水草なのにCAM植物! スクリューバリスネリア! | ミニ地球世界のプチ神様を目指して

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密閉水槽という閉鎖空間での実験。初めての方は、テーマから「バイオキューブ」の記事をご覧下さい。
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こんにちわー!

手羽先を食いつつ、膝関節の十字靭帯に思いをはせる、医者同源思想の継承者、虫歯天使です!


さて、先日、アルテルナンテラレインキー•ミニが、水草なのにC4植物だったという衝撃の事実を紹介させていただきました。


そして、さらにその後、1トン級ミニ地球「バイオキューブ」がこれまで私がつくってきたミニ地球と決定的に違うのは、ガッツリ敷いたソイルおよび川砂と、そこにバチクソに根を張る水草が、土壌に豊穣な微生物環境をつくっていることではないかと考察しました。


さて、アルテルナンテラレインキー•ミニは、「バイオキューブ」で空中に進出しているという点で特筆すべき水草です。そして、私はこいつを引っこ抜いてみたことがないので、YouTube情報ですが、バチクソ根を張る水草に間違いありません。

ただし、「バイオキューブ」において、アルテルナンテラレインキー•ミニが繁茂している範囲は、陽当たりがめっちゃ良い場所に限られます。


「バイオキューブ」で最も広範囲に根を張り巡らせているのは、間違いなく、スクリューバリスネリアです。スクリューバリスネリアは、初期の頃からミニ地球実験で使用していたので、私もこの水草についてはある程度の知識をもっているつもりでした。


というか、スクリューバリスネリアは、その栽培のしやすさゆえに初心者向け水草として必ずと言って良いほど紹介される水草です。アクア専門ショップでなくとも、ホームセンターでよく売られている入門的な品種です。一緒にメダカでも入れて、メダカにエサをあげておけば、特に肥料も気にしなくてよく、二酸化炭素添加を必要とせず、照明も安価なもので育ってしまうのがスクリューバリスネリアです。そもそもミニ地球のような過酷な環境で生き残れるのは、このような頑丈な水草だけです。そういった理由で、私はずっとこの水草を使ってきました。


「バイオキューブ」は実験室が24時間空調のため、ガンガン直射日光を当てていますが、それ以前の梅酒ビン時代のミニ地球は、基本的に北向きの窓に置いていました。それゆえ、私はこの水草が強い光と富栄養化した水の中でどれほど荒ぶるのか知りませんでした。


要するに、スクリューバリスネリアとは、強い光、栄養豊かな環境では、ものすごい勢いで成長し、しかも、比較的に弱い光、栄養に乏しい環境でもゆっくり成長するという、なんとも汎用性と適応能力の高い水草なのでした。


そして、その適応能力の高さの秘密が、光合成という観点から、少しだけ明らかになりました。キーワードは2つ。「CAM植物」と「炭酸水素イオン」です。


CAM植物とは

CAM植物とは、先日説明したC4植物と同じく、光合成の最初の段階でつくる炭素化合物の、炭素原子の数が4である特長を持ち、二酸化炭素を濃縮する能力を持ちます。

C4植物が「二酸化炭素の濃縮」と「カルビン•ベンソン回路」を別の細胞で行うという「空間的分離」という特徴をもつのに対し、

CAM植物は「二酸化炭素の濃縮」と「カルビン•ベンソン回路」を同じ細胞で時間をずらして行うという「時間的分離」という特徴をもちます。

これはどちらとも、基本的には乾燥への適応として進化したものだと考えられています。C4植物は、「二酸化炭素の濃縮」が可能なため、気孔を開いている時間が短くても、光合成に必要な量の二酸化炭素を得ることができます。これがCAM植物となると、さらに温度が低くなる夜間に気孔を開いて、明るくなる昼間には気孔を閉じたまま光合成の後半の反応を行うことができるわけです。

CAM植物の例としてはサボテンやパイナップルがあげられます。いかにも乾燥に適応してそうですが、水草であるスクリューバリスネリアからは連想が難しいです。

これは私の推測ですが、こやつらは、乾燥に適応した植物が、水中に進出したという稀有なストーリーの持ち主なのかもしれません。

無論、水中では乾燥問題などあるはずがないのですが、もしもCAM植物であることが、スクリューバリスネリアの強さの秘密だと仮定するなら、次のような推論が成り立ちます。

乾燥していようがいまいが、二酸化炭素濃縮能力は役に立つし、特に、夜間にそれを行うことは、水槽の中の他の植物との二酸化炭素の奪い合いを出し抜くことを意味すると思います。

また、Wikipedia 先生によれば、CAM植物は昼間に二酸化炭素の取り込みを行わないため、成長が遅くなるそうですが、スクリューバリスネリアは前述のように乾燥問題とは関係ないため、ひょっとしたら一日中二酸化炭素を取り込んでいるのかもしれません。これは単なる私の妄想ですが。そう考えた方が、荒ぶりモードのときのスクリューバリスネリアの爆殖ぶりをよく説明できる気がします。


炭酸水素イオンとは

光合成というのは、中学校の理科などでは、「水と二酸化炭素から、酸素と炭水化物を合成する反応」として習います。

しかし水中の二酸化炭素というのは、ざっくり分けて「遊離二酸化炭素」と「炭酸水素イオン」の2通りの形で存在します。多くの水草は、まず「遊離二酸化炭素」の方を利用し、それが足らなくなってくると「炭酸水素イオン」を使うそうですが、中には「遊離二酸化炭素」しか使えない水草もあるようです。

スクリューバリスネリアはバッチリ両方使えるということも、この水草の強さの秘訣となっていると思います。ちなみに、スクリューバリスネリアの原産地は琵琶湖だと言われています。琵琶湖はPH8のアルカリ性の湖です。このPHでは「遊離二酸化炭素」は殆ど存在できません。つまりスクリューバリスネリアは「炭酸水素イオン」を使うことに関してはスペシャリストだと考えられます。

では何故、「遊離二酸化炭素」の方も使えるのかといえば、おそらくそれは陸上にいた時代に獲得した能力なのではないでしょうか。

また貝殻などが、水槽の中でゆっくり溶けていく際に炭酸カルシウムが水に溶けるという反応が起こり、この際にも「炭酸水素イオン」が生じるそうです。似たような反応は、おそらく底床のソイル、川砂、岩石からゆっくりミネラル分が溶け出すときにも起こると考えられます。つまり、水槽内の生物の呼吸以外のルートからも、二酸化炭素を手に入れることができるのです。


これほどのスペックは、やはり、最強水草候補の一角と言うべきでしょう。こんなものがそこら中の水域に逸出したらヤバいんじゃ…と思ったら、


やっぱり。スクリューバリスネリアと同じ、トチカガミ科セキショウモ属。


1トン級ミニ地球「バイオキューブ」の、

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