ふとした時に「はじめの一歩」の話をしよう | ミニ地球世界のプチ神様を目指して

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こんばんわー!

はじめの一歩並みに、精神年齢の成長が止まっているメタボ系おじさん、虫歯天使です。


正直、はじめ一歩についての評価は、ここからの展開次第では大きく変わる可能性が残されており、このタイミングで記事にするのは早過ぎるかもしれません。一歩の現役復帰もまだなんだし。


しかし、あまりにも話の展開が遅すぎるのと、回収しきれない伏線を広げ過ぎていること、ジョージ先生が御高齢なことを考えると、今のうちに語っておかないと、何らかの不幸とともに唐突に連載が終了し、その後で何を言っても全てが後出しジャンケンになってしまうおそれは無視できません。

と、いうわけで、電子書籍版を半分くらい読み返しただけだが、急いで筆を持った次第です。


① 「はじめの一歩」ってすごい作品だよね

この文章の後半で、作品の悪口を言うためのささやかなエクスキューズというわけではないこともないのですが、現在の「はじめの一歩」があんまり面白くないにせよ、それはかつてメッチャ面白かったということが大前提にあって、「あしたのジョー」を読んでいない私が言うのも何ですが、漫画史に残る傑作の一つであり、ボクシングマンガとしてもおそらく「あしたのジョー」と金メダルを分け合うような作品だと思います。

長期連載漫画のみがもち得る、時間と物量に支えられた、登場人物の圧倒的なリアリティ。連載初期からのファンが、悪口を言い続けながらも、いまだに読み続けてしまう現象は、たぶん脳の一部が、登場人物を実在の人間と勘違いしているのではないでしょうか?

私はかつて、「美味しんぼ」に対して同じようなことを述べましたが、

このような効果において、「はじめ一歩」は「美味しんぼ」さえ上回っています。


② 森川先生の画力ってすごいよね

「はじめの一歩」は、登場人物の数がとんでもないことになっています。まず、これをしっかり描き分けることができているだけで驚異的です。

他の、いかにも描が上手い漫画家と比べてみても、例えばドラゴンボールの鳥山明先生や、ワンピースの尾田先生は、総合的な画力は凄くても、女性キャラの魅力に難がありました(ドラゴンボールはブルマ1人がヒロインなら話は変わるかも)。

ヒカルの碁やデスノートの小畑先生は、デッサン的な意味では凄い画力なんでしょうが、残念ながらそれがあんまり漫画の面白さにつながっていなかったと思います。

スラムダンクの井上先生や、ろくでなしブルースの森田まさのり先生は、漫画における画力という意味では頂点に君臨すると思いますが、森川先生はその次くらいのランクだと認識しています。ボクサーを描き分けるだけでなく、ボクシングスタイルまで描き分けていることは文句なしに素晴らしいです。

また、森川先生個人ではなくアシスタントさんの活躍あってのことだとは思いますが、後楽園ホール、両国国技館や、鴨川ジム、いつもの土手などの場所•背景の書き込みが素晴らしく、私たち読者は頭の中に「はじめ一歩ワールド」をすっかり築き上げてしまっています。戦後の拳闘の描写なども素晴らしかったと思います。どこまで史実に忠実かはわかりませんが。

あえて画力の穴を指摘するとしたら、男性キャラのケツがみんな同じで「一歩ケツ」とでも呼ぶべき、独特のペッタンコなケツです。もう慣れましたけど。あと、リングシューズ以外は、みんな同じ靴を履いていたり(一時期は迷走して、一歩たちがバッシュを履いてランニングしていた)、レフェリーが同じ人ばっかりじゃないか疑惑があったりしますが、まあご愛嬌でしょう。


③ さすがにこのグダグダ感は肯定できない

ストーリーが進むのが遅いとか、休載が多いとか、一話のページ数が少ないとか、そういったことは電子書籍でイッキ読みしているだけと化した読者には、かなり緩和して感じられます。

しかし、何というか、どの試合もどこかで見たことがあるような感じを拭い去ることができないというか。

描写などで、毎試合新しい要素が発明されている点もあるとは思うのですが、試合全体としては既視感の方が印象強いというか。

おそらく森川先生は螺旋階段を昇って作品を高めているつもりなのですが、その螺旋階段はゆっくり逆走するエスカレーターにもなっていって、駆け上がる速さがエスカレーターの降下の速さに負けているというか、そんな感じです。

だいたい、今、鴨川会長、猫田、浜団吉は何歳なんでしょう? 確か、太平洋戦争と全盛期がかぶっていたという設定だったと思うのですが。時が止まっているのと思ったら、スマホが登場したり。これらはあり得ないほどの引き伸ばしが招いた矛盾です。


④ 「はじめの一歩」ベストバウト

一位 鷹村vsブライアン•ホーク

生まれ持った素質は鷹村を超えるという設定で現れた最強の天才チャンピオン、ホーク。こいつがとんでもなく嫌な性格で、読んでいてメチャクチャムカつくんですよね。

さんざん苦戦しながらも、誰も見たことが無かった「本気でキレた鷹村」が劇的な形勢逆転からホークを追い込み、「野生と科学の融合」というボクサーの理想像を体現して勝利した試合。本当に盛り上がり、毎週かじりつくように読んでいました。高校生のときだけど(遠い目)。

二位 一歩vs千堂(ララパルーザ)

新人王決勝戦からの宿命のライバルの再戦。一進一退の攻防を経て、選手が戦いながら強くなるという「ミックスアップ」に突入していく姿は胸アツでした。

三位 一歩vs沢村竜平

作中、一歩の最大のライバルであり、目標である宮田一郎。その宮田一郎の最大の武器であるのがカウンターパンチ。そしてカウンターパンチにおいて、宮田をも上回る天才が沢村竜平です。ウォーリー戦もそうですが、一歩が内容的に完全に負けていた試合です。

最後に新型デンプシーロールの発動によって、奇跡の逆転勝利に至るところはかなり胸を打つのですが、その後のこの技の迷走を知っている人間としては、やはり複雑な心境になります。

2ちゃんねるでの指摘だったかな? どこかの誰かが非常に的を得たことを言っておられました。

「一撃必殺のハードパンチが魅力の主人公だったのに、なぜ必殺技を連打技にした?」

私もこれが「はじめの一歩」最大の問題だと思います。

今後、今までのストーリーの蓄積があるキャラクターを「消費」してしまうことを厭わなければ、かなりの盛り上がりを見せることは可能だったと思いますが(リカルドvsウォーリーはまさにウォーリーの「消費」でした)、逆に言えばそれが面白さの上限な気がします。残念ながら、上記ベストバウトのようなアツい試合を描く力は、もう森川先生には残っていないのではないでしょうか。

望みを捨てないとすれば、以下の試合が参考になるでしょう。


⑤ 「はじめの一歩」裏ベストバウト

一位 鷹村vs熊

鷹村が一度だけ、減量もしていないベストの状態で、本当に自分よりも圧倒的に強い相手と、しかも命懸けで戦ったエピソード。スピードでも鷹村を上回り、連続攻撃は読めず、パワーは木を薙ぎ倒す熊に対し、偶然、「眉間」という弱点に気づいた鷹村が九死に一生を得るというこの戦い。引き伸ばし要素、デジャブ要素がゼロで、何回読んでも面白いですね。こういう話をまた描けるなら、今後に希望がもてます。


二位 鷹村vs青木(青木と木村の過去編)

ゲームに熱中する鷹村をいきなり背後から遅い、頭を掴んでゲーム機に顔をぶつけて叩き割る青木。ヤバすぎです。それに対する鷹村も、プロレス技で圧倒。森川先生のプロレスへの造詣の深さが垣間見えました。ていうか同級生の解説が的確すぎて草。このストーリーでは、バイクに乗った木村が、路駐している乗用車との僅かな隙間を攻めようとして断念するなどのシーンでと、森川先生のボクシング以外での引き出しを見ることができます。


三位 板垣vs星

とうとう才能を覚醒させた板垣の描写が凄まじく、「はじめの一歩」で最大のインフレを起こしてしまっています。しかしバトル漫画は、インフレしたときが一番面白いというのが私が信じている法則(これもネットで読んだ、誰かの言葉)です。板垣はスランプに陥り、インフレは停滞しましたが、今後、インフレバトルが始まれば、賛否はあるでしょうが、昔のようなアツさを取り戻すことも可能かと思いました。


今、ボクシングは井上尚弥の時代。

日本人ボクサーがPFP1位の候補になることなど、もう二度とないかもしれません。この盛り上がりの波に乗って、森川先生には是非「はじめの一歩」を、単なる尻すぼみではない形で完結させてほしと願ってやみません。


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