おはようございます晴れ

 

調べものの好きな私は、『Quora』というQ&Aサイトを時々読んでいますが

最近、こんな小説が紹介されていて、とても不思議な気持ちになりました。

 

小説『The Egg』は、アメリカの作家アンディ・ウィアーによる短編小説である。2009年8月15日に彼のウェブサイトGalactanet上で公開された。これはウィアーの最も人気のある短編小説であり、あまりに短いので、日本ではまだ出版されていないようですが、読者によって30以上の言語に翻訳されている。(Wikiより)

 

ということで、また読めるように貼っておきます。(日本語版)

3連休でお時間のある方は、読んでみてくださいハート

 



君は家に帰っている途中で死んだ。

交通事故だった。ごく普通の交通事故だったが、致命的だった。君は妻と子供二人を残した。死ぬときに痛みはなかった。救急隊はがんばって救おうとしたが、無理だった。君の体はもうボロボロで、実際この方が良かった。

そして、君は私と出会った。



「いったい何が起こったんだ?」と君は訪ねた。

 

「ここはどこ?」


「君は死んだんだよ」と私は答えた。ここで回りくどく言う必要はない。

「トラックが来てて…そしてそれが急に滑って…」

「そう。」

「し、死んじゃったのか?」

「 そう。でも気にする必要はない。皆いずれ死ぬのだから。」



君は回りを見た。何も無かった。ただ君と私の二人だけ。「ここはどこなんだ?」と君は訪ねた。「ここは来世なのか?」

「まあ、そうだね」と私は答えた。

「あなたは、神?」

「そう。私は神。」

「俺の子供達…俺の妻…?」

「彼らがどうした?」

「大丈夫なのか?」

「良いことを言うね。自分が死んだばかりだと言うのに一番の心配が家族だなんて。その心意気好きだよ。」

君は私を改めて見つめ直した。君にとって私は神には見えなかった。普通の男性か、もしくは普通の女性にしか見えなかった。何となく偉そうな気はしたが、それは神とかよりもどちらかというと小学校の先生に近かった。

「心配はいらない」と私は答えた。「彼らは大丈夫。子供達は君のことを完璧なお父さんとしてしか覚えない。憎く思えるほど一緒に時間をまだ過ごしていなかったからね。妻は表では泣くが、本当は密かにホッとしている。実を言うと君たちの関係は崩れかけていたからね。気休めになるかわからないが、彼女はホッとしていることに対してかなり罪悪感を感じている。」

「そう」と君は言った。

 

 

「これからはどうなるんだ?天国とか地獄とかに行くのか?」

「どちらでもない。君は生まれ変わる。」

「そうか。じゃあヒンドゥー教が正しかったのか。」

「人々の考えはすべてそれなりに正しいんだよ」と私は言った。「少し散歩をしよう。」



我々は二人で虚空の中を歩き始めた。「どこへ行くんだい?」と君は聞いた。

「特にどこへも行かないよ。歩きながらしゃべるのも良いじゃないか。」

「意味はあるのか?」と君が訪ねた。「どうせ生まれ変わったら空っぽなんだろう?ただの赤ん坊になって。だから今話しても、この命での経験や行動は関係ないじゃないか。」

「いや、そんなことない。」と私は答えた。「君の中には今まで得た経験と知識がすべて残っている。ただ今は思い出せないだけ。」

私 は立ち止まって君の肩に手をのせた。

「君の魂は、君が想像も出来ないほど壮大で美しくて、巨大なんだよ。人間の頭に反映しようとしても、ほんの一部しか収まらない。

コップの水の温度をはかるために指先を入れるようなもんだよ。自分の小さな部分をそこに入れて、取り出す時には体全体にその一部の経験が伝わっ ている。

「君はここ48年間ずっと人間の体の中だったから、意識を広げてその壮大さを感じ取る機会がなかったんだよ。しばらくここにいたら少しずつ思い出してくるけど。一つ一つの人生の間にそれをする必要はないけどね。」

「じゃあ、俺はもう何回生まれ変わってるんだ?」

「そりゃもう、沢山さ。本当に沢山。そして色々な人生にね。次は確か、君が言う中世の時代あたりかな?」

「え?ちょっとまってくれよ」と君は驚いて言った。「俺は過去に飛ばされるのか?」

「まあ、そう言われるとそうかもしれない。君の言う時間は君の世界でしか存在しないからね。私が元々いた場所では意味の無い話になってしまう。」

「元々いた場所?」

「そりゃあるさ」と説明した。「私だってずっとここに居た訳ではない。別の場所から来た。そして私みたいな存在もほかにいる。君がその場所の話をもっと聞きたいことはわかるが、説明しても君には理解出来ない。」



「そっか」と君は残念そうに言った。

「でも待てよ。時間がばらばらで生まれ変わるのなら、自分と出会ったこともあるかもしれないじゃないか!」

「そう。よくあることだよ。けどお互いの存在は自分の人生のことしか認識していないからそこで気づくことは無い。」

「じゃあいったい何のために?」

「存在の意味か。ベタな質問だね。」

「けど聞く必要は十分あると思う」と君は問い続けた。



私は君の目をじっと見つめた。「存在の意味、そしてこの世界を私が作り出した理由。それは君を成長させるため。」

「人類のことか?人間に成長してほしいのか?」

「いや、君だけ。私はこの世界のすべてを君一人の為に作った。人生を重ねることによって君は成長し、さらに壮大で完璧な知性となっていく。」

「俺だけ?ほかの人々は?」

「ほかは居ない」と私は答えた。「この世界には、君と私の二人しか存在しない。」

「でも、世界中の人々は…」

「すべて君だよ。全員君の生まれ変わり。」

「待てよ。全人類が俺だと言いたいのか?」

「やっとわかってきたね」と私は微笑んだ。

「今まで生きて来た人間が皆俺?」

「そう、そして今後生まれてくる人々も全員ね。」

「俺が徳川家康?」

「そして豊臣秀吉でもある。」

「俺がヒトラー?」と君は動揺を隠せず聞いた。

「そして彼が殺した何百万人の人々。」

「俺がイエス・キリスト?」

「そして彼に従う全ての人々でもある。」

君は黙り込んだ。



「君が誰かを犠牲にするとき、それは自分を犠牲にすることになる」と私は続けた。「君が人に親切をするとき、それは自分への親切となる。今まで経験された、そしてこれから全人類に経験されることとなるうれしい思い、悲しい思い、これを全て君が経験する。」



君は長い間考え込んだ。

「どうして?」と君は訪ねた。「なぜこんなことをする?」

「それは、いつか君は私みたいになるから。君はそういう存在であるから。君は我々と一緒。君は私の息子なんだよ。」

「そんな、」と君が信じられないように言った。

 

「俺が神だということか?」

「いや、まだそうではない。君は胎児。まだ成長をしている途中。全人類全ての人生を経験した後、君は十分成長を積みやっと生まれることが出来る。」

「じゃあ、この世界って言うのは…」

「卵」と私は答えた。「さあ、次の人生を始める時間だ。」

そして私は君を見送った。 END

 

 

アニメーションもあります。

 

 

宗教臭が少ししますが、そういったことを意図して、ご紹介したものではありません

どんどん頭が固くなるので、こういった小説で頭を柔らかくしておきたいなと思いました。

 

この小説のように考えると、他人に「何かをすること」それがいいことでも、悪いことでも結局自分にすることになり。また、自分にひどいことをしてくる人も、『未熟な自分』ということになるので、ものの見方や心持も変わってくるかも・・・・しれませんね。(いまは全くそんな寛大な自分ではありませんが)