10.【全てを許し、ありのままを受け容れる】

既に述べた通り、共同体感覚を身に付けるためには、
自分自身の課題を克服する必要があります。
目的論や課題の分離、自己決定性について触れましたが、
結局は、『有りのままの自分を受け容れる事』、これに尽きます。

人間は誰もが幸せになるために生きています。
当然、この気持ちは互いに共有し、認め合わねばなりません。
ならば、他人が幸せになろうとしてした事により、
自分が苦しい思いをしたとしても、
安易に憎む訳にはいかなくなります。

他人の裏切りに対しても同じ事がいえます。
この、『他人を裏切る』という行為は、
誰もが冒しかねない万人共通の過ちです。
その多くは、特に悪意がなく、
何かしら仕方のない理由があっての事でしょう。
実際、自分と他人を天秤に掛けねばならない場合、
自分を優先して、結果的に他人を傷付けてしまう事はよくあります。
その場合、多くの人は、

相手に対する罪悪感と、見放される恐怖に襲われるはずです
その辺りを考慮すれば、
相手に寛大な態度を示す事も難しくはないでしょう。

人間にとって、罪や過ちを許してもらえないという事は、
とても大きな苦しみとなります。
そもそも、無関係の人でさえ、
苦しんでいる被害者を見れば心が痛みますね
加害者ならば、そこに、
他者を傷付けた罪悪感による苦しみと
怒りと憎しみを向けられる苦しみが加わる訳です。
その相手が、愛する家族、親友や恋人などであれば、
どれほど苦しいか想像出来るでしょう

逆に許さない側の苦しみにも大きなものがあります。
許さなければ、相手との絆は失われます。
また、相手に復讐したとしても、
自分の苦しみも悲しみも消える事はなく
場合によっては未来への希望さえ失い兼ねません

世の中には、過去の過ちや辛い体験を背負い続け、
いつまでも苦しみから逃れられない人が大勢います。
それは、『有りのまま』の現在を受け容れられないからです。
過去に囚われ、そこで意識が止まってしまうからです。

苦しみから逃れるには、自らの過ちを認め、他者の罪を許し、
意識を過去から未来に向ける必要があります。
互いに受け容れる事と許す事が出来なければ、
我々は前へと進めません。
何故なら、自分も他人も、同じ心を持った運命共同体だからです。

自分を受け容れられない人に幸せが訪れる事はなく、
同様に他人を受け容れなければ、やはり幸せには成れません。
自分を認められないのは、自分という人間を知らないからです。
自分を知らなければ、他人を理解出来るはずもないでしょう。
それは、他人を理解するためには、
自分の立場に置き換えねばならないからです。

「自分を知らない」というのは、

まだ自分自身の課題を克服出来ておらず、
人生の苦しみから脱却出来ていない状態を指します。
自分を知れば、自分を幸せにする方法も解ります。
それは、自分の有りのままを受け容れ、自分を許し、
自分の自由を認め、目的を持って前に進む事です

自分を幸せにする方法とは、則ち他人を幸せにする方法でもあり、
それが解れば、他人の有りのままを受け容れ、
無条件で信じる事だって出来るでしょう。

人と人が絆を結ぶには、
まず自分から他人を無条件で受け容れねばなりません。
傷つけられる事も裏切られる事も含め、

相手を無条件に信じるのです。
その気持ちは、必ず相手にも届きます。
何故なら、
自分を無条件で受け容れてくれる人ほど大切なものはありません。
ならば、同じく自分も、相手を無条件で信じるしかないのです。

受け身ではいけません。
互いに待っていても、何も始まりません。
まず、こちらから手を差し伸べるのです
その手が撥ね付けられても気にする事はありません。
相手の意思を受け容れましょう。
そして、また手を差し伸べるのです。

自分を含めた全ての人間は、互いに共存共栄しながら、
それぞれが全体の一部として機能しています。
あたかも、全ての心が見えない糸で繋がっているかのようですね。
いや、それは、例えなんかではなく、真実かも知れません。
理由については、敢えて触れないでおきましょう。
それは、各自が自ら掴むべき課題であり、
また、大きな希望だと思うからです