青い快速とか緑の快速とか表現している人がいるかどうかはわかりませんが…。
この画像を見てすぐに意味がわかる人は鉄道が好きであるとか、あるいは常態的にJR東日本常磐線を利用している人くらいでしょうか?
画像だけで見ると行先は別として「10両編成が青い快速で15両編成が緑の快速?」なんて思う人がいるかもしれません。が、それはハズレであります。
青い快速でも15両編成があり、緑の快速でも10両編成があります。どちらも基本編成は10両で組成され、それに5両で組成されている付属編成を連結して15両編成で運転されているか、基本10両編成のみで運転されています(但し、運転区間によっては付属編成のみで運転されている列車がありますが、青い快速と緑の快速両方が走っている区間では基本編成+付属編成か基本編成のみの編成、つまり15両編成か10両編成で運転されています)。
画像のフルカラーLED表示では青い快速にはグリーン車連結マークがあり、「青い快速にはグリーン車が連結されている」…これはハズレではありませんが、もっと言うと青い快速と緑の快速は運転区間と使用車両が異なるということです。
青い快速は上野東京ラインの品川・上野から茨城県の取手駅以北へ直通する中距離列車であり、使用車両は茨城県ひたちなか市の「勝田車両センター」に所属するE531系交直両用型電車です。
常磐線は茨城県に入ってすぐの駅が取手駅、その次の藤代駅構内に東京側の直流1500V区間と水戸側の交流50Hz・20000V区間とのデッドセクション(異なる電流との間を接続している電流が流れていない区間)が設置され、走行中の列車はデッドセクションを通過中に直流/交流の切り替えが行われます。
直流区間と交流区間に跨って運転される列車は直流/交流区間双方を走れる機器を搭載していなくてはなりません。
このE531系は直流/交流に対応した車両で、ステンレス車体に纏っている青帯はこの車両が登場する前に常磐線を走っていた415系で採用されていたものを踏襲しています。
余談ですが、昭和30年代終わり頃から昭和50年代にかけて、国鉄は全国の非電化区間を電化するにあたって地上設備の建設コストが安い交流電化を推進しました。
早くから電化が進んでいた首都圏や東海地方や近畿地方周辺はそれまでの直流電化が進められましたが、これらの地域から離れた東北・北陸・九州では交流電化が進められました。
また、交流区間でも東北・北海道地区は50Hzとなり、北陸や九州地区では60Hzとなり、当初は直流/交流両用車両もそれぞれの周波数でしか走行できませんでしたが、まもなく直流1500V/交流20000V50Hz/60Hzの3電源全てを走行できる車両が開発されて特急型、急行型、近郊型それぞれの車両が数多く登場しました。
特急型車両は直流型車両と基本的には同じカラー(赤とクリームのツートンカラー)でしたが、急行型はピンクとクリームのツートンカラーとなり(近郊型の側面はピンク1色)、直流型の橙と濃緑のツートンカラーと区別されていました。
国鉄時代末期に交直両用電車の近郊型はアイボリーホワイトに青帯に塗り替えられました。
この青帯も常磐線のものより九州地区の青帯はわずかに明るい青色となっていました。
いっぽう緑の快速は松戸車両センターに配属されている直流型のE231系です。こちらはエメラルドグリーンの帯を纏っており、これは常磐線の快速で走っていた103系が塗られていたエメラルドグリーン1色を踏襲しています。
ちなみに国鉄時代に国電と呼ばれていた首都圏5方面路線(通称で中央線・山手線・京浜東北線・総武線・常磐線)は101系と103系がそれぞれの路線カラー1色に塗られて走っていました。海外からやって来た利用客には好評だったという路線別のカラーですが、現在の車両にも継承されました。
E231系は直流専用車両なので取手駅以北への乗り入れはできず、上野東京ラインからの品川・上野〜取手の区間運転と我孫子駅から分岐する成田線の我孫子〜成田間で運転されています。
さて、青い快速も緑の快速も上野〜取手間の停車駅は日暮里・三河島・南千住・北千住・松戸・柏・我孫子・天王台です。
他に青い快速では品川〜土浦間運転の特別快速がデータイムに1時間に1本運転されていていますが、こちらは日暮里・北千住・松戸・柏のみ停車で、取手〜土浦間は全ての駅に停車します。
常磐線において復々線となるのは綾瀬〜取手間で、上野駅から続く線路が快速停車駅にのみホームが設置されている列車線で、都心の東京メトロ千代田線から綾瀬駅で接続してそのまま常磐線各駅停車となるのが緩行線です。
つまり、上野駅からやってくる普通列車はすべて「快速」であり、千代田線からの乗り入れ列車が各駅停車ということになります。
以前は青い快速は「快速」とは呼ばれず、駅の発車案内にも「普通列車」と表示され、緑の快速は「快速電車」と表示されていました。
ただ、普通列車(青い快速)は三河島・南千住駅にはデータイムのみの停車で、朝晩は通過していました。
この両駅に終日停車する緑の快速が出発案内では「快速電車」と表示され、時間帯によっては通過するのが「普通列車」では紛らわしいと利用客から苦情が多かったのか、誤乗防止のためか知りませんが、いつしか上野〜取手間の各駅での表示はすべて「快速」と表示されています。また、青い快速では車内放送でも「上野〜取手間では快速運転します」と案内されます。
かなり前に藤代駅〜土浦駅間の各駅では「快速電車の土浦まで延伸を!」という看板が立てられていましたが、上野〜取手間運転の快速電車の直流型車両を高価な交直両用車両にすべて置き換えるのは現実的ではなく、もちろん実現していません。103系を置き換えたのはやはり直流電車のE231系です。
では、JR西日本が行ったような北陸本線の田村〜敦賀間や湖西線の永原〜近江塩津間の交流電化から直流電化への切り替え工事を常磐線でも取手〜土浦間で行えばいいのでは?ということになりそうなものですが、常磐線ではそれができない事情があります。
茨城県石岡市柿岡にある地磁気観測所への影響が出ないよう観測所から半径35km以内では直流電化が禁止されているからです。そのため常磐線だけではなく、第三セクターの首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)も守谷駅以北では交流電化され、JRでは水戸線も同じく交流電化されています。
このような事情で常磐線のホームで見かける発車案内表示には青い快速と緑の快速に分けられているのでしょうか。
交直両用電車であるE531系のパンタグラフ付近の屋上にはたくさんの碍子と交流電源を直流に変換するための機器が並んでいて重厚感があります。
データイムに運転される特別快速を除けばどちらの色の列車でも上野〜取手間の停車駅は同じですから、取手までの利用であれば上野駅では一番最初に出発する列車に乗ればいいのですが、上野東京ライン開業以降一部列車が品川からの直通となったので、発車番線を確認するのが大変になりました。