前回、福祉に携わる人の処遇改善のことを書きました。
福祉の仕事に携わる人の待遇は十数年以上「低い」と言われており、それが今もなお続いている状態。だからこそ前回のブログで「本気の処遇改善を」とまで書きました。
しかし国の報酬改定検討チームの資料を見ると、そんな気を微塵も感じませんね。
ちょうど昨日、自分に大きく関係のある計画相談支援についての報酬改定論点が示されました。まぁ正直、そんなに期待はしていませんでしたが、がっかりですね。
ちなみに報酬改定検討チームの資料は、全てここに出されています。
細かい説明は省きますが、個人的な印象は「方向性が現実にそぐっていない」でしょうか。
国の方向性としては「質の高い相談支援の提供」を常に掲げています。もちろんそれは非常に素晴らしいことで、当然目指すべき方向であると思います。
しかし何をもって「質の高い相談支援」と言うのか。
国の答えとして「人員体制と支援体制」を挙げており、それを整えた事業所には報酬をたくさんあげますよ、と言うのが前回の報酬改定のポイントでもありました。
じゃ国はどんな事業所にたくさん報酬をあげるのか。
わかりやすく言えば、常勤専従(フルタイムで相談支援だけに従事)の職員を多く配置し、24時間の連絡体制を確保できるような事業所には高い報酬を出す仕組みです。これはざっくりとした話なのでもう少し細かい要件がありますが、それぞれの事業所の体制に合わせて報酬を設定されているのが、現在の計画相談支援に対する報酬です。
で、今回の方向性としてその傾向を強くしていきましょう、と言うのが考え方。
基本的は考え方は今までと変わりません。まぁ「メリハリ」と言う言葉を使っていないので極端な報酬格差をつけるものではないと思いますが、人員体制や支援体制が厚い事業所には高い報酬を設定しようとしているのだと考えます。
その方向性の理由として「支援の質の高い相談支援事業所の整備を推進」としています。
要は報酬を高く設定すれば、それを目指す相談支援事業所を増やすことで結果的に安定した収入を得られるようにしましょう、と言うことなのかもしれません。
ただ、今回このような資料も提示されました。

最初の資料は、相談支援事業所が事業実施にあたっての課題の調査結果です。
多くの事業所で「人材の確保」が大きな課題としており、次いで「運営費の確保」を挙げています。事実、人材の確保については今回の論点でも「相談支援専門員の数は増えているが、人員は不足している」とも言っています。研修を受けて相談支援専門員の資格を取る人が増えても、実際に従事する人員は不足している現状があります。
それにつながるのが、運営費の確保です。
運営費の確保、簡単に言えば事業所の収入です。事業所の収入の基本になるのは、報酬です。以前、計画相談の収入についてこんな記事を書きました。
この記事の中で、計画相談の収入についての試算をしました。
詳しいことは記事に任せますが、相談支援専門員1人職場で頑張ろうとすれば東京23区であれば約70万円稼げることを書きました。しかしこの「70万円」と言う数字は「1ヶ月毎日サービス等利用計画書」を書くと言う前提の計算。つまり1ヶ月休むことなく書き続け、それを毎月やり続けることで成り立つ、としたもの。正直そんなこと、自分にはできません。もっと言えば、毎月39件をやり続けることで成り立つ数字。国としては相談支援専門員1人の標準件数として「35件」としていますが、これはあくまで請求上の数。それに35件契約していたとしても、その35件が毎月計画書の作成orモニタリング報告書の作成があるわけではないので、実際にはもっと契約をしていないと試算のような数字は弾き出せないです。(もちろん、試算はものすごく極端な計算。実際にそんなことができるところはないと思いますが・・・)
その報酬について、こんな資料も提示されました。

これは「基本報酬」の届出状況の資料。
それぞれがどんな条件で基本報酬を選べるか。簡単にざっくり説明すると・・・
機能強化型(Ⅰ);常勤専従の職員を4人以上配置し、24時間の連絡体制を確保
機能強化型(Ⅱ);常勤専従の職員を3人以上配置し、24時間の連絡体制を確保
(Ⅰ)(Ⅱ)とも、1名は現任研修を修了している人を配置
機能強化型(Ⅲ);常勤専従の職員を2名以上配置し、1名は現任研修を修了している
機能強化型(Ⅳ);専従の職員を2名以上配置し、1名は常勤かつ現任研修修了
(細かい要件については、下の表の通り)

上記のいずれにも該当しない場合は「機能強化型ではない」になります。
で、自分の事業所の場合は「常勤の職員を1名、現任研修を修了、兼務の職員」なので、機能強化型ではない事業所になります。報酬としては機能強型ではない事業所の報酬が一番低く、体制が厚くなっていくにつれ報酬が高くなり、機能強化型(Ⅰ)が一番高い報酬になります。
で、円グラフの図を見てもらえれば分かる通り、多くの事業所は機能強化型ではないです。
その割合は73.8%。逆にいえば、機能強化型の報酬を算定できる事業所が少なく、一番高い機能強化型(Ⅰ)はたった3.6%しかありません。また機能強化型ではない事業所を対象に、今後機能強化型事業所の届出をするかの質問に対し65.3%の事業所が「届出はしない」と答えています。
その実情を裏付けるとも言えるのが、この資料です。

これは相談支援事業所の人員体制についての調査です。
相談支援事業所の多くは「1人職場」と言われ、事業所に1人しか職員が配置されていないことから、そのように言われます。自分も相談支援事業所としては「1人職場」であり、調査からも常勤専従で配置されているのが1人と言うのが多くなっています。さらに常勤専従として職員が配置されていない事業所も42%あり、うちの事業所もつい先日この分類になってしまいました。
このような調査結果がある中で「支援の質の高い相談支援事業所の整備を推進」は、果たして実現するのでしょうか。正直、疑問です。そもそもの話、常勤専従が配置できない事情や1人職場にならざるを得ない状況を解消できない中で、機能強化型の事業所に転換することはかなり大変な作業だと感じます。自分もうちの事業所を考えた時にお「お金」がない以上人員の整備はできませんし、それを担保できるだけの報酬になっていない以上は既存事業所の転換は難しいものと思います。また新規に事業所を立ち上げるにも、現状の報酬ではそれなりの収支が見込めなければ機能強化型の事業所は立ち上げにくいと思います。
となると、個人的な見解としては「異次元の報酬増額」が必要でしょう。
もっと言えば、福祉に従事する職員の処遇改善は、報酬の大幅増額だと思います。処遇改善手当などではなく、基本報酬を多くすればその中で施設運営をします。施設運営の大半は人件費なのですから、基本報酬を多くすれば話は早いです。処遇改善手当は報告が必要で、その報告も非常に煩雑です。であれば、最初から報酬として払えば煩わしい手間もなく、即効性を持って対応できるのではないかと思います。そもそも相談支援には処遇改善手当すらないのですから、基本報酬で対応するのが最も手っ取り早い方法と思います。
まぁそもそも、現在の報酬構造すら個人的には疑問にもっています。
相談支援は連続性の支援であり、計画を作った・モニタリングをした、会議を開いた・・・など単発の出来高を評価するものではないと思います。連続性の評価をするには、常に相談支援の体制を取っていることそのものへの評価が大事ではないのかと思います。
報酬改定の話はまだまだキリがありませんが・・・今回はこの辺りで。