大震災のあった年の春に家事調停委員になって、4年が経過した。家事調停委員は最高裁判所規則に基づいて任命される、非常勤の国家公務員と言う身分である。



年齢は原則40歳以上で70歳未満、資格は弁護士や紛争解決に有用な知識を持った人又は社会生活で豊富な知識経験を持った人とされて、多くの人はこの最後の基準で選ばれる。私が調停委員になったのは、先輩で民事調停委員になった人がいたからだが、会社仕事から、解放され社会との接点を失うことを恐れたからでもある。



何故家事調停委員なのかは、民事調停の多くがサラ金等の借金整理のような事案であると言うことを聞いていたからで、それよりは人間臭いほうが良いように思えたからである。それと借金問題の解決は、司法書士や法律事務所が盛んに宣伝するように、調停事件としては扱われなくなって、事件が減ったとも聴いていた。



調停委員になるには、住んでいる地域の家庭裁判所に応募するための書類を要請し、返信用切手と封筒を同封して取り寄せる。選考手続きは裁判所によって違うようだが、私の場合、履歴書、志望の動機などを書いて提出した。



しばらくすると呼び出しがあって、後でわかったことだが、調停担当の裁判官、書記官等が面接をし、調停を扱うには何が大事だと思うかなどと聞かれる。そして改めてあたえられたテーマで小論文を書いたと言う記憶であるが、この手順は裁判所一律ではないようである。



初夏のころから始まって、任命は翌年の4月だったから、少なくとも89か月はかかっているように思う。任命は秋にもあり、ちょうど半年ずれると、10月採用となるが、選考の期間中には欠格事由に当たらないかを調べているのかもしれない。



民間の会社の面接なら、交通費が支給されたりするが、裁判所への行き来は自前で行う。任用されると、「最高裁判所」と書いた辞令書が交付され、麗々しく角印が押してあり、任期は二年である。



調停委員の報酬は時間によって一日8000円~1万5000円程度だが、これを職業として生活はできない。事件の担当件数にはむらがあり、私の場合週に3日も行けば多い方である。



こうして家事調停の仕事を始めたが、無論事件のことを詳らかに書くことは出来ないが、そこで感じたことなどを拾い集めて差し支えない範囲で書いていこう。

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