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一期一会

本も人の出会いも一期一会。時々読者、時々物書き。好きな本やコミック感想を中心に、日常のつれづれと共につぶやいていきます。


プロローグ 3


ある時、カヲルが部屋で積み木で遊んでいた時だった。目には映らなくても、四角柱や三角錐などの積み木は手触りで知ることができる。

幼いカヲルの手には、まだ少し大きすぎる積み木を上手に触り、形を確認して手探りでタワーを作る。大好きな積み木遊びに夢中になっていたカヲルは、千秋が近づいてくるのもわからなかった。

目の前にある積み木を触ろうと手を伸ばすと、そこには千秋の手があった。

一瞬驚くカヲルだったが、それが同じくらいの子供の手だとわかると、一緒に遊ぼうと話しかけた。千秋は返事をしなかったが、カヲルが次にどんな形の積み木を欲しがっているのかすぐにわかった。

千秋は返事をしないまま、カヲルが欲しがっている積み木を手探りで探し当てると、カヲルの手をとって、それを手渡しする。

最初は偶然だと思った。

だが、カヲルに黙って手渡される積み木は、必ず欲しいと思う形のものばかりだった。

立方体、四角柱、三角柱……

「君はだれ?どうして僕が欲しいものがわかるの?」

自分の目の前に誰か子供がいる事は、気配でわかる。カヲルはなぜ自分が何も言わないのに、次にどんな形の積み木が欲しいかわかるのがとても不思議だった。問いかけてみても、目の前の子供は返事をしない。

カヲルは手渡された積み木を受け取り床に置くと、恐る恐る手を伸ばし、おそらく座っている子供なら、この辺りに顔があるだろうと思われるあたりに手を伸ばした。

頬に手先があたる。

ビクン。

目の前の子供が、一瞬萎縮するのがわかる。

「ご、ごめん……驚かすつもりはないんだ。僕は目が見えないんだ。少し君の顔を触ってもいい?」

返事はない。

返事がないのは、きっと自分の申し出に異存はないのだろうと解釈する。

もう一度カヲルがおそるおそる手を伸ばすと、子供の鼻先に手があたるのがわかったが、今度は驚いた様子はなかった。ゆっくりと両手を使ってカヲルは目の前の子供の顔を確かめる。

「あ、君は女の子?」

てっきり自分と同じ男の子だと思っていたのに。

「そうよ。私は千秋」

ほとんど口を利くことのなかった少女は、やっと自分の名前を名乗り出た。

「ごめん……僕はてっきり男の子だと思っていたから……」

「私も目が見えないの。貴方の顔を触ってもいい?」

カヲルは千秋の顔から手を放すと、手を取って自分の顔へと導いた。

「貴方……綺麗な顔をしているのね」

「そうなの?僕は自分の顔を見た事がないから、わからないんだ。僕の名前はカヲル。ねえ、君はどうして僕が何も言わないのに、次にどんな積み木を取って欲しいかわかったの?」

「……」

千秋は返事をしなかった。

「いいよ。返事をしたくないのなら、答えなくてもいいから、一緒にあそぼう」

カヲルは、積み木で続きの遊びをしようとすると、遅れて千秋が返事をした。

「私……触った人の心が読めるの」

「え?」

「でもこれは内緒にして。私に、こんな力があるからきっと親に捨てられたんだわ。もし、この事がばれたら、私はまたどこかに連れていかれるかもしれない。みんな最初は私のこの力に驚くし、私を大事に扱ってくれるけれど、段々気味悪がって私の事を遠ざけるようになるわ。私はただの目が見えない子供なのに。どうして私をそっとしておいてくれないのかしら」

少女はそう言うと、泣いているのか、すすり泣く声が聞こえる。

「千秋。泣かないで。誰でも一つぐらいは誰にも内緒にしたい事はあるよ。わかった。これは僕と千秋だけの秘密にしよう」

「カヲル……いいの?」

「うん」

お互い見えてはいないけれど。なんとなく気配で微笑みあっているのがわかる。

「僕にもそんな力があったらよかったのに。そうすれば、家族が僕をどう思っているか聞かずにわかっただろうし、迷惑はかけなかったのにな」

カヲルの言葉を聞いた千秋は、そっとカヲルの手を取ると、自分の胸の前に手を組んでじっとそれを額にあてる。

「……あなたも辛い事があったのね」

それ以来、千秋が千里眼を持つと言う事は、二人だけの秘密となり、歳も同い年だった二人は、すぐに友達になった。

あれからずっと二人は友達。それ以上、それ以下でもない。自分と同じ苦しみと秘密を分かち合うもの同士。



千秋は、遠い日の二人の出会いを思い出していた。

「どうしたの?ここに来るなり黙ったままだね。何かあった?」

いつも口数の少ない千秋だが、今日は更に少ない気がする。

「ええ……初めて貴方に私の秘密を教えた時の事を思い出していたの。あれから随分経つけれど、約束した通り貴方は私がお願いした通り、秘密にしてくれているわ。ありがとう」

「お礼を言われる程の事はないよ。僕も君も、目が見えない。頼るべき家族も居ない。もし僕がしゃべったら此所に居られなくなるかもしれないだろ?それがどんなに大変か予想はつくからね」

「カヲル……」

「僕も此所に居られなかったら、どうなったかわからない。きっと親戚中たらい回しに回されて、学校だって行けたかどうかわからない。目が見えない苦しみは、本人にしかわからないからね。でもここに居る事ができるのもあと一年……」

カヲルは言葉を濁した。

千秋は、手探りでカヲルの側まで来ると、肩にそっと手を触れた。

「貴方……不安なのね」

「不安?ああ……そうなのかもね。僕の心が見えた?僕は臆病だから」

「臆病ではないわ。私だって不安よ。でもきっと良い方に向くわ。私にはわかる。だから心配しないで」

「君の千里眼は、未来もわかるものなの?」

カヲルは自分の心を読み取られたのを、恥ずかしいのか、少しおどけて笑った。

「……ええ。そうかもしれないわよ」

千秋もまた肩を振るわせて、笑う。

「そうそう、先生から聞いたのだけど、明日から新しい介護福祉士の方が来るんですって。多分、貴方の担当よ」

「それも千秋の千里眼?」

ふふふ……

千秋の笑い声が聞こえる。

「さあ、どうかしら?でも、これは内緒」

少し嬉しそうだ。

「そうなの?……どんな人かな」

カヲルもまたそれを聞いて笑った。



この時はまだどんな介護福祉士が来ることになるのか、カヲルは知るよしもなかった。


to be  continued……





プロローグ 2



カヲルが五歳の時だった。妹が生まれた。

その時を境に、母親は、全盲である幼い息子と、生まれたばかりの赤ん坊の面倒をみきれないのを理由に、カヲルはある施設に預けられた。

最初は、自分が此所に預けられるのは、妹が生まれてしばらくの間だけだからと、カヲルは幼いながらもそう理解していた。

だが、一週間経っても、一ヶ月たっても、両親が迎えにくるどころか連絡の一つもない。初めて両親と別に過ごすカヲルは、心細くなり、何度となく夜になると一人枕を濡らす事もあった。

迎えが延びているのは、きっとまだ小さい妹の世話にかかりきりの母親の手がかかるからだ。今、目の見えない自分が家に戻ると、余計に母親の手を煩わせてしまう。もう少し待って母親が妹に手がかからなくなったら、きっと迎えに来てくれるはずだ。

本当は大好きな母親にとても会いたかったし、家にも帰りたかったが、まだ幼いカヲルは健気にそう思うことで、一生懸命耐えていた。

だが、いつまで待とうとも、両親は迎えに来なかった。とうとう我慢できなくなったカヲルは、施設の人に帰りたいと我が儘を言って泣いて訴えた。見かねた職員の一人が、すぐに両親に連絡をとってくれたが、結局、誰も迎えにはやってこなかった。

カヲルは両親に捨てられたのだと思った。両親はきっと自分より目の見える妹を選んだのだ。生まれつき見えないこの目のせいで、自分は親にも捨てられた。そう考えたらとてもショックだったし、何も映さない自分の瞳が恨めしかった。

目が見えさえすれば、自分は今頃、両親と妹と仲良く暮らしていたはずなのに。自分はなぜ目が見えないのだろう。これは何かの罰なのだろうか。

カヲルは幼いながらも一生懸命考えて、自分の思いつく限り、よい子であろうと考えた。きっとよい子にしていれば、神様が自分の目を見えるようにして下さる。そう考えて、施設の職員の聞き分けもよく守ったし、自分で出来るお手伝いはなんでもやった。

もちろん、寝る前の神様やマリア様へのお祈りも欠かさないようにしたが、いくらカヲルが「目が見えるようになりますように」とお願いしても、その願いが叶う事はなかった。

施設の職員に頼べば、カヲルから両親に連絡を取る事はできたのだが、すでにその頃は屈折した気持ちも芽生えていて、自分より妹を選んだ両親に自分から迎えに来て欲しいと言うのはためらわれた。

いつの頃からか、カヲルは見えない自分の目と、まだ会ったこと事のない妹を恨むようになっていた。自分の目が見えさえすれば、もしくは妹が生まれさえしなければ、自分はそのまま両親を独り占めして幸せになれたのに。

妹がこの世から居なくなってしまえばいい。事故でも病気でも居なくなればいいんだ。

そんな事を考えるのは悪だと思いつつ、いくら神様やマリア様にお願いしても聞き入れてはもらえない気持ちもあって、カヲルは素直になれない。

良い子にしなければ目が見えるようにならないと思いこんでいた分、その落差、逆転の差は大きく、カヲルは自分でも気づかないうちに、段々と自分の存在に疑問をもつようになっていた。


そんなある日だった。
施設にカヲルの両親と妹が、交通事故に遭ったと一本の電話が入った。すぐに病院に運ばれたが、高速道路で玉突きの事故に遭い、車ごと炎上するという事故では、即死同然で誰も助からなかった。

口の悪い親戚は、それを罰だと言った。戒めだとも。

目の見えない息子を施設に置き去りにして、自分達は家族で旅行などするからだと。けれど天涯孤独になったカヲルを、親戚一同は誰も引き取ろうとはしなかった。

カヲルは自分を責めた。自分の眼が見えないのは、生まれつきなので仕方がない。だが、妹が生まれなければよかったのに、死んでしまえばいいと考えたから、バチがあったのだ。神様の怒りに触れてしまったと思った。

自分が一時でもそう願ってしまったから、妹も両親も自分の前からいなくなってしまった。妹と両親が死んでしまったのは、自分のせいかもしれない。

カヲルは、誰にも言えない心の傷をかかえたまま、いつしか心の瞼まで閉じるようになっていった。


それ以来、カヲルはこの施設の住人の一人になった。ここは訳あって家族と一緒に暮らせない、目に障害を持つ者が集い生活をする施設。

国の補助を受け、成人する二十歳まではここで生活をする事ができる。カヲルのような未成年の全盲、弱視者がここで生活をしながら、敷地内にある併設の盲学校へと通っていた。

「カヲル、どこにいるの?」

「千秋?」

「ええ」

「ドアは開いているよ」

「ここに居たのね」

濡れるような黒髪を肩の下まで伸ばし、褐色の肌を持つ健康そうな少女が一人、カヲルのいる談話室へと入ってきた。カヲルの声を頼りに側までやってくる。

周りの家具を両手で触りながら上手によけると、少女はカヲルのいる窓辺の側のイスに腰を下ろした。

顔をカヲルの方へ向け、にっこりと少女は微笑む。少女の美しい黒い瞳は彼を映したが、それは単に瞳に映っただけで、少女はカヲルの姿を見ることは出来なかった。


千秋と呼ばれた少女もまた、カヲルと同じくここの住人である。千秋はカヲルが入所して半年後、遊園地で迷子になっているところを係員に保護され、この施設にやってきた。

最初は両親が見つかるまでの一時的措置だと思っていたが、いくら待っても両親が千秋を迎えにくる事はなかった。

まわりの職員も、入所している他の子供も、密かに少女は捨てられたのではないかと、哀れみの態度を示し、その様子が幼い少女にも感じ取れたが、彼女はけして人前で泣くような事をしなかった。泣かない代わりにかたくなに人と口をきかず、自分からは人と交流をしようとしない。


この施設には、不幸にも、少なからず千秋のような境遇でここに入所しなければならなかった者も居るため、先にこの施設の先輩になったものは千秋の境遇を気の毒に思い、何かと気にとめていた。だが、少女は必要以外、口もきかず、食事も申し訳程度にしか摂らなかった。

最初周りの者は、まだ幼い少女にとって両親とはぐれてしまうと言うショックな出来事がトラウマとなり、そうさせていると納得しあっていた。今はまだそっとしておいてあげよう。次第に、千秋に話しかける者もいなくなり、千秋はいつも一人でいる事が多かった。


to be  continued……






「瞳をとじて」

                                       






もういいかい?

まあだだよ


もういいかい?

まあだだよ


いつまでこの暗闇は続くのだろう。

子供の頃から鬼ごっこをするのでも関係がなかった。

目を開けても瞑ってみても

幼い時から続く暗闇は終わる事を知らない。



永遠に続く闇。

一度も闇以外を映したことのない瞳。


でも僕はちゃんと貴方の顔がわかるよ。

貴方の心が見えるよ。



瞳をとじても

貴方の事を感じる事ができるから。







 この物語はフィクションです。全盲についての描写がありますが、けして偏見があるわけではありません。施設や団体は全て架空のものです。



プロローグ



 うるさいくらい、やかましい蝉の鳴き声が聞こえてくる。何をあんなにわめいているのだろう。生きていても、せいぜい一週間の命しかないのに。

けれど、一週間でもいい。思い切り見たい風景を見て、太陽の光を感じて、愛しい人の顔を見る事ができるのなら。そちらのほうがずっと幸せなのかもしれない。

僕はあと何年、いや、何十年、この闇に包まれた世界で生きなければならないだろう。おそらく死ぬまでずっとこの暗闇に閉ざされた世界で生きていく事になる。最近考えるのはこの事ばかりだ。

北川カヲルは、窓を開けてぼんやりと、終わることのない自問自答を繰り返していた。

もうすぐ夏も終わる。

暑くてまぶしい夏の日差しさえも、カヲルの瞳には届くことがない。感じるのは暑い太陽の暖かさと、時折吹く涼しい風ぐらいだ。

ここはいい。静かだ。街の喧噪も、車の騒音もそう聞こえない。

だが、もうすぐここを出て行かねばならなくなる。ここには二十歳までしか居ることができないからだ。



北川カヲルは今から十九年前、北川家の長男としてこの世に生を受けた。

母親譲りの透けるような白い肌に、やわらかい髪。父親譲りの美しい瞳。両親は自分達にそっくりな一部をもった、玉のような赤ん坊の誕生を心から喜んだ。

しかし、生まれてしばらくたっても、その美しい黒い瞳に何も映す事はなかった。生まれて一週間もすると、赤ん坊でも原色の派手な色ならば、反応して目で追う事ができる。

けれどカヲルは、目の前で手をかざしても、おもちゃを目の前で見せても、一度も反応したことがなく、瞳は開いているのに何も眼で追う事がなかった。

両親はそれに気づくと、いろんな病院をまわり、医者に助けを求めた。だが、無情にもカヲルの瞳は、色の識別はおろか、生まれた時から光を感じる事はできなかった。

どんなに検査をしても、どんなに治療を受けても、カヲルの瞳には闇しか映らない。これを治すには、眼球の移植しか他に方法はないと医者に告げられた両親は、最初はあんなにかわいがっていた息子への愛情も、次第に薄れていく一方だった。



to be  continued……






感染―infection/仙川 環
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小学館文庫小説賞受賞作品「感染」を読みました。

一言でいうと、医療ミステリー。 あらすじは、感染学を専門に研究している葉月は、妻子持ちの医者の啓介と強奪愛で結婚。

幸せな日々を送っていたが、ある時から啓介の様子がおかしい。

夜中に電話で呼び出されて外出したり、二人の会話がかみ合わないなど、愛人の存在を心配。

そんな中、葉月は前妻から電話で呼び出され、息子が誘拐にあった事を知る。

夫の啓介は愛人と逢い引きしているせいか、息子が誘拐にあった夜に捕まらない。

結局、息子は遺骨として前妻へ戻ってくる。

その後、葉月は息子はある病気にかかっている事を知るが、それに啓介が関わっているという。

なぜ、子供は死んだのか。

なぜ、啓介は息子が誘拐にあった夜にいなくなったのか。

子供の臓器移植と、ウイルス感染を扱った医療ミステリー。

面白くて一気に読みました。

テーマの割には、文章は軽くて、まるで2時間ドラマのよう。

日本では、子供の臓器移植は、いろいろ問題あるようですが、私も子供を持つ親だからでしょうか。

もし、自分の子供が同じ病気になったら。とか、もし、自分が医者で禁止されている治療でも、それをしなければ子供を死なせてしまう。という現状だったら。と考えると、感慨深いです。

しかし、ウイルスは怖いですねー。

まさに目に見えない殺人鬼。

巷を騒がせたA型インフルも、今はあまり話題に上らなくなりましたが、今後もきっと強い感染力を持ったタチの悪いウィルスが出てくるんでしょうね。

もしも……と考えたら怖いです。

七つの海を照らす星/七河 迦南
¥1,890
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七つの海を照らす星を読みました。

第18回鮎川哲也賞受賞作品。


内容はというと、児童養護施設「七海学園」が舞台。

ここに勤める新人保育士の北沢春菜が、毎回いろんな子供と出会いながら、養護施設ならではの悩みや、不思議な体験の謎を児童相談所の海王さんと共に解決してゆきます。

7人の子供を中心に7つの短編小説の連作。

これも殺人やら生々しいものはないけれど、謎解き物語。

児童養護施設ならではの出来事や、体験が綴られています。

7人の子供にまつわる短編ですが、全部読むと繋がっていて、1つの大きな謎がとけるというもの。

しかも予想もしない結末は、うーん。やられた!という感じ。

お話の中に回文がでてくるのですが、よーく見ると作者の名前も回文になってます。

やはりこれは狙ったんでしょうね。

ミステリー作家は回文好きな人が多いし。(笑)

なかなか面白い短編集でした。


ななつのこ (創元推理文庫)/加納 朋子
¥546
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ななつのこものがたり/加納 朋子

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加納さんの「ななつのこ」と「ななつのこものがたり」を読んでみました。

一応、ジャンルとしてはミステリに分類されるようですが、表紙のイメージの通り、懐かしく温かい短編連作です。


内容はというと……

主人公の大学生駒子は、偶然書店で手にした絵本のファンに。

勢いで作者にファンレターを出すのですが、その手紙に、日常で起こった不思議な出来事を書き、ある日その返事が返ってきます。

まさか返事が来るとは思っていない上、その返事が不思議な出来事の謎を解き明かした内容で、駒子は絵本の作者を身近に感じるようになります。

書簡によるやりとりで、毎回謎を解き明かしていく短編集。

ただし、ただの短編集ではありません。

一つ、一つが完結していながら、全部読んでみると繋がっているという作品。

こういうのを短編連作というんだそうですね。

ミステリといいつつ、人が死なず、読んだ後にどこかほんわか心が暖まる感じ。


ななつのこものがたりは、ななつのこの中に出てくる劇中絵本が本当にそのまま絵本になったというもの。

言うなれば、有川さんの「レインツリーの国」と同じですね。(笑)


普通の感想としては、こんなもんなのでしょうが、一つ発見をしました。

気がつく人は気がつくと思うけど、どうやら駒子が住んでいる街は、私が現在住んでいる街がモデルらしい。

東京と神奈川の合間にあって、境川が流れていて、新宿から直線で約30キロあたりで、しかもTデパートがあってデパートの屋上にプラネタリュームがあって……。

これ、まんまじゃないですか!!(爆笑)

まほろ駅前多田便利軒でも似たような事書いたな……。

もしかしたら、作者の加納さんは以前ここに住んでいたか、現在住んでいるかの経験があるんでしょうね。


「ななつのこ」は日常の謎解中心のストーリーで、伏線の重なり合いのミステリ。消して血なまぐさい殺人とは遠くかけ離れたものです。

こんなミステリもあるんだと、目から鱗の本でした。

三人目の幽霊 (創元クライム・クラブ)/大倉 崇裕
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ある方に「三人目の幽霊」を勧められて読んでみました。

全くの無知識で読んだのですが面白い~!


え?落語でミステリー?

こんなジャンル初めて。でも面白い。


ジャンルで区分けすると、どうやら「落語ミステリー」というものに分類されるようです。

ストーリーを簡単に紹介しますと、「季刊落語」の編集部に勤める主人公、間宮緑(女性)が、編集長である牧と共に、時には落語の噺たとえたり、落語の寄席を舞台に、いろんな問題を解決してゆくミステリー。

短編小説集で、毎回2人が活躍しています。

ただ、ミステリーといっても、人が死ぬような事は殆どありません。

落語の本番中に、いたづら?をするとか、絵を盗むとか、人がいなくなるとか。

事件のオチを、落語にある噺にリンクさせて解決していくのは、上手い!と唸りたくなってしまいます。


解説読んで知ったのですが、この作品、出版元の創元社が主催する創元推理短編賞(現在は発表誌の名前が変わった為に、ミステリーズ!短編賞に改名)をとりそこねた作品。

創元社短編賞はかなりレベルが高くて、おいそれとはなかなか取れない賞らしいですね。

該当なしの年もけっこうあるとか。

今まで候補に挙がっていながら、とれていない有名作家さんの名前もあって、クオリティの高さが忍ばれます。

ちなみに以前、このブログでも紹介した加藤さんの「インディゴの夜」は2003年受賞作品でした。


たまには人に薦められた本を読むのもよいですね。

たぶん、自分じゃなかなか読んでみようと思わない作品だと思う。

私は落語はほとんど知らないけれど、それでもけっこう楽しめました。

詳しい方なら、もっと楽しめるかも。

落語ミステリー。私にとっては新分野でした。


■追記

「三人目の幽霊」はどうやら2002版の「このミステリーがすごい!」(略してこのミス)と「本格ミステリ・ベスト10」にランクインした作品みたい。

納得です。

キケン/有川 浩
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有川先生のキケンです。

新潮で連載中は一通り全部読んだんだけど、また読んでみた。


おおまかにあらすじを説明しますと……

ニックネーム「お店の子」と言われた元山が、妻に懐かしき学生時代の思い出を語る方式で物語りは進んでいきます。

元山がかつて過ごした成南電気工科大学機械制御研究部略称「機研」。

そこでは想像をはるかに超えたサークル活動の日々。

ハチャメチャな先輩や同僚と過ごした、男子ばかりの学生生活物語です。

おまけでスクモさんの漫画が載ってましたね。

これはちょっと得した気分v


ぶっちゃけ、私もかつて理系の学校生活を送っていたので、あの男ばかりのノリはよーく判ります。(笑)

あそこまでハチャメチャな事はさすがになかったけど、やっぱり部活やサークル、体育祭、文化祭はめちゃくちゃ忙しくて、当時はぜんぜん判らなかったけど、離れてみてああ、と思い出してしまいました。

学生の時ならではの特権ですかね?



*ここから感想とはちと話がズレます。

長いので、ご興味ある方だけどうぞ。





後書きで有川先生が「男子しか共有できないその世界は女子から見るととてもキラキラしていて、自分もあの中に混ざりたいといつも思います。でも、その世界は女子が一人でも居合わせると「本来の姿」ではなくなるのです」(後書きより抜粋)とありますが、私はそうは思いません。

理系出身女子として言わせてもらうなら、それは最初からその中に女子がいなかった場合の話だと思います。

最初からその中に居た場合は、ちょっとちがうよ!と。

でなきゃ、真夏のクソ暑い日に休み時間になると女子のいる前で(女子がいるといっても割合的に多くて40人中6人、少なくて40人中1人とかだけど;苦笑)制服のズボン脱いでトランクス1枚でうろうろ……なんてヤツも中にはいました。

クーラーもない中、下敷きをうちわがわりにパタパタしながら、そんな格好で足をおっぴろげ状態。


オイ!そんなに足ひろげてるとハミ○ンするよ!

女子の前でそんな格好すんな!


と文句言いたいけど、当時の私は純情でしたので、とてもそんな事は言えません。

顔を背けて真っ赤になるのがオチでした。

女子が少ないと……というより、今思えばどうやらとして認識されていなかったらしい。(泣)



まあ、日常の学生生活はそんな感じでしたが、体育祭、文化祭はかなり楽しかったですよ。

特に体育祭なんかは男子は単純なので、もの凄い気合い入りまくりです。

専門科対抗でカラーが違うのですが、私がいた学校は当時7つ科があり1学年につき10クラス。

機械、電気、電子、工化、化工、建築、インテリア。

10色の色つきのはちまきつけて、クラス対抗なので負けたくないと馬鹿まるだし。

応援団も気合いは入りまくりで、毎日練習しまくって、まったくのド素人なのに、なぜか応援団になったヤツは、体育祭当日までには全員バック転ができるようになってるし。

どんんだけあんたら練習したんですかっ!

たかが応援団なのに、そこまで必要か?と思うけど、キケンを読んだ方ならわかるはず。

そう、なにか熱中すると、どうやらそこまで彼らはノリで行けちゃうんです。


男子の中の女子がいる体育祭では、競技も全部男女一緒の事をやります。

もちろん100m走もそう。男女別ではなく、ホントに一緒に走るのですよ。

但し、さすがに体力差はあるので、100m走りの場合、女子は10mのハンデをもらえます。

で、女子の間でも学年が上がる度にさらにプラス1mずつハンデをもらえるというわけ。

でも、そこは男の子。

ハンデがあっても女子には負けたくありません。

よーいドンで一緒に出発しても、彼らは負けたくないが為に、血管切れそうなぐらいマジで走ります。

結果は、大体は男子の方が早いんですが。

こーゆうところは男の子ってかわいいよねぇ。


「キケン」を読んでいたらそれに通じるノリを思い出しました。

他にも男子棟(機械、電気科しかなく、女子がいない棟)にいくと「女が来たぞー!」とまるで動物園のパンダ状態になった事やら、体育の時間一緒の水泳や柔道、男子寮の話やら、ネタはたくさん面白い話はありますが、全部書ききれないや。

そのうち「理系出身の女子ですが……」とか小説書いたらウケるかな。(苦笑)


~ガキの頃から~ 一色まこと短編集 (モーニング KC)/一色 まこと
¥760
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実はまだ発行されていないのですが、モーニングの公式サイトから試し読みして気に入った作品。

密林に予約しちゃったよー。

*試し読みはこちらから無料で読めます。


http://morningmanga.com/news/616


一色まことと言えば、ピアノの森が有名な作品ですが、短編も上手い作家さん。

この短編集も良作な作品が多そう。

20年分の作品がぎゅっと詰まってる。早く読みたい……!
あ、もちろんピアノの森の最新刊も同時発売らしいのでチェックです。

まほろ駅前番外地/三浦 しをん
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三浦しをんさんの「まほろ駅前番外地」を読みました。

直木賞作品「まほろ駅前多田便利軒」の続編になります。


ストーリーは前作で出てきた登場人物のその後の話や、その後のまほろ市での出来事が中心。

主人公の多田と、高校の時の同級生、行天(ぎょうてん)が、相も変わらずのんびりと便利屋を営みます。

麻薬密売の星や、娼婦のハイシー、小学生の由良ももちろん健在。


前作の本の紹介にも書きましたが、実は私、まほろ市のモデルになった街に住んでいます。

今回も地元住民ならあそこだよ!とか、そうそう。と頷く行が多数。


例えばバスの間引き運転の対象になっているバス会社だとか。(間違いなくK奈川中央バス)

多田と行天が通っていた高校はここね。だとか。(間違いなくM高校)

高校の同窓会の行われたホテルはここだろう。とか。(エルシーホテル)

おばあさんの思い出の映画館はこれかな。とか。(おそらくロマン館?ロマンス館だっけ?;現在廃館の為、名前がうろおぼえ)

商店街はまんまここだよ!とか。(まんま仲町商店街)

亜沙子さんの経営する飲食店の周辺は、ここのファミレスか?(おそらく旭町周辺のファミレス)とか地元住民が読めばおおよそ予想がつくのが余計に面白い。


あと超爆笑したのが「まほろ市民は駅前に買い物に行くのに、まほろに行くと表現する」というところ。

確かにそういう表現する!する!(笑)

作中あるように、例えば中野に住んでいるときっと「マルイに行く」とか「サンモールに行く」とか、商業施設の場所を指す事が多いだろうけど、まほろ市民はなぜか「まほろに行く」といいます。もうここがまほろじゃん!

なんでか知らないけど、それが普通。意味不明だよね。(爆笑)


架空の街なのに、えらくリアルで、ローカルな話題満載。でも、所帯じみていないところが魅力。

今回の見所は、なんといっても便利屋の依頼者の一人の女性(亜沙子)と多田の恋仲に発展するか?という恋バナエピソードでしょうか。

行天の発作も、表ざまになり、この巻では双方完結しないまま終わっています。

……ということは、続編ありか?(笑)


しをん先生!続きが読みたいです!!