イルカ寿司
空手で腰痛を患い、父親と医者に行った帰りの事。
当時、かっぱ寿司やスシローが
はやりだし始めの頃だったので
昼飯に安い回転寿司でも食べようと
大船駅周辺の商店街をうろついていた。
すると
「イルカ寿司」
という看板が。
看板でかなり胡散臭い感じがしたけど、
寿司に当たり外れあるという話は
あまり聞いたことが無かったし、
二人とも空腹だったので
とりあえず中に入った。
「いらっしゃ~い」
と女性の声が。
カウンターには2~3人 客が座っている。
奥では なんと 赤ん坊を背負った女性が寿司を握っていた。
寿司を握りながら子供をあやすステップを軽く踏んでいる。
もうこの時点でかなり帰りたい感じがしていたが、
とりあえずマグロと好物のえんがわを注文した。
出てきた寿司は、
ネタの上に米粒がついており、
若干ではあるがシャリがネタよりでかく、
細長い。
口に入れて更にびっくり。
マズイ。
想像以上にまずい。
今でも父親と思い出す。
シャリに対して酢の量がかなり多い。
箸でつまむと、すぐに崩壊してぐじゃぐじゃになった。
それでも頑張って無理矢理口に運ぶと、
食感はぐっと握ってあるようで、米の密度がスゴイ。
ネタも、半冷凍状態で、シャリシャリ・・・
味は酸っぱいシャーベットのよう。
寿司でここまでまずくなるものなのか・・・
結局、その後頼んだ2皿(何を頼んだかは忘れたが)
で店を出る事にした。
出る間際に更なるミラクルが。
カウンターに座っていた客の一人がカウンターの女性に言った言葉
「で、おやじさんいつ退院してくるの?」
...........................
オヤジ退院するまで、店しめとけや!!!
終
次回、
「一流らしいが、黒人が握る寿司にある抵抗は
隠された自分の差別心なのか」
にご期待ください。
危険な体験 ストリップ1
ストリップショーをやっているバーに行くことになった。
自分はそういう店に行くのは生まれて初めてで、
生で女の裸を拝むのも生まれて初めてだった。
ペードロにその話をしたら、
「カズワキ、実は僕もそうなんだ」
と童貞カミングアウトを便乗された。
自分の居た街、オハイオ州
シンシナティはポルノに非常に厳しく
街にポルノショップ「ペントハウス」が出来たときは
暴動が起きたほどだ。
なので、自分達の行く店はひそやかな感じだった。
店について中に入ると、
小さなロビーの部屋があり、おっさんが立っていた。
おっさんの風体は禿げあがっていて、
口ひげを生やしたスペインの中年オヤジ風だった。
(フロムダスクティルドーンという映画に出てくる
チェットプッシーがまさにそれだ)
来客は多く、自分達が入り方がわからずマゴマゴしている間に
どんどん人が入っていった。
観察していると、どうやらそのオヤジに10ドルの入場料と
2ドルくらいのチップを払って、ようやく中には入れるようだ。
まず、ビチェンソが見よう見まねで金を渡すと
すんなりとチケットを渡され、中に入れた。
次に自分。自分は実は19だったが、
おっさんにはアジア人の年齢が良く分からなかったようで
すんなり入れた。
ビチェンソと店の中でペードロを待っていると、
おっさんがペードロに向かって何かいってる。
「アンダァトウェンティワン!?ゴッ!ゴッ!
(おまえ21歳以下か!?出てけ!出てけ!)」
どうやらペードロの年齢(自分の一個下の18)がばれたようだ。
ペードロは、
「僕は見た目は男の子だけど、実は大人なんです」
とわけの分からない言い訳をしている。
ペードロだけ置き去りにするのはまずいので、
自分とビチェンソはとりあえず外にでた。
ペードロが
「残念ですが、今回はあきらめましょう」
というと、ビチェンソは
「俺がこの日をどんだけ待ったと思ってんだよ!
なんとか入るよ!」
と言い、車のトランクからビチェンソ御用達のスーツを出してきて、
ペードロに着せた。
「これでお前も成人だ」
ビチェンソは満足げだったが、
ビチェンソの身長は180cm、ペードロは168cmくらいなので
どう見てもスーツが全然合わない。
それだけでは不安だったので、
ペードロの顔に自分がマジックインキで髭を描き、
眉毛も真一文字につなげて別人を作り上げた。
ペードロの見た目は、
「子供が怖がる」等のクレームで
すぐに発売禁止になる気持ちの悪いマスコットのようになった。
準備が揃うといざおっさんの元へ。
おっさんはペードロを見つけるなり目ん玉をひん剥いて
「アゲィン ユゥゥ~~!???!?
ゴオッ!ゴオッ!
(またお前か!でてけ!でてけ!)」
とあっさり見破り、さっきより怒り出した。
やばいと思ったのか、
ビチェンソはすかさずおっさんに近づいていき、
なにかゴニョゴニョ話し出した。
すると、おっさんは普通にペードロにもチケットをわたし、
「はやくいけ」と言わんばかりにシッシッと手を振った。
どうしたの?とビチェンソに聞くと、倍額のチップを払ったそうだ。
なるほどそんなものか。
そんなこんなで、中に入ると、
三つの舞台で裸の美女達がポールダンスをしていた。
「オオゥ!メーン!」ビチェンソは大喜びだ。
ペードロも、開いた口がふさがらない。
自分も、美女達のあられもない姿に、あっけにとられた。
席に座るとウェイトレスがつまみを持ってきてくれてた。
大事件は、それからすぐに起こった・・。
唾毛
そのテンパでフケまみれの髪の毛を眺めているとふと思い出した。
そういえば・・・。
汁ははじめてあったとき、
ロン毛だった。
かなりの長さで、ポニーテールのように後ろに束ねていた。
理由を聞くと、
フレンチの男は、髪が長いと「甘さ」が出て
モテる。
という馬鹿な理由だった。(まあ実際顔がいいので似合っていたが)
汁がフランスに帰国してアメリカに戻ってきた時、
自分が車で迎えに行った。
空港のゲートで待っていると、
向こうからスポーツ刈りになった汁が現れた。
どうやら父親にロン毛を怒られて、切ったらしい。
しかし、よく見るとおでこと髪の毛の生え際から、
鼻筋に沿って
長い毛の束がたれている。
たれている毛は胸まで伸びていた。
イメージとしては
ストリートファイターに出てくる、
ガイルの相棒、ナッシュを想像していただきたい
(まあ、あんな風に
伸びていった髪の毛の先がたれてるわけじゃないけど)
汁は、おしゃれとして、
長かった毛をその部分だけ残したそうだ。
はたからみたらなんだかよく分からないセンスだが、
本人はえらく気に入っていた。
しかし、時折その毛はばらついて視界をさえぎるようで、
汁はよく唾を指につけムース代わりにし、
固めながら捻りあげていた。
なので
顔に近づくと鳥の糞のようなにおいがした。
自分はその毛をスピットヘアー(唾毛)と銘銘した。
汁が帰ってきて2日後くらいに汁の彼女モニカが家に遊びに来た。
駐車場の窓から家の中を覗き込んだモニカは、
汁の髪型を見て、ニッコリ。
前々から汁の髪型を馬の尻尾と呼んで毛嫌いしていたので、
さわやかになった髪形は気に入ったようだ。
しかしその直後事件は起こった。
モニカが汁の唾毛を確認するや否や、いきなり鷲掴みにして
引っこ抜いた。
抜けた毛の先には汁の頭皮らしき白い塊が、
転々と付いており
一見火がつき始めの線香花火のようだった。
汁はおでこを押さえ込んでその場にしゃがみ込み、
モニカはそれをポイと捨てて汁の部屋に入っていった。
汁はしばらくして立ち上がり、
頭を抑えながら拾い上げた手には
物悲しい線香花火の残骸。
汁はそれを自分に見せて、
「こんなに根っこがぬけてるぜ!」
と引きつった笑顔を見せた。
危険な体験 ダウンタウン編
当時の犯罪都市ニューヨーク、ロスアンゼルスと違い
片田舎でのんびりとした平和な雰囲気の場所だ。
しかし、危ない体験をした事が2回ある。
その1個目。
平和といっても、そこはやはりアメリカ。
地元の人はあまり近寄らない危険な地域があった。
そこはダウンタウンの直ぐはずれの住宅街で
相当数のホームレスやチンピラがたむろしている。
街のアパートや看板は落書きだらけ、
昼間でも時折薬の売人のような人間も見られるような場所だった。
それは、夜にダウンタウンで働く友人の店に遊びに行こうと
車を走らせていたときのことだった。
以前にもその街は何度か通ったことがあるんだけど、
昼間だった所為か
汚い街だと思っていたくらいでそれほど危険は感じなかったし、高速を使わずその地域を突っ切ったほうが
ダウンタウンに行くには便利だったので、
何気なくその街を通ることにした。
だが街に近づくにつれ直感的にかなり危険なニオイがしてきた。
夜見ると昼見るでは全然別の景色だった。
昼間はなんでもない落書きや徘徊する人々も、
暗い夜の中で見るとその怪しさがよりいっそう際立って見える。
かなり危険だ。
そう思い警戒しながら走っていると、
十字路で赤信号になったのでやむをえず停車した。
軽く周りを見回すと、
近くにある歩行者用の信号の下に
フードをかぶった男達が3人たむろしてる。
そのうちの一人がこちらを見るなり
そのまま車の方に歩いてきた。
なんだろう?と思っていると、
そいつは助手席側のドアの手前まで接近してきた。
おもむろに自分の顔を覗き込んだので
目と目があった。
黒人だった。
そいつは車の窓を軽くノックした。
この時点で、相当怖い。
夜。
危険地域。
黒人。
一人。
なるべく目をあわさないようにして、
早く信号が変わるのを願った。
すると
「ガチャ」
と音がした。
見ると、助手席のドアをその黒人が開けようとしてる!
思わず、アクセルを踏み込んで急発進し、
信号無視してそのまま逃げた。
結局、そのまま車を走らせて事なきを得た。
あれは薬のバイヤーなのか?それとも強盗?カージャック?
なんにしろ相当やばかったのは確かだと思う。
まあこれはそんな危険な場所に行かなければいい、
それだけの話なのだが、
2個目の危険は、ジルとシェアしていた部屋で起きた。
危険な体験 ハウス編
ジルのルームメイトになる前、
ベネズエラ人のビチェンソ、
同じくベネズエラ人のペードロと仲が良かった。
ビチェンソとは、今で言うシェアハウスに、
韓国人のドンジュンというやつと三人で住んでいた。
ペードロは、「あしたのジョー」に出てくる
カーロスリベラの暗さを無くしたようなやつだった。
彼らは根っから陽気で
なにかというといつもホームパーティをしていた。
ある日、大学のフロムパーティがあった。
フロムパーティは、
でかい体育館のような場所でスーツやドレスを着た
大学生が集い踊り狂うという なんともアメリカンな風習だ。
パーティに行くと、
なんかもうとにかく酒を飲んで踊るという馬鹿みたいなノリで、
すごい経験が出来た!と浮かれながらわけの分からないうちに
あっという間にパーティが終わった。
ビチェンソは、
どさくさにまぎれて知らない女とどっかに行ってしまっていた。
ビチェンソの運転でパーティに着たので、
ペードロと自分は帰りの足が無くなった。
困っていると
ペードロの女友達カロリーナ(スペイン人)が
「この後、友人の家でパーティやるから二人ともおいでよ」
と声をかけてくれたので、ペードロと一緒に行く事にした。
それが大きな間違いだった・・。
カロリーナの飲酒運転で彼女の友人宅に着いた。
その家はペードロ、自分達の家に意外にも近い場所だったので、
これなら歩いて帰れると安心した。
しかし、一歩家の中に入ると
先ほどまでのノリのよいパーティとは全然違う、
妙に静かな雰囲気だった。
カロリーナは、そのまま他の友人も連れてくると言い残して、
また飲酒運転で去っていった。
その家は大きく3階建て(地下もあったらしい)で
1フロアに何部屋もあり
大学生達がシェアしてたくさん住んでいる、
寮のような状態になっていた。
家の中はすごく暗く、
明かりは変にでかい蝋燭や小さい電灯だけだった。
ペードロと顔を見合わせ、なんか変だね~とか言いながら
暗いリビングに着くと、
並んでいるソファーの上で交わっている男女のカップルが何組かいた。
よくは見えないけど、明らかに性行為をしている。
若かったので、本来なら「すげえ!」と興奮しそうなもんだけど、
なにか変な胸騒ぎがしてそれどころではなかった。
それはペードロも同じだったという。
ペードロが、まずは酒でほてった顔を洗いたいというので、
便所を探して廊下を歩いた。
廊下には、三人くらい下を向いて座っている学生らしき人影があった。
そこにもドアが何個かあり、中から明らかなあえぎ声が聞こえていた。
「アメリカ人は、フロムパーティが終わるとこんなんなるのか・・・」
と映画でもあまり再現されていない状況にいる自分を
変に納得をさせながら廊下を歩いた。
突き当たりまでいくとまたドアがあり、
その中からはあえぎ声は聞こえていなかった。
おそらくここはトイレのはずだ。
念のためその側でしゃがみ込んでいた男性に
「トイレここ?」
と聞くと、そいつはゆっくりとうなずいた。
ドアを開けると、
中は眩い白い光で満ちており、ちゃんとトイレだった。
少しホッとした。
部屋の中はユニットバスで広かったので
ペードロが顔を洗っている間、自分はユニットバスに腰掛けて待ってた。
すると、ふと正面の洗面台の下のゴミ箱が目に入った。
そのゴミ箱には山盛りにごみが捨てられている。
なんだろう?と見ていると
その中に血の付いたティッシュがあったので、
思わず中を覗き込んでみた。
すると、見たことも無い光景が飛び込んできた。
何本もの仕様済み注射器。
???
おもむろにペードロが、
「カズワーキ!(スペイン訛)ここから出るよ!」といった。
ちょっと何がなんだか分からなかったけど、
便所のドアを開けた。
すると、先ほど便所の場所を尋ねた男性が、
便所からこぼれる光で映し出された。
その光景を見て、ゾッとした。
モップのような髪型をしたその男は、
二の腕に黒い紐のようなものを巻き、口には注射器をくわえている。
注射器を手にとり、紐をくわえなおすと
おもむろに腕に注射を打ち込んだ。
自分は映画でしか見たことの無いその行為に、
動けなくなっていた。
モップ頭がゆっくりと頭を持ち上げ、自分と目があった。
「ヘェイ、ワッツアップ・・・(調子どうだい・・・)」
うつろな目と、のろくさい喋り方。完全にイってる。
すごい光景だ・・・。目の前で薬物使用してる・・。
そのまま便所から出ようとする自分をペードロが静止して、
便所に引き戻してドアを閉めた。
ペードロも状況を把握したらしい。
便所で ペードロとどうしようどうしようとおろおろしていると、
外で大きな音がした。
バンバンバン!遠くの方でドアをたたく音が聞こえる。
同時になにか怒鳴っている声が聞こえる。
「窓から逃げよう!」
というなり、
ペードロはかなり小さい窓から無理矢理体を押し出して
外に出た。自分もそれに続いた。
それから無我夢中で走るペードロについていき、
外の森を突っ切って道路に出て、
そのまま自分の家に帰った。
ペードロも自分も、大事なスーツがドロや汚れまみれ。
ペードロにドアを叩いていたのはなんだったんだろうと聞くと、
「ポリースって言ってたじゃないか!」
と怒られた。
もしあのままあの家にいたら、
自分もペードロも警察に捕まっていたのだろうか。
そう考えるとゾッとする。
そして、あのモップ頭が注射を打つ瞬間を思い出すと、
もっとゾッとする。