『 米国・中国・日本の国勢 2022 』
イントロ
<目次>
Newsweek日本版 2022年7月20日
「世界の工場」中国がコケたら、みんな道づれ──中国に果たしてもらう役割とは
<ゼロコロナ政策の影響で、15日発表の中国実質成長率は0.4%と、大失速の中国。
しかし、世界が中国経済に依存している今、その崩壊を喜ぶのは自分の首を絞めるも同然>
今の中国経済には強い逆風が吹いている。その原因は、ほぼ中国政府にある。強引なゼロコロナ政策で、経済活動を広い範囲で止めてしまった。習近平政権が民間企業への締め付けを強めたので、景気の牽引役だった情報技術部門が麻痺してしまった。放置していた不動産バブルがはじけて経営破綻が相次ぎ、市場の混乱も招いた。そこへロシアのウクライナ侵攻が起こり、輸入に頼る食料やエネルギーの価格が一気に高騰した。だからIMFは4月に、今年の中国経済の成長率予測を4.4%に下方修正した。2%程度という見方もあり、そうなればほぼ半世紀ぶりでアメリカの成長率を下回る可能性がある。
西側諸国の一部から歓喜の声が上がるのも無理からぬところだ。
しかし、中国経済の崩壊を期待するのは間違いだ。
アメリカと中国の経済は今や相互依存の関係にあるから、アメリカ人の暮らしも脅かされる。
前政権以来の貿易戦争で高率関税を課しても、アメリカ人は猛烈なペースで中国製品を消費している。ゼロコロナ政策により中国の製造業が失速して供給が減れば、アメリカの物価はさらに上昇する。中国経済の失速でアメリカ製品(自動車や電化製品、医療機器や燃料など)への需要が減れば、中国への輸出で稼いできた米企業や労働者に打撃となる。
最後に、深刻な景気低迷で今の権威が揺らぐ恐れが生じれば、彼らが今まで以上に攻撃的で民族主義的な外交政策を採用する可能性が高まる。どこの国でもそうだが、内政面の不満から国民の目をそらすには好戦的な愛国主義と戦争を持ち出すのが一番だ。
ウクライナでの戦争が続き、アメリカ経済が軟化しつつあり、中国経済の抱える問題で世界的な景気後退のリスクは高まっている。
補助金漬けの不公正な競争政策や国際貿易のルールを平気で無視する体質など、中国政府の経済運営に重大な問題があり、しかるべき対応が必要なのは事実だ。
しかし中国には、今の世界経済でもっと建設的な役割を果たしてもらわないと困る。だから問題があるなら、中国経済の破綻を歓迎するのではなく、前向きに対処すべきだ。
中国経済の急激な失速は世界中に重大かつ予測不能な影響をもたらす。喜んでいる場合ではない。(一部割愛)
(担当 E)
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