。
  母が、女房や妹には話したのか尋ねると、話してはいないとボク(ニセ)が答える。
→ 私だけに打ち明けているのね、どうにかしてあげなくちゃ(ママリン談)

3 サラ金なんていけない。とりあえず貸してあげるから。返せる時に徐々に返してくれればいいから。と母が伝えると、ボク(ニセ)は、じゃあまた後で電話すると言って電話を切る。そして銀行に出向く。行員に何に使われますかと聞かれ、とっさに家の修繕で使うからとウソを言い、どこを修繕するんですかと尋ねられるもそこまでは機転はきかず、細かい事は息子に任せてますからと……
→ だって、なつむぎちゃんが株で損したなんて言えないじゃない(ママリン談)

で、銀行員に怪しまれ、銀行からボクに電話がかかって来たってワケだな。

*****

最近、母の所には色々な怪しげな電話が多いんだけどね。とうとう流行の「オレオレ詐欺」まで来たとは。
ボクは自分のことを「ボク」って言うから、オレオレ詐欺にはママリンは引っかからないよね~
なんて笑って言っていたんだけど、コロっとひっかかってやんの。


それよりさ……
怪しげな投資をして500万円損こいた息子のために、ママリンは自分のなけなしの貯金をおろそうとしたんだな。「あるとき払いの催促なし」でボクに貸してくれるつもりだったんだ。しかも銀行では、バカ息子が株で損した尻拭いのためだって気付かれないように気を遣っちゃったりして。

ってか500万円も持ってたんだ。 ←マジ


今日、成り行きにどうも納得が出来なかったママリンは、ボクの正しい携帯番号に電話をかけて来た。

銀行から帰って来た頃を見計らって電話をかけて来たボク(ニセ)に、「本当のなつむぎちゃんだったら、生年月日を言いなさい!」って勇気を出して言って撃退したそうな。

----- ママリンさぁ、500万円も貯金があったんだ。びっくりしたよ。

----- ふふ。なつむぎちゃんには内緒にしてたけど、もう少し持ってるのよ。


ご…… ごじゅう億か?


ブログランキング・にほんブログ村へ  click me!


(*) 念のためだけど、ボクは「なつむぎちゃん」とは呼ばれてないし、ボクも母のことを「ママリン」とは呼んでないけどね。でも、これからのブログに母が登場するときは「ママリン」にするんで、よろしく。
「決められた旅」をするのではなく「決めない旅」をしようと思った。

いや、今までだって他人に決められた旅をして来たワケじゃない。自分で決めて来た。
確かに自分で決めた旅なのだけれど、一度決めてしまうとそのスケジュールに縛られてしまうんだ。そして息苦しくなる。

そんな自縄自縛な旅がイヤで、ワルシャワへと向う予定を変更して訪ねたブリュッセルで、鳥に糞をひっかけられたのがもう3ヶ月も前のこと。 ●ここ

それ以来のご無沙汰でした。「なつむぎ」です。皆さん、ごきげんよう。


実はその後、 思いつきで変えた旅のスケジュールを調整するために飛行機でエストニアのタリンに行き、船でフィンランドのヘルシンキ、さらにスウェーデンのストックホルムへと渡り、列車でデンマークのコペンハーゲンを経て、東京に戻って来ていたという次第です。

東京では、
ベトナムでクニャラと曲がってしまった小指(●ここ)を真っ直ぐにするために旅行中ずっと固定していたら、こんどは固まりすぎて曲がらなくなってしまったので、日々ニギニギするリハビリテーションをしてました。

ベオグラードからブダペストまで乗ったポンコツ夜行寝台車(●ここ)のベッドには先客がいたらしく、朝起きると足がたくさん喰われていて、もともと若干アレルギー体質のボクは皮膚科医に「もっと早く来なくちゃ。下手したら数年かゆい思いをしたかもよ」なんて脅かされてました。

まぁ、東京に居たら居たで、いろいろとやることがあるってもんです。
本当はそのまま南米にと思っていたんだけどな。

*****

さて「決めない旅」を思いついてからと言うもの、「島に行こう!」「島でのんびりしよう」と漠然とした目標だけは決めたものの、細かいことは何にも決めなかった。 だって「決めない旅」だもの。

最初の一歩が踏み出せないと行けないから、行く方向は決めた。そっちの方向に何があるのか、軽く調べた。でも、調べている内にいつもの調子で合理的なルートとかをうっかり考え始めちゃって、 何度も思いとどまったっけ。

こうして4日前に東京を発ち、大阪、姫路を経て、今居るのは小豆島の土庄(とのしょう)って港町なんだな。

民宿の朝食をいただいてから街にふらっと出たものの、さてどっちに行って良いものやら。
何にも調べてないから、何にもわからない。
何かしなくちゃならないことはないし特に何も無い街だから、何をしたいか思い浮かばない。

どこか気持ちの落ち着くところがなく、かといって行動を起こすキッカケもなく、これがボクの望んでいた旅だったのだろうか、これをはたして「のんびり」と表現していいものだろうか……

港に出て船を見ながら時間をつぶそうとしても、小さな港ではそれほど多くの船舶が行き交うものでもなく、ひたすらボーッとするのもそれはそれで気力がいるものなのだなぁ、と思い知ったというワケだ。

フェリーの船尾に腹話術の人形のようにぽっかりと開いた口から、自家用車やバスやトラックが吐き出されると、こんどは逆にそれらが次々と飲み込まれて行く。その光景を見ながら、学生の時、講義中に聞いたエピソードをボクは思い出していた。

*****

ある高名な建築家のもとに、身なりの整った老紳士が現れたというのである。
聞くとその老紳士は、もともとからの土地持ちではあったのだけれど、公共工事で土地を買収され巨額の現金を手にする事になったと言う。もう自分は先の長くない身である。その金で自分の土地に住民の為になる施設を作りたいと思う。最後に名誉を残したい。
用途、規模、デザインをどうするか。予算はあってないようなものだ。とにかく全部先生に決めてもらいたい、と。

建築家は悩んだとのだそうだ。いつもは、土地や、施主の趣味や、予算や、法律や、あるいは風雨や地震に耐えなくてはならないという物理的な制約やらの間隙を縫うように仕事をしていたのに、そのほとんどが取り払われてしまい、はたして自分は何をしたらよいのか、と。



このエピソードを一緒に聞いていた、いつもなんでも訳知り顔で話す友人Kが、人生と同じだ、働かなくても良いだけの富に恵まれると、人は何をして良いのか分からなくなるものだ、というようなことを言った。

ちっ! 猪口才な若造め!

ボクはそう感じたワケだよ。まぁ同じ年だし、当時のボクも十分に猪口才な若者だったのだけど、自分のことは棚に上げて。

働かなくても困らないだけの富を手に入れても、何をして良いのか分からない退屈な人生にはならないと、当時のボクは自信を持っていた。やりたいことは常に次々と目の前に現れてくるものだと思っていた。

世の中は興味深い謎に満ちあふれていて、ボクは謎解きに飽きることはないだろうと。

*****

さて、小豆島の1日。「決めない旅」は「決められない旅」へと変質しつつある。

宿をとった時には3日ほど滞在しようと思っていたのだけれど、今は、明日この島を出るべきかとうか迷っている。出るにしても、高松方向へと進むべきか、岡山方向へと進むべきか。どちらのチョイスも決め手に欠けるんだな。だって、何かすべき事があるわけじゃないし、何も調べてないんだから。


自縄自縛になるのがイヤで、決めることをギリギリまで回避するというのが、今回の旅のテーマだったワケだ。
直前まで何も決めないよ!」と言うその決意の強さを強調して「鉄の意志」作戦って、作戦名まで考えた。
見かけの優柔不断さや、風来坊さの陰には、男の真の決意が秘められているんだってね。

実際、確かにいつの間にか直前には決めている。でもその決まり方は、何と言うか……

自分で「決めている」のか、状況に「決められている」のか、なんとも判然としない。


$///   H A I H A I S M   ///-土庄の地蔵たち
↑ 土庄の町のあちらこちらにはこんな地蔵さまがいらっしゃる。
 ブイを利用して土庄高校の子らが作ったそうな。


ブログランキング・にほんブログ村へ  click me!


先日の早朝のことなんだけど、ブリュッセル南駅からジュドバル広場まで歩いている時に、鳥に糞を落とされたよ。糞はボクの左肩に命中し、ボクは激しくうんざりした気分になった。

その後、移民風の男二人に親切にされてね。

一人は待ち構えていた様にティッシュを持ってボクに近づいて来たし、もう一人はボクのシャツに付いた鳥の糞をキレイに拭こうと、ボクが持ってたショルダーバッグを肩から外そうとしていた。


ちっ! 連中と鳥は、グルだな……


*****

----- 旦那さま。グルだっておっしゃいましても、どうやって人間と鳥とチームワークを組めるんでございます?

やぁ、セバスチャン。おまえは時々出てくるね。セバスチャンは日本に住んで長いけど、鷹匠のことは知ってるかい? 猛禽類の鷹を、実に巧みにあやつるんだ。訓練の賜物というワケだよ。
それに、アシカだってちゃんと芸をする。一度くらい水族館で見た事あるだろ?

----- お言葉ですが、アシカは鳥ではございません、旦那さま。

おや? そうだったかな。そっか、ペンギンだな。ぬるっと流線型の体型をして海に棲んでるくせに鳥なのは。混乱した。

----- アシカでもペンギンでもよろしいですが、ご旅行中詐欺やらスリには気をつけてございましよ。

そうだよな、セバスチャン。実は今回も、パリでは少女のスリに狙われたんだ。

----- おや。それでなにか取られておしまいになられました?

なにも取られてないさ。
彼女は、ユニセフの募金を装おって近づいて来たんだ。ボクはそれが偽物で、最初は署名をお願いしますって話なんだけど、最後には寄付を要求することを知っていたんだ。だからすぐに断った。
でも彼女はすーっとボクの方に身を寄せて来て、次の瞬間にはコートのポケットに手を入れていた。

----- あれまぁ。

だけどさ、ボクは海外の街を歩く時は、いつも全身神経過敏の警戒態勢だからね。身体中が高圧電流を流した有刺鉄線みたいにピリピリしているからね。
だからポケットに手が入ってくれば、すぐに気付く。 彼女の手首を捕まえてやったよ。

----- それで彼女はどうしました?

ボクの手を振りほどいて逃げたさ。捕まえて警察に突き出そうなんて気はなかったから、そんなに強くは握らなかったからね。

----- なるほど。

ちょっと癪にさわったから、彼女の方を見ながら2、3歩前に進んだんだ。

----- そしたら?

そしたら、仲間の少年が彼女とボクの間に割り込むように出て来て、なにか言いながらボクを威嚇してた。おそらく汚い言葉なんだろうな。「●●●」とか「※※※」とか。

----- それで?

それで…… それだけ。

仲間を守ろうとするのはいいことだってことだよ。

----- おや? なんだか話の流れから離れた結論でございますね。

まぁね。
でもさ、セバスチャン。そんなスリの少年少女より、今回の「鳥の糞」詐欺の方が、ずっと巧妙に仕組まれていると思わないか? ケチャップとかなら良く聞くけど。

----- 2人組の男が、旦那さまの荷物を狙ったのはありそうなことでございますよ。でも、鳥を調教してまでするような犯罪でしょうかね。むしろ、たまたま転がってきたチャンスをものにしようとしただけなのでございましょう。

そうだな。鳥じゃなかったのかもしれないな。ボクは歩道を歩いていた。それに面する建物の上階から3人目の仲間が液体をボクの上にたらす。そういう手だってあるな。そういえば、その朝ボクは1羽も鳥を見てない。

*****

かけられた液体が、鳥のものなのか、鳥のものを装ったものなのか、今でははっきりしないけどね。でも、用事を済ませて早々にホテルに戻って服を着替えたよ。


そして、ネットバンクの残高を確認するついでにポチッとBIGを買ってみた。

6億円、当たるかも~


ブログランキング・にほんブログ村へ  click me!
アムステルダムの街に来て驚いたことがあるんだ。ボクにとっては初めての街だったから。

それは、アマゾネスの様なお姉さん達が昼間から水着でアピールする飾り窓でもなくて、コーヒーやタルトを楽しむのと同じようにマリファナでリラックスできるコーヒーショップでもないんだな。まぁそのくらいの事前知識はボクにもあったからね。

1つは、なんとも不思議な街の建物だった。

アムステルダムの建物は傾いている。あまりにもみんなが、てんで勝手に傾いているから、ボクが歯科医だったら絶対に歯列矯正を勧めるところだって思ったよ。
もちろん、傾いているのには理由がある。道路に面した外壁がお辞儀をするように手前に傾いているのは、間口が狭く階段が急なこの街の建物の上階に荷物を運び上げるとき、建物の上部に突き出したフックに荷物を懸けて吊り上げるんだけど、その時に荷物が壁に当たって傷ついたりしない工夫らしい。これはつまり、計画的に壁を斜めにしてあるってワケだね。

///   H A I H A I S M   ///-amsterdam 1
↑ こんな感じ

それでも角地に建つ建物が両方の道路に対して傾いていたりすると、上に行く程でかく見えるんだ。「ここはトゥーンタウンですか?」って感じ。

///   H A I H A I S M   ///-toon town
↑ まぁ、誇張して言ってみれば……

もう1つの理由は、アムステルダムの地盤の悪さにあるらしい。昔の建物でも基礎の下には杭が打ち込んであるそうだけど、それでも建物は時間とともに傾く。この傾きは計画的なものじゃなくて、道路に面していない本来は垂直に作ったはずの壁も、床も、天井も、窓も、みんな傾いちゃうワケだ。

///   H A I H A I S M   ///-amsterdam 2
↑ こんな感じ

中にはこの傾きをデザインにワザと取り入れた「確信犯的」な建物もあったりして、この街を歩いていると、なにが垂直でどれが水平だかわからなくなって、ウキーってなる。

$///   H A I H A I S M   ///-amsterdam 4
↑ 左の白い建物が斜めってるのは、デザインだよ

ま、数時間で慣れちゃったけどね。


驚いた事はもう1つは、街のあちらこちらがトリプルXにレーティングされてるってことなんだ。

そりゃ飾り窓で有名な街だけど……
トリプルXのカフェのウェイトレスはどんな格好をしてるんだ?
トリプルXの図書館の蔵書ってエロ本ばかりなのか?
トリプルXのごみ箱にはいったい何が捨ててあるんだろう?
トリプルXのお土産屋では家族に土産は買えないな。

当然だけどすぐにレーティングのことじゃないんだろうって気付いて、ホテルでググってみたワケだけど、Xが3つの「XXX」はハードコアを意味するんじゃなくてアムステルダムの市章だったのね。このXは聖アンデレ十字って言うらしく、それぞれが「洪水」「火事」「ペスト」からアムステルダムを守っているんだって。

いやぁ、話題の尽きない街だったよ。

///   H A I H A I S M   ///-amsterdam 3
↑ 博物館もトリプルX これも斜めってるでしょ?

*****

でも、ボクにとって「XXX」には別の意味があったみたい。

アムステルダムでは特に理由が見あたらないのに、ただただ気力がダウンしていた。これが1つめの「X」。
そして旅の記録を詳細につけている大切なノートを落とした。これが2つめの「X」。

この街はきっとボクとソリが悪いんだ。アムステルダムが悪いってことじゃないんだよ。でも人と人とに相性があるように、人と街とにも相性がある。

ここはボクが長居する場所じゃないんだ。

そう思ってこの街を去ろうとした朝、それまで天気予報にはいつも傘マークが付いていたのに降る事のなかった雨が、ホテルを出たとたんに降り始めた。中央駅に駆け込んでしまえば大丈夫。そう思って歩き始めたけれど、どんどんと雨は強さを増し、ボクは途中のカフェでスーツケースから傘を取り出し、それでも濡れながら駅に着いた。これが3つめの「X」。

つまりボクにとっては、×(ばつ)3つの街だったってこと。

ボクの気分や、不注意や、天候を、アムステルダムのせいにするつもりは決してないけどね。でもボクは、アムステルダムを脱出して、今はブリュッセル。

ちょっとホッとしてたりして。


ブログランキング・にほんブログ村へ  click me!