
いよいよ”青輝冒険記”の開幕である。
三角青輝司農丞は、司農卿の今井陶誉の命により、山口郡の毛利家と反平(はんたいら)結社の関係を調べるべく山口に赴いた。
青輝に同行する波田朋之助(はた とものすけ)は、毛利家前当主毛利元翠(もうり げんすい)が隠居所で催す宴に出席すれば、謀殺される可能性が高いとして、出席に強硬に反対している。
<三角 ( ”泰平”。)( 儂には果たしたい誓いがある。)
( 故に自重できん。) >(33頁)
朋之助が館の門を前にして、再考を促す。
<三角 ( 何かを決断したならば、)( 振り返らず前に進むべきじゃ。)>(40頁)
宴は始まったが、青輝は毛利元翠にいいようにあしらわれた。
<三角 ([ では何故(なにゆえ) 儂はまだ生かされとる? ])
([ 考えろ。])([彼らの狙いはなんじゃ。])>(52頁)
三角は命を懸けて、宴の席で、元翠を説得するきっかけをつくる。
<三角 ( すべての行動には結果が伴う。)( それが己が意図しなかった結果だとし
ても。)
( それに、刀を抜いていい者は、)( 命を落とす覚悟がある者のみ。)
[刀を顎の下に当てられた状態で]( 儂の場合、刀はこの口。)
( 抜いた結果起こることに、)
( 心構えはできています。) >(61-62頁)
<元翠 ( 己の口が刀とは。)( よう申した。)
( では自身の選択を、)( 神妙に受け入れるがええ。) >(67頁)
朋之助は、青輝の首に喰いこんだ刀の刃を、素手で握りこんで止めた。
青輝は、元翠に対して自論を述べる。
<元翠 ( この国の、統治機構そのものから変えると? )
( 言うは易く、行うは難し。)( あの男は、君が思う以上に恐ろしい男や
ぞ。)
無 ( [三角の閉じた口元の描画。但し、首は血まみれ。] )
三角 [元翠 に向かって]( 儂もです。)>(80頁)
宴は終わったが、”儂もです。”で、同席者に与えた衝撃は、さぞや凄かっただろうと想像する。だが、こう言えなければ、三角の命は無かった、というのも確かだ。
九死に一生を得た青輝は、状況を俯瞰する。
<三角 ([ 考えろ。])([毛利の目的はなんじゃ。])
( 事の始まりは、…(略)…) >(84頁)
だが、確信は得られない。
<三角 ( いつも己が望んだ瞬間に、)(答えが得られるとは限らんもんじゃ。)
( 勇気をもって、)(先へ進もう。) >(101頁)
連れていかれた先での光景から、青輝は毛利の目的を理解する。
青輝は一計を案じ、事態は青輝の思惑のままに動くかに見えていたのだが…
司農丞三角青輝は、以上のように考えた。司農卿の今井陶誉は、ある考えの下、司農丞三角に山口の毛利家の調査を命じた。毛利家の前当主毛利元翠は、とある方策により毛利家の繫栄を望んだ。三者の思惑が交錯した後、三者の考えはどう変わったか。それとも、変わらなかったか。
ページのコマの中に描かれているのが、ほとんど”顔”なのではないか。どのページを開いても、”顔”、”顔”、”顔”である。そして、”顔”と”顔”の間に、ちらほらと、”目”がはいる。そして、そして、普段はめったに独立しては描かれない”口”が、思いついたように、置かれている。
”顔”、”目”、”口”。これは何なのだろう。
* 松木 いっか 著『日本三國 ⑦』
まつき いっか にほんさんごく
裏少年サンデーコミックス 株式会社小学館 2026/4/15

