詩のこと
今まで続けて掲載して来た、「私の好きな歌人10人、詩人16人」は、 古い本箱を整理していたら、その隅から出て来たものだが、私が40歳ころ好きな詩を集めて綴ったものである。
詩を愛することは、生の歩みを豊かにしてくれる。人間の「こころ」は、人体の何処にあるのだろうか。「脳」の片隅の空き間にあると言う人があるが、あの♡型の心は人体を解体しても出てこないが、実存していることは確かだ。「精神」の中核である。
問題は、この心の♡が乾いているのか、みずみずしく潤いをもっているかである。♡の乾いた人は、
金銭を始め欲望の勝ちすぎている人で、情緒の欠けた人間が多い。科学者も♡の乾いた人と、みずみずしい潤いを持っている人の、二手あるだろう。詩を愛する人は、♡がいつもみずみずしく潤い、現世的な欲望に十二分に満たされなくとも、趣味、情操豊かに幸せに暮らしている。
日本人は豊かな自然に恵まれて、歌を読むのが昔から多い。万葉集には貴族層から庶民に至るまで、人々は時々の思いを歌にしている。平安期に入れば技巧的な歌が多いが、和歌は男女ともに社交の重要な要因となった。源氏物語でも光源氏に見初められた女は、思いを歌に託し、すぐ返歌している。即席の歌に優れ、数々の上流男子を放浪した和泉式部の娘、小式部内侍は、宮廷で歌合せがある時、出席者に選ばれていたが、中納言の藤原定頼が彼女の局の前で、「歌会の歌は今丹後に居られる母の和泉式部から、もう送られて来ましたか」と冷やかすと、小式部は彼の袖を捉え引き止め、
大江山いく野の道の遠ければ まだふみも見ず天橋立
と、即座に歌を返し、定頼はこそこそと逃げて行ったという。有名な話でこの歌は百人一首にも選ばれている。
また芭蕉の「奥の細道」も、俳句は勿論文章もすばらしい詩に満ちている。
皆さん、自らも作歌、作句、作詞してもらって、日本人として日常生活に、一片の情緒的生活を楽しまれてはいかがでしょう。