やっぱりおもろい。

ここ数年注目している京都の劇団、中野劇団。1幕物のシチュエーションコメディで、台本が秀逸だ。その代表作が映画化されたと聞いたので見に行った。結婚の報告をしようとバーに友人を呼びだした2人の男。たまたま2人は知り合いで、お互いの報告を見ることになるんだけど、それぞれ複雑な事情があって…という物語。自分が前に見たのは舞台版だったけど、とにかく面白い。アンジャッシュとかダウが得意なかけ違いがどんどん悪化していくタイプ。ただ、どうしたって笑わせることが目的のコントなので、1時間はしんどいし、映画にするとなぁ。ストーリーテラーのいる短編集みたいにして、もう何本か見たかった。

ズドーン、低めに響く重いストレートのような。

「ミッドナイトスワン」の内田監督が北川景子を主演に迎え作った「薬の売人をして子供を育てるシングルマザー」の話。

「かわいい子どもを必死で育てるためには、他人を不幸にでもするかあちゃん」を演じた北川景子は頑張ってたと思う。でも隣にいた用心棒役の森田望智がすごすぎて、霞んでしまっていた。あかん、あれは本物だ!格闘技のスピード、迫力、体格、所作…どれを取っても普段きれいな女優さんとは全く思えず、まったく違う人間に化けた彼女にやられてしまった。その二人が苦しい生活の中で悪に手を染めながらも、自分の愛する人のために必死に生きる姿。子供がやりたいことはなんとしても実現してあげたい。母の大きな愛が暗くて辛い現実の中でも、輝く一瞬をとらえた物語だと思った。でも一番怖かったのは役柄とか老化もあるだろうけど、ほぼアバターの人みたいだった田中麗奈。

 

 

素直じゃないのかなぁ…

阪神に期待されて入団しながら、3年目の21歳で脳腫瘍を発症。28歳で亡くなった横田慎太郎選手の実話ベースのドラマ。大きな手術を乗り越え、引退試合で見せた見事なバックホームは素晴らしかったし、その後の生きる姿勢もたくさんの人たちに勇気を与えたんだと思う。もちろんそれは否定しない。でもこの映画の作り方にはガッカリした。ベタすぎる演出とシーンの作り方に逆に醒めた。また横田本人はともかく、金本さん、平田さん、特に掛布さんがなぜあの役者?余計ないろいらんやろ。あとどさくさに紛れて出ていた とこわか吾郎!ええ話が台無しや


それでよかったのかもしれない。

柴咲コウ演じる主人公の元に突然かかってきた電話。お兄さんが亡くなりました。遺体を引き取りに来て下さい。

家族に甘え、迷惑をかけ通し、何年も疎遠だったダメ兄。それを演じられるのはオダギリジョーしかない。やってきたことを考えたら腹がたって仕方ないのに、少しずつ生前の様子を知るうちに、溶けていくわだかまり。生きているうちは迷惑でかさ高かったけど、亡くなって動けなくなったことで、いい部分だけが蒸留されたような。矛盾するけど、自分がいなくなることで、彼は壊してしまった家族を再生することに成功したのかもしれない。

うっとおしくて、面倒で。でもどうしたって離れられなくって、代えもいない。きっと誰にとっても呪縛でな支えなのだ、家族って。

凡庸すきて。

山田洋次監督が倍賞千恵子はじめ、山田組の面々を使って「パリ・タクシー」を翻案。寅さんファンとしては見に行かないわけにはいかず。ただなぁ…。テレビの「さんタク」にひっかけた一本芝居のキムタクの起用。無理やり昭和の辛かった時代を重ねた人生。思い出の地を巡るとかいいながら、はとバスのコースみたいな東京巡り。これまでの山田作品に傷がつくわ。92歳の監督はもう引退させてあげようよ、誰かが。

いつの時代の映画やねん・・・。

真剣師、出自の闇、親のギャンブルからの虐待、子供の貧困…テーマが昭和すぎて、なぜこの時代にこれを映画化する必要があったのか?将棋という動きのないステージを中心にした物語だったこともあって、登場人物の顔芸大会になっていたのも残念。令和の砂の器をやりたかったんだろうな。

脳トレ?

少し前に原作を読んだ作品の映画化。取り調べを受ける謎の男、スズキタゴサクに警察が振り回されるミステリー。佐藤二朗演じるタゴサクの存在感がこの物語のキモ。無邪気で凄みと影もあり、自虐を演じながら緻密な計画を練る知性もある。ちょっと濃すぎる感はあったけど、見事な演技だった。惜しいのはタゴサクが見せるヒントの緻密さと、実行計画や動機などのレベルに差がありすぎること。タゴサクが仕掛けた3回戦の続編はあるんやろうか?

コーヒー、冷めてたなぁ…

夢を見つけられなかった孫と、夫の死後に新たな世界に触れたばあちゃんの物語。物語も演技も淡々としているから、いいこと言っていてもインパクトがない。盛り上がらないし、散漫な印象。よかったのは長塚京三さんの、奥さんへの視線くらいだったのは、俺がジジイだからなのかな。いくらおいしいコーヒー淹れても、ぬるくなっちゃうとあかんよなぁ。

うまいんだけど。

杉咲花主演。銀行に勤める恋愛未経験の腐女子が、歌舞伎町でたまたま知り合ったキャバ嬢と同居。そこからそれまで生きてきたのとまるで違う世界の人に触れ、世界が…という話。花ちゃんの演技は素晴らしい。でもそれだけやなぁ。自由に生きている風の歌舞伎町人たちがそれほど魅力的でないし、それに伴い花ちゃんの演技過多が鼻につく。登場人物の誰にも共感できない新しい世界は、そない興味ないわ。

じわっと染みる。アニメなのに。

これだけ世界を席巻しているんだから色眼鏡でみるのはあかんと思うけど、基本的にアニメは子供や若者向け、夢や幻想を形にしていくというイメージがある。でもこれは違う。主人公は終身刑で服役中のヤクザ。もう残り少ない人生の最後に、ホウセンカと話せるようになり、つらかった人生の中で最後に狙っていた「大逆転」を語る。老ヤクザは小林薫、ホウセンカはピエール瀧。血はつながってないし、籍も入れない。でも一緒にいたい、居たかった「家族」の幸せを祈る気持ち。寡黙な男がひっそり残した最後のメッセージ。こんな煮つけみたいな物語のうまみを若者がわかるわけがないわ。