『天国大魔境 1 』 『天国大魔境 2 』 『天国大魔境 3 』 『天国大魔境 4 』      『天国大魔境 5 』 『天国大魔境 6 』 『天国大魔境 7 』 『天国大魔境 8 』

 『天国大魔境 9 』

マルが怪物アンジュラスとの戦いで、絶体絶命の窮地に陥った所から話は始まります。
エッ、という展開で、戦いに決着がつくのですが、落ちついて考えれば、マンガとしてはアルアルの話でした。

キルコとマルは、迫田(猿渡)医師、今永(青島)主任から話を聞くことができました。
キルコの脳移植の時の状況、ヤマトという名のマルの双子の存在とその両親について、その他の、これまで思ってもみなかったことを知りました。
また、高原学園が、AIを利用して、超能力を持った新人類を作ったこと、その新人類の子供と奇病、怪物の関係等多くの謎が明らかになりました。しかし、謎のままであることもたくさん残っています。

マルの目的地は、『天国』です。その場所もわかりました。その再出発に際して、新たな同行者ができました。”感情的”なAIロボット「ナタ」が、その『天国』への案内役です。怒るとスタンガンを繰り出すという頼りになる(?)ロボットです。キルコとマルは知らないことになっていますが、その「ナタ」という名前も、”ミクラさん”との絡みもあり、意味ありげです。

旅の同行者が二人と三人では、質的に違う旅になるのではないでしょうか。三人の関係は、良きにつけ悪しきにつけ、間接的な関係を生みます。これまでの二人の直接的な関係とは違う、異質なものが生まれてくるのではないか、そんな感じがします。とくに、三人目が、”感情的”なAIロボット、となれば、なおさらでしょう。

それにしても、善意の人が揃ったものです。

迫田(猿渡)医師も今永(青島)主任も、この世界の崩壊に責任があると思っています。だから、復興が何より大切で、それに邁進しています。竹塚ミチカは。何より、闘いたい、という思いで生きています。誰しもが、ストレートにその思いを発散しています。

他の人々と一味違うと感じるのが、復興省の職員の、ダンビラ佐藤です。佐藤の会話は、話す目的がはっきりしている会話がほとんどです。砕けた話し方ですが、話す内容、話し方が、常に配慮されていて安心感を与えています。佐藤とキルコ、マルの会話には、どこかホッとするものがあり、生活を営む社会の中で生きている、という雰囲気を感じさせます。

願わくは、これからの展開で、ダンビラ佐藤が再び登場する場面が有ってほしい、と思ってしまいます。

*石黒 正数 著 『天国大魔境 10 』
 いしぐろ まさかず  てんごくだいまきょう
 アフタヌーンKC 株式会社 講談社 2024/2/22