荒川弘にとって、ファンタジーというのは、まさにホームグラウンドなのだろう。『黄泉のツガイ』を読んでいると、作者がノビノビと描いていると感じる。

 

隠れ里に、稀有の運命を背負った双子の兄妹、ユルとアサが生まれた。この双子は、夜と昼を分かつものであり、ツガイ(「対なるもの」「妖怪」「神様」)を統べる者でもある。

 

隠れ里は、結界を破られ、外部からツガイや武装集団の攻撃を受けた。侵入者にアサがいたことから、ユルがこれまでともに生活していたアサが偽者であったことがわかった。ユルは自分のツガイ左右様の助けにより、仲間とともに下界に脱出した。

 

夜と昼を分かつ双子が生まれた時代は、世が割れるという。最も近い時代で約400年前であり、国が東西に分かれて大戦(おおいくさ)があった、とツガイの右様が言っている。

これは、結局どのような意味なのだろうか。徳川の長期政権の礎が築かれた。鎖国政策が決定された。もう少しひねると、当時のキリスト教を先兵とする西洋諸国による日本の植民地化を防いだ。そんなところだろうか。

 

話が始まったばかりなので、話がどのように展開されるかは、ほとんど明らかではない。

とはいえ、現在の、この日本では、どんな問題で世の中が二分されているだろうか。

荒川弘なら、この先、何が重要であると考えているだろうか。何であれば問題化しやすい、面白い問題に仕上げられる、と考えるだろうか

 

今の日本の最大の問題は、少子化の問題だろう。労働力不足の問題ともいえ、外国人移民の問題だと言える側面もある。日本を取り巻いている現在の状況を考えれば、防衛問題も重要である。世界規模の問題で言えば、地球温暖化問題であろうか。エネルギー問題とも言い換えられる。

いずれの問題も、決定的な解答を提示できるようなものではない。だが、解答は提示できなくとも、ある問題が、どのような点で重要であるかは示すことができる。

 

荒川弘なら、どのようなことの、どのような側面にスポットを当てるだろうか。これからの展開が、興味津津である。