※ 注:下記内容は2010年当時知人に宛てたメールを基に再編集したものです。

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4/11(日)午後、NHKホールに於けるN響第1670回定期公演(4月Aプロ定期2日目)で、私の大好きな名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットの指揮による、マーラーの不朽の傑作「交響曲第9番」を聴きました。

演奏会に足を運んだのは昨年5月のN響定期以来です。

第1楽章の導入が比較的あっさり開始されたので「?」と思ったのですが、続く第1主題が2ndヴァイオリンから1stヴァイオリンに引き継がれる辺りから、その美しさに早くも涙腺が緩み始めてしまいました。
展開部の凄絶さ、そしてアルバン・ベルクが「マーラーの遺した最も美しい音楽」と評したコーダ等、何れも素晴らしい出来でした。

第2楽章の粗野な諧謔性も良かったです。

第3楽章の尖鋭的な主部は、最初少々テンポが遅く切迫感がやや薄いようにも感じましたが、終楽章を予告する中間部の美しさ、そして主部の再現に於ける金管の咆哮、圧倒的な迫力での終結には、思わず会場の一角から拍手が起きてしまった程でした。

そして暫しの間合いの後、荘厳で崇高なアダージョの終楽章が始まった途端、再び涙と体の震えを抑えることが出来なくなってしまいました。

最後の一音が再弱音で閉じられた瞬間、その余韻を突き破るようにフライング拍手が起きてしまったのは残念でしたが、その後あの広大なNHKホールが、熱狂的な拍手とブラヴォーの坩堝と化していきました。
コンサートマスターの篠崎氏が客席に向け一礼し団員が引き揚げ始めても拍手は鳴り止まず、今一度ブロムシュテットが舞台に呼び戻され、歓呼を以て迎えられました。
このような光景は、故・朝比奈隆の晩年の演奏会ではよく眼にしていましたが、ブロムシュテットの演奏会では私は初めてです。

私が今迄に接したこの曲の実演の中では、小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラ、そしてガリー・ベルティーニ&東京都交響楽団の演奏と並ぶ感動的名演だったと思います。何か壮大な落日を見るような想いがしました。

それにしてもブロムシュテットは…とても今年83歳を迎えるとは思えません。