クリーチャーガレージキット人間のブログ -55ページ目
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馬鹿カラテ2 M先輩

帰国して直ぐ、A君と一緒に極真カラテに入門しにある道場に車でむかった。


二人とも、極真なんだから、

「鬼神みたいな人がでてくる」とか、「ただじゃ帰らせてくれない」と

思い込んでいて、正直気は進まなかった。今思えば、正直、馬鹿だ。


道場の門をたたくと、

出てきたのは、自分よりも年下に見える細い子供のような人だった。

自分よりも身長はやや高いのだが、見た目はお世辞にも強そうには見えない。

つうかぶっちゃけ弱そうだ。


道場は休みだったようで、その人は親切に対応してくれた。



入門書をもらい、帰路の社内で

「どう思った?」とA君に聞かれ、

「正直、あいつには勝てるだろw」

と親切にしてもらったにもかかわらず、調子こいてうすら笑っていた。



その後、A君は家の事情で入門がなかなか出来る状況になかったので、

自分だけ先に入門した。



1回目の稽古は、入門書をもらいに行った時のあの、子供のような人の

指導だった。この方はM先輩としておこう。


「えー、ほんとにだいじょうぶかよ~?」と思いつつ、

柔軟体操が終わり、

まず最初にやったのは、蹴りをミットで受ける文字通りの「ミット稽古」だった。


M先輩が、「じゃあ僕が持つから、蹴ってみて」

といったので、そのとおりやった。ハイキックだ。

蹴った感触は非常によく、「俺もしかしてつよいんじゃね!?」と思った。

後で考えたら、M先輩の持ち方が良かっただけだけど・・。


今度は、M先輩が蹴る番。

ミットって、結構軽いな~~とか

考えていた瞬間、思いっきり自分の手が顔面に直撃した。


ミットを持っていた手が、蹴りの威力で顔面にぶつかってきたんだ。


「いってーー!」という暇なんかなく、そのままM先輩は蹴り続けた。


自分の腕が顔にあたる衝撃を殺そうと、必死にミットを押さえている間に、

披露で、ミットはいつの間にか鉛のように重くなっていた・・・。



クラスが終わり帰り際、A君に電話した。

「あのさ、この間の人、鬼みたいに強かったよ」


A君は「そりゃそうだろ」と笑っていた。



まあ、こんなのはたぶん初心者が経験する序盤の衝撃だと思う。



実はこれからが地獄だったんだ。



馬鹿カラテ

極真会館の修行は最も厳しいなんて言われたのも今は昔の話。


健全な少年少女の育成、健康の為、美容の為
「強さ」に拘る事だけではなく、
幅広いニーズに対応し、時代と共に変化して
より多くの人に楽しくできるカラテに変化してしまった。


もちろん、「強さ」を求める人は今も健在だけど、
組織が大きくなってしまった分、
それだけでは支えられなくなってしまったんだろう。

当然だ。


自分が入門したのは、今から約10年程前。

格闘技ブームの全盛期。
まだ、「強さ」がカラテの象徴となっていたぎりぎりの時代。

今思えば、とんでもない経験をしたもんだ・・。




はじまりは、
自分がアメリカに住んでいた頃。
ルームメイトのフランス人 ジルが中国拳法をやっていた。

超が付くほどのブルースリー信者で、
「俺の名前、チャイニーズレター(漢字)でどう書く?」
と聞かれたので「汁(ジル)」と教えてやったら、
車のバンパーにデカデカと
「汁」という自前ステッカーを貼っていたアホだった。

まあ、こいつのエピソードは腐るほどあるので後回しにして、
とにかくそいつがうるさいやつで、
なにかと強さをアピールしてくる。

自分には喧嘩する技量と度胸がないから、
歯がゆいと思いながらも
彼の自慢に対しては「すごいねぇ」としか答えようが無かった。
むしろ、男として腕自慢出来る事は、うらやましくもあった。


そんな時、高校の友人 A君がアメリカを尋ねてきてくれた。

彼は格闘技が好きで、昔カラテを習った経験があった。

これは面白いと思い、
「俺のルームメイトがうるさいんだけど、やっつけられる?」
と聞いたら、二つ返事でOKだった。

二人はK-1のようなキックボクシングスタイルとルールを決めて、
早速闘った。

始まってすぐ、A君のローキック1発で「汁」は
苦痛に顔をゆがませ、そのまま沈んだ。

「ざまみろ!」
と思ったのもつかの間、当然自分もそのK1ごっこをやらされて、
一番こっぴどい目にあったけど・・。


でもその時、かくも強いことはうらやましい!
と本気で思った。

直ぐにA君にどうすれば強くなれるとたずねると
「極真カラテやればいいよ」と教えてくれた。



帰国してすぐ、カラテをやろうと思った。
それが地獄の始まりだったんだけど・・。
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