鉄の意志 作戦 | /// H A I H A I S M ///

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あわてない、あわてない。赤ちゃんが「はいはい」するように、のんびりゆっくり進みましょう。

「決められた旅」をするのではなく「決めない旅」をしようと思った。

いや、今までだって他人に決められた旅をして来たワケじゃない。自分で決めて来た。
確かに自分で決めた旅なのだけれど、一度決めてしまうとそのスケジュールに縛られてしまうんだ。そして息苦しくなる。

そんな自縄自縛な旅がイヤで、ワルシャワへと向う予定を変更して訪ねたブリュッセルで、鳥に糞をひっかけられたのがもう3ヶ月も前のこと。 ●ここ

それ以来のご無沙汰でした。「なつむぎ」です。皆さん、ごきげんよう。


実はその後、 思いつきで変えた旅のスケジュールを調整するために飛行機でエストニアのタリンに行き、船でフィンランドのヘルシンキ、さらにスウェーデンのストックホルムへと渡り、列車でデンマークのコペンハーゲンを経て、東京に戻って来ていたという次第です。

東京では、
ベトナムでクニャラと曲がってしまった小指(●ここ)を真っ直ぐにするために旅行中ずっと固定していたら、こんどは固まりすぎて曲がらなくなってしまったので、日々ニギニギするリハビリテーションをしてました。

ベオグラードからブダペストまで乗ったポンコツ夜行寝台車(●ここ)のベッドには先客がいたらしく、朝起きると足がたくさん喰われていて、もともと若干アレルギー体質のボクは皮膚科医に「もっと早く来なくちゃ。下手したら数年かゆい思いをしたかもよ」なんて脅かされてました。

まぁ、東京に居たら居たで、いろいろとやることがあるってもんです。
本当はそのまま南米にと思っていたんだけどな。

*****

さて「決めない旅」を思いついてからと言うもの、「島に行こう!」「島でのんびりしよう」と漠然とした目標だけは決めたものの、細かいことは何にも決めなかった。 だって「決めない旅」だもの。

最初の一歩が踏み出せないと行けないから、行く方向は決めた。そっちの方向に何があるのか、軽く調べた。でも、調べている内にいつもの調子で合理的なルートとかをうっかり考え始めちゃって、 何度も思いとどまったっけ。

こうして4日前に東京を発ち、大阪、姫路を経て、今居るのは小豆島の土庄(とのしょう)って港町なんだな。

民宿の朝食をいただいてから街にふらっと出たものの、さてどっちに行って良いものやら。
何にも調べてないから、何にもわからない。
何かしなくちゃならないことはないし特に何も無い街だから、何をしたいか思い浮かばない。

どこか気持ちの落ち着くところがなく、かといって行動を起こすキッカケもなく、これがボクの望んでいた旅だったのだろうか、これをはたして「のんびり」と表現していいものだろうか……

港に出て船を見ながら時間をつぶそうとしても、小さな港ではそれほど多くの船舶が行き交うものでもなく、ひたすらボーッとするのもそれはそれで気力がいるものなのだなぁ、と思い知ったというワケだ。

フェリーの船尾に腹話術の人形のようにぽっかりと開いた口から、自家用車やバスやトラックが吐き出されると、こんどは逆にそれらが次々と飲み込まれて行く。その光景を見ながら、学生の時、講義中に聞いたエピソードをボクは思い出していた。

*****

ある高名な建築家のもとに、身なりの整った老紳士が現れたというのである。
聞くとその老紳士は、もともとからの土地持ちではあったのだけれど、公共工事で土地を買収され巨額の現金を手にする事になったと言う。もう自分は先の長くない身である。その金で自分の土地に住民の為になる施設を作りたいと思う。最後に名誉を残したい。
用途、規模、デザインをどうするか。予算はあってないようなものだ。とにかく全部先生に決めてもらいたい、と。

建築家は悩んだとのだそうだ。いつもは、土地や、施主の趣味や、予算や、法律や、あるいは風雨や地震に耐えなくてはならないという物理的な制約やらの間隙を縫うように仕事をしていたのに、そのほとんどが取り払われてしまい、はたして自分は何をしたらよいのか、と。



このエピソードを一緒に聞いていた、いつもなんでも訳知り顔で話す友人Kが、人生と同じだ、働かなくても良いだけの富に恵まれると、人は何をして良いのか分からなくなるものだ、というようなことを言った。

ちっ! 猪口才な若造め!

ボクはそう感じたワケだよ。まぁ同じ年だし、当時のボクも十分に猪口才な若者だったのだけど、自分のことは棚に上げて。

働かなくても困らないだけの富を手に入れても、何をして良いのか分からない退屈な人生にはならないと、当時のボクは自信を持っていた。やりたいことは常に次々と目の前に現れてくるものだと思っていた。

世の中は興味深い謎に満ちあふれていて、ボクは謎解きに飽きることはないだろうと。

*****

さて、小豆島の1日。「決めない旅」は「決められない旅」へと変質しつつある。

宿をとった時には3日ほど滞在しようと思っていたのだけれど、今は、明日この島を出るべきかとうか迷っている。出るにしても、高松方向へと進むべきか、岡山方向へと進むべきか。どちらのチョイスも決め手に欠けるんだな。だって、何かすべき事があるわけじゃないし、何も調べてないんだから。


自縄自縛になるのがイヤで、決めることをギリギリまで回避するというのが、今回の旅のテーマだったワケだ。
直前まで何も決めないよ!」と言うその決意の強さを強調して「鉄の意志」作戦って、作戦名まで考えた。
見かけの優柔不断さや、風来坊さの陰には、男の真の決意が秘められているんだってね。

実際、確かにいつの間にか直前には決めている。でもその決まり方は、何と言うか……

自分で「決めている」のか、状況に「決められている」のか、なんとも判然としない。


$///   H A I H A I S M   ///-土庄の地蔵たち
↑ 土庄の町のあちらこちらにはこんな地蔵さまがいらっしゃる。
 ブイを利用して土庄高校の子らが作ったそうな。


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