事業仕分けで注目された労働保険特別会計。
労災保険の社会復帰促進等事業は原則廃止、雇用保険二事業は必要性の低いものは特別会計で行わないとされたようだ。
前者の社会復帰促進等事業とは、主に労働者保護を目的とする事業で、義肢や車いすの費用などの支給や、労災で残された遺族の就学を支援する就学援護費の支給などのほか、企業倒産などにより賃金が支払われず退職した労働者に、倒産企業に代わって国が未払い賃金を立て替える事業なども含まれている。
厳しい経済情勢の中、倒産案件も多く、立替実績は09年度を見ても、4357件、33億9100万円にも及んでいるという。これらの財源はいままでは労働保険の中の事業主負担分から支払われていた。それが今後の財源は、一般会計、つまり税金負担に変わる。
したがって、これを廃止した場合、倒産して賃金未払いになったとき、いままでの事業主負担分が税金負担に変わろうとしている。倒産させた経営者の責任は問われず、実質国民が負担するという構図になるのだ。
また、後者の雇用保険二事業には、不況時に賃金を支払いながら休業、教育訓練、出向を行う事業主への賃金の一部を助成し、雇用を維持する雇用調整助成金などの雇用安定事業と、職業訓練や、派遣労働者などへの能力開発事業とがある。
このうち、雇用調整助成金を除く雇用対策の支出(約5000億円)も、財源は基本的に事業主の保険料からまかなわれており、ジョブカード制度や、若年者雇用奨励制度など、労働者の保護や、雇用のセーフティーネットとして重要な役割を負ってきた。これらも実質は事業主負担で行わず、税金負担の方向で議論されているようである。雇用の安定について、企業が責任を負うべきといういままでの考えが変わろうとしている。
いまこの大不況下、こうした事業主負担によって労働者が守られる制度が廃止の方向に向かっており、事業主の負担を減らすことばかりが議論されていることに違和感を感じる。
法人税の減税議論もそうだ。「法人税が高いから企業が海外に出て行ってしまい、失業者が増える」ような発言が目立つが、日本の企業が海外に進出しているのは日本の法人税が高いからではなくて、途上国の人件費や物価が安いから進出しているのであって、法人税を下げたから日本に工場を戻すかといえばそうではないだろう。
実際に過去20年、企業負荷軽減のために法人税を下げて消費税制度を導入したはずなのに、雇用は増えずに賃金も上がらなかった。
労使関係、いまなお経営側の意見が強く政府を動かすようである。
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