馬鹿カラテ2 M先輩
帰国して直ぐ、A君と一緒に極真カラテに入門しにある道場に車でむかった。
二人とも、極真なんだから、
「鬼神みたいな人がでてくる」とか、「ただじゃ帰らせてくれない」と
思い込んでいて、正直気は進まなかった。今思えば、正直、馬鹿だ。
道場の門をたたくと、
出てきたのは、自分よりも年下に見える細い子供のような人だった。
自分よりも身長はやや高いのだが、見た目はお世辞にも強そうには見えない。
つうかぶっちゃけ弱そうだ。
道場は休みだったようで、その人は親切に対応してくれた。
入門書をもらい、帰路の社内で
「どう思った?」とA君に聞かれ、
「正直、あいつには勝てるだろw」
と親切にしてもらったにもかかわらず、調子こいてうすら笑っていた。
その後、A君は家の事情で入門がなかなか出来る状況になかったので、
自分だけ先に入門した。
1回目の稽古は、入門書をもらいに行った時のあの、子供のような人の
指導だった。この方はM先輩としておこう。
「えー、ほんとにだいじょうぶかよ~?」と思いつつ、
柔軟体操が終わり、
まず最初にやったのは、蹴りをミットで受ける文字通りの「ミット稽古」だった。
M先輩が、「じゃあ僕が持つから、蹴ってみて」
といったので、そのとおりやった。ハイキックだ。
蹴った感触は非常によく、「俺もしかしてつよいんじゃね!?」と思った。
後で考えたら、M先輩の持ち方が良かっただけだけど・・。
今度は、M先輩が蹴る番。
ミットって、結構軽いな~~とか
考えていた瞬間、思いっきり自分の手が顔面に直撃した。
ミットを持っていた手が、蹴りの威力で顔面にぶつかってきたんだ。
「いってーー!」という暇なんかなく、そのままM先輩は蹴り続けた。
自分の腕が顔にあたる衝撃を殺そうと、必死にミットを押さえている間に、
披露で、ミットはいつの間にか鉛のように重くなっていた・・・。
クラスが終わり帰り際、A君に電話した。
「あのさ、この間の人、鬼みたいに強かったよ」
A君は「そりゃそうだろ」と笑っていた。
まあ、こんなのはたぶん初心者が経験する序盤の衝撃だと思う。
実はこれからが地獄だったんだ。