前半は、横浜公演ではブラームスを弾いたレオニダス・カヴァコスをソリストに迎えてのメンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
カヴァコスのメンデルスゾーンを聴いたのは、2002年11月のN響第1472回定期公演に於けるウォルフガング・サヴァリッシュとの協演以来。
第1楽章のほの暗いオケの導入句に乗って提示される第1主題美しさ第2主題繊細さ第2楽章主部平安さ中間部暗い情念第3楽章喜悦…。今回も素敵なソロでした。
またバックのブロムシュテット&ゲヴァントハウス管素晴らしかったこと。一音一音が意味深く響いていましたが、わけても第3楽章主要主題再現に於けるオブリガート美しさ格別でした。
ソリスト・アンコールバッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番~ガヴォットがまた、明るく伸びやかな佳演でした。
或いはニ長調のブラームスの協奏曲に対してはニ短調の第2番のサラバンド、ホ短調のメンデルスゾーンの協奏曲に対してはホ長調の第3番と、意図して同主調の作品を以て充てたのでしょうか。

後半は、ブルックナー/交響曲第7番(ノヴァーク版)。
この感動を、いったいどう言い表せば良いのだろう
第1楽章冒頭弦の原始霧とその中から立ち上がる息の長い第1主題の提示の、何と深々として美しかったことか。此処で早くも涙腺が…。
一つ一つのフレーズ意味深くまた瑞々しく息づいており(ブロムシュテットの90歳が信じられない)、展開部冒頭透徹した寂寥感等は正に絶品
第2楽章第1主題の深い哀惜の響きと第2主題慰藉の念。ノヴァーク版使用とされていましたが、頂点でのシンバルトライアングルはハース版同様カット(私はその方が好ましく思える)。
宇宙の鳴動を想わせるような第3楽章主部凄絶さ物思いに沈むような中間部、そして第4楽章推進力に充ちた第1主題とやや哀調を帯びた第2主題との対比、所謂「ブルックナー休止」意味深さ雄大コーダ…。
客席も曲が進むにつれ、いつしかしわぶき一つ聞こえなくなり最後の和音が閉じられた後、長い沈黙を置いてから熱狂的な拍手と歓声が。
1987年の大阪フィル練馬公演に於ける朝比奈隆名演を皮切りに、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ、チョン・ミョンフン、小澤征爾、尾高忠明、飯守泰次郎、大野和士等々、相応の数のこの作品の実演に接してきましたが、これ程の感動に包まれたのは、その朝比奈の演奏と1995年2月のN響第1253回定期公演に於けるホルスト・シュタインの演奏、

そして2011年9月のN響横浜公演に於けるブロムシュテット自身の演奏位でしょうか。
ブロムシュテット日本での演奏としても、1996年9月のN響第1300回定期公演でのベートーヴェン/交響曲第5番、2010年4月のN響第1670回定期公演でのマーラー/交響曲第9番、同第1672回定期公演でのブルックナー/交響曲第5番、2011年9月のN響第1706回定期公演での竹澤恭子とのシベリウス/ヴァイオリン協奏曲、同第1707回定期公演でのレイフ・オヴェ・アンスネスとのラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番等々、N響ゲヴァントハウス管バンベルク響等と繰り広げてきた数々の名演比肩或いは凌駕する、屈指の演奏だったのではないでしょうか。