ただ、殴り、蹴る。力の中に身を浸すのが、楽しかった。新道依子(しんどう よりこ)には、たまらない快感だった。
血も涙もない暴力が目の前に現れても、顔色ひとつ変えず生きた。

これまで人との関係を結ばなかった、結べなかった。依子は、いつのまにか、ある女と関係を結んでしまっていた。

日常に似た時間が流れていた。突然時間が、空間が断ち切られ、風景が変わる。

読むことが、一つの体験だった。


英国推理作家協会のダガー賞(2025 翻訳部門)の受賞作。文庫の帯に、この記述が無かったら、恐らく手に取らなかった。

*王谷 晶 著『ババヤガの夜』
 おうたに あきら ばばやがのよる
 河出文庫 河出書房新社 2023/5/20