四季は美しき
寒い。久しぶりに冬の空気を味わう。この東京近郊の緩い冬空に比べれば、東北の山裾にある地域は厳寒に違いない。あの足裏から冷え込んでくる冷気が、ここにはない。
仕事や稽古も一段落したので、古いカメラを持って街に出た。仕事先の大先輩から余ったフィルム(仕事用では期限切れ)を沢山貰ったので、遊んでいるのだ。
愛用はミノルタSR1を使っていて、気まぐれにリコーのXR500を持ち出す。今は、誰も見向きもしないカメラ達だ。中古屋ならワンコインで売っていたりする哀れなカメラでもある。。
そういう機材を下げて街を行く。しかし、曇天に気が重い。もっと遠くに行きたいのに、自分は何に遠慮しているのか。
行ったまま帰りが容易ではない山間の村に寺などないものかな。…と、便利な都会暮らしに慣れ親しみ、自らの『人糞』の始末すら覚束無い身で、利便性が途絶した環境に暮らせる訳がない。
地方の四季、美しさを紹介します…なんて写真家に私が嘘臭さを感じるのは、いかに過疎地域が不便であるのか。少し前まで『おつりが来る』体験を余儀なくされた身ならば周知の事だ。
日本の山野は美しい。しかし、美しさの裏腹に生活の厳しさがあり、拭い切れない哀しさがある。
深夜にイカ糸作り
撮影の小仕事が終わり、印刷場から病院へ。
帰りに駅前スーパーに立ち寄ってみる。今日は『ヤリイカ』があった。こんなに鮮度抜群で美味そうなのに、半額に下げられている。
何度も言うけど、生命を食物にしている意識が現代人には足りないのであるまいか。求めれば天水のように与えられると勘違いしているように思えてならない。
そんや訳で、今夜もイカ刺しを造る。
糸造りというよりも、ウドンに近い太さに切ってしまった。
このヤリイカは『北海道太平洋側』と明記されている。私の祖母が北海道育ちであったが、祖母は絶対にスルメイカが一番であり、ヤリイカなどは格の劣る下魚に考えていたようで、ましてやモンゴウイカに至っては『あんなのイカじゃない!』と公言していた。
そんな時代も、今ではイカが貴重な海産物になり始めている。だいぶ不漁だとも聞く。
本当は、食べる量だけ水揚げすれば資源を保護できるんだろうけどね。
そう、スルメイカは『塩辛』が作れるがヤリイカは無理だ。
その代わりにイカ墨を使った料理が可能。祖母は苦手であったモンゴウイカなど、イカ墨料理を作らずしてはイカに失礼にあたる。
料理のコツではないのだが、イカ墨を白ワインで溶いてパスタなどに使うと、ちょっとだけアドリア海やシチリア気分になれる。



