※ 注:下記内容は2010年当時知人に宛てたメールを基に再編集したものです。

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4/21(水)夜、サントリーホールでのN響第1672回定期公演(4月Bプロ定期初日)を聴きに行きました。
サントリーホールに足を踏み入れたのは久しぶりです。

指揮は今回もブロムシュテットで、曲目はブルックナーの傑作の一つ「交響曲第5番」(ノヴァーク版)。

Bプロ定期は、客の大半を従前からの年間定期会員が占めている為、1回券を購入しようとするといつも争奪戦になりますが、今回の分は発売開始の2/21(日)10:00と同時にN響ガイドにひたすら電話を掛け続け、何とか手に入れました。

開演前「チケット買います」と書いた紙を掲げた男性が、入口前に独りぽつねんと立っていました。

ブロムシュテットのブルックナーを生で聴いたのは、何れもN響定期で、交響曲第3番(普段は採り上げられない第1稿による演奏)と交響曲第4番「ロマンティック」に続き今回が3回目。

第1楽章序奏の、変ロ長調で低弦がピツィカートで下降・上行を繰り返す上に乗って2ndヴァイオリンとヴィオラがなだらかな旋律を奏で、その後突如変ト長調の総奏が出現する辺りから、既にその演奏に魅せられ自然と頬が緩んできました。
主部の第2主題は少々彫りが浅い気もしましたが…。

第2楽章副主題の豊麗さ、第3楽章のスケルツォ主部の荒々しさと中間部ののどかさとの対比も充分。

そして終楽章主部の壮大なフーガは天上の音楽を聴くような思いがしました。
コーダのクライマックスに向けてのクレッシェンドでは胸が高鳴り、圧倒的な総奏での集結ではまた涙さえ出てきました。

第3番が採り上げられた折は、終演後若い聴衆層が盛大な拍手を送っている中で、年配の聴衆層が逃げるようにそそくさと席を後にしていたのを覚えていますが、今回はそのようなこともなく、殆どが最後迄席を離れず熱烈な拍手を送っていました。
皆圧倒され感銘を受けたのでしょう…。あっという間の1時間半でした。

2001年4月に大阪のザ・シンフォニーホールで聴いた朝比奈隆&大阪フィルの同曲の演奏に比べると、最強奏で響きが混濁してしまうきらいはあったものの、少なくともユッカ=ペッカ・サラステ&N響の駄演に比べれば段違いの演奏でした。

終演後、私を含め何人かがあわよくばブロムシュテットのサインを貰おうと楽屋口へ行ったのですが、「ひょっとしてサインを御希望ですか?マエストロは多分なさらないと思いますよ…」との係員の言葉に、止むなくすごすごと帰途に就きました。