水草なのにC4植物! アルテルナンテラレインキー•ミニ! | ミニ地球世界のプチ神様を目指して

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密閉水槽という閉鎖空間での実験。初めての方は、テーマから「バイオキューブ」の記事をご覧下さい。
40過ぎのキモカワ系男子・虫歯天使が前人未到の領域に挑戦する。→ In English
https://ameblo.jp/msibatennsi

こんにちわー!

あなたがシャンプーの最中に感じる背後の気配の正体、虫歯天使です!


まずはこの映像をご覧下さい。

映像の水草はアルテルナンテラレインキー•ミニ。深さ40センチの水中から水上に進出し、さらに水面で茎をくねらせ、何やら空中草むらのようなものを作り出しつつあります。


YouTubeなどでも水上化させたアルテルナンテラレインキー•ミニを栽培しておられる方は沢山見かけるのですが、ソイルの厚さを考えても、少なくとも水中で30センチ伸びた後で、更に水上でどんどん成長しているというのは驚きです。

正直、これがどのくらい珍しい現象なのかさっぱり分からないのですが、皆さんの水槽では、アルテルナンテラレインキー•ミニのトリミングをサボり続けるとどうなっていますか?


アルテルナンテラレインキー•ミニの状況を説明するために、周辺の状況を整理し直してみます。

1トン級ミニ地球「バイオキューブ」は、部屋の南側と西側に設置された大きな窓から日光が容赦なく照りつけまくるようになっています。

そのため、ミジンコウキクサとアゾラが絨毯のように水面に広がっており、そこがハダニの足場になって、ハダニとアリグモの生存競争が繰り広げられています。


ところで、このように光をふんだんに浴びせれば、オオカナダモの先端が空中にはみ出てきたり、チドメグサの茎が空中に伸びてきたりするのが普通だと思います。経験的に。

実際、「バイオキューブ」の実験開始前、なんとかフナさんを捕獲しようと、いったん、オオカナダモとチドメグサを全て出して、「バイオキューブ」の中に入ってタモアミを振り回していたのですが、取り出す前は、水上化したチドメグサの茎が無数に空中に突き出していました。

その後、オオカナダモとチドメグサを戻したのですが、チドメグサの水上化していた茎の向きがメチャクチャになってしまいました。普通なら、すぐに上に向かって茎が伸びてきて回復すると思うのですが、その前に、ウキクサが爆発的に増大して、水上葉が無くなってしまいました。

さて、何故、チドメグサをはじめとする、本来なら水上に突き出してくる水草が、そうならないのか?

いくつかの原因が考えられます。

(1)ハダニに食われる

これは観察から、かなり確信をもてます。オオカナダモの葉が僅かに水面にはみ出た所には、ものすごい数のハダニが集ま、を張って、ハダニを撃退してしまいます。アルテルナンテラレインキー•ミニでは、この現象が見られました。

(2)アゾラによるアレロパシー

アゾラは水中のオオカナダモに対して成長を抑制するアレロケミカルを放出しているらしいということが研究で示されています。

また、アゾラは揮発性のアレロケミカルも放出しており、密閉されている「バイオキューブ」の内部はいわば「アゾラ空気」で満たされており、それが水草の成長を阻害している可能性はあると思います。

(3)日光が強すぎる

「バイオキューブ」の水中では、水草達の熾烈な光の奪い合い、すなわち場所の取り合いが繰り広げられています。だからこそ、空中へ疎開することが有効な手段になるのだと思ったのですが、もしかすると、ほとんどの水草にとって空中で浴びる直射日光は強すぎるのかもしれません。当初、植えられていたマコモのように、大部分を水上に出すことを前提にした生態ではない水草がほとんどでしょう。

(4)二酸化炭素が少な過ぎる

実験開始以来、植物のバイオマスは増大の一途を辿っており、これは炭素の放出よりも固定の方が上回っていることを意味します。ただし、同時に落ち葉の分解も起こっているので、それがどう影響しているのかは微妙なところです。

少なくとも、一つの可能性としては、「バイオキューブ」の大気圏、つまり空中は、二酸化炭素濃度が低くなっているということはあると思います。


そんなふうなことを考えつつ、アルテルナンテラレインキー•ミニについて検索しているうちに、ふと、衝撃の事実を知りました。

表題の通り、この植物は水草のくせにC4植物なのです。

じゃあその、C4植物とは何か?

それは、通常の光合成では、最初に合成される炭素化合物の炭素原子数は3個であるのに対し、C4植物はそれが 4個なのです。


ちなみにC4植物の割合は種数ベースで

全植物のうちの3%程度だそうです。

一方で水草そのものは、

全植物中の1%程度の種数なので、

これを兼ね備えるアルテルナンテラレインキー•ミニがいかにエリートかが分かります。


では、そんなC4植物はどんな性能を持つのかというと、二酸化炭素の濃縮という必殺技があります。これにより、通常植物(=C3植物と言います)と比較して、遥かに低い二酸化炭素濃度でも光合成が可能です。

C3植物が光合成で成長できる二酸化炭素の下限値(光合成による二酸化炭素の吸収が、呼吸による放出を上回る=「補償点」)は40〜100ppmなのですが、高温環境下では効率が低下し、大気中の二酸化炭素濃度350ppmに近づき、成長が阻害されます。しかし

C4植物の二酸化炭素補償点は

2~5ppm!

と圧倒的に低く、最適温度も30℃以上と高いのです。これは、高温で二酸化炭素濃度が低い環境への、適応能力が高いことを意味します。


更に言えば、空中進出に成功しているのがアルテルナンテラレインキー•ミニとロタラ赤だけだという点も重要です。


ロタラ緑や、ミリオフィラム•マトグロッセンセ、チドメグサ(小さな葉3枚で頓挫している)は何故空中進出できないのでしょうか。


おそらく、空中進出できない組には個別の事情があるのでしょう。しかし、空中進出成功のロタラ赤とアルテルナンテラレインキー•ミニが両方とも赤い水草であることは偶然でしょうか?

植物の葉の赤い色素の役割には諸説あるようですが、その中でも有力なものとして「強すぎる日光からの保護」というものがあります。


ここまでの考察が正しいとすれば、ロタラ赤は強すぎる日光という難関を1つを攻略していて、アルテルナンテラレインキー•ミニはそれに加えて低すぎる二酸化炭素濃度という2つの難関をクリアしていることになります。


さらに、アルテルナンテラレインキー•ミニについては驚くべき事実が明らかになりました。生物学上の分類では、ヒユ科ツルノゲイトウ属。これは何と、

史上最悪の侵略的外来種と呼ばれているナガエツルノゲイトゲイトウと同じ属

だということです。ちなみ原産地が南米っていうのも同じです。

https://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/kankyo_hozen/attach/pdf/nagae-32.pdf

この、ナガエツルノゲイトウという植物。南米原産ながら日本でも越冬する。田んぼに侵入すれば稲を押し倒す。小さな水路ならば水を堰き止める。池に広がれば日光を遮って他の植物を駆逐してしまう。など。この時点で既にモンスターの名に値する外来種ですが、一番驚かされたのは、水辺を離れて水草だったことを忘れ、畑を覆い尽くしてしまうこともあるそうです。このような最強外来雑草と近縁種というか、属までが一致。

アルテルナンテラレインキー•ミニのスペックはこれに匹敵する可能性があります。


私も含めたアクアリウム愛好家の皆様、全ての生物の逸出に日頃から細心の注意を払われていらっしゃるかと思いますが、その中でも、絶対に外に出しては行けないメジャー水草がアルテルナンテラレインキー•ミニだと言えそうです。


1トン級ミニ地球「バイオキューブ」の、

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