任天堂Wiiゲット!!!!
なんと並ばずにGETしちゃいました・・・。
もちろんそれは超品薄品Wii!!!!!!
もちろん開店1時間後に・・・・運がいいのか????
でも間違ってソフトを買ってしまった^^;
はじめて~を買うつもりがスポーツを・・・。
追伸・・・今日はじめての~を買って来ました・・・。
実はもう一台Wiiがあります。誰か定価プラス送料でいりませんか?3万で買ってくれると嬉しい・・・。(リボ払いしてしまったので・・・。)勘違いして買ってしまったもう一台・・・。ご近所の方はお届けします^^;ビッダーズ
で定価スタート販売中ですよ^^;
ドリーム・クエスト (12)PKO派遣先からお兄ちゃんが帰ってきた!
待ちに待った8月、お兄ちゃんがPKO派遣から帰ってくる。あたしのお兄ちゃんは第一陣の後方支援部隊の隊長として派遣されたんだけど、いろいろニュースで見ていて大変そうだった。案の定怪我人、病人が出た。ま、死者が出なかったのが不幸中の幸いだったかもしれない。どこの部隊に怪我人とかが出たかは知らないけれどきっとお兄ちゃんはけろっとした顔で戻ってくるに違いない!
帰還日の当日、あたしは美月さんと静ちゃんを連れて朝霞駐屯地に向かう。雅和さんも来る予定だったんだけど、内閣補佐官に抜擢されたおかげで、忙しすぎて来れなくなった。ほんと平日は朝早くから夜遅くまで働きづめ・・・。また倒れないか心配なんだけど、和気さんと一緒の担当だから何とかなるかな・・・。
「美月さん、やっと帰ってくるね・・・。」
「はい。静は博雅さんのこと覚えているかしら?」
「大丈夫よきっと。早く着かないかな・・・。」
もちろんパパは立川飛行場まで迎えに行っている。自衛隊トップの幕僚長のパパは朝から落ち着きがなかった。先日は第2陣の中部方面の派遣部隊を見送ったばかり・・・。本当に複雑な心境のパパ。来年3月の誕生日には還暦を迎えて退職なの。
もう立川には着いている時間・・・美月さんは緊張した表情で腕時計を見つめていた。あたしは愚図る静ちゃんを抱っこしながら、立川からのバスを待った。 一時間ほど待ったのかな・・・パパの乗った公用車を先頭に続々とバスが入ってくる。まずは普通連隊、通信部隊やら様々な部隊が入ってくる。そして最後は後方支援部隊。美月さんは身を乗り出して降りてくる自衛官の顔を一人一人確認する。なかなかでてこない。そして最後のバスが止まる。先に到着した連隊はもう家族と再会している。パパは自衛官一人一人に握手をして無事帰還を祝う。最後のバスの本当に最後・・・お兄ちゃんが降りてきた。
パパとお兄ちゃんは男同士で抱き合う。パパは溢れんばかりの涙をこらえながらずっとおにいちゃんを抱きしめていた。
「父さん!約束どおり、俺の連隊誰一人けが人、病人は出しませんでした!」
「よくやった!よくやった・・・。よく無事に帰ってきた・・・。」
お兄ちゃんはいきなり後方支援部隊のみんなに取り囲まれ、胴上げをされる。この派遣で以前ばらばらだった部隊内が一気に団結したようだ。お兄ちゃんの解散命令で、部隊のみんなは家族のもとに散っていく。
お兄ちゃんは再びパパと握手をすると、美月さんのもとにやってきた。遠目ではわからなかったけれど、お兄ちゃんは相当苦労したのか、痩せている。静ちゃんはお兄ちゃんの顔を見るとてを伸ばし、抱っこをせがむ。
「パパ!あっこ(だっこ)!」
お兄ちゃんは微笑みながら静ちゃんを抱っこするの。
「いい子にしてた?静。」
「うん。」
「ただいま美月・・・。」
お兄ちゃんは美月さんを引き寄せて抱きしめる。
「博雅さん。あのね・・・。」
「何?」
「今ね、妊娠5ヶ月なの。」
「え?美月・・・。」
あたしも知らなかったわよ。二人目を妊娠???
「そっか!もう当分こういうことはないから、安心して。」
「はい。」
本当に和やかな雰囲気・・・。いい夫婦って感じ?パパもお兄ちゃん夫婦を見て微笑んでいた。
「綾乃、昨日新防衛庁長官と話したんだが、PKO派遣はいま派遣されている部隊で終わるらしいよ。派遣先も落ち着いてきたことだし、これ以上血税を使う必要はないと総理が判断したらしい・・・。博雅はいい働きをしたと、派遣部隊長も言っていたよ。的確な判断はこの私に似たのかな・・・。」
「お兄ちゃんはこの派遣で成長したのかな?」
「もちろん。いい働きをしたよ。そしてさっき見ただろ、連隊が本当に団結していたんだから・・・。一番若い連隊長なのにね・・・。」
もちろんお兄ちゃんは大変評価されて、出世街道をまっしぐら確定になりました。
もちろん当分の間、東部方面隊後方支援部隊長をするんだけどね・・・。
もうお兄ちゃんを悪く言う部下はいなくなったのよ。
ドリーム・クエスト (11)鍋島内閣の異変
夏に入り、国会はないので、暇な日々を過ごす。国会のないときは衆議院議員会館の事務所で雑用をこなしたり、常任委員会のための資料集め。僕自身地元選挙区というのを持たないから、結構暇なのだ。もちろん7月の夏休みの一番混まない時期に家族旅行を計画している。といっても僕の生まれ育った芦屋や神戸方面に行くんだけど・・・。うちの爺ちゃんに雅と彬を見せないといけないし、もちろん関西にいるうちの親戚にもお披露目しないといけないんだよね・・・。
僕の叔父さんは先日の参議院議員選挙に落選して、地元で次の選挙のための活動をしている。今度の知事選挙にでも出ようかなとも言っていたよ。今はうちの党は支持率最低だからね・・・。40%を行ったり来たりしている。叔父さんは父さん同様にいい人なんだけど、時期が悪かったんだろう。多分こんな時に僕が出たら落選していただろう。
「雅和さん、芦屋、久しぶりだね・・・。」
「んん・・・。」
僕と綾乃たちは芦屋のおじいちゃんにうちの子供たちを見せるために、僕の芦屋の実家に向かった。今日は総勢40人ほどの親戚が集まって僕たち家族を迎えてくれる。もちろん父さんもこの芦屋の自宅に戻っている。おじいちゃんは曾孫を見ると大変喜んで、可愛がってくれる。雅は1歳2ヶ月なのにもうしっかりと歩く。彬はやっと歩くようになった。二人のかわいらしい表情に周りの人たちは和んでいるんだ。
「雅孝はまだ結婚しないのかね。」
と爺ちゃんが言う。まあ兄さんもいい歳だしな・・・。もう29か・・・。兄さんは順調に文科省の課長クラスになっている。
「いい子がいないんだよね・・・。雅和がうらやましいよ、こんなに綺麗で性格のいい子と結婚しているんだしね・・・。」
兄さんは今度厚生労働省出向になるらしくって、いつ文科省に戻ってこれるかわからないらしい。
「保育所は厚生労働省管轄だろ、そういう関係の仕事をするんだよ。」
兄さんは幼稚園関係の仕事をしている。よくはわからないんだけどね・・・。ホントに同じ東京にいながら会うことがなかったんだよね・・・。兄さんは結構昔はモテテモテテ学生時代は何股していたことか・・・。ホントに落ち着きすぎだよ。親戚の中には縁談をするのが大好きな人も多いから、きっと何件か見合いを持ってくるんだろうね・・・。 案の定、見合い話が・・・。やっぱり兄さんが来ることを聞きつけた親戚の誰かが、風呂敷いっぱいの見合い写真と釣書を兄さんに渡していた。みんなどこかのお嬢さんが多いらしいけど・・・。
父さんの携帯がなり、みんなのいる部屋を出て行く。何かあったのか?少しすると父さんが僕を呼ぶ。
「雅和、ちょっと来なさい。」
父さんに書斎に招き入れられ、父さんと話をはじめる。
「鍋島が倒れた。やはりこの時が来たんだよ。」
「え!?」
父さんは官邸にスパイらしき人がいる。父さんが手塩をかけて育てた職員などである。随時何かあれば父さんの携帯に電話が入ってくるようだ。そういえば父さんは以前鍋島さんには時間がないって言ってたよね・・・。もしかしてこのことか・・・。鍋島総理は官邸での会議中に倒れ、救急車は呼ばずに裏からワンボックスで運ばれた。こういう場合は結構様態がやばい。公式発表にもいろいろあって、検査入院はたいしたことなく、過労のために入院は少しやばい。そして危篤状態のときは特別の公式発表の言い方がある。たいてい持病の悪化だとか、風邪をこじらせたとか・・・いろいろ言い方があるが、こういう時は死に至らないような病名を発表する。多分父さんの言い方では最後の言い方になるだろう。
「鍋島君は癌なんだよ。肺がん。総裁選挙の前に発覚してね、最後の情けで、うちの派閥が当選させてやったようなものだ・・・。もともと無理難題を言うような鍋島君ではないよ。多分焦りすぎたんだろうね・・・。今は危篤状態だから・・・。」
父さんは東京に戻る準備をする。
「さあ、これで復党できるよ。私達6人が離党したのは鍋島君に反旗を翻したのではないよ。鍋島君のやりたいようにさせてやっただけ・・・。私たち6人がいると邪魔になるからね・・・。鍋島君の側近官房長官の松平君は私の息のかかった人物だから・・・。今日の情報も松平君からだ。」
父さんは橘さんを呼んで、飛行機の手配をさせる。
「雅和は落ち着いたら党のほうに来なさい。まだまだ首を突っ込む時じゃないからね・・・。」
父さんは伊丹空港発の夕方の便で羽田に向かった。もちろん夕方のニュースで鍋島総理が緊急入院というニュースが流れる。もちろん予想されたとおり、肺炎による入院となっている。ということは危ないってことだ・・・。
爺ちゃんはニュースを見ながら、溜め息をつく。もちろん爺ちゃんは未だに党員だ。もちろん父さんから総理の事を聞いているようである。形式上では父さんたちは党議員の要望で復党することになっている。それもこの夕方、急に復党届けを出している。もちろん父さんの場合は、公設秘書に頼んでいるんだろう。父さんは羽田空港に付くとその足で鍋島氏の入院している病院にお見舞いに行く。そして多分この先のことを鍋島派の人たちと話すのかな。
次の日、党から総理代行が発表される。父さんの右腕、藤原さんだ。
内閣はもちろん大変混乱している。前々から内々的に知っているとはいえ、急に倒れたからね・・・。そしてその日のうちに鍋島総理の言葉として、藤原さんがそのまま内閣総理大臣に就任したのだ。内閣の再編成も行われる。父さんが総理をしていた時と同じように派閥がまんべんなく編成されている。僕はまだ下っ端だから関係ないと思いつつ・・・・父さんから送られてきた組閣内容のFAXを見て驚いた。
何で僕と和気さんの名前が入っているんだろう・・・。
広報担当補佐官だ。普通定員1名のところ、若手だからか2名。
僕の留学経験と、官邸での下積みを評価されたんだろうか。和気さんの場合は関西人気質の話術がある。ユーモアがあり、人をひきつける魅力がある。もちろん英語も堪能だ。官邸でも3年働いたキャリアもあるし弁護士の資格もある。
もちろんすぐに東京に戻るように言われる。僕は綾乃たちを神戸のおばあさんの家に預けて、何とか最終便の飛行機を押さえて東京に戻る。 自宅に戻り、指示されたとおりの服を父さんが用意してくれた。明日は組閣発表後、大臣たちとは別に補佐官は国会の階段にて記念撮影があるんだ。補佐官は総勢5名。僕と和気さん以外はベテラン・・・。和気さんと僕は大変恐縮して、夜遅くまで電話していたのは言うまでもない。
『なあ弐條、いいんかな・・・こんな役目頂いて・・・。』
「ホントびっくりしたよね・・・。で、明日はやはり礼装だろ?」
『んん・・・伯父さんに用意してもらったよ・・・。』
いくら内閣補佐官とはいえ、こういう時はモーニングを着用する。ああこれから忙しいんだろうな・・・。何でまだ下っ端の僕らを採用するのかな・・・。客寄せパンダとは言われたくないな・・・。
僕達はいつもどおりに地下鉄に乗って議員会館の自室に入る。和気さんと僕は国会の席が隣な上に部屋も隣だ。部屋に入ると私設秘書(父さんの私設秘書に来てもらっているんだよね)が用意されたモーニングを僕に渡してくれた。
「何時からかな?」
「写真撮影は4時ごろと伺っております。それまでに内閣の承認式などが・・・。」
僕は自室に入ると用意されたモーニングを着てみる。今着ておかないと、もしサイズが合わなかったら大変だからね・・・。ま、ぴったりでよかったけど・・・。和気さんは幸せ太りかわからないけど、少しきつかったようだが何とか入ったみたいだ。
一通り国会にて儀礼が終わる。即議員会館に戻り着替えを済ますと、和気さんと共に議事堂に戻る。そして議事堂内階段にて恒例の記念撮影。新総理藤原氏の周りにベテラン補佐官3名、官房副長官2名、一番後ろに和気さんと僕が並ぶ。ま、大臣クラスは父さんの時のような組閣で見栄えはしないんだけど、やはり和気さんと僕の超若手が入るサプライズ人事となった。
いろいろ賛否両論はあるんだけど、まあ、広報戦略とか考えるのが得意分野だからいいかもしれない。もちろん僕は藤原総理が官房長官時代に公設秘書として広報担当もしていたから、まったく初めてではない。和気さんは私設秘書だったけれど、自他共に認める優秀な秘書だったしね・・・。公設秘書並の仕事はしていたよね・・・。二人で力を合わせてやるしかないんだろうけど・・・。
この内閣人事が発表された次の日、鍋島元総理は息を引き取った。このことで、今まで通りの党に戻ったのは言うまでもないけど。相変わらず父さんは派閥の筆頭として、藤原総理の補佐をしている。
どうなるんだろうね・・・。和気さんもやはり僕と同じ考えをしていたらしい・・・。
うまのきもち~ある競走馬物語 (3)母さんとの別れと命名
母さんはまた父さんの子を受胎した。そして母さんは僕を寄せ付けなくなった。
「母さん、おっぱいちょうだい!」
「坊や!もうこないで!」
母さんは僕を蹴るふりをして近づけないようにするんだ。牧場のおっちゃんは僕を母さんから引き離し、同じ頃に生まれた仔馬たちと一緒に暮らすことになった。もちろんこれは競走馬になる第一歩・・・。母離れはしないといけないんだ・・・。
僕は同じ歳の仔馬たちと一緒に競争したり、喧嘩したり、遊んだり・・・。でもなんだか母さんのいない日々は寂しかった。昼間は仲間と一緒に走ったり遊んだりして気を紛らわしていたが、夜ひとり馬房の中で泣いていた。もっと教えて欲しいことがたくさんあったのにさ・・・。泣いて泣いて泣いて・・・・。
そんなこんなでまた春になった。そしてまたあの男がやってきたんだよね・・・。
「やあ、カミカゼ。」
僕はそんな名前じゃない。僕はプイッと男とは反対のほうを向いた。
「お前の名前を決めたんだよ。初めてみたお前の気の強さ。走ったときの勢い。風の様な走り。飛ぶように走っていたお前の父馬のようだったよ。名前はワキノカミカゼだ。いい名前だろ。」
ダサい・・・。もうちょっとかっこいい名前をつけて欲しかったんだけど・・・。まるで父さんみたいに横文字の・・・。
くんくん、いい匂い・・・これは・・・僕の大好物・・・。
「ほら、カミカゼ。ニンジンだよ。とても甘くていいニンジンを持ってきたんだよ。シラユキもこのニンジンが好きだった・・・・このニンジンがね・・・。」
僕はこのニンジンの匂いに誘われて男のほうへ・・・なんで泣いてるの?この男・・・。
「カミカゼ、お前の母、シラユキは死んでしまった。お前の妹を産んでね・・・。」
え???母さんが???妹を産んで???
「だからシラユキの仔馬のころにそっくりなお前はシラユキの忘れ形見だ。シラユキは私の一番のお気に入りだったんだよ・・・。もちろんお前の妹は私が引き取ることにした。名前はヒメギミ、ワキノヒメギミだ・・・。黒鹿毛の美しい仔馬だよ。」
母さんは妹を産んで死んでしまった。
それも随分前に・・・。
どうしておっちゃんは言ってくれなかったんだろう・・・。
母さん!!!!
ドリーム・クエスト (10)病み上がりの混乱とPKO派遣
僕は朝、目覚めて電話をかける。
「和気さん、今日から一緒に行きませんか?」
もちろん今日から東京メトロで行くことにしたから、近所に住んでいる和気さんと行くことにしたんだ。和気さんは毎日メトロ通勤。広尾駅から霞が関まで出て、乗り換えの後、永田町に向かう。一人で行くよりも仲のいい和気さんと行くほうがいい。
「あれ?綾乃、新聞は?」
「今日は休刊日よ。」
そうだ今日は休刊日だったんだよね・・・。駅で買うしかないかな・・・。
僕は綾乃の作った朝ごはんをしっかり食べて、身支度を整える。きちんと綾乃はスーツをクリーニングに出してくれていたみたい。きっちりとアイロンがかかった、スーツに袖を通し、綾乃は代議士のバッチをつけてくれる。
「いってらっしゃい。お薬きちんと持った?乗車証は?」
「うん、行ってくるよ。」
僕は結婚して三年だけど、まだまだ新婚みたいに出勤前のキスは欠かせない。綾乃の頬にいってきますのキスをして綾乃からカバンを受け取って、家を出る。そして歩いて数分の広尾駅改札前で、和気さんが待っていてくれる。
「おはようございます。」
「弐條大丈夫?」
「ええ、まあ・・・。これから薬を飲まないといけないのですが・・・。」
2人で乗車証を駅員に見せ、中に入る。そしてちょうどホームに入ってきた電車の飛び乗る。ラッシュにもまれながらも、何とか霞ヶ関に着く。
「弐條、ここから歩こう・・・。いろいろ話したい事があるし・・・。電車苦手だろ・・・。」
「そうですね・・・。」
霞ヶ関から地上に出て、永田町方面に向かって歩いた。
「なあ、弐條、どうするんや・・・。」
「え?何がですか?」
「何がって・・・。お前のお父さんをはじめ、うちの伯父さん、前官房長官の藤原さんとか、前内閣で、弐條派のメンバー6人が離党したんだよ。これからももっと増えるかもしれない。伯父さんは俺には残れって言うんだけど・・・。このままじゃ弐條派は解散だよ・・・。」
そんなの聞き初めだった・・・。強行採決による対抗措置だという。もちろん美月さんのお父さんである前防衛庁長官も・・・。知らなかったよ・・・。同じ派閥の和気さんが悩んでいるんだから、僕はどうすればいいんだろうか・・・。もちろんうちの父さんのことだから、今は残れというんだろうな・・・。
議事堂内に入ると、やはり大騒ぎ・・・。僕もマスコミに取り囲まれ、離党するかそのままいるのか聞かれる。そんなこといわれたって、さっき聞いたところなのにわかるかい・・・。まあこういうことは父さんに理由を聞いてから決めることにして・・・。
綾乃ったらそんなこと一言も言っていなかった・・・。
昼休み、父さんに呼ばれて近所のホテルの個室で昼食を摂りながら話を聞く。案の定父さんはまだ今の段階で離党しなくていいと言った。
「雅和、突然なことで悪かったね・・・。綾乃さんにくち止めしたのもこの私だ。実はいろいろ計画があってね・・・。派閥6人のほかにも離党したいというものも出てきているが、お前と同様に留まって貰っている状態だ。」
「計画って?」
「今は言えんが、ま、鍋島君の先は短いんだよ。だからあいつは実績を作りたいがために焦っているんだ・・・。」
「短い?」
父さんはそれ以上は話さなかったけれど、父さんに従えば間違いないだろうから、従うことにしたんだ。そしてこの日の帰ろうとすると、党本部から呼び出され、どうするのかと聞かれたことは言うまでもない。とりあえずいるとは言ったけどね・・・。造反組の息子だから、追い出されるのかなって思ったけれど、あっち側にも残って欲しいといわれたからなんとも複雑な気分だよ・・・。もちろん弐條派は大混乱。やめるやめないでおおもめだったんだけど、うちの父さんがとどまってもらうよう説得した。もちろん何かやるのではないかという期待感は党内であるのは確かだ。
何とか6人と離党だけで済み、国会内は平穏無事のように感じられる。父さんは裏で何を計画しているんだか・・・・。もう年度末・・・来年度の予算編成も終わり、あと3ヶ月で会期も終わる。
PKO問題以来平穏すぎて、暖かくなってきているからか、そこら中で歳いった代議士達がうたた寝をするんだよね・・・。一番前に陣取っている新人議員は眠たくても寝れるわけない。隣同士の僕と和気さんは眠気さましに足を蹴ってみたり、手をつねってみたりして半分遊んでいる。そして先輩に怒られる。
(もちろんその先輩は居眠りしているくせに・・・。)
2月はじめの混乱が嘘のようだ・・・。
4月にはいるとPKO派遣部隊が編成される。第一陣は東部方面が担当するようで、各連隊から決められた数だけ派遣されることになった。もちろん綾乃のお兄さんは自ら志願して、後方支援部隊連隊長として派遣が決まった。
(もちろん立場上断れなしね・・・今年初めに謹慎処分受けてしまったし・・・。)
そして訓練を受けた上、月末に派遣されることになった。もちろん陸自のトップである、綾乃のお父さんは複雑な気持ちで送り出すことになる。お父さんも若いころ、一度派遣されて様々な困難があったそうだから、本当なら行かせたくなかったそうだ。しかし陸上幕僚長の息子だからって特別待遇はありえないもんなあ・・・。
3月にお兄さんは美月さんの実家に移ってきたばかりの出来事だから、美月さんも相当ショックを受けているようなんだ・・・。もちろん自衛官の妻だからいつかは覚悟しないといけないこと・・・。そういうように美月さんのお父さんは慰めたそうだ・・・。
ホントに源家はお兄さんの派遣準備で忙しい。というより混乱している。 お兄さんが富士山の近くになる演習所から帰ってくると、数日休みを取って、南麻布のマンションにやってきた。もちろん親族一同が集まってまあいう壮行会かな・・・。もちろん神戸から綾乃のおばあちゃんもやってきている。おばあちゃんと会うのは三年ぶりだ。もちろん我が家の双子を見るのもはじめて。そしてお兄さんのところの静ちゃんも・・・。あと半月で三人は1歳になる。もちろん同じ誕生日。お兄さんは静ちゃんの1歳の誕生日を一緒に祝う事が出来ないので、今日一緒に祝うことになった。
綾乃と彩ちゃん、美月さんとで、料理を作り、リビングに折りたたみの机を持ってきて、僕と和気さんとでセットした。おばあちゃんとお兄さんそしてお父さんはうちの雅と彬、そして静ちゃんをあやしながら、時間をつぶしていた。彬はまだ歩かないが、雅と静ちゃんは最近歩くようになって、それを見て綾乃のお父さんは顔が緩む。
本当に彬はマイペースだ。二人が歩こうが何しようが、ひとりでお気に入りの電車のおもちゃを握り締めて遊んでいる。多分雅は綾乃に似て、彬は僕なのかな・・・。僕は小さい頃からひとつのものに執着して、じっと遊んでいたらしいからね・・・。
わいわいがやがや言いながら、楽しい時間を過ごした。源家は随分家族が増えたよね・・・。三人兄妹に配偶者がいて、お兄さんのところと僕のところにあわせて三人の子供が出来た。一気に6人増えたんだもんね・・・。あと数年したら和気さん所にも何人か子供が出来るだろうし・・・。ホントに鼠算方式だね・・・。
「さ、そろそろ帰るよ・・・。」
「博雅、明日も休みだろ?」
「んん・・・。家族で二泊三日の旅行に行くんだ。今度いつ行けるかわからないだろ。」
お兄さんは美月さんのご両親と一緒に温泉旅行に行くらしい。新婚旅行以外は仕事上旅行に行けていないのは事実・・・。ああそういえばうちは新婚旅行さえ行っていないな・・・。綾乃が大学卒業したら行くつもりだったのに、雅と彬が生まれたから行っていないな・・・。和気さんところはどうするんだろう・・・。今のところ入籍したことは公にしていないからね・・・。そういえばワシントンのホストファミリーに結婚の連絡さえしていないな。ま、もう少し子供たちが大きくなったら行こうかな・・・。
数日後、お兄さんは美月さんと一緒に我が家に訪れて、楽しそうに旅行の話をしてくれた。美月さんも、何とか覚悟を決めたようで、和やかな雰囲気で楽しそうに話しているのを見て、安堵したんだ。本当にこの僕の力のなさのせいで、離れ離れになる家族が多いのは確かだ。
派遣期間は三ヵ月。特に一陣であるお兄さんは何もないところからのスタートなので、きっと仕事は大変だと思う。次の派遣部隊のための準備といっても過言ではないと思う。実際に難民救済に入るのは準備が整ってからだろうね・・・。
お兄さんは明日から駐屯地に入って最終準備に入る。もちろん機材の準備だけではない。何があるかわからないので、ワクチン注射など、体も万全な準備が必要だと聞いた。派遣まであと10日・・・。義理の兄弟である僕でさえ不安でたまらないのに、綾乃や、お父さん、彩ちゃん、そして美月さんはきっともっと不安なんだろうな・・・。
派遣の数日前、朝霞駐屯地で壮行会が行われた。派遣隊員の家族が招待され、いろいろな式典が行われる。もちろんお兄さんの父であり、陸上自衛隊トップ陸上幕僚長も出席して、訓示を述べ、派遣部隊の部隊長に部隊旗を手渡す。その後、派遣隊員と家族の記念撮影・・・。そして家族と当分の別れ・・・。
お兄さんは美月さんと静ちゃんの側に行き、静ちゃんを抱き上げ、美月さんと共に抱きしめる。静ちゃんはお兄さんの頬を触ったり、PKO部隊の帽子を触ったりする。
「パ・・・パ・・・・?」
「静!今パパって言ったか?美月、確かに言ったよな。静が俺のことをパパって・・・。」
「はい。」
いままであまり言葉らしい言葉を話さなかった静ちゃんははじめてお兄さんをパパといったらしい。
お兄さんは大変喜んでさらに静ちゃんを抱きしめた。
お父さんがやってきてお兄さんの肩を叩き言った。
「博雅、お前には部下が100人いる。必ず全員何事もなくここに連れて帰って来い。いいな。後方支援部隊長として的確な判断をしなさい。間違った判断は災難を招く。いいな。」
「はい!全員何事もなく連れて帰ってまいります。」
お兄さんは静ちゃんを美月さんに預け、お父さんに向け、敬礼をする。
もちろん実の父ではあるが、陸自の最高幹部。お兄さんの目にはうっすら涙が浮かんでいた。僕はずっと綾乃と見ていたんだけど、綾乃もお兄さんが大好きだから、この光景を見て、僕の胸の中で泣き出す。
「綾乃、弐條君。美月と静のことよろしくお願いします。弐條君はこの件に関して元総理と共にいろいろ動いてくれたらしいけれど・・・。弐條君のお父さんにもよろしく言ってくれ。きっと8月には無事に帰ってくるから・・・。頼んだよ。弐條君。」
「はい、おにいさん。」
「お兄ちゃん、ちゃんと怪我ひとつしないで帰ってきてよ!」
「わかってるよ。綾乃。きっと部下みんな何事もなく帰れるようにがんばるよ。」
本当に何事もなく帰ってくるといいんだけど・・・。
派遣先はまだ内乱の耐えない国。
いくら比較的安全な地域とはいえ、無事に帰る事が出来るかの保証はない。
お兄さんはこの駐屯地で出国までの数日間、最終調整をし、駐屯地に残る自衛官に見送られて元気よく旅立って行った。
ドリーム・クエスト (9)雅和、国会議事堂内で倒れる!!!
雅和さんは朝からなんとも言えない表情で、いっぱい資料をかかえて国会内で行われる防衛関連の常任委員会臨時会議に出席するために朝早く出かけた。もしかしたら夜遅くなるかもしれないからと、あたしが議事堂横の衆議院用通用門まで送ったの・・・。
「いってらっしゃい。」
「ありがとう綾乃・・・。終わったらまた迎えに来てよ。電話するからさ。」
「うん。あまり根をつめないようにね。雅和さんは・・・。」
「わかっているよ。もう時間だから・・・じゃあ。」
雅和さんは慌てて通用門で身分証明書を見せ、荷物のチェックを受けると議事堂内に入っていく。
あたしは久しぶりに代官山にある美月さんのご実家に雅と彬を連れて遊びに行ったの。美月さんとお兄ちゃんの愛娘「静」ちゃんはうちの双子ちゃんと同じお誕生日。美月さんによく似たくりくりおめめの可愛い女の子なんだけど、ここのところ2,3ヶ月はこの代官山にいるので、結構じいじばあばに甘やかされている。結構頑固な正確なのか、離乳食も気に入らないと食べなかったり、夜鳴きがひどかったりして、美月さんはノイローゼ気味になった。まあそれだけじゃないんだけど・・・。官舎生活って大変なんだよね・・・。あたしも経験あるからわかるもの・・・。お付き合いが大変なのよね・・・。だから余計にダウンしてしまったんだろうな・・・。
「綾乃さん、雅ちゃん大きいわね・・・。うちに静よりも大きいわ・・・。」
「ホントに普通の月齢のこよりも大きいのよ。その反面彬は小さくって・・・。」
「でも彬君はハンサムじゃない。雅ちゃんも可愛いし・・・。きっと美男美女の姉弟になるわよ。」
「静ちゃんもおめめが大きくって可愛いわよ。」
ランチを食べながら、いろいろ育児の話とか、世間話とかを話していた。もちろんこうしていると、美月さんはノイローゼ気味には見えない。
「今度ここにお兄ちゃんが住むってね・・・。」
「うん、博雅さんがわたしのパパの提案を受け入れてくれて・・・。」
「でもうちのパパはお兄ちゃんは源家の者だからって言ってたわよ。」
もちろん一人っ子の美月さんのお父さんとしてはお兄ちゃんに養子に入ってもらいたいんだろうけど・・・。それは無理よね・・・。
「ねえ綾乃さん。最近彩子ちゃんが結婚したって本当?」
「うん。入籍だけだけどね・・・。うちの旦那様の同僚議員の和気さんとね。和気さんったら、南麻布のあたしの実家に住んでいるんだから・・・。ホントになじんじゃってね・・・。パパも気さくな和気さんを気に入ったみたいよ。同じ関西人気質だし・・・。」
「うらやましいわ。博雅さんも私のパパと仲良くやってくれるかな・・・。」
「大丈夫よ。お兄ちゃんは結構世渡り上手だし・・・。」
するとあたしの携帯が鳴る。珍しく雅和さんのお父さんからだ。
「もしもし、綾乃です。」
「綾乃さんか。雅和が・・・雅和が・・・倒れたんだ・・・議事堂内で・・・早く病院へ・・・。」
あたしは驚いて、光子さんに雅と彬を預けて以前からお世話になっている病院に向かった。
雅和さんは常任委員会中に急に気分が悪いと訴えて、医務室に向かう途中に倒れて意識を失ったらしいの。雅和さんの秘書があわてて救急車を呼び、主治医のいる病院へ搬送された。もう国会議事堂内は大騒ぎだったらしい・・・。だって雅和さんは史上最年少当選で、将来を期待されている新人代議士・・・。国会議事堂にいた代議士をはじめ、いろんな職員が集まってきて、大騒ぎしたもんだから、マスコミも気づいてニュースになったのは言うまでもないの。今はもう意識を取り戻し、精密検査のため1週間ほど入院となった。
「多分これはあの事故の後遺症による発作みたいなものでしょうか・・・。あれから3年半経ったのですが、稀にこういうケースが報告されています。もう一度検査をしようと思います。何か引き金になるような出来事は?」
「ちょっと難題な会議があると聞いていました。もしかしたら・・・。」
同じ派閥で、会議に出ていた先輩議員は会議中のことを事細かく教えてくれた。
やはり常任委員会は白熱して、雅和さんも意見をバンバン言ったらしいの。そしたら下っ端議員だからか、鍋島派の先輩議員さんたちに集中攻撃されて、一区切りつき、昼休みという時に頭が痛い、気分が悪いといって倒れたらしいの・・・。雅和さんらしいといえばそうかもしれない・・・。でも頭に爆弾をかかえてるんだから、根を積めないでって・・・朝言ったところなのに・・・。もしかしてまた記憶は・・・?
「雅和さん、あれほど言ったじゃない。」
「そうだね、綾乃・・・。」
「どう?どこか痛い?」
「そうだね・・・頭痛がひどいかも・・・。」
ああ良かった。あたしのこと忘れなかった・・・。もちろん雅や彬のことも・・・。ひとまず安心だけど、今回のことで、徹底的に精密検査をしてもらうことになったの・・・。
結局精密検査の結果、軽い癲癇(てんかん)と意識障害いう結果が出たの。急激なストレスが原因というの。これからは通院と発作止めの薬を服用しないといけないことになったってわけ・・・。別に薬を飲まないと死んでしまうということはないけれど、これ以上ひどくならないようにということもあるかもしれない。結果が出たといってもまだまだわからない病。とりあえず経過観察も行うのよ。
「ついでにこの申請もしておいて下さい。」
あたしは先生に紙を渡される。「自立支援医療(精神医療)」の申請用紙・・・。これからいろいろと高い治療が予想されるからという先生の配慮。雅和さんの収入の場合は、1割負担のつき2万円までの負担。
無事に退院したあたし達は、部屋に戻っていろいろ話したの。
「綾乃。これから地下鉄で国会に行くよ。運転している時に発作が起きたらやばいでしょ。」
「でも・・・電車は怖いんでしょ。」
「ま、何とかなるよ。毎日綾乃に送り迎えしてもらうわけにもいかないし、ガソリン代の節約にもなるでしょ。」
もちろん国会議員は飛行機(月4往復まで)もJRも地下鉄も無料のパスがある。ちょっと優遇されすぎではないかな?と思いながらも、これなら交通費もかからないよね・・・。多分雅和さんはこれからたくさんかかるであろう医療費を心配して、電車で行くって言ってくれているんだろうな・・・。
結局雅和さんの意見も空しく、雅和さんがお休みを頂いている間の国会で、PKO派遣問題は可決してしまった・・・。
「本当にこの僕は要領が悪いよね・・・。」
「そんなことないよ・・・。また何とかなるってば・・・。明日から再登院でしょ。遅刻しちゃいけないから早く休まないとね・・・。」
「んん・・・・。」
雅和さんは早めの夕飯を摂ると、お風呂に入ってすぐに眠ってしまった。
もちろん国会内は大騒ぎなの。そしてあたしの実家、源家も・・・。
雅和さんには入院中言っていなかった事がある。もちろん新聞さえ見せなかった。きっと明日国会に登院したら驚くんだろうな・・・。今寝室で気持ちよさそうに寝ている雅和さんの寝顔を見ると、いえないまま・・・。言ったらまた倒れちゃうんだろうか・・・。
うまのきもち~ある競走馬物語 (2) おっちゃんの借金の貸主がやってきた!
春が訪れ、僕は母さんと一緒に放牧されるようになった。僕はぴょんぴよん飛び跳ねながら、母さんの周りを走っていた。僕の名前は一応ワキノシラユキ01と名づけられている。そう母さんの名前はワキノシラユキ。そのはじめの仔馬ってことさ。真っ白くて綺麗な芦毛の母さん。白毛馬と間違えるくらい綺麗なんだ。それを受け継いだ僕の体の色は今はねずみ色。血統には芦毛と書かれたらしい。
じっと僕の姿を見て微笑んでいた母さんはふと牧場入り口のほうを見つめた。牧場のおっちゃんは慌てて入り口のほうへ走っていくんだ。すると黒塗りのでっかい車が牧場に入ってくる。
「ああ、あの人が来たのね・・・。」
と母さんがつぶやく。僕はわけがわからず母さんの側を飛び回っていた。
すると嫌~~~~~~な臭いが漂ってくる・・・。
これは・・・僕の嫌いな獣医さんの臭い・・・。
お薬の臭い?
いやだ~~~~~~と思って僕は放牧場を逃げ回った。
でもその男は獣医の格好をしていなかったんだよね・・・。
「坊や、あの人は人間のお医者様よ。この臭いは人間のお薬の臭いかしらね・・・。」
母さんは臭いのする男のほうに近づいて男に鼻をすり寄せている。僕は恐々母さんの側に寄り、隠れる。
「元気だったか、シラユキ。男の子を生んだらしいね・・・。」
ブルルル・・・・(そうよ、見てちょうだい。)
母さんは僕を鼻で押し出し、男の前に出す。僕は怖いから、男が僕を触ろうとした手を思いっきり噛んでやったんだ。といってもまだ大人のような歯じゃない・・・。
「いたた!」
「大丈夫ですか!和気さん!」
その男は苦笑しながら、牧場のおっちゃんと話している。
「武山さん!気に入りました。この子を頂きましょう!もちろんあなたに貸したお金を帳消しにいたしましょう。もう誰にも売らないでくださいよ。」
おっちゃんはたいそう喜んであの男と家の中に入っていったんだ。
母さんはもともとあの男の馬だった。母さんの引退が決まったときに、おっちゃんはあの男に譲って欲しいと頼み込んだらしい。男は条件を出した。それははじめの種付けは僕の父さんですること・・・。もちろんおっちゃんは承諾して、この男からお金を借りて母さんを引き取り、そして父さんの種付けの権利を買ったんだ。そして期待通り男馬の僕が生まれたわけさ。
母さんは僕があの男に引き取られることが決まって喜んでいたよ。
「坊や。あの人はとてもいい人よ。馬が大好きで、とても大切にしてくれるの。なかなか勝つことが出来なかった私にもやさしく接してくれて、ありがたかったわ・・・。私は何頭粗末に扱われる競走馬を見てきたことか・・・。競走馬は走って勝つことに価値がある生き物なのよ。勝てない私は価値のない馬だったのに大切にしていただいたうえにこうしてやさしい武山さんに引き取られたのだから・・・。坊や、きっとあの人の期待に沿えるようにがんばりなさい。」
まだ生まれて数ヶ月の僕は母さんが何を言っているのかよくわからなかったんだけど、母さんが言うことだからきっと本当のことなんだろうなって思ったんだ。
ドリーム・クエスト (8)お兄ちゃんの謹慎と派遣
年が明けて、あたしと雅和さんの子供、雅と彬は随分大きくなったの。もう8ヶ月。小さく生まれたなんて信じられないくらい。特に雅はもともと大きく生まれたから、彬よりも一回り大きいのよね。よく食べて飲むし・・・。そういうところはあたし似(?)なのかもしれない。彬はよく風邪引いて目が離せない事があるけど、まあ大きな病気はしていないの。
雅和さんも1年生代議士として、がんばってるんだ。この前もお父さんの派閥の新年会があって、私も行ってきたの。本当に先輩議員さんに可愛がられているみたいで安心しちゃった。ホントは心配だったの。いやいや比例代表で出馬して、当選しちゃったもんだから・・・。
所属常任委員も、防衛関係だから、うちのパパとも気があって、いろいろああでもないこうでもないって楽しそうに話しているわ。パパは陸上自衛隊のトップだけど、もうすぐ定年・・・。あと1年で退職しちゃうのよね・・・。早いわ・・・。
最近お兄ちゃんは朝霞駐屯地の東部方面第一師団に転勤になって、昇進試験をいい成績で合格。2等陸佐の昇進しました。今は官舎住まいしているらしいけどね・・・。
あたしは雅と彬を連れて実家に遊びに行ったの。パパもすごく喜んでくれて、一日中ふたりと遊んでくれてたの。ホント爺馬鹿なんだから・・・。するとお兄ちゃんが血相を変えて実家の帰ってきたの。
「親父・・・。俺とんでもないことをしてしまった・・・。」
真面目で仕事熱心なことで有名なお兄ちゃんが何したんだろう。お兄ちゃんはパパと向かい合って、話し出した。私も気になって、一緒に来ていた雅和さんに雅と彬を任せて、話を聞いたの。
「傷害事件を起こしてしまった・・・。」
パパは驚いてもう一度詳しく聞くの。
「部下を殴って怪我させてしまった・・・。ついカッとなって・・・。怪我はたいしたことなかったんだけど・・・。」
ホントいつも冷静で、部下を殴ったことのないおにいちゃんが・・・きっと何かあったのに違いない。 お兄ちゃんは十月の転勤で第一師団に入って、後方支援連隊長の役を頂いたらしくって、一生懸命がんばっていたらしいのよ。お兄ちゃんはまだ30代前半でしょ。やっぱり部下は年上が多いわけ・・・。防大卒業10年で2等陸佐だから、いろいろ悪く言う部下も多いらしくって、特に関西出身で、父親は陸自トップ、奥さんは前防衛庁長官のお嬢さんだからね。だから昇進についていろいろ噂があるのよ。パパになんとかしてもらっただの、奥さんの実家に頼み込んだだの・・・。ここまではよく言われることだから我慢できたらしいけど、ついに言ってはいけない事を言った部下がいて、カッとして殴ったらしい。それは奥さんのこと。仲はいいんだけどね、美月さんは最近育児ノイローゼ気味で、実家に帰っているの。特に今官舎に住んでるでしょ。いろいろ憶測が出てきて、美月さんについて、いろいろ悪いことを言ったらしいのよ。あることないこと言うもんだからお兄ちゃんはキレて、言った部下を引っ張り出して思いっきり殴ったらしいの。まあ怪我は全治半月ぐらいで済んだらしいんだけど、連隊中大騒ぎになって、上官にたいそう叱られたらしいのよ・・・。
「まあ殴った俺も悪いけれど、いったやつも悪い!聞いてくれよ、親父。俺は謹慎の上に減給3ヶ月だ。言ったやつは謹慎だけだったのに・・・。」
「まあ、昔と違ってそういうのは厳しくなったからな・・・。私が若いころはしょっちゅう上官に殴られ蹴られしたもんだ・・・。しょうがないじゃないか・・・。ゆっくりこれからのことを考えなさい。」
お兄ちゃんも災難だったね・・・。
「親父、この前、美月のご両親と話し合ったんだけど、代官山の美月の実家で同居しようかと思うんだ・・・。美月は一人娘だろ。育児も実家のほうが落ち着いてできるだろうし・・・。どうかな・・・。」
「まあ、そういうことは二人で決めることだと思うよ。彩子だって和気君がここに住んでくれているから、私が留守の時は安心だし・・・。美月さんが安心して生活する事が出来るなら、美月さんの実家に同居するのもいいかな・・・。ただし、博雅は源家の跡継ぎだ。そのことは頭に入れておいて欲しい。」
「わかっているよ。落ち着いたらまた別居するつもりだし、このままだと美月はだめになってしまうと思うんだよ・・・。やはり美月には官舎住まいは無理だったんだよ・・・。」
お兄ちゃんは謹慎が解かれ次第、官舎をでて、代官山の美月さんの実家に引越しすることになったの。ホントおにいちゃんも大変だよね・・・。
お兄ちゃんの話に一段落つくと、雅和さんが、パパに話しかける。そして同僚代議士の和気さんも同じ輪に入る。あたしは男4人の話に耳を傾けて見るの。
「お父さん・・・昨日僕の所属する常任委員の臨時会議があったのです。国連からPKOの派遣依頼が来ているようです・・・。」
「んん・・・。チラッとは聞いている。週明けには陸海空の幕僚長が集まって会議が入っているんだ。多分東部方面が中心に派遣されるだろうね・・・。」
お兄ちゃんは後方支援部隊だから、PKO派遣が決まるときっと、連隊長だからきっと派遣されるんだろうな・・・。お兄ちゃんは雅和さんとパパの話に耳を傾けながら、したをむいている。
お兄ちゃんは初めての海外派遣となるんだろう・・・。どこに派遣されるんだろう・・・。中東?アフリカ?東南アジア?それとも・・・・?今東アジアの某国の国民は難民状態だと聞く。もしかしてそういうところに行くのかな・・・。
「まあ、父の時代はこういうことは断固して反対していたんですが、今の首相である鍋島氏はこういうことには積極的な方だから・・・。きっと決まると思うんです。」
和気さんはこの話にはじめて口を出す。
「別にPKO派遣の件は法律的にも今のところ違憲ではない。国際的にもこの国からPKOを出さないといけないだろうね・・・・。去年の中東の不和の時、結局出さなかったわけだし・・・。今回はしょうがないだろう・・・。でもあの国に行くんだろ・・・。近くて遠いあの国に・・・。何があるかわからないのは確かだな・・・。あの周辺国家は日本の自衛隊に反感を持つものが多いと聞く。」
「お父さん、お兄さん、何とか常任委員で意見を言ってみますが、僕はまだ素人同然の扱いですので、通らないと思います。委員会の大半の同じ党の人は、この僕と派閥の違う鍋島派ですし・・・。なんだかんだ言って、弐條派と鍋島派は同じ党の中であって犬猿の仲といっても過言ではない・・・。両方とも同じくらい大きな派閥・・・。総裁選挙はちょっとの差で負けてしまったけれど・・・。」
「弐條なんとかしないといけないよね・・・。鍋島さんが総理になってから、支持率が下がり続けている。このままでは政権交代もありえるかもしれない。多分内閣不信任案も提出されるかもしれない。うちの党の分裂もありえる。ホントに難しいところだ・・・。次の総理は藤原副総理か、弐條前総理になってもらったほうがいいんではないかな・・・。」
ホントに難しすぎて、訳のわからない内容になってくる。今の防衛庁長官は鍋島派。雅和さんのお父さんが総理をしていた時はいろいろな派閥からまんべんなく内閣を決めていたんだけど、今回は違うらしい・・・。雅和さんのお父さんは前総理として、顧問をしているんだけど、何も聞き入れてはくれないというのよね・・・。ホント鍋島総理が好き勝手にやっているって感じかな・・・。時代劇で言う悪代官?それとも悪役の家老? 明日も臨時で雅和さんは常任委員会に出席するそう・・・。パパも出来る限りのことはすると言っていたんだけど、どうなるんだろう・・・。
もしお兄ちゃんが派遣されることになったら余計に美月さんはかわいそうだよ・・・。でも上官の命令は守らなければならないからしょうがないのかな・・・。 この事がまたあたしの家庭に嵐をもたらすことになるんだけど・・・。