やっと暴力教師から解放され、2度と水泳競技などやらないと決め、高校では入部する気もなかった。
2年生の時に先生に頼まれ、練習もせずに試合に出ていた野人は県大会百m自由形で優勝したが、異様にスローピッチな泳ぎは中学から目を引き、新聞にも載った。
マナーはやや不良で、試合会場での準備体操もウォーミングアップもしない。 オリンピックも勧められたが煙草止めて練習してまでやる気なし。
生命反応のないプールを行ったり来たりするのは退屈極まりないし、勝っても嬉しくなく、むしろ頑張っている選手に先を譲りたいくらいだ。
とっくに時効だから喋っても問題ないが、高校水泳部監督の体育教師は、何度入部を頼んでも頭を丸めて頼んでも「ウン」と言わない野人を、1試合ハイライト20箱で勧誘、誘われた場所はパチンコ屋で、気が付けば隣で玉を打っていた。
と~っても面白いではないか
バレたら先生クビになるだろうし、毎月の潜水漁で稼ぎがあり本代・寿司代・タバコ代に不自由しない野人は、その見境のない心意気に負けて試合だけ承諾した、ただしタバコは不要。 進学コースは補習授業だらけで全員クラブ活動する時間が取れない。
陸上競技もそうだが、大きな水泳公式レースに水陸の練習も準備体操もせず臨む人はいない。
コンマ1秒を争う短距離に挑むヘビースモーカーもいないだろうが、それでも結果を出した。
常識的なそれらの要素と、泳ぐスピードはさほど関係がないという道理と確信を持っていた。練習すれば向上することは間違いないが大きな個人差も出る。
つまり、練習量とスピードは比例せず、直接の要因ではない。
どうすればスピードが増すのか、その理論が重要なのだ。
それが練習の目的なのだから。
努力・勉強時間が結果と比例しないのと同じだな。
トレーニングをしない狩り同様に、レースも常にぶっつけ本番だった。
練習すればスタミナも持続、もうちょいスピードも出るだろうが、そこまでしてプールで泳ぎたくないし目的も見いだせない。
まあ、普段着のままで仕方なく先生に協力したが、メダルや賞状にまったく関心がなく捨てていた。
むー母は怒ったが、いらないものはいらない。
自然界での実践で身に着けた野人泳法・理論は常識と何処が異なるのか。
自由形短距離は県大会・オリンピック問わず、水をかくピッチはほぼ同じだが、野人はその半分、しかもさほど波しぶきが立たない。
半水没自由形、縦に横にうねるように進む、つまりアナコンダ泳法だ。 先生はグラインド泳法と呼んでいた。
回転していたわけではないが、体軸のうねりがスクリューの回転に見えるのだろう。一般的なクロールでは体軸はブレない。
泳げば速いが失格になる平泳ぎは・・・ドラゴンブレスト。
自由形はそれを応用した同じ原理のアナコンダ泳法。
体軸の動き、使い方はまったく同じ。
自ら考案した変形平泳ぎを、変形自由形に応用したのだが、そんなことやれる人もいないだろう。
本来のドラゴンブレストとアナコンダ泳法は人に教えようがないし、教えても完全習得は不可能に近い。
考えて作ったわけではなく、数をこなしながら自然に身に付いたのだから。
解読不能な野人理論同様におぼろげにいきさつがわかればよい。
当時は本能で編み出したが今考えても、水に逆らわず水の抵抗をいなして浮力を活かし、疲れずに効率よく水上・水中を進むこれ以上ない泳法と言えるだろう。
プールでの競泳よりも、荒れた海や流れの速い川、潜水に適した実用的な方法だ。
小学校の夏休みはほぼ毎日川か池か海に入り、中学から高校は3月から11月まで週末は海に潜っていたが、寒さ冷たさは苦にならなった。
その中で培った水中での動き、中学で競泳に応用し、高校で省エネ理論が構築された。
基本は垂直・水平両用のドラゴンブレストであり、水と一体化した体軸の使い方が特異。世間の余計な知識は一切入っていない。
水で磨きをかけた野人理論、だから水流護身術なのだ。
幼少から色んなものを発明したが、これは最大の発明で始まりだな。 これがなければ野人理論はここまで進まなかっただろう。
正式な平泳ぎ・・誰が考案したか知らないが、これは何に使っても役には立たないバタフライと並ぶ最も効率の悪い泳ぎだな。
水の抵抗・推進力共に最悪、体力も消耗して最悪の水難から身は守れない。 その理由は・・
続く・・
アナコンダ泳法
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