『天国大魔境 1 』 『天国大魔境 2 』 『天国大魔境 3 』 『天国大魔境 4 』      『天国大魔境 5 』 『天国大魔境 6 』

ここに至っても、突然姿を現したものがたくさんある。
1 「お迎えの日」に「施設」は、門を開き、誰か(組織A)を迎えるという。戦士たちは、作戦を遂行すると言い、戦闘態勢であった。
2 「施設」を爆撃した組織Bがある。
3 青島副園長には、高原学園の4人の生徒を外部に逃がし、新たな生活を営む身分を用意できるだけの力を持つ組織Cが背後にある。
4 組織Dは、「施設」を軍事的に占拠し、(少なくとも)幼い生徒たちを連れ出し、新たな生活を営む身分を用意した。

青島副園長の外部との通話からすると、少なくとも組織Bと組織Cは同じものではない。組織Bと組織Dは同じものである可能性はあるが、可能性以上のものではない。それ以外のことはほとんど何もわかっていない。

これまで放置されていることもたくさんある。例えばであるが…
1 アスラとは何だったのか。本当に死んだのか、消滅したのか。
2 人工知能ミーナは、誰が何のために作ったのか。
3 生徒たちに、行動の判断を委ねることの多くなったミーナの働きは正常なのか。

とはいえ、決定的な場面の画像が描かれていたり、セリフの中に、なにがしかの関係を示すことばが何度も発せられていたりして、あきらかになったことも多くなってきた。

ミミヒメたち4人はいち早く「施設」を脱出していた。ミミヒメとシロが、大都会の中のビル群の間の街路を歩きながら会話している。
<ミミヒメ(この学校の外って何なんだろう)
 シロ  (僕は学校の範囲が認識できないほど広くなって  人の数も把握できな

      いほど増えたようにとらえている……)
 ミミヒメ(ふうむ……テストというのはどうなったのかな)
     (この人達もみんなテストを受けている最中なのかな……  それとも僕

      らはもうリタイアしちゃったのかな? )
 シロ  (知らない……)
 ミミヒメ(トキオとかコナとか…… 他のみんなはどうしているんだろう  まだ

      学校の中にいるのかな……)
 シロ  (知らないし…… 興味がない) >(162-163頁)

「施設」の中でAIのミーナが「先生」の端末を通して、テストを出題した。生徒たちに、示した課題は、「外の外に到達すること」であり、「答えに迷った時は 自分が正しいと思ったほうへ」進めと告げていた。

「外の外に到達すること」は、物理的、実際的に境界を突破することを意味する部分はあるだろうが、それに尽きるものではないだろう。より広く考えれば、自らの殻を打ち破る事とも考えられる。人生を賭けた問いというのも大げさかもしれないが、誰しもが幾分かは考えなければならないものである。
ミミヒメは、課題とまともに取り組もうとしている。しかし、この時点で、シロはミミヒメのことしか眼中にないのである。

そして、物語は、進んでいく。

*石黒 正数 著 『天国大魔境 7 』 アフタヌーンKC 2022/3/23