その反面、話は戻るが、青年の同級生は酒代を携帯の
クレジットで決済しており、その酒代の半額より
いつも少し多めに彼が現金で渡していた。
若いので、お金がないんだろうなと思い、多めに払っていたし
クレジットで払えるなら良いなと思って、その決済方法に
全く疑問を抱いていなかった。
そして、青年の同級生から「バイトが決まったので
飲みに行きませんか」というので、飲みに行く事にした。
青年の同級生は腰を痛めて、現在の職を休職していたのを
知っていたので、電話越しには分からないようにしてはいたが
彼は、まるで自分の子供の再就職が決まったように喜んでいた。
その際に、知る人ぞ知る麻雀打ちの友達が、彼宛に
偶然、東京から遊びに来てたので、良い機会なので
青年への同級生に、強い打ち手の紹介も兼ねて
3人で一緒に飲みに行った。途中、何人か合流した。
その飲みも終わり、支払いの段階になると、いつものように
携帯クレジット決済を行おうとすると決済出来なかった。
しかも、現金は持ち合わせていないという。
その場は、仕方ないので、青年の同級生の分を
彼が負担して、現金で払った。
そこで、そうか、青年の同級生は、元々お金がなくて
彼と飲みに行った時の現金を利用し、クレジットローンではなく
ショッピングの手数料無料で、彼から現金を引き出していたんだと。
そして、予定外の人数が来てしまい、落とせなかったと気づいた。
その場面で、青年の同級生の一言を待ったが、何も言わない。
「持ち合わせがないので、今回は貸して頂けないか」とも
「次回払います」との言葉もなかった。
黙って、青年の同級生は彼の奢ってあげるの言葉を待っている。
その場は、何事もないように、彼はやり過ごして、外に出たら
誰かが麻雀をやって帰ろうと言った。なので、4半荘やった。
当然、青年の同級生は支払いが出来ないのは
他の面子も了承済なので、残りの人数で、割って場代を払うが
その際も何も言わない。ただ、黙って、何かを期待する素振り。
奢って欲しいのだろう。ないものを払えというのも、無理ではあるが
甘やかすわけにもいかず、彼達は何も言わずに別れた。
その時、彼は麻雀打ちとしての心のない人に技術を教える事は
不幸な事だと感じた。麻雀のセンスがあっても、人間として
確立されていない人に麻雀を教えてはならないと。
その反面、彼が必要以上に早く麻雀を教えていたのは
自分の出来なかった夢を、知らず知らずに青年の同級生へ
押し付けていたのではないかと。
麻雀の技術だけを一方的に伝えてしまうだけで
一番大切である心を育てる事を忘れていたと深く反省した。
だから、私は、今後、心のない人に、麻雀を教えないことにした。
ある意味、悲劇かもしれないからだ。
例えるなら、身なりは大きくても、中身は、子供のままで
大人になってしまったといえよう。
だから、そうなりつつある青年の同級生の心を育てる為に
今度、会ったらお金がないのに、飲みに行こうとか言わずに
正直に「お金がないのですが、次回バイト代が入ったら
払いますので、バイト決定祝いに飲みに連れて行って下さいよ」とか
「みなさん、今日は持ち合わせがないのに出していただいて
ありがとうございました」等と最低限のマナーを覚えさせて
決して、人の財布を当てにして、飲み食いするような
後ろ暗くて小賢しい考えを持たないよう言って聞かせた。
彼は、単に麻雀だけではなく、打ち手のメンタル面を育てる事が
最大の麻雀打ち育成課題であると青年の同級生に教わった。
裏を返された事によって、心を育てる事が
一番の麻雀上達の近道だと思い知らされたのであった。
彼にとっては、嬉しい話ではなく、逆説的で残念な事になったが
この結果を感謝しなければならないのかもしれない。
~追憶~
翌日、起きると大事にしていたMJ3のカードがない。
あの時、筐体に差したまま忘れてしまったのを思い出した。
それを思い出すと、ふと2人を繋いでいた気持ちまでも
無くしてしまったような気持ちとなり、その後、彼は
そのゲームセンターから、次第に足が遠のいていた。
とはいえ、彼は、わずかながらでも、小さな街で
出会った仲間の為に、心を残していたと今も信じている。