9/17(土)15:00からNHKホールで、N響第1707回定期公演(9月Cプロ定期)2日目を聴きました。
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Cプロ定期2日目は、土曜の午後とあってか概ね毎回客の入りは好調なのですが、今回は、曲目がラフマニノフ/ビアノ協奏曲第3番とチャイコフスキー/交響曲第5番、ソリストが昨今高い評価を受けているレイフ・オヴェ・アンスネス、そして指揮が先週のAプロに引き続き名誉指揮者の巨匠ヘルベルト・ブロムシュテットとあってか、チケットは完売でした。
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私はアンスネスの評判は耳にしてはいたものの、演奏を聴いたのは今回が初めてです。
またブロムシュテットの演奏には、N響の公演、及びサンフランシスコ交響楽団やライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の来日公演で幾度となく接してきましたが、氏のラフマニノフにチャイコフスキーといったロシア物の演奏を聴いたのは、実演のみならず放送・CD類を併せても、今回が全くの初めてでした。

さて前半のラフマニノフ、第1楽章冒頭の、ブロムシュテットのタクトの下で響く木管と弦の短い導入句、そしてそれに続きアンスネスが紡ぎ出す第1主題とそれを支える弦の音型、その密やかで清澄な響きからしてすっかり魅了されてしまいました。
超難曲とされるこの協奏曲ですが、アンスネスは決して技巧の誇示には走ることなく、あくまでも真摯で抒情的、ニュアンス豊かな演奏に徹していました。魅せ場の1つであるカデンツァの頂点でも、充分な力感・量感を感じさせつつも、なおかつ力ずくで粗い印象を与えることは一切ありませんでした。
彼がノルウェー出身であること、またブロムシュテットが独墺系音楽と共にシベリウスやニールセン等も主要レパートリーとしていることからか、何処か北欧音楽を聴いているかのような想いにも捉われました。重厚・甘美でメランコリックかつ華麗でヴィルトゥオーソ的な、如何にもロシア物といった演奏を期待していた向きには物足りなく聴こえたかも知れませんが、私はこのような清澄なラフマニノフの演奏もあって良いのではないかと思いました。そしてフィナーレの最後、両者がそれ迄抑えてきたものを一気に解き放つかのように、壮麗なコーダに突入…。
アンコールでアンスネスが採り上げた、グリーグ/「抒情小品集」第5集~第2曲「ノルウェーの農民行進曲」は、お国ものとあってか、共感と純朴な美しさに満ちた好演でした。
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さて後半のチャイコフスキー/交響曲第5番、実は私は学生時代に聴いたこの曲のカラヤン&ウィーン・フィルのCDの余りの空疎さに幻滅させられて以来、どうにもこの曲、とりわけ終楽章が好きになれないのですが、何故ブロムシュテットがこれを選んだのか、そしてどのような演奏をするのか…と、興味と不安の相まった複雑な心境で臨みました。
ブロムシュテットのアプローチは前半のラフマニノフ同様清新な趣で、強烈な最強奏も曲にアクセントをもたらしつつも決して粗くはならず、純粋な音楽美に満ち充ちていました。件の終楽章も空騒ぎになることなく、地に足の着いた構築性に拠っていたと思います。
しかしやはり一番の白眉は、この曲の華とも云うべき第2楽章、次いで第3楽章でした。後者のワルツの典雅さは例えようもなく、また前者は作曲者の指示の「カンタービレ」通りの、正に心からの歌に溢れた感動的な演奏で、時折眼が潤んできました。
でも…ブロムシュテットの名演を以てしても、あの終楽章の存在故に、どうしても私は交響曲としてのこの曲は好きになれません。個々の楽章だけを取り出せば、少なくとも第2・第3楽章は大好きなのですが。
それと今回残念だったのは、終楽章のコーダのクライマックスに突入する直前の一瞬のゲネラル・パウゼ(総休止)で、拍手が少なからず巻き起こってしまったこと。幾度かこのblogでも触れていることですが、何故もっと待てないのでしょうか。