閑話休題 -22ページ目

 日本名歌220曲集   6

 

 題の曲名           歌の出き出し                     作詞者      作曲家

〇斑猫ーはんみょうー  斑猫です 南のくにの夏の日ざかりに        深尾須磨子   橋本国彦

〇黴-かぴー                  ただひとたびのおののきで                 〃         〃

〇時計台の鐘     時計台の鐘が鳴る 大空遠くほのぼのと      高階哲夫           高橋哲夫

〇朝           朝はふたたびここにあり 朝はわれらとともにあり  島崎藤村     小田信吾

〇紺屋のお六     にくいあん畜生は紺屋のお六             北原白秋      高木東六

 

〇かもめ        かもめ とんだ とんど とんだ             野口雨情       〃

〇水色のワルツ    君にあううれしさの 胸にふかく             藤原 洸       〃

〇浅き春に寄せて  今は 二月 たったそれだけ               立原道造       〃

〇夢見たものは    夢見たものは ひとつの幸福                〃                     〃

〇日の入り       海の遥かに 日の入るころは              北原白秋    斎藤太計雄

 

〇栗問答        栗と栗との 問答でござる                梅木三郎    平尾貴四男

〇麦笛         麦笛吹き吹き 行くのはだれだ             藪田義雄      〃

〇逃げた小鳥     そっと手の中に 握っていたはずの          武田雪夫      〃

〇海に寄する歌   海に向かえばわけもなく                 藪田義雄      〃

〇初恋         砂浜の 砂にはらばい                  石川啄木          越谷達之助

 

〇やわらかに柳青める やわらかに柳青める                    〃        〃

〇口笛         夜寝ても口笛吹きぬ                      〃        〃

〇夢の子守歌     ねんねんころり ねんねをすれば           越谷達之介     〃

〇白鳥の歌      白鳥は悲しからずや                   若山牧水    古関祐而

〇山なみとおく    山なみとおく春は来て                   三好達治    石田一郎

 

〇祭りもどり     祭りもどりに お月さんにはぐれ             北原白秋    平井康三郎

〇追分         誰が吹くのか 月夜の島に                  〃        〃

〇あの子この子   あの子もとうとう死んだそうな                 〃        〃

〇ぴいでぴいで   ぴいでぴいでの 今花盛り                   〃        〃

〇山は雪かよ    山は雪かよ 大寒小寒                      〃        〃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本名歌110曲集 5

    お詫び。この曲集は2冊に分かれておりまして、2冊で110曲集と考えていましたが、各巻110曲で、計220曲であることが判明しました。

 少し多いので2巻を続けることを躊躇しましたが、忘れられない良い曲も収録されているので、長くなりますがここに続けます。

 

  歌謡の題名            歌のはじめ               作詞者       作曲家

〇波浮の港         ドンと ドンとドンと 波乗り越えて     時雨音羽      中山晋平

〇出船の港         磯の鵜の鳥ゃ 日暮れにゃ帰る      野口雨情       〃   

〇鉾をおさめて       鉾をおさめて 日の丸あげて         時雨音羽       〃

〇旅人の唄         山は高いし 野はただひろし        野口雨情       〃

〇ふるさとの        ふるさとの 小野の木立に笛の音の    三木露風     斎藤佳三

 

〇赤とんぼ         夕焼け小焼けの 赤とんぼ         三木露風      山田耕作

○砂山            海は荒海 向うは佐渡よ           北原白秋        〃

○箱根八里は             箱根八里は 馬でも越すが          日本古謡       〃

○まちぼうけ        待ちぼうけ 待ちぼうけ            北原白秋       〃

○かやの木山             かやの木山の かやの実は           〃          〃

 

〇野薔薇          野ばら 野ばら 蝦夷地の野ばら      三木露風       〃

○愛と祈り         君は風 愛のそよ風               大木惇夫       〃

○唄             日が光るのみ 幼き子が詠えば       三木露風        〃     

○みぞれに寄せる愛の歌  みぞれよ みぞれ 泣くなかれ      大木惇夫       〃

○からたちの花      からたちの 花が咲いたよ          北原白秋       〃

〇宵待草          待てど暮らせど 来ぬひとを          竹久夢二     多 忠亮

○こおろぎのうた           石と医師のいだの 石と土の境に      北原白秋     名倉 晣

○ひぐらしのうた     あんないい声 どこから出るのだろう     室生犀星       〃

○草矢           郷愁の 雲へ放てる                春日順治       〃

○ちんちん千鳥      ちんちん小鳥の啼く夜さは           北原白秋     近衛文麿

 

〇お菓子と娘       お菓子の好きな 巴里むすめ         西城八十     橋本国彦

○薔薇           船の中に忘れた薔薇は               〃         〃

○旅人の歌        むせぶ潮の香娘の胸にゃ           佐伯孝夫       〃

○巴里の雪        巴里の雪は消える雪              西城八十       〃

○アカシヤの花     たそがれの 並木を行けば           松阪直美       〃

 

日本名歌110曲集 4

      歌謡の題名      歌のはじめ                 作詞者      作曲家

〇富士山みたら    度の空から富士山みたら         久保田宵二    橋本国彦

○幌馬車        見送れば 君が幌場所             西条八十       〃

○百姓唄        逢いたかんべ 見たかんべ        北原白秋        〃

○田植唄        揃うた揃たよ 田のあぜ道に       林 柳波        〃

○お六娘        お六娘は 丸顔でござる            〃          〃

 

〇なやましきおそ夏の日に なやましきおそ夏の日に      北原白秋       〃

○薊の花        きょうも 薊の紫に                〃          〃

○母の歌        ごらんよ 坊や あの海を          板谷節子       〃

○雪           雪降りぬ 音もなく              北原白秋     広石 徹

○月光          母の乳に添う みどりごの            〃        中村道之助

 

〇林檎の花が降り注ぐ 林檎の花が降り注ぐ            城 左門     宅 孝二

○秋くさ         さまよいくれば秋草の            佐藤春夫     岡本敏明

○風に乗る       風に乗る わが心               竹友藻風       〃

○ふるさとの      ふるさとの 小野の木立に          三木露風       〃

○君の瞳は海の色  白い雲 きらりと揺れてサングラス     井田誠一         服部 正

 

〇星と花         同じ「自然」のおん母の           土井晩翠       〃

○野の羊         野っぱらいいな                 大木惇夫       〃

○かごかき       よいこらどっこい よっさっさ         貴志庚一    貴志庚一

○しぐれに寄せる抒情 しぐれ しぐれ もし あの里を       佐藤春夫    平井康三郎

○九十九里浜     沖 はるかに荒れて              北見志保子     〃

 

〇あの山の       あの山の 光りものは             上州地方てまり歌 〃

○平城山ーならやまー  人恋うは かなしきものと 平城山に    北見志保子     〃

○秘唱          ひとすじの青き葦さえ             西城八十      〃

○ゆりかご       ゆりかごに揺れて                平井康三郎     〃

○けむり         達磨山から煙が上がる            藪田義雄    小山清茂

 

〇春の寺         うつくしきみ寺なり み寺にさくら       室生犀星      清水 脩

○母をよぶ歌       空に向かいて 母をよべば          吉村比呂詩     松本民之助

○わたりどり       あのかげはわたりどり             北原白秋         〃

○黒き落葉       冬の日の くぬぎ林の夕暮れに         吉村比呂詩         〃

○生れながらに     生まれながらにさだめられた          高間筆子      高田信一

 

〇あのお人       まずしい人あのお人                  〃          〃

○うばぐるま       きょうは 坊やが風邪ひいて          西城八十      中田喜直

○たあんき ぽーんき たあんき ぼーんき たんころりん       山村暮鳥        〃

○ねむの木       ねむれよねむれ ねむの木よねむれ     野口雨情         〃 

○おやすみ       おやすみ おやすみ 雁がなく         三木露風        〃

 

 

日本名歌110曲集 3

 

 歌曲の題        歌の始め                作詞者        作曲家

〇丹沢の         枯れ笹に陽がながれる        清水重道       信時潔

○沙羅           林 音なく  日の暮れは          〃          〃

○行々子        ふるさとの  河原の平に          〃          〃

○真珠          温かき潮のながれに         武内俊子       松島つね

○妹に          ごらん月は夢を描く          加藤周一       箕作秋吉

 

〇賛歌          青空のように すんだひとみの   箕作秋吉         〃

○子守歌         坊やはいいこ ねんねんよ        〃           〃

○悲歌(海の幻)    冬の海こえて わが子はさった   沙良峰夫         〃

○子守歌         まあるいまるい月が出た       柴田蔦子       大中寅二

○ふるさと        ふるさとは うつくしけれど      葛葉国子         〃

 

〇わすれなぐさ      わすれなぐさは そらのいろ       〃            〃

○椰子の実        名も知らぬ 遠き島より        島崎藤村          〃

○ほととぎす        馬鈴薯の 花咲くころに        野口雨情          〃

〇鐘のなる          鐘のなるたえまたえまに       柳原白蓮       下総皖一

○山のあなた       山のあなたの 空遠く         カール・ブッセ       〃

 

〇ふなうた          あすの泊まりは どこへつこ     三木露風       坂本良隆

○宝石            長崎の切支丹バテレンが        〃            〃

○バライソ         主 居給う パライソ           〃            〃

○別れし子を憶う    かすかなる風にも           雫石義高               〃

○浅間の馬子      寒むやから松              北原白秋          〃

 

〇春と赤ん坊       菜の花畑に眠っているのは       中原中也       諸井三郎

○少年           夕ぐれ とある精舎の門から    三好達治         〃

○小曲           おもいかすかに とらへしは    大木敦夫                     〃

○東海の         東海の小島の磯の白砂に     石川啄木       清瀬保二

○嫌な甚太        馬と並んで甚太がくるよ      山岸曙光子        〃

 

日本名歌110曲集 2

 

    歌曲題           歌の始め                作詞         作曲

〇河原菜種      だれが撒いたか サラサラ種を       浜田広介     草川 信

〇月待草        月の出る夜の うれしさに           村田米四       〃

〇昼の夢        薔薇ははなさく かげに伏して       高安月郊     梁田 貞

〇城ヶ島の雨     雨はふるふる 城ヶ島の磯に        北原白秋       〃

〇母           ふるさとの 山のあけくれ           竹久夢二     小松耕輔

 

〇垣の壊れ      垣のこわれは そのまましとけ        北原白秋       〃

〇赤い夕日      赤い夕日に ついつまされて           〃          〃

〇芭蕉         馬でめざめて 峠で明けて             〃          〃

〇砂丘の上      渚には青き 波の群れ             室生犀星       〃

〇泊り船        蘆間出て見よ 煙があがる          北原白秋       〃

   

○鐘が鳴ります    鐘が鳴ります かやの木山に           〃       山田耕作

○六騎ーろっきゅうー  御正念 参詣ーまいーらんかん           〃         〃

〇松島音頭      松は松島 磯馴の松の               〃                   〃

〇曼殊沙華      ゴンシャン ゴンシャン どこへゆく        〃         〃

〇かえり路       見やれ 夕日に 松原染まる         小林愛雄       〃

 

〇沖の鴎に      沖の鴎に潮時聞けば 私ゃ立つ鳥      日本古謡       〃

〇来るか来るか   来るか来るかと 浜に出てみれば                    〃         〃

〇母のこえ      夜風に 葦がそよぐよ              大木惇夫       〃

〇おろかしく     おろかしく 涙ながせば              北原白秋       〃

〇ペチカ        雪の降る夜は 楽しいペチカ            〃          〃      

 

〇この道       この道はいつか来た道                〃         〃

〇さくらさくら     さくらさくら 弥生の空は             日本古謡       〃

〇中国地方の子守歌 ねんねこしゃっしゃりませ             〃         〃

〇我が手の花    我手の花は人染めず               与謝野晶子   信時 潔

○子供の踊り    踊り 踊り 桃と桜の咲いたる庭で         〃         〃

 

日本名歌11-曲集 -全音楽出版社

 私は生来楽譜の音符が読めない。オンチかというとそうでもない。学生時代は童謡・軍歌・寮歌などをよく歌った。だが近頃のロックなど分からないし、分かろうともしない。

 私の書棚に掲題の本がある。発行年は分からないが,いずれにせよ昭和時代の本である。歌曲の中で人々に慕われた名曲が、楽譜付きで110曲選出されている。時々開いて好きな歌を歌っているが、それでも私の覚えている歌はあまり多くない。

 昔の旧制女学校の音楽の時間に教えられた歌の中から選ばれたようで、流行歌は一つもない。

なつかし過ぎる歌なので、全曲こ何回かに分けてこで披露したい。皆さんはどれだけご存じだろうか、

〇しるしに✔して、音楽知識を調べて下さい。

 

 

 歌曲題                歌詞の始め               作詞       作曲

〇荒城の月        春高楼の花の宴             土井晩翠    滝廉太郎

〇秋の月           ひかりはいつもかわらぬものを       滝廉太郎     〃            

〇花             春のうららの隅田川            武島羽衣       〃

〇白月           照る月の影みちて            三木露風    本居長世

〇別れし宵        タランテラおどれる暇に春はいき    竹久夢二     〃 

 

〇咲いたさくら      咲いた桜に何故駒つなぐ        日本古謡     〃

〇関の夕ざれ       鐘が鳴るかよ 撞木が鳴るか        〃       〃

〇早春譜          春は名のみの風の寒さや       吉丸一昌    中田 章 

〇河原柳          南風吹け麦の穂に            野口雨情    藤井清水

〇信田の藪        お背戸のお背戸の秋とんぼ           〃         〃

    

〇出船           今宵出船かお名残り惜しや       勝田香月    杉山長谷夫

〇秋の歌          枯れた草葉も野になきふすよ      蕗谷紅児            〃

〇片しぶき         さらりさらりと                西岡水朗      〃

〇花嫁人形        きんらんどすすの帯しめなかせら   蕗谷虹児     〃

〇小諸なる古城のほとり 小諸なる古城のわーほとり      島崎藤村   弘田竜太郎

 

〇かもめ          かもめかもめ さりゆくかもめ      室生犀星     〃

〇浜千鳥          青い月夜の浜辺には          鹿島鳴秋      〃

〇あさね          とろろん とろろん 鳥がなく      松原至大      〃

〇神田祭          祭りの日 踊り屋台に         小林愛雄      〃

〇叱られて         叱られて 叱られて あの子は    清水かつら     〃

 

〇昼             歌につかれ 文にうみて        林 古渓       〃

〇浜辺の歌         あした浜辺をさまよえば           林 古渓     成田為三

〇望郷の歌         見よや 故郷の空に          吉丸一昌       〃

〇山のかえりに      山の帰りに採って来た         久保田宵二   草川 信

〇はつなつ         雲のかがやき照る陽の光      室野たくま       〃

 詩のこと

 今まで続けて掲載して来た、「私の好きな歌人10人、詩人16人」は、 古い本箱を整理していたら、その隅から出て来たものだが、私が40歳ころ好きな詩を集めて綴ったものである。

 

 詩を愛することは、生の歩みを豊かにしてくれる。人間の「こころ」は、人体の何処にあるのだろうか。「脳」の片隅の空き間にあると言う人があるが、あの♡型の心は人体を解体しても出てこないが、実存していることは確かだ。「精神」の中核である。

 問題は、この心の♡が乾いているのか、みずみずしく潤いをもっているかである。♡の乾いた人は、

金銭を始め欲望の勝ちすぎている人で、情緒の欠けた人間が多い。科学者も♡の乾いた人と、みずみずしい潤いを持っている人の、二手あるだろう。詩を愛する人は、♡がいつもみずみずしく潤い、現世的な欲望に十二分に満たされなくとも、趣味、情操豊かに幸せに暮らしている。

 

 日本人は豊かな自然に恵まれて、歌を読むのが昔から多い。万葉集には貴族層から庶民に至るまで、人々は時々の思いを歌にしている。平安期に入れば技巧的な歌が多いが、和歌は男女ともに社交の重要な要因となった。源氏物語でも光源氏に見初められた女は、思いを歌に託し、すぐ返歌している。即席の歌に優れ、数々の上流男子を放浪した和泉式部の娘、小式部内侍は、宮廷で歌合せがある時、出席者に選ばれていたが、中納言の藤原定頼が彼女の局の前で、「歌会の歌は今丹後に居られる母の和泉式部から、もう送られて来ましたか」と冷やかすと、小式部は彼の袖を捉え引き止め、

  大江山いく野の道の遠ければ まだふみも見ず天橋立

と、即座に歌を返し、定頼はこそこそと逃げて行ったという。有名な話でこの歌は百人一首にも選ばれている。

 また芭蕉の「奥の細道」も、俳句は勿論文章もすばらしい詩に満ちている。

 

 皆さん、自らも作歌、作句、作詞してもらって、日本人として日常生活に、一片の情緒的生活を楽しまれてはいかがでしょう。

 

 

 

 

 

 

私の愛した詩人 16 大木敦夫

 

    遠征前夜                    戦友別盃の歌

 参宿-オリオン-は肩にかかりて         言うなかれ、君よ、わかれを、

 香を焚く南国の夜               世の常を、また生き死にを

 茫-ぼう- としてこは夢ならじ          海原の遥けき果てに

 パパイヤの白き花ぶさ            今や、はや何か言わん、

 はた剣のうつつの冴えや           熱き血を捧げる者の

 郷愁は烟のごとく                大いなる胸を叩けよ

 こほろぎに思いを絶えて            満月を盃にくだきて

 はるかなりわが指す空は           暫し、ただ酔ひて勢いきほーへよ

                            わが征―ゆーくはバタビアの街

     雨ーウジャンーの歌             君はよくバンドンを突け、

 雨ーウジャンー、ーウジャンーーウジャンー     この夕べ相離-さかーるとも

 氷柱-つららーの礫ーつぶてーのように       いつの夜か、また共に見ん

 燃える肌ーはだへーの沐-ゆあみーのやうに   言うなかれ、君よ、わかれを

 椰子のみどりに光る雨―ウジャン―          見よ、空と水のうつところ

 散るよ、ミモザーの花―コンパン―           黙々と雲が行き雲がゆけるを

  ぬれるよ猫ークチインー

 黒い処女ーペラワンー、腰布ーサロンー

 懶―ものうーい午後-ひるさがりー

 訴へようもない郷愁の

 渋甘い無花果-アムコーの味覚

 さらでも切ない

 やるせない

 滅びゆく国の音楽

 

 ーウジャンー、ーウジャンーーウジャンー    

 ふるえ羽ばたく小鳥ーブルウンー

 雲の翳りゆく園ーケポンー

 なまじ原色の青空をみせて

 はかないパステルの虹をかけて

 降るよ、降るよ、ーウジャンー    

 水沫-しぶきーも鏡に曇る露台ーバルコンー

  重い香りの安息香ーカメニアンー

 わが喉にむせぶ煙草よ

 思い出されるペペ・ルモコよ

 

 ーウジャンー、ーウジャンーーウジャンー

 雨季-ムシムウジヤンーのつれなさ 

 ものうさ、

 明るくて、暗いこの南ースラタンー   

 あの小路ーロロンー、あの街路ージャランー

  あの市場ーペカンー、あの辻ーシンパンー

 ーウタンー、畑ーラダンー、原ーパダンー、山ーグノーンー

 そして心に降るよ、ーウジャンー

 

 ーウジャンー、ーウジャンーーウジャンー

 ああ赤道のかなた

 海のかなた

 遠い、遠い、遠い、恋人-チンターンー・日本ージェプンー。

 

 大木敦夫 明治28~昭和52年 広島市生まれ。繊細な感性で、簡潔な表現に秀でた抒情派詩人。

戦時中海軍報道部員として南方にゆく。「海原に在りて歌える」は代表作品。

 私は戦時中の中学生の頃、村の本屋でこの歌集を買い求め、愛唱した。当時の紙質は悪かったが、幾度の転勤引っ越しにも耐えて、今も保存しており、私の青春時代残存の唯一の歌集である。

森繁久彌はこの「戦友別盃の歌」と、軍歌の「戦友」が大好きであった。なお東海林太郎が歌ってヒットした 「橇の鈴さへ寂しく響く 雪の曠野よ 町の灯よ・・」の「国境の町」もこの詩人の作詞である。

 

私の愛した詩人 15 中原中也

 

     春の日の夕暮                 サーカス

 トタンがセンベイ食べて            幾時代かがありました

 春の日の夕暮れは穏やかです       茶色い戦争ありました

 アンダースローされた灰が蒼ざめて      

 春の日の夕暮れは静かです         幾時代かがありまして

                            冬は疾風が吹きました

 吁! 案山子はないか―あるまい

 馬嘶くか―嘶きもしまい            幾時代かがありまして

 ただただ月の光のヌメランとするままに    今夜此処でのー殷盛り

 従順なのは春の光のゆうぐれか        今夜此処での一殷盛り

 

 ホトホトと野の中の伽藍は紅く        サーカス小屋は高い梁

 荷馬車の車輪 油を失い             そこに一つのブランコだ

 私が歴史的現在に物を云へば       見えるともないブランコだ

 嘲る 嘲る 空と山とが

                            頭倒さに手を垂れて

 瓦が一枚 はぐれました              汚れ木綿の野蓋のもと

 これから春の日の夕暮れは         ゆあーん ゆあーん ゆやゆよん

 無言ながら前進します

 自らの静脈管の中へです。                正午

                            ああ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ

   生い立ちの歌                  ぞろぞろ出て来るわ、出て来る出て来るわ

 私の上に降る雪は               月給取の午休み、ぶらりぶらりと手を振って

 真綿のやうでありました            あとからあとから出てくるわ 出てくるわ出てくるわ

                            大きなビルの真っ黒い、少ッちゃな少ちッちゃな出入り口

 私の上に降る雪は               空はひろびろ薄曇り、薄曇り、埃も少々立っている

 霙のやうでありました              ひょんな眼つきで見上げても、眼を落しても・・・

                            なんのおのれが桜かな、桜かな桜かな

 私の上に降る雪は               ああ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ

 霰のやうに散りました             ぞろぞろぞろぞろ、出て来るわ出てくるわ

                            大きなビルのまッ黒い、小ッちやな少ちッちゃな出入口

                            空吹く風にサイレンは、響き響きて消えてゆんかな

 

 中原中也 明治40~昭和12年 山口県生まれ。少年時代から詩に秀で、長じて象徴派詩人として注目される。

 『山羊の歌』『在りし日の歌』の詩集が有名。

 

 

 

 私の愛した詩人  14         三好達治

 詩集 『測量船』

 

        春の日                            甍の上

  春の岬旅の終わりの鴎どり               あはれ花びらながれ

  浮きつつ遠くなりにれるかも               をみなごに花びらながれ

                                   をみなごしめやかに語らひあゆみ

      母よ――                       うららかの足音空にながれ

  淡くかなしきもののふるなり               をりふしに瞳をあげて

  紫陽花いろのもののふるなり              翳ーかげーりなきみ寺の春をすぎゆくなり

  はてしなき並樹のかげを                 み寺の甍みどりにうるほひ

  そうそうとが風がふくなり                  廂ーひさしー々に

                                    風鐸ーふうたくーのすがたしづかなれば

  時はたそがれ

  母よ 私の乳母車を押せ                     少年

  なきぬれる夕日にむかって                ゆうぐれ

  りんりんと私の乳母車を押せ               とある精舎の門から             

  赤い総ーふさーある天鵞絨-びろおどーの帽子を    うつくしい少年が帰ってくる     

  つめたい額-ひたいーにかむらせよ

  旅急ぐ鳥の列にも                      暮れやすい一日に

  季節は空をわたるなり                   てまりをなげ

                                   空高くてまりをなげ

  遠くかなしきもののふる                  なおも遊びながら帰って来る

  紫陽花いろのもののふる道

  母よ 私は知っている                    閑静な街の

  この道は遠く遠くはてしない道                 人も樹も色をしづめて

                                   空は夢のように流れてゐる

 

 三好達治 明治33~昭和39年 大阪南久宝寺町生れ。三高・東大卒。戦後の代表的な抒情詩人。そのなかの代表的な「乳母車」は、幼年時代、大阪にまた゜御堂筋が出来ていなかった時代、一番広い堺筋での子守時代の想い出の歌と言われる。「赤い天駕絨の帽子」は親戚のビロード商から妹におくられたものだという。淀屋橋の北詰。

市役所の南の歩道に「乳母車」の詩標がたてられている。