A Flood of Music -23ページ目

アイドルマスターシリーズのSC「クレイジー・クレイジー」「瞳の中のシリウス」ほか

 

はじめに

 

 先月から期間限定で怒涛の更新(復活の「今日の一曲!」Ver. 3.0)を続けている途中ですが、幾つかの理由で今回はその流れから逸脱した記事をアップします。SCの説明および本題は次の項からなので、以下は読み飛ばしても子細ありません。

 

◆ 理由①:期限まであと約半分のこのタイミングで中間報告をしたい。

 

◇ 掲げた明確な数値目標のうち、自分でコントロール不能な「残り3」は意外にも更新開始後ほどなくして達成しました。しかし明々後日に「必要数+1」イベントが発生しますので、来月までに追加で「残り1」を補う必要があります。一方で自分でコントロール可能な数字は「あと17」もあるため、引き続き頑張る所存です。

 

◆ 理由②:検索表示タイトルの設定をしたい。

 

◇ 昨日リリースされたこの新機能は当ブログ的に重要で(試しに本記事にも設定してみました)、目標達成の確率上昇に資するため優先して取り掛かろうと思います。しかしその数は多く更新一回分;つまり今日の分+翌休止日を犠牲にするくらいの時間を要するとの想定です。

 

◆ 理由③:予定外の改訂作業を行った影響で本日分の執筆は困難と判断。

 

◇ 前々回の「今日の一曲!」の影響でMV紹介記事の一部に改訂の必要性を感じる → 差し替え程度のつもりだったのに結局20.を丸々書き換えることになる → 改定後に記事の挙動を確認したところ再びのページクラッシュ問題が発覚 → 三記事に亘って埋め込みとリンクのバランス修正を迫られる …と、藪蛇とも怪我の功名とも言える事態に陥り、新記事をひとつアップしたぐらいの感覚になっているのを免罪符にブレイクを挟みたくなってしまいました。

 

 以上です。普段なら態々このような記事をアップせず普通に休んで理由②に励むだけですが、数値目標のためにはこれ以上中二日の空白が許されないので、新規に文章を執筆する以外の方法で記事を作成しようとした結果が本記事です。

 

 

趣旨説明 ~SCって何?本記事の役割は?~

 

 SCとはSelf-Curation(セルフキュレーション)を略したもので、要するに当ブログの過去記事から自分自身で再掲を行うことを指しています。過去に一度だけこの記事で同趣旨の更新を行っており、その際は後にₙC₅(自作のプレイリストからアーティスト・作品毎に5曲を選びレビューする企画)が控えているからこそ先駆けの意味合いがあった;ついでに言えば「C」で統一する意味があったけれど、今般は急場凌ぎなので後に「アイドルマスターシリーズのₙC₅」を予定しているわけではないことをご容赦ください。

 

 【追記:2025.7.5】 本記事アップ後に鉄は熱いうちに鍛えよのマインドが芽生えたため、同シリーズのₙC₅を書くなら5曲のうちに入れるであろう楽曲「世界滅亡 or KISS」(2020)をレビューしました。【追記ここまで】

 

 さて、これまで当ブログに同シリーズがメインの記事をアップしたことはないけれど、【ブログテーマ:複合記事】や別IPの記事内でなら都度言及したことがあります。当然ながらその何れも記事タイトルからは同シリーズを話題にしていることが読み取れないため、SCとして関連記述を集約させて網羅的に閲覧出来るようにしようというのが本記事の役割です。

 

 元の表記が「THE IDOLM@STER」と「アイドルマスター」で揺れていたり、「アイマス」「デレマス」「ミリマス」「シャニマス」「学マス」と略称のみを出している場合があったりで、その全てを拾えているか微妙なままに更新日時の古い順から通時的に並べていきます。必要に応じて体裁や文面を多少変えて表示しますが、前後の文脈を解説はしないので詳細は各リンク先でご確認ください。また、一言コメントの形で各セクションに新規の文章も少しだけ加えておきました。

 

 

 

 今まで様々な理由から『アイマス』には手を出して来なかったのですが、某配信者さんの影響で作品の音楽の良さには気が付けたので、ベスト盤を中心に色々と勉強している最中です。あくまでも音楽についてのみで、ゲームはプレイしたことがありませんし、キャラ像も二次創作での知識ぐらいしか持ち合わせていないので悪しからず。
 

 これまでにも散発的にならアイマス楽曲にもいくつかお気に入りがあって(=CMや店頭広告で聴いて好きになったもの)、元から「Snow*Love」「Snow Wings」「赤い世界が消える頃」「乙女よ大志を抱け!!」「お願い!シンデレラ」は好きだったのですが、『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST!』(2013)の4枚と『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 00 ST@RTER BEST』(2015)といくつかのシングルを聴いてみた結果、なかなか良曲が揃っているじゃないかと認識を改めました。

 

 

 とりわけ好きな楽曲を昇順でいくつか挙げると、「DIAMOND」「READY!!」「Romantic Now」「アタシポンコツアンドロイド」「あんずのうた」「おとなのはじまり」「思い出をありがとう」「キラメキラリ」「隣に…」「ビジョナリー」「フタリの記憶」「ましゅまろ☆キッス」「私たちはずっと…でしょう?」「私はアイドル♡」あたりの曲名が並ぶことになりますが、萌え/電波に振り切っている曲か、曲調に関係なくメロディに切なさが滲んでいる曲を気に入る傾向があるようです。中でも割と感動したのが「私たちはずっと…でしょう?」で、聴くと出所不明の涙に襲われます。

 それにしてもアイマス楽曲は数が多過ぎて圧倒されますね。今でもちまちま集めている最中ですが、網羅出来るのはいつになることやらという感じです。カバー曲もなかなかに選曲のセンスが良くて、普段どちらかと言うと「カバーは逃げ」だと厳しい認識を抱いている自分でも、様々な世代と層にアプローチをかけている点は評価出来ると思いました。

 

 

 一言コメント:都合19曲の曲名を挙げていますが、この中から自作のプレイリストに照らして1st(上位60曲)に2025年現在でも登録しているほどのお気に入りは、「DIAMOND」「Romantic Now」「アタシポンコツアンドロイド」「あんずのうた」「フタリの記憶」「私たちはずっと…でしょう?」の6曲です。

 

 

 

 先述の独自研究に関してプロの認識を窺い知れるソースを発見したので別作品のリミックス集を例に補足します。『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS TO D@NCE TO』(2017)のブックレット上座談会に於いて、井上拓さんが前作『The Remixes Collection THE IDOLM@STER TO D@NCE TO』(2014)の制作秘話を明かしているのですが、曰く前作は著作者側(日本コロムビア)からの注釈に「原曲を壊していい」とあったためその通りにしたものの、「いささか攻めすぎてしまったらしく……(笑)」と含みのある表現で以て「次作は攻めすぎないように」の圧を背後に察せる暴露がありました。

 

 確かに2014年のは全体的にフロア志向で収録時間も長く原曲の使用は素材的という本格派のつくりである一方、2017年のは殆どが4分台とリミックス集にしてはコンパクトで且つボーカルトラックの輪郭を維持したものが多く聴き易いです。とはいえ何方のスタイルにも魅力があり、「その1」の「Twin mirror ♥ compact (Taku Inoue Future Remix)」(2017)でセンスを大絶賛した井上さんの手に成る楽曲を軸にツボを語りましょう。

 

 

 氏のアイマス関連楽曲は何れも名曲揃いだけれど、別けても代表曲と言えるのは「Hotel Moonside」(2015)かと思われます。そのプロトタイプ的な音作りに類似性を聴き出せる「Mythmaker -Taku Inoue Remix-」との関連に於いては、リミックスを通じてオリジナルの作風を垣間見るという形でクリエイターの嗜好と先見性にふれられて面白いです。また、弄るのが躊躇われるほどに卓抜した出来のコケティッシュバンガーである同曲を瑞々しい鍵盤遣いで明るい印象へと変え、奏本来の年相応な面を敷衍したと解せる「〃 -Take me away from Metropolis Remix-」については、斯様なアレンジの正解があったのかと烏屋茶房さんを讃えるしかなくなります。

 

 話を戻して「GOスト♭コースター (Y&Co. Dance Mix)」に絡めて語ると、「秘密のトワレ -Midnight Lab Remix-」はトラックメイクの方法論が近いと感じるのでリファレンスになるでしょう。原曲からの引用はサビとCメロを主として旋律性を絞った上で、Aメロの一部"chu"(或いは台詞パートの"抽"?)をカットアップしてドロップセクションを設ける鮮烈な変化にK.O.されます。原曲のA/Bメロは陶酔性が強過ぎるというかマッドサイエンティスト感に露骨さを覚えたため、思い切ってカットした井上さんによるリミックスのほうが志希のギフテッドらしさや奔放さの表現に繋がっている気がして解釈一致です。

 

 

 一言コメント:他IPの特集記事中にリミックス論を語るために引き合いに出すというニッチな触れ方ですみません。この頃は深堀りの対象が無印からデレマスへと移行していて、後に(※追記時の2023年9月頃)もっと昂じてライブ会場限定盤の蒐集にまで勤しんでいた覚えがあります。

 

 

 

 先にデレマスの楽曲「あんずのうた」(2012)にふれているのでここにも『THE IDOLM@STERシリーズ』の項を立てまして、実は「100枚近くに上る」とした今年の購入分のうち1/3はアイマス関連であることを明かします。1枚77円以下なら片っ端からポチっていったために数が積み上がりました。なぜ77円なのかを説明すると長くなるゆえ省略しますが、アイマスの楽曲はアルバムで網羅することが難しく定期的にシングルをちまちま蒐集しているのです。

 

 僕のアイマス知識は初代のTVアニメと大量の同人誌だけに依存していてゲームは一切遊んだことがなく、そのくせCDだけは無軌道に買い漁っているので実質的に音楽が先行してキャラクターを把握している状態と言えます。従って推しだの担当だのの贔屓目一切なしで純粋に音楽的な嗜好を提示出来るのが強みとお含み置きいただいて、直近のまとめ買いの中では「TOKIMEKIエスカレート」(2012)と「Radio Happy」(2016)と「Light Year Song」「Funny Logic」(共に2017)と「矛盾の月」(2020)が殊に素敵に響いた楽曲群です。

 

 同じギャル系のキャラソンでも2012年のそれはまだサウンドがJ-POPらしいと感じるのに、2016年になると出音や音像が洗練されてつくりが海外寄りになっている点に時流を聴き出したり、初代の面子が後年の音作りと見事なケミストリーを起こしている『DANCIN' BLUE』の収録曲もまた見事な熟成で味わい深かったり、『Tokyo 7th シスターズ』の「Behind Moon」(2016)に感動した時と近しい解釈の一致を見せて「月」がテーマの良曲ストックが潤い嬉しかったりと、音楽だけでも色々と楽しめます。

 

 

 一言コメント:興味がミリマス・ミリシタにまで及んできたことがわかりますね。現在でも相変わらずゲームは一切プレイしたことがないけれど、アニメはSideM以外は一応全て視聴したと言えます。推しの贔屓目がないとの発言も最早嘘で、例えば唯はかなり好きです。

 

 

 
 

 

 ひとつ前の元記事で説明した特殊な事情を再掲しますと、僕が持つアイマス関連の知識は初代のTVアニメと大量の同人誌に依存していてゲームは一切遊んだことがなく、そのくせCDだけは無軌道に買い漁っているため音楽が先行してキャラを把握している状態です。種々の理由から現物志向の性分なのもあり先達てのサブスク解禁(ついでにモバマスのサ終)も自分には縁遠い話で、1枚77円以下なら即買いの条件でちまちまCDを集めています。ここ三ヶ月の間にも再びまとめ買いを行うタイミングがあったので、その中から殊に琴線に触れたものをピックアップしましょう。

 

 

 

 歌詞・メロディ・アレンジの全てがツボだったのはmiroirの「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」(2019)です。双子のキャラソンというカテゴリに於いては今日までに多くの作品で多様な表現がなされていますが、"Oxymoron"(日:撞着語法)をテーマにする着眼点はとりわけ斬新だと思いました。大別すればシンクロやユニゾンで双子の絆をアピールしていく路線と、反対に両者の差異にフォーカスしてカウンタラクティブまたはインタラクティブな趣を見せる路線に二分されがちな中で、"Oxymoron"の概念はそれら全てを共時的に扱えるレトリックですよね。

 

 もっと対象を広く取って一般に作詞術として語れば、歌詞に撞着語法を使うこと自体は珍しくない中でずばりそのものに言及する思い切りの良さに加えて、擦られ過ぎて食傷気味に感じる「矛盾」や「二律背反」や「逆説」といったワードで良しとしなかったハイエンドな語彙選択に賛辞を呈します。楽曲を手掛けたのは烏屋茶房さんと篠崎あやとさんによるタッグで、TOKYO LOGIC Ltd.を特集した際に本曲を例示しなかったのが悔やまれるくらいには両者のセンスが光る良曲です。

 

 凪の淡々とした語り口調からぬるっと歌い出しに移行するユニークな立ち上がりでもう掴みはバッチリ、合いの手の緩いyeahと可愛らしい"Yes"のキメが心地好いディスコティックなフックに心が弾み、颯がメロディアスなパートを歌い上げる傍らで歌詞通り"マイペース"に間隙を縫って歌う凪に姉妹の関係性を見て、しかし交互に歌い継がれるプレコーラスで次第にデュエットソングらしさが増していき、波長が合ってきたところでダンサブルなサビに入るという一連の流れが実にユーフォニックだと言えます。

 

 

 レイジー・レイジーによる「クレイジークレイジー」(2018)は、アイドルソングとしては異質なほどの完成度の高さに圧倒されました。僕がジャンルとしてのフューチャー○○に若干の苦手意識を持っていることはPerfumeの記事(フューチャーベース)や、DÉ DÉ MOUSEの記事(非kawaii系FB)や、Run Girls, Run!の記事(フューチャーコア)で都度語ってきているけれども、この中では好意的な受け止めが出来ていたデデマウスの「next to you」(2018)への所感が、本曲に対して抱いたそれと近しかったので以下にセルフ引用します。

 

 『Mikiki』では「〈Kawaii〉系ではないシックなフューチャー・ベース」と形容されています …[中略]… 本曲から滲む「背伸びして大人になろうとしてみた感」にはグッとくるものがありました …[中略]… FBを象徴する"twinkly-sounding"は終始顕在化していながら、声ネタのビター加減やブラスの派手過ぎない取り入れ方が、「可愛い」と言われて嬉しいお年頃を脱していると喩えたく思います。

 

 要するにFBでも大人びたアウトプットになっていれば受け入れやすいという話で、本曲は歌詞内容からして一線を踏み越えんとする場面にシュートしているため、キラキラしているだけもしくはキュート一辺倒のサウンドでは不適格との判断に至るのは解釈一致です。この立脚地を補強したいと調べて新たに仕入れた知識としては、ジャージークラブというジャンルの要素が多分に盛り込まれている点がここで言わんとしている大人っぽさの醸成に寄与しているとわかり腑に落ちました。

 

 

 アッパーで特徴的なキックのパターンから攻めの姿勢ないし早鐘を打つ心臓の音風景を感知し、コケティッシュなボイスサンプルが刻むリズムは嬌声の如き機能を有していて誘惑に駆られそうになり、その果てを暗示させるように鳴るベッドの軋み(所謂キコキコ音)にジャージークラブの効能を知ると、なるほどこれは子供騙しではないと得心がいきます。

 

 とはいえ決して下品な仕上がりになっていないのは詩趣に富んだ歌詞のおかげか、"コーヒー"の温度変化と"映画"の再生状況を通じてタイムラインを動かす見せ方の巧さと、"空飛ぶ夢"が単なる夢から願望へと変わって"きみ"を巻き込んでいく不可逆のシークバーで、"おかしくなっちゃう"ことはおかしいことではないと外堀が埋められていくので、果たして"きみ"に抗う術などあるのだろうかと疑問ではなく反語で〆たいドラマチックさが素敵です。これで拒もうものなら、crazy for youじゃなくてgo madですよ。

 

 井上拓さんのトラックメイキングは自分の嗜好にマッチしているようで、前の記事でふれた「Radio Happy」(2016)および「Light Year Song」(2017)も氏の手に成るものと知って驚き、自作のプレイリストを顧みて「Romantic Now」(2013)と「さよならアンドロメダ」(2017)も井上ワークスとわかって更にびっくり、巧まずして白眉のクリエイターっぷりをわからせられました。

 

 本当はもう数曲紹介するつもりだったのですが、写真や埋め込みが多いせいで字数制限がキツいため泣く泣く切り上げます。「キラッ!満開スマイル」(2017)と「リトルリドル」(2018)の特筆性もカットするには惜しいのに…またの機会ですね。ちなみに前者を手掛けたササキトモコさんもまたどストライクの作家で、「キラッ!~」に加えて「アタシポンコツアンドロイド」(2013)と「秘密のトワレ」(2015)の3曲をリストの1stに登録しています。

 

 

 一言コメント:クリエイターで聴いていることの証明となるようなレビューラッシュです。ちなみに「キラッ!~」は上掲の全員歌唱のものではなく、「佐久間まゆソロ・リミックス」をリストに登録しています。

 

 

 
 

 

 というわけで万全の体調でいざミッションビーチです。ここには過去にも来たことがありますが、沖縄の海で泳げる誘惑に弥が上にも気勢があがります。思う存分レジャーを堪能していたので殆ど写真を撮っていないのと海水浴場で濫りにレンズを向けるのも憚られるため、帰りしなに収めた遠景の数枚で余韻だけ伝えるとしましょう。しかしこれだけでは味気ないため、脳内と胸中のハイテンション具合を表出させるナンバーとして、放課後クライマックスガールズの「ビーチブレイバー」(2019)を紹介します。Day 0の変なホテルに関連して少しふれたシャニマスからの一曲です。

 

 

 本曲の魅力は「平成のヒット曲のエッセンス全部ぶち込みました!」と聞こえてきそうなほどに、キャッチーなメロディが次々と畳みかけてくるところにあると主張します。その30年間には人口に膾炙するパーティーソングが数多く誕生したけれど、これさえ聴けば諸々の楽しい思い出と共に懐かしのヒットチャートが脳裏に蘇ってくるので、令和にあって平成レトロ成分を一気に取り込める欲張りセットとくればヘビロテ待ったなしです。

 

 全般的にフロウが気持ち好く、例えば"(起立 礼 号令 全宇宙が晴天)"や"パーカーのジッパー壊れた今日に"など、つい口遊みたくなるフレージングも流行歌の要件と言えます。歌詞も意識に留まるものがあり、"波をシャンデリアっぽく飛ばし"の冴えた喩えとフォトジェニックな切り抜きには感心しましたし、"一生で何度かありそうな一歩"や"嬉しくっても泣けるよ 何で?"などの青春あらわな言葉繰りも尊いです。

 

 

 一言コメント:ついにシャニマスが出てきました。元記事含め四記事に跨る旅行記の全てでシリーズの楽曲を取り立てることになった端緒です。

 

 

 
 

 

 このタイミングで紹介するのはTHE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS!のシリーズから「いとしーさー♥」(2018)です。Day 3の二次元趣味を引き摺る選曲だけれど、沖縄と陶芸をキーに脳内から引っ張り出せた楽曲がこれしかなく、寧ろよく思い付いたと手前味噌を並べます。

 

 …と言っても本曲の陶芸要素は間接的で、歌い手の一人に陶芸アイドル・藤原肇ちゃんがいるからという理由です(備前じゃなくてすみません)。各人のソロ・リミックスに注目すると、サビの合いの手「ハイ!」を最も民謡らしく発声しているのは彼女だとわかって一層の好感を持てるでしょう。

 

 

 メロディもアレンジもザ・琉球音楽の趣なので田中秀和さんらしい独特さは鳴りを潜めているものの、fumiさんによるキュートでテクニカルな韻律の歌詞と相俟って非常に中毒性の高いリズムメイキングになっている点は流石と感じます。その一部をレゲエないしダブが担っているのも聴けば瞭然ながら、田中さんの手に成るならこれくらいのクロスオーバーは独特のうちに入らないとの認識です。

 

 というよりご本人がリファレンスにBEGINの「オジー自慢のオリオンビール」(2002)を挙げていること然り、僕の中の「ザ・琉球音楽」にはレゲエとの親和性についてもインストール済であるため、2018年にトラックメイカーが選択しうる組み合わせとしては決して異端ではないと考えます。

 

 

 一言コメント:沖縄と言えばのベタな選曲ですね。本曲に関しては全員歌唱のバージョンをMONACAの枠でリストに登録しています。

 

 

 
 

 

 長かった旅行も明日で終わり、Day 3, 5, 7に紹介した大量の発掘品だけでなく各所で都度買ったお土産もきちんと整理しておかないと、チェックアウトの朝に慌て周章くことになるため、この日の自由時間の一部は荷造りに充てました。ちなみに着終えた服や海水浴グッズなどはホテルの有料郵送サービスで段ボールにインしたので、キャリーのスペースにはかなりの余裕があります。買ったものを送るのも手ですが、主に衣類だけにしたほうが重量が嵩みませんし、万一の破損や紛失のリスクを考えれば購入物は自分で運搬したいですよね。

 

 このシチュエーションに見合うナンバーとして、久川颯が歌う「Packing Her Favorite」(2022)をレビューします。三記事連続でアイマスからの選曲で何なら次の「その4」にもプランがあるけれど、作品の楽曲数が桁違いゆえにテーマも多様で旅空BGMに設定し易いメリットがあるのです。厳密には上京の歌ながらも"東京"(羽田空港)に向かう点では同じですし、最初から最後まで「荷造り」にフォーカスした歌詞は珍しいと感じます。

 

 この記事で言及した「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」(2019)で久川姉妹に興味を持ち、初めは凪の独特過ぎるキャラクター性がツボでまさにそれを体現した神曲;且つ東京メトロのCM(箭内道彦さんが手掛けた「TOKYO HEART」)っぽい世界観が個人的に強く刺さって更なる加点対象となった「14平米にスーベニア」(2021)をヘビロテしていました。

 

 

 僕のアイマス楽曲漁りはいきなり音源入手の無軌道でゲームもキャラも声優も先行していませんので、後に聴いた「Packing Her Favorite」も初聴からしばらくは颯のキャラソンと気付かずスルーしていたくらいです。しかしある時ふと本曲のプレコーラスに差し掛かった時に、「あれ?14平米に似てる?」と気付いて改めて向き合ってみると、なぜに三人称と違和感のあった曲名の「Her」について「そういうことか!」と驚心動魄に至りました。時間差で相方の楽曲を発見することのカタルシスに関しては、この記事に類同を幾つか紹介しています。

 

 ある程度キャラの知識が付いてくると互いのキャラソンの補完性も魅力的に感じられ、インドアな凪が散策メインで活発な颯が実家で荷造りという一見パーソナリティと逆転しているような歌詞内容ながら、凪のアウトドアはワンルームを充実させるためで颯の念入りな下準備はアクティブに動くためと着地点は解釈一致に描かれており、巧みな行動原理の擦り合わせだなと感心しました。

 

 

 そんな「はー」の"夢も希望も"たくさん詰め込まれた本曲は"キラキラ"なフレーズのオンパレードで、"「まもなく未来です」/チケットが呼んでる"の視界良好な擬人法の心地好さや、"あえて空けた/からっぽのかたすみ/お土産を入れるんだ/絶対 あげるね"のハッピーな計画性に共感を覚えます。一方で気弱な気持ちがちくっと胸を突く瞬間もあり、"やる気ばっかり空回りして/ぜんぜんしまらないな/パツパツのキャリー"のキャパオーバーに悩む心理や、"キラキラの世界のワタシ/ホントは未発見 だけど/ねぇ 約束するよ/見つけるよ 見せてあげるよ"で不安と期待が綯い交ぜになった本音の開陳もまた、上京あるあると言えるでしょう。

 

 ゆるくてキュートなラップが刻むライムとフロウも耳がハッピーで、ここすきラインは"東京だし負けられないし/まーけっこう顔可愛いし?(へへー)/思いっきり肩出しワンピ/ママウケ賛否? でも着たい!/(もってきまーす)"、"「そろそろ寝なさい」/バイマイマザー フロムリビング/そーこーしてたら/やばいてっぺんてマジ?"、"そーだあれも必須だ/地元じゃ着れない背伸びのコーデ/寒いとヤダしカーデ スニーカーで遠出/って待って やっぱ入んない!(えーん)"と何れもガーリーなワードで編まれたものです。

 

 更に旋律性が失せて半ばセリフと化す2番サビ後のパートもクセになる節回しで、"あぶなかしい?"と"ちゃんと考えたし!"と"…じゃあ、ちゃんと見てて?"のそれぞれで芸術的な間の取り方が披露されていると感じます。長々と書いて結局言いたかったのは、最初は凪に魅せられたのに「推しの推しが推しになる」現象で今は颯のほうが好きになっているという話です。笑

 

 

 一言コメント:久川姉妹好き過ぎ問題。長らくオタクをやっていて数多ふれてきた双子キャラに余りハマった覚えがない自分にとっては稀有な存在です。

 

 

 
 

 

 最後の音楽レビューは四記事連続でアイマスからの選曲、ミリマスのウィンターソング「瞳の中のシリウス」(2014)です。オリオン座絡みじゃないんかいとのツッコミは当然ながら、その実2023年の同流星群観測に於いては幾つか見られた流星よりもシリウスの瞬きに魅了され、1等星の中でも一際明るいだけはあるメリハリの利いた明滅のパターンに見惚れてしまったことのほうが印象に残りました。

 

 オリオン座に関しても三ツ星より小三ツ星がやけに意識上に来るなと感じ、空気がとても澄んでいたのかもしれません。一応本曲の歌詞にも"流れ星"は出てきますし、冬の大三角を形成する恒星と見ればオリオン座(ベテルギウス)とも関連が生まれるので、そこまでズレたこじつけではないと言い訳しておきます。

 

 

 本曲で殊に評価したいのはメロディラインの綺麗さです。編曲でその煌びやかさが底上げされている面もあるけれど、ワンフレーズのピアノリフを主軸に据え平歌でもサビでもオケに一貫性を持たせているのは、あくまで主旋律を立てるために過度な装飾を控えた結果に聴こえます。しかしずっと一本調子なわけではなく、サビ前のブレイクやCメロの変則で緩急を付けておりちゃんと技巧的です。1番の後すぐCメロに入る意外性もこのためかと分析します。

 

 シンチレーションは大気の屈折によるものですが、"溢れる 溢れる 瞳のシリウスが煌いて"および"零れる 零れる 瞳のシリウスが揺らめいて"と、涙液による屈折にフォーカスする歌詞も詩趣に富んでいて好きです。直接「涙」や「泣」を使用していないのが高評価ポイント。

 

 

 一言じゃないコメント:アイマスシリーズの楽曲はその絶対数の多さから最もバラエティ豊かと言え、好きになる楽曲のパターンにも色々あるのですが幾つか類型を考えてみた時に、主旋律の美しさを最重要視してリストインさせるタイプがあり本曲はその一つです。

 

 他にリストの1stからこの類型に限ってピックアップすると、「always」「Angelic Parade♪」「Special Wonderful Smile」「キセキの証」「空と風と恋のワルツ」あたりが入ってきます。アレンジにもまた別のツボがある場合はここに含めないので(これらの編曲が悪いという意味ではなく)、意外と広く対象を取らない格別のツボです。

 

 別けても感に堪えない完成度を誇っていると絶賛したいのは下掲の「SWS」で、詩花が優しく咲いかけてくるような情緒纏綿の歌詞に神韻縹渺たる錦上添花の旋律が合わさって感慨無量の面持ちになると、逆に馬鹿っぽく四字熟語を畳み掛けて語彙力消失(誉め言葉)とオクシモロンで好きを表明します。

 

 

 

 
 
おわりに

 

 以上、アイドルマスターシリーズのSCでした。他にも細々とした言及のある記事にも紹介する余地はあるのだけれど、バイト数限界との兼ね合いがあるため主要なものだけに絞ってギリギリ全てをセルフキュレーション出来ました。段々とコンテンツに沼っていくプロセスが窺えて、我ながらというか自分事なので面白かったです。