『黄泉のツガイ 1』 『黄泉のツガイ 2』 『黄泉のツガイ 3』 『黄泉のツガイ 4』 『黄泉のツガイ 5』 『黄泉のツガイ 6』

新郷と刀のツガイの主与謝野イワンが、 偽アサと村娘を人質として倉庫街に罠を仕掛けます。アサと影森家の面々が、そして、ユルとデラ、左右様たちが、飛び込みます。
イワンは想像以上に強く、ユルたちも、アサたちも大いに苦戦しています。

ツガイのザシキワラシ、ダンジとキリの話によって、東村の謎が、より深くなりました。
四百年前の戦(いくさ)とは、本当のところ何だったのか? 「東が勝った」とは聞いても、それがどういうことなのか、何もはっきりしません。

戦の後、長く忘れ去られていたザシキワラシを探し出したのは、デラの父である東村の番小者(つがいこもの)「ロウエイ」です。

ザシキワラシは、東村で今の主(あるじ)キョウカと契約し、ダンジとキリと名づけられました。
<主 (言い伝えでは聞いていたけど… )
 キ (何して遊ぶ?)   ダ (俺たちは 主とずっと一緒にいるよ!)
 主 (ふふ  ありがとう)
 〔母ちゃんは 悲しそうで… 嬉しそうだったな〕 >(150頁)
キョウカとダンジ、キリのあいだの絆が、目に見えるようです。

キョウカは、積極的におばぁに組みしていたとは思えません。キリに偽アサを演じさせてはいても、同時に、ダンジに、おばぁに内緒でユルを守らせていました。
ユルたちの親であるミネとナギサに結界の抜け方を教えた ロウエイも、キョウカと同じく、おばぁに対して思うところがあったに違いありません。

ロウエイやキョウカも含めた、おばぁが率いる東村、内通者の存在が確認された影森家。そしてユルたち。さらに、東村、影森家と対立する勢力が、与謝野イワンの暗躍を通して見えてきました。

基本に戻って考えてみましょう。
ユルたちを巡るどの勢力にとっても、目的はユルとアサを手に入れることです。
しかし、ユルとアサにとっては、まず両親の行方こそが最大の問題です。

さらに、時々で様々な謎があります。

たとえば、ユルがアサに言います。
<(……ずっと アサは村を守る「おつとめ」であそこに入ってるって聞いてさ  

  それが当たり前だ 村のためだと思ってた)
 (俺 そういうものだと 何も疑ってなかった  すまん)
 (そうだよな よく考えたらおかしいよな …略… )>
   (136頁 下線は原文では傍点 あそこ、とは室内の牢)

そうなのです。おかしいのです。「おつとめ」とは、結局何であったのか。
何と親切なのでしょう。作者はここで改めて「おつとめ」に注意を喚起しているのです。

それにしても、気になるものを書き出すとキリがなく拡散していきます。それだけ愉しめることがたくさんあるということですが、この作品が完結できるのかどうか、いらぬ心配をしてしまいます。


*荒川 弘 著 『黄泉のツガイ 7』
 あらかわ ひろむ よみのつがい
 ガンガンコミックス 株式会社スクウェア・エニックス
 2024/5/11