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一期一会

本も人の出会いも一期一会。時々読者、時々物書き。好きな本やコミック感想を中心に、日常のつれづれと共につぶやいていきます。

本日、新宿バルト9で行われた「ベルセルク黄金時代篇 II ドルドレイ攻略」の舞台挨拶&映画を見にいきました。


今回は、映画の前に舞台挨拶といったスケジュール。

舞台挨拶には、窪岡俊之監督、ガッツ役の岩永洋昭さん、グリフィス役の櫻井孝宏さん、キャスカ役の行成とあさんが出演されました。


窪岡監督は、全身黒のスーツで決めて。岩永さんは、これまたブルーのタイトなスーツ。櫻井さんは、白地に模様の入ったシャツに長めの白のハーフパンツ。とあさんは黒のブラウスをオーバーに羽織り、下は白いふわっとしたロングスカートといった出で立ち。

司会進行役には、日本テレビの広報担当の方(ごめん。名前忘れた)でした。

今回は、作品を見る前に舞台挨拶があったので、ネタばれには注意しながらの進行でした。


窪岡監督の話では、今回は3部作で全部を同時進行で作り、公開の順番が早いものから早く仕上げていった感じ。どれも力が入っていますとのこと。内容的にも、2作目が一番いろんな話が盛り込まれるので、作る側も気を遣ったようでした。


岩永さんは、一作目に続き、更に力が入った感じ。3作目も死ぬ気でやります! と、気合いばっちり。

櫻井さんは、他の方が説明されている間、真っ直ぐに前を見つめて涼しげな顔。

とあさんは、アフレコ終了後、スタッフさんと話をされる機会があったらしいですが、ホントに制作中は辛かったと、泣き出すスタッフさんがいて驚いたとか。


気になる2作目「黄金時代篇 II ドルドレイ攻略」は、1作目にも増して、丁寧に作られているのがよくわかる作品でした。

とにかく絵が綺麗! 音楽も絵と合って素晴らしい……!

思ったよりグリフィスの濡れ場シーンが凄くて、ドキドキしちゃいました。

PG12作品となっていましたが、R15じゃないの? と思うほど。

まさに中世ヨーロッパの大河ドラマ。

大人向けで、じっくりと見たい映画です。


早く3作目がみたーーーい!

昨日、都内某所で行われた、劇場版図書館戦争「革命のつばさ」の舞台挨拶に行って来ました。

私が行ったのは、沢城みゆき嬢(柴崎麻子役)、たっつんこと鈴木達央さん(手塚光役)、 渡邊隆史プロデューサー、司会はチババさんの回でした。


チババさんに紹介をされ、たっつんとみゆき嬢、渡邊さんが登場。

4年前に行われたイベントにも、ちゃっかり行った私でしたので、たっつんとみゆき嬢に会うのは4年ぶり。

たっつんは髪が伸びて、えらくイケメンに見えました。

みゆき嬢も4年前に比べると、髪が背中まで伸びて毛先をくるんとカール。相変わらずお美しい。

渡邊さんは、前日は大阪を舞台挨拶で回っていたらしく、眠くて口数の少ないスタート。


「三度のメシより、キスが好き!」


たっつんがマイクをとった瞬間、この台詞を言うと、会場は大いに沸きました。

原作でも「足りない」と、柴崎にキスをせがむ手塚がいましたが、ここにウケた!

まったくその通りだ!(笑)


前半は司会のチババさんを差し置いて、たっつんが司会トーク。

内容は、収録時の話が中心でしたが、トントンと進む会話に会場は笑いが絶えませんでした。

例えば、テレビシリーズでも番組冒頭に、前野さんが図書隊のなりたちについて語るトークがあり、4年前は前のさんがカミまくりで、何度も取り直したとの事でしたが、今回もやっぱりカンでいた。

前野さんはいなくても、いつもいじられキャラなのは、お約束。(笑)


でも、真面目な話もありましたよ。

今回、新キャラで当麻先生をイッセー尾形さんが出演されているのですが、イッセーさんのアドリブが凄い。郁役の井上さんとの掛け合いで、何カ所か絵にないところで台詞を被せているところがあるのですが、映画を見ている時も、あれ? と思っていたところでした。

普通、声優さんは、絵を見ながら台詞を入れます。

キャラが口を開くと同時に、声をあてると思うのですが、手元だけアップになって台詞だけ被さるというシーン。

なんだか不思議な空間なのですが、素敵なシーンなのです。

これは、内緒にしておきますので、是非、ご自分で映画を見て見つけてください。



       一期一会





映画は予想以上によかった……!!

アクションシーンは多いわ、絵は綺麗だわ、原作に負けなくくらいじれじれもモードはあるわ言うことなし!

内容はネタばれになっちゃうので、言いたいけど、ココでは言いません。

観に行って後悔しないとだけ、行っておきます。


気がついた人がいるかわかりませんが、「動物図鑑」だとか、背景が驚くほど綺麗だとか。

(特に夜にカミツレの花が揺れるとこ。月夜のところetc)

もう一度チェックしてみよう。

一度ではなく、二度、三度みたい映画です。



エピローグ




<ルーク・ルリフォードside>



41





「兄さんが生きていてくれて、本当によかった」
それは兄さんが日本に帰国してから、何度も口に出して言った言葉だし、ボクの本音だった。

飛行機事故の一件を聞いた時は、ボクは心臓が止まるくらい驚いた。航空会社から兄さんの訃報を聞いた時は、ショックで今すぐ兄さんを追ってボクも死のうかと本気で考えたくらいだった。
だが、なんとなく心のどこかで、もしかしたら――。という気持もあって、兄さん本人から国際電話を貰った時は、さすがのボクも嬉しくて、床にへたりこんだ。
でも兄さん本人にそのことを言うと、本人は苦い顔をしながら、どこか辛い顔をする。
たぶん……ルカさんに負い目を感じているのだと思う。
兄さんは多くを語らない。
たまたま空港でルカさんと再会して、チケットを交換したのだと聞いているが、本当のところはよくわからない。
飛行機事故は搭乗者全員生存が確認されず、最悪な結果となった。遺体さえも墜落現場が太平洋のど真ん中だったせいか、全部は回収されず、遺族らにとってはやるせない気持で一杯だっただろう。
兄さんもルカさんの遺品だけでもと、しばらくは事故本部局へ仕事の合間に通ったようだったが、何も手にとる事はできないようだった。

ルカさんの作った曲『プラチナ・キス』は、その後、飛行機事故の追悼曲となって発売され、幸か不幸か、その年のヒット大曲となり、本人不在のまま、レコード新人大賞、その他音楽大賞を総ナメにし、近代まれに見るミリオンセラーとなった。
街のどこにいてもあの曲が流れていて、それが兄さんにとっては余計に辛いようだった。

ねえ、兄さん。
ルカさんと何があったかなんてボクは聞かないけれど、きっと彼は幸せだったと思う。
同じルークという名前だったからか、似たような容姿だったせいか、兄さんがルカさんに惹かれるという気持はわからないでもない。
ルカさんと三人で過ごした日々は楽しかったし、もうあの頃に戻れないけれど。

そして『プラチナ・キス』の曲と共に、彼が残していった213号室の鍵が、唯一のルカさんの遺品となった。



――ねえ、ボク達の出会い、覚えてる?
あの日、初めて出会った時のことを。
一緒に過ごしたあの部屋のことを。
今もあの思い出の鍵はここにあるよ――


end

<ビリー・クリフォードside>


40




 まるでオレは夢をみているみたいだった。
ふわふわと足元がおぼつかないまま、今までの出来事が走馬燈のように頭の中をかけめぐる。
「ごめん……オレのせいだ。全部オレが悪い」
オレはホテルの一室で、飛行機事故の一件を聞いて、ただ自分を責める他なかった。
ルカがマンションを出て行って3ヶ月。正直、何度もルカのことを思い出さない日はなかったくらいだった。
最初はルカが黙って出て行ったから、気になって仕方がないのだろうと思っていたが、仕事中も、食事中も、ルークに抱かれている最中までも、うっすらと頭の隅では、ルカに抱かれたたらこんな感じなのだろうかと思い当たった瞬間、自分の中で気づいてしまった。

もしかして……ルカニコイシテル?

もちろん、ルークのことは大好きだ。弟としても、恋人としても。
ルークの存在はオレにとっては絶対で、何があっても拒めない人間だと思う。
けれど、気づいたらルカも同じくらい、オレにとっては大事で、気になって、どうしようもない存在になっていた。
だから、ルカヒとニューヨークで再会した時はとても驚いたし、これは運命だと思った。
男同士だからとか、オレにはルークという弟であり、恋人がいても関係なかった。
『好きな人に抱かれたい』
ただ……それだけだった。その時は罪悪感も何もなかったから、オレからルカを誘った。ルカは戸惑いながらも、オレを大事に抱いてくれた。まるで壊れ物を扱うみたいに。
ただ……とても悲しそうな顔をしていたのが、意識をなくすとぎれとぎれの記憶となってオレの心の片隅にひっかった。 
「ビリーさん……すいません」
「何を謝る?」
「だってビリーさんには、ちゃんとルークさんがいるのに、僕は……」
「知ってたのか。……オレから誘ったんだ。お前は謝るな」
「でも……」
「お前は後悔してるのか?」
「後悔? とんでもない。まさかビリーさんとこんな所で再会できて。夢みたいです。でも……」
「でも?」
「僕はルークさんを裏切ってしまいました」
「裏切ったのはお前じゃないだろ? 責められるとしたオレだ」
「いいえ。僕です。以前、同居していた時に、僕はルークさんと約束したんです」
「約束?」
「ええ。僕はけしてルークさんからビリーさんを取らないと」
二人の間にどんな会話があったのかは知らない。けれど、知らないと思っていたルークは、ちゃんとオレの心がルカにも傾いているのを気づいていたのだと、初めて気づいた。
「ビリーさん……? どうかしました」
「帰りたくないな……」
「え?」
「今はルークと会いたくない」
正直な気持ちだった。オレにとってはルークは絶対的な存在だ。アイツを嫌いになることなんて絶対できない。でも、ルカを好きだという気持ちも否めない。
ルークとルカの間にそんなやり取りがあったと判った以上、アイツは全部お見通しの上でいつも通りオレに接していたのだと思うと、なんだかルークに対してとても悪いことをしたという気持がじわじわとわき上がってきて、今更ながら帰りたくないという気持で一杯になった。
「日本へは今日、帰国するんでしたよね」
オレはルカのベッドの中から、カーテンの隙間から零れる朝日を確認しながら答えた。
「ああ……」
しばし沈黙の時が過ぎる。
きっとルークはオレの帰国を待ち望んでいるだろう。もちろん、ルカとこうやって再会し、一夜を共にした事など知らずに。帰国して、オレは自分の気持ちを知っているルークと、今まで通りに接することができるだろうか。
「ビリーさん、帰国後はお仕事は忙しいんですか?」
「いいや。帰国後は三、四日休暇があるけど…」
「じゃあ、僕の飛行機のチケットと交換します?」
「え?」
「僕の飛行機のチケットは二日後なんです。帰国が遅れてもお仕事に差し障りがないのなら、僕のと交換しましょうか?」
「いいのか?」
「ええ。僕は別にかまいません。元々、こうなったのは僕のせいです。僕が勝手にビリーさんの事を好きになって、マンションを黙って出て行って、ルークさんとの約束も破ってしまったのですから」
「でも……」
「何時のフライトなんですか?」
「確か……朝の十一時」
「十一時……」
ルカはベッドサイドの時計を確認すると、がぱりとベッドから起きあがった。
「どうした?」
「ビリーさん、急いで僕とそのチケットを交換してください。タクシーを飛ばせば間に合うかな……」
オレも時計を確認すると、慌ててベッドから飛び起きた。
時計の指す時刻は、今すぐホテルをチェックアウトして空港に向かっても、間に合うかどうかのギリギリの時間だった。
それからオレはルカが提案してくれた通り、チケットを交換し、一緒に空港へ向かった。




 タクシーを飛ばしてようやく空港に着くと、すでに搭乗手続きの最終締切時間が迫っていて、搭乗者名前を変更するような時間などなかった。
オレはルカと共に駆け足で搭乗口近くまで急ぐ。

「さよなら……ビリーさん。ありがとう」
「お礼を言うのはこっちのほうだ」
オレから別れのハグをすると、ルカはオレ体を一度離して、頬にそっと手を添えた。
「ルカ……?」
「ビリーさん……」

ルカはゆっくりとオレを抱きよせた。
お互い目を閉じる。
柔らかい唇がそっと下りてきた。
たぶん……これが最後のキス。
裏切りのキスなんかじゃない。
お互いに、言葉はなくとも、痛いほど気持ちは解っていた。
オレはキスをされて嬉しいはずなのに、甘く、優しく、どこまでも切ない気持になるのが、やるせなかった。
『XXXX航空、11時ニューヨーク発成田空港行きの飛行機にご搭乗の方は、○番搭乗口へお急ぎください』
どちらともなく搭乗案内のアナウンスが流れると、ゆっくりと唇を離す。
「ビリーさん、お元気で」
「ああ……お前もな」
オレはあえてルカの連絡先は聞かなかった。
ルカも連絡先を教えなかった。
逢いたくないというわけではないのに、お互い逢いたくても逢えない存在だというのを十分に把握していたから。
ルカは笑顔で搭乗ゲートをくぐって行った。

それがオレが最後に見たルカの姿だった。




to be  continued……



<ルーク・クリフォードside>


39


 兄さんが出張してもうすぐ二週間が経つ。
東京で一緒に暮らし始めてから、こんなに長い間逢わない日はなかった。
ボクが東京に出てくる一年間は別々に過ごしていたのだから、二週間なんてあっと言う間だと思っていたのに、案外そうでもないと気づく。
兄さんはボクに気遣って、出張中も毎日国際電話をくれた。
電話の声は元気そうで、まるで隣で話しているように聞こえるのに、実際は逢いたくても逢えないところにいて、手を伸ばしても届かないのだと思うと、なんとなく切なくて仕方がなかった。
逢えない時間が愛を育てるというのは、陳腐な歌の歌詞なんかでもよく聞く台詞だけれど、案外間違いじゃないなと思ってしまうあたり、ボクも相当センチメンタルになっているのかもしれない。
いいや、センチメンタルとはちょっと違う。うまく自分の気持ちを言えないけれど、胸騒ぎというか、嫌な予感みたいなものが胸の片隅にできていて、それが日増しに大きくなるのを否めなかった。
最初はきっとルカさんの事もあったし、なんとなく兄さんも、ルカさんをまんざらではないと思っていたようにみえたから、ボクの知らないところでもしも二人が逢っていたら……なんて心配もしたけれど、出張先から毎日かかってくる兄さんの電話の声を聞いて、それは思い過ごしだろうと確信を持った。
そろそろ兄さんから電話が掛かってくる時刻だ。
日によっても違うけれど、いつしかボクは兄さんからの電話を心待ちにしていた。
だが、今日はまだ電話がない。
そろそろニューヨークの時刻でいうと、夜中の二時になる。疲れているのだろうか。必ず電話をすると約束したわけではないし、次の日の飛行機で日本に向かう予定だと聞いていたから、いろいろ準備で忙しいのかな。
でも……兄さんの声が聞きたい。
たまにはボクから電話をしてみようかとも思ってみたけれど、夜中の二時ならきっと寝ているだろう。
ボクはなんとなく嫌な気持ちになるのを、無理矢理ねじまげてもうすぐ逢えるのだからと自分自身に言い聞かせて過ごすしかなかった。



 今日は兄さんが帰国する日だ。
ちょうど大学院の講義も、研究も半日で終わる予定だったから、ボクは大急ぎでマンションに帰宅して、部屋を掃除し、兄さんの大好きなクリームシチューを作りはじめる。
あと何時間かすれば、兄さんと逢える。
兄さんが帰ってきたら、一緒に食事をして、お風呂に入ってもらって、それから……。
そう考えると、なんとなく顔の筋肉が自然とゆるんでくる。きっとボクの今の顔を見た人は、変態だと思うに違いないなと、一人でツッコミを入れながら、ボクは冷蔵庫にワインを冷やし、お風呂掃除もして万全な体勢で一刻も早く兄さんに「お帰りなさい」といいたくて準備に余念がなかった。


 ようやくシチューも出来上がった。まずまずの出来映え。これなら兄さんもきっと喜んでくれるだろう。
なんとなく手持ちぶさたになったボクは、兄さんに逢いたいとはやる気持ちを抑えながら、テレビにスイッチを入れた。
リモコンを片手に、なにか面白そうな番組はないかとチャンネルをまわすが、あまりボクの興味を示すようなものは生憎なかった。仕方なしに今流行だという韓流ドラマの再放送にチャンネルを定め、なんとなく画面を見つめていると、突然、大きなチャイム音と共に、緊急ニュースのテロップが流れ始めた。
一体、何のニュースだろう?
ボクはそっちに気をとられ、ぼんやりと眺めていると、「飛行機墜落事故」の文字が流れる。
飛行機事故?
一瞬、全身がビクリとして、画面から目が離せない。
まさか……。
なんとなく嫌な予感がよぎる。
じっと、食い入るように画面を見ていると、次にボクの目にとまったのは「ニューヨーク発 ○時○分発、XXXX航空、太平洋日本沖約150キロ付近地点で墜落」の文字だった。
何度もテロップが緊急音と共に繰り返し流れる。
ボクは兄さんが出発する前に渡されたメモを思いだし、慌てて対面式キッチンのカウンターテーブルの端にあった紙切れを手に取った。
その紙には、出発便、帰国便、宿泊する予定のホテルの連絡先がかいてある。
ボクはドキドキする心臓をおさえつけながら、確認すると、メモには繰り返し流れるテロップの文字と同じだった。
嘘だ!
きっとこれは何かの間違いだ。
もしかしたら、兄さんはこの飛行機に乗っていないかもしれない。
ボクは手のひらが白くなるまで握りしめ、自分にこれは何かの間違いだと言い聞かせていると、突然電話のベルが鳴り響いた。
もしかしたら兄さん?
慌てて受話器を取ると、知らない女の人の声だった。
「もしもし?こちらはXXXX航空日本支店の者です。ビリー・クリフォード様のご自宅はこちらでしょうか?」
ボクは心臓をバクバク言わせながら、返事をする。
「……はい」
「実はビリー・クリフォード様のご搭乗された飛行機なのですが、墜落した模様でして……」
その後の言葉はよく覚えていない。
気がつくと電話は切れていて、TV画面がいつのまにか韓流ドラマから緊急速報ニュースに代わり、ニュースキャスターの男性が、熱っぽく飛行機事故の事を語っていて、搭乗した邦人国籍名の一覧表が流れていた。


to be  continued……






第9回「ミステリーズ! 新人賞」一次通過作品が、発表になりました。

とりあえず、今年も一次は無事通過できました。(ほっ)

今年は応募数が多いのか、三次選考まであってそれから最終選考、受賞作品決定と、一段階多いようです。

他の応募作品で、ペンネームをお見かけしている方も、ちらほらある。

先は長いけど、できるだけ最後まで残りたい……!!


<ビリー・クリフォードside>



37


「ニューヨークへは、レコーディングに来たんです」
「レコーディング?」
「ええ。僕が残していったあの曲の歌入れで」
「って……事は……」
オレは予想しないルカの言葉に、心底驚いた。だがあの曲と言われ、ピンと来るモノがあった。
もしかして。と直感が働くが、黙ってルカの言葉を待った。
「ちょうど僕がマンションを出た後、しばらく知り合いのミュージシャン仲間のアパートへ転がり込んで居候をしている時でした。スタジオミュージシャンのメンバーが足りなくて、助っ人としてギター演奏をやったら、ギターの腕をプロデューサーに認められて。何か歌は歌えるのか? と聞かれて……あの曲を歌ったんです。するとCDを出してみないかとレコード会社の方を紹介されてそのまま……」
「凄いじゃないか!」
やっぱり。と思う。音楽のことはよくわからないけれど、オレもルカの作ってくれたあの曲は大好きだ。移動時間には、いつも聞いている。
「じゃあ、デビューするのか?」
「ええ。まあ。とりあえず、予定では来月CD発売まではこぎ着けたのですが、CDが売れるかどうかわからないし……」
ルカは自信なさげに俯いた。アメリカまでレコーディングに来ているというのは、プロデューサーも力が入っていると見える。オレはルカに自信を持って欲しくて、前のめりで語った。
「オレは音楽のことはわからないけれど、あの曲は大好きだぞ?」
「え? 本当ですか?」
「ああ。あれからいつも聞いている……お前の事を思い出しながら――」
「ビリーさん……」
ルカは嬉しそうにオレの名前を呟いた。
「一つ聞いていいか?」
「はい?」
「なんであのマンションを黙って出た? なんで行き場所を知らせなかった?」
「それは……」
ルカはオレから視線を外すと、口をつぐむ。話したくない態で、視線を外した。
「……オレが原因なのか?」
ルカは何も言わなかった。
なんとなくルカが黙っている理由はわかっていた。けれど、オレから黙って出て行ったことがとても自分の中に引っかかっていて、少しコイツを困らせたいという気になっていたのかもしれない。
オレはルカの瞳を真っ直ぐ見つめると、静かに言った。
「オレは謝らないぞ。逃げるなよ」
「逃げる? 逃げてるわけじゃない。ただ…」
「ただ?」
「ただ……僕はビリーさんを苦しめたくないだけ。僕は貴方が幸せならそれでいい」
オレはルカの言葉に、無性に腹がたった。何が苦しめたくないだ? 何が幸せだ? そんなの一緒にいるわけでもないのに、ルカが解るわけないじゃないか!
「幸せ? それはお前の勝手な言い分だろ! 行き先も言わず、どれだけオレが心配したと思っているんだ……!」
「心配かけたのは謝ります。ごめんなさい」
「謝ればいいってモンじゃないだろ?お前にとってオレはなんだったんだ?ただの同居人でしかなくても、ちゃんとわかるように説明してくれよ!」
オレは興奮していた。気がつくと、イスから立ち上がり、両手が白くなるほど手を握りしめていた。

ただ……悔しかった。
なんでだろう。
黙って部屋を出て行かれたことが?
オレはルカにとって特別な存在かもしれないと、意識していたのに。
無視されたことが?
オレを苦しめたくないだけと言われて、体裁よくあしらわれて。
ルカにとってオレはそれだけの人間でしかないのかと思うと、余計に悔しさがこみ上げてくる。
いつの間にか自分の意思とは関係なしに、ぽたり、ぽたりと涙が頬を伝い、絨毯敷きの床に小さく染みをつくった。
「泣かないで……ビリーさん」
ふと名前を呼ばれて顔を上げると、オレをいとおしむように抱き留めるルカの腕が背中に廻っていた。
「僕だって辛いんです。出来ればあのままずっと三人で一緒に暮らしていたかった……。でも、もうそれは無理なんです」
「無理?」
「だって僕は……」
気がつくとルカの柔らかい唇が、オレの唇に重なっていた。
それはほんの数秒、重ね合わせただけのキスだった。けれど、ハイデリヒの気持ちを伺い知るのには十分だった。
「……好きなんです。貴方のことが」
気がつくとオレはそのままベッドに押し倒されていた。




to be  continued……



<ビリー・クリフォードside>



36




上司である土屋さんから渡米行きの出張を言い渡されるのは、これが初めてだ。
ル-クと同居するようになってから、2週間も家を空けることは初めてで、それだけでも心配だったし、自分の研究がアメリカ本社でどう判断されるのか心配だった。
「兄さん、行ってらっしゃい」
ルークは空港まで見送ると聞かなかったが、それはオレから断った。
気持ちは嬉しいが、たかだか仕事の出張ぐらいでという気持ちもあったし、アイツもそれなりに大学院と、頼まれて入ったというゼミの研究で忙しい毎日を送っているのを知っていたからだ。
「ああ。さっさと終わらせて帰ってくるからな。土産を楽しみにしてろよ」
「お土産なんていらないよ。ボクは兄さんが無事に帰って来てくれたらそれでいい」
ルークは健気に言うと、真面目な顔をした。
まったく……ルークらしい。
あいつはいつもそうだ。本当に欲しいものはなかなか自分からは言わないのだ。
オレが弟と恋人の関係になった時もそうだった。もう遠い昔のことだけれど。
「じゃあ行ってくる」
オレは元気に家を出た。

心配していた研究も、格別問題はなく、順調に進んだ。
オレはルークが寂しがらないようにと、毎日国際電話をした。やっと明日日本へ帰れる。そう思うと、胸が逸る。
今夜はニューヨーク最後の夜だ。
たまには外で食事でもするかと、滞在していたホテルの部屋を出ようとした時だった。
どこからともなく聞いた記憶のある曲が廊下に流れてくる。歌詞は英語だったけれど、生ギターに乗せられて聞こえてくる曲は、オレが一番好きな曲だった。
これは……!
オレは急いで音の聞こえる方へ脚を向ける。
行くと同じフロアの一番端の部屋からのようだった。部屋の前までくると部屋のドアが薄く開いていて、そこから聞こえてくるようだった。
耳をすますと聞き覚えのある声だ。
「もしかして……ルカ?」
気がつくと、オレは勝手に部屋のドアを開けていた。
「ルカ!」
「ビリーさん?」
ルカはベッドに腰掛け、アコースティックギターを片手に唄っていたところだった。
「ほんとに……ルカなのか?」
久しぶりに見るルカの顔だった。少し痩せたかもしれない。髪も伸びて、特に後ろ髪がシャツにつくぐらいになっていて、それが会わなかった時間の月日を物語っているようだった。
「ビリーさん、どうしてここに?」
蒼い瞳を見開いて、呆然とオレを見るルカの顔を見ると、オレはゆっくりと抱きついた。
「ルカ!」
ルカは片手にアコースティックギターを持ったまま、空いた手でオレの背中に腕を回す。暖かい。
オレは以前、帰宅の遅いルークを心配して、ルカと駅まで迎えにいったあの時、倒れようとして抱きかかえられた時のことを一瞬思い出した。
3ヶ月以上前のことなのに。力強くオレに回された腕は、あの頃とちっとも変わらなかった。
「まさかボクを探してここに?」
「いいや、オレは仕事の出張でここにきたんだ。ここのホテルに滞在していて、廊下に出てみると、聞き覚えのある声と曲が聞こえてきたから。……明日、日本に帰るんだ」
「そうですか……」
ルカはあからさまに残念そうな顔をした。
「それより、今までどこにいたんだ? なんで黙ってあそこを出て行った?」
間近に見るルカの顔は、やっぱりルークとそっくりだった。
たぶん……出て行った原因はオレだ。
ルカは困った顔をしていたけれど、オレはどうしても聞きたかった。
薄々はわかっていたけれど、どうしてもルカの口から聞きたい。
「まさかこんなところで逢うとは思いませんでした。もう二度と貴方と逢うことはないと思っていたのに」
ルカは自嘲気味に呟くと、側にあったチェアに腰掛けるようオレを促す。
ルカも側にあったベッドに腰掛けると、諦めたように、ゆっくりと口を開いた。



to be  continued……


<ルーク・クリフォード side>


35



あれから3ヶ月が過ぎていた。
ボクは大学院の生活も慣れ、密かに心配していた兄とルカさんの関係も、あれ以上発展するようなことはなかった。
ルカさんが同居生活を止めたからだ。
あれは兄さんが退院した次の日だった。
なかなか起きてこないルカさんを心配したボクは、彼の部屋をノックした。
いくらノックをしても返事がない。そっとドアを開けてみると、部屋は綺麗に片付いていて、机の上にCDと、マンションと部屋の鍵が置いてあった。三人一緒に買ったキーフォルダーがついたままだ。
「ルカさん?」
名前を呼んでも答えなどないだろうが、ボクは呼ばずにはいられなかった。
もしかしたら、鍵を置き忘れたまま出かけたのかなと一瞬思ったが、そうではないとボクの直感が働く。案の定、夜になっても、次の日になっても、一週間が経ってもルカさんはマンションには戻ってこなかった。
最初は兄さんも心配していようだけど、ルカさんの残していったCDを聞くと、黙ったままだ。
ボクの前ではルカさんの話をすることはなくなった。
繊細な兄さんのことだ。平気な顔をしているが、ああ見えてルカさんが出て行ったのは、自分のせいだと責めているに違いない。十二分に兄さんの性格をわかっているボクは、自分からルカさんについて話さなかった。
いつの頃からか、兄さんとボクの間でルカさんの話をするのは、タブーとなった。
兄さんの渡米行きの話も、一時は本格的に進められたようだったが、兄さんは断固として日本から離れないと言い張ったようだった。
それでも優秀な兄さんの働きぶりを諦めきれないアメリカ本社の役員は、短期出張という形で、年2,3回、2週間から最大1ヶ月に渡ってアメリカ本社の研究所に来ることで、妥協した。
兄さんも、その条件ならと、上司と話を進めた。
兄さん曰く「基本の生活をルークのいる日本で送りたかった」と言っていたけれど、きっとそれだけではないと思う。
これはボクの憶測だけれど、もしかしたら日本にいたら、このマンションに住んでいれば、もう一度ルカさんと会えると思っているのではないかと思う。
だって……ボクは知っているんだ。
ハイデリヒさんが残していったCDをとても大事にしていること。
あの曲をいつも携帯や、持ち歩ける音楽媒体に入れて聞いている事を。

「ルーク、おはよう。明後日から二週間、アメリカに出張なんだけど、一人で大丈夫だよな?」
朝、ボクが起きてくると、兄さんはすでにスーツ姿で玄関を出るところだった。
最近、兄さんは仕事に特に忙しいらしく、朝早くマンションを出て行ったきり、夜中しか戻ってこない。部屋にもどっても、書類や研究所を持ち帰って朝方近くまで部屋の灯りがついている。
学生のボクよりも机に向かっている時間が長いくらいだ。おかげでボクと兄さんは、念願の二人きりの甘い生活ができるはずなのに、ちっともそんな時間はとれていない。
それどころか、日によっては、一日顔を全く合わせない日さえあるくらいだ。
「明後日から?」
「ああ……。急に決まったんだ」
「二週間もいないんだ……」
ボクは内心、がっくり来た。最近、顔を合わせない日々が続いているけれど、それでも夜は帰ってくる。朝起きると、ビリーはすでに会社に出て行った後でも、今まで部屋にいた気配が残っている。
まだ温かい飲みかけの珈琲だとか。
ソファに放置されたままの、使ったバスタオルだとか。
やりっぱなしなのは、兄の悪い癖だけれど、慌てて支度する兄の様子を想像できるだけでも、ボクはほんのり幸せな気分になれるのに。
二週間もいないとなると、想像もできない。ボクは我慢できるかな――。
「どうした?兄ちゃんがいないと寂しいってか?」
兄さんは脳天気な顔をして、ボクの顔を覗き込んだ。
「兄さんは寂しくないの? 最近ちっとも一緒にいる時間がないね」
こんな時に愚痴を言っても仕方がないのに。兄さんを困らせてどうする。けれど、ボクは愚痴をこぼさずにはいられなかった。
ルカさんが出て行って、ボクと兄さんは二人だけの生活に戻った。
よっぽどルカさんが一緒にいた三人同居の時の方が、ここの暮らしは楽しかった気がする。あの時の方が、ルカさんが隣の部屋にいるというのに、ボクに兄さんと甘い時間をもてたのは、事実だった。
「ルカさんがいた時の方が、楽しかったな――」
気がつくと、ついぽろりと言葉がついて出ていた。
はっと気付いて兄を見ると、今にも泣きそうな苦汁に満ちた顔をしていた。
「悪りぃ……。渡米行きを断った手前、どうしてもそのしわ寄せが出るのはやむを得ないんだ。なるべく早く帰ってくるから」
兄さんはまだパジャマ姿のボクに背伸びしてキスをすると、足早に部屋を出て行った。
パタリと閉じられた玄関ドア。
無償に孤独感とむなしさがボクを覆う。
「兄さん……」

この時、ボクはまだ、この先起こることをまったく予想もできないでいた。




to be  continued……