1.はじめに
こんにちは。経済科学部の鐙孝太です。本日は、私がボート競技から学んだことの一つである「目標設定」についてお話します。
私自身2020年に初めてボート競技を始めてから今年で6年目を迎えました。これまで今日まで様々な経験を重ね、学んできました。振り返ると「目標設定→練習→振り返り」の繰り返しの日々です。活動のスタート地点とも言える「目標設定」。「目標がその日その日を支配する」という言葉もありますし、私が高校時代、主将として特にこだわった部分でもあります。今新潟大学ボート部は新人戦を経て次の目標を設定する時期です。主力は1・2年生。彼らがボート部での活動を経て自己実現(なりたい自分になる)するためにはどのような目標設定が必要なのでしょうか。
2.目標とは
まず、目標とは何かを定義しましょう。よく混同しがちなのは「目的」です。英語では目標=goal、目的=purposeです。目標は目指している地点、目的は「なぜやるのか」といういわば「意味付け」です。目的は目標のさらに根底にある「土台」のようなものです。つまり、目的が明確でなければ、目標は定まらないという事です。そもそも、「なんでボートをやるの」まで言語化できれば素晴らしいですね。目的を達成するために目標があるという認識です。例えば私のボートをする目的は「自分を含め、関わる人全てを幸せにする」でした。かなり抽象的だと思われるかもしれません。しかし、改めて目的は根底にあるものですから抽象的で構いません。目標は具体的にすれば良いのです。例えば「インカレで入賞する」「エルゴタイム〇分○○秒を切る」とか。
3.なぜ目標設定が大切か
結論「目標はその日その日を支配する」からです。目標を見失った状態で活動することを想像してみてください。特にボート競技のような体力的にも精神的にも苦しい練習など、耐えられるはずがありません。目標を見失って活動することは時間の無駄です。来年のインカレまではあと10か月を切りました。限られた時間を有効に使うためにも「目標」は絶対に疎かにしてはいけないのです。
4.目標を作る「目的」
目標を作ったら終わりではありません。目標を作るにも意味があります。考えてみましょう。何度も言うように「目標がその日その日を支配する」という言葉の通り、目標を設定したら日々の行動に落とし込む必要があります。
思考のプロセスは、「目標-現状=すべき行動」でしょうか。目標があります。しかし、当然現状の自分たちでは届かない、だからこそ日々の練習をするのです。つまり練習は「目標と現状のギャップを少しづつ埋めていくための手段」ということ。先述した通り目標を見失うと、練習することが目標になり、ただこなすだけの練習になります。俗にいう「目的と手段を履き違えている」という状態ですね。
目標と現状の距離感を常に見る必要があります。だからこそ、毎回の練習でMTGをするわけですね。
まとめると、日々の行動に意味付けをするために目標があるという事です。
※現状の分析の仕方は、一旦置いておきます。
5.目標設定のやり方
よく言われるのが、「目標設定の仕方が分からない」という事です。たしかに、目標設定を適当ではなく明確にやろうとすると難しい。特にそれが個人ではなく組織レベルになるとかなり難しい。ここで主将のリーダーシップが問われるわけですがどんなプロセスを踏むべきなのかを考えます。
ポイントは2つです。
・個人レベル(干渉できない)と組織レベルの階層分けを明確にする。
・チームの目標は複数あっても良いが、どれもできるだけ具体的にする
※今回前提としているのは、一人ひとりの思考がバラバラなチームです。入部プロセスが正しく行われていないチームの想定です。一人ひとりの想いが統一され伝統的な組織の目標と合致している組織では、わざわざこのポイントを踏まえる必要はありません。
で、具体的に何をするかという話です。
まずは、メンバー一人ひとりの個人レベルの「目的」を探ります。手段は問いません。1on1で話しても良いでしょうし、アンケートでも、ノートに記入させても良いでしょう。大事なのは、「なぜボートをやるのか」という根底を聞き取ること、そしてそれを絶対に否定しないことです。その人から出てきた本心を否定するのはNG。心を開いてくれなくなります。根底の部分を言語化できるようになればひとまずOKでしょう。できる人は「ボート競技で達成したい目標」まで具体的に考えてみましょう。
ここまでが個人レベルの目的(目標)設定です。
気を付けなければならないのは、個人レベルの目的は15人いたら15人バラバラです。これを無理に一つにまとめたり、最大公約数を見つけようとすると失敗します。
やがて、メンバーは自分の目標と組織の目標とのギャップを感じモチベーションを低下させます。
つぎに、組織レベルの目標を決めます。ここが難しいです。ひとつの目標に定めるのは避けるべきでしょう。しかしながら、主将の権限を利用するという手もあります。主将はみんなから選ばれた立場ですからある程度方向性を決める権限はあるということ。そこのバランスは主将次第ですがメンバーのモチベーションを引き出す目標を設定したいです。
例えば「インカレ入賞」という目標にはついていけないけど「お花見レガッタで漕ぎ切る」という目標ならついていけるとしましょう。2つの目標があることに何か問題はあるでしょうか?よく「チームを2分するのは良くない」とか「それではチームの意味ない」とかを言う人がいますが、私はそんなことはないと思います。なぜなら、2つの目標が向いている先は同じだから。「現状よりも強くなる」とか「技術力を向上させる」という方向性に関してずれているところはありません。つまり、同じベクトルで活動できるし、場合によっては同じ練習メニューを課すことにも疑念は生じないのです。むしろ、一つの方向にやり定めて、モチベーションが下がるメンバーに責任を問う主将のほうがよっぽど無責任だしチームを2分することに繋がりかねません。
(主将の役割として)大切なことの一つは、「チームを一つにまとめること」であり、「目標を一つにまとめること」ではありません。何度も言うように目標を作ることがゴールではありません。メンバーの声を無視してまで、一つの目標に定める必要はないという事です。より抽象的なキャッチコピーを作るという事に留めた良いのではないでしょうか。
ここまで、私が考える目標設定のプロセスについてお話しました。ここからは、目標を設定した後のことをお話します。
6.目標の管理
人間の心は常に動くものですから、一度考えた目的や目標が変化することも考えられます。ここで問題となる場合は、突然目的が大きく変わって「ボートをやる意味」を見失ってしまうことです。え、そんなことあるの!?と驚かれるかもしれませんが、実際のところはどうでしょうか。ここ1年で何人の仲間が漕手をやめ、また部を去ったでしょうか。これを考えると人の気持ちの変化の起こりやすさが分かるかと思います。
これを防ぐために、何をすればよいか。それは目標の管理です。それは簡単で、日々MTG等で小さな振り返りを重ねることです。短いスパンで気持ちが大きくすることはありませんから、日々振り返ることで小さな変化に気づくことができればよいという事です。
また活動する中で目標の修正も必要になる場面があるでしょう。想定よりも現状との距離が遠かったり、近すぎたりするときにはこの方法を使います。もともと設定していた目標を諦めるという事ではありません。中間目標を設定するといったいわば「軌道修正」です。
そもそも、根底にある「目的」のほうを達成できれば良いので、「目標」は変えても問題ない、活動を続ける意味が残れば良いのです。
ここ1年で、漕手を離れる、また部そのものをやめるメンバーがこれだけ多いのは個人の問題ではないという事は、通常では起こりえません。個人の問題ではないという事は皆さんお気づきでしょう。活動する意味を絶対に見失わせてはいけない理由、目標を大切にする理由がここにあります。
7.「答え合わせ」とよく聞かれること
この1年間、私は漕手をやめて以来、新潟大学ボート部に所属していたものの、ほとんど関わらず、外から見ている状態でした。ちょうど1年前、漕手をやめる決断をした時、理由を含めて一部の先輩、同期、後輩にお話ししましたが、今1年たってその答え合わせができるのではないでしょうか。当然この1年間頑張ってきたチームを否定するつもりはありませんし、活動に参加していない私にその権利はありません。大切な事は「次につなげる事」。新チームが目標を設定する時期である今、活動してきたメンバーこそ、「答え合わせ」をすることが必要ではないでしょうか。目標設定をするという事は、同時に振り返りもしなければならないのですから。 終
~追記~
ここ1年間、様々な方から声をかけていただきました。他大学の方や高校時代の仲間、部内のメンバーからもいろんな声がありました。その中でよく聞かれることが「今の新潟大学ボート部ってどんな感じ?」とか部員からは「外から見ててどうみえますか?」とか...
外からの見え方を気にして活動するのは本質とは異なります。また私が部に所属していながらチームの批判をするのはおかしいですから、あまり明言を避けてきましたが、代替わりのこのタイミングで敢えて言うならば
「仲間」から「友達」の集まりへの進化。「一人ひとりの個性の集まり」から「画一的な組織」への変貌でしょうか。
どう捉えるか難しいところではありますが、おそらく部員であれば納得してくれるのではないでしょうか。