よしもと ばなな イルカ


「王国」を読んでから、あまり間もないせいか
どことなく物足りなさを感じました。
「三年身籠る」同様、妊娠~出産に関する小説ですが
個人的には「三年~」の方が
ずっと面白く、自分にはしっくりくるものがありました。

子どもを生むって、

確かにそんなに大そうなことではないから

この本を読んで

なんとなく「子どもを産んでみようかな~」と思う女性が増えたら

いいかな~と思いました。


でも、この本のように

実際はこんなに気だるく美しくはないんですけれどね(^_^;)

 よしもと ばなな  王国〈その3〉ひみつの花園

私は自分自身のことをまたひとつ知ることになった。

自分がなにに耐えられて、なにには耐えられないかということをだ。

その道には合っているも間違っているもない。

ただ一致しているかしていないかがあるだけだ。

まるで蜂が緻密な計算をしないであの幾何学的な形の巣を作っているのと同じように、

そこには変えられない、はっきりとした決まりがあった。

それが私が私であることの意味なんだな、と思った。

生まれてきた意味といってもおかしくはない。

冷徹なほどにはっきりといていることで、一度でも嘘をつくといつかまた戻ってきてしまう

魂の約束なのだ。

誰としたのかは知らないが、とても大きな約束だった。(本文p36より引用)



更新が前後していますが、7月初めに読みました。


主人公の雫石は

もちろん私にはちっとも似ていないのだけれど

でもとても共感できるのです。

心のどこかでいつも問いかけている

その答えのいくつかが

この王国シリーズの本には載っているような気がします。


一語一語が、深く心に響きます。

 唯野 未歩子 三年身籠る

更新の順序が前後しますが

7月のはじめに読んだ「三年身籠る」の読書日記。


オセロの中島さん主演で映画にもなっています。

もともと映画の脚本として書き始めたものを、

作者である唯野さんが小説化したものだそうです。

ちなみに唯野さん、これが初小説だとか。

初小説でこんなに面白いことが書けるのか~と、その才能に脱帽です。


タイトルどおり、三年身籠っている妊婦のお話です。

ファンタジーといえばファンタジーですが

オカルトチックかな、といえばオカルトチックでもあります。

妊娠~出産という神秘な世界が

笑うに笑えない独特の世界で描かれていて、私は非常に楽しく読みましたが。


実は私も妊娠中、

こんなに人類は進化しているのに、

どうして十月十日(実際は違いますが)経たないと、子は生まれないのか?

なんてことを思っていました。

十月十日もかけて、おなかの中で育まれているのに

どうして人間の赤ちゃんは動物と違って

未熟な状態で生まれてくるんだろうか・・・などなど。

不思議だな~

神秘だな~と、

そんなことばかり思っていたことを思い出して、

おなかが大きかったころが懐かしくなりました。


でも三年身籠らないと子が生まれない、と言われたら

私はとうてい耐えられそうにありません。

十月十日でもしんどかったのに。

目の前にいる、もうすぐ2歳の我が子を見て

「これがまだおなかの中にいるってことかー」と考えたら、

恐ろしくなりました。

そういう意味では、ホラー小説とも言えるかもしれませんね(^-^)

 花村 萬月 ゲルマニウムの夜―王国記〈1〉

2ヶ月くらい前に読んだでしょうか。

(かなり読書日記の更新が前後してしまいますが ^_^;)


芥川賞受賞・・・そして映画化。

しかもその映画、

キネマ旬報によればなかなかの評価だったようで

それでなんとなく気になって、借りて読んでみましたが。


花村さんの文章力に引っ張られて

グイグイ最後まで読みましたが・・・かなり気持ち悪くなりました。

本を読んで

こんなに強い嫌悪感を抱いたことのは初めてでしょう。

本当に気分悪くなりましたし、

読んだ後の後味の悪さと言ったら・・・最悪でした。


それでも、この本が問いかけるテーマは壮大で

深く考えさせられました。

神とは?

信仰とは?倫理とは?

性や暴力の問題も含めて、人が人として生きることの意味について。


誰が許し

誰が許されるのか。


重い、とても重たい小説でした。

花村作品を読むには、それなりのパワーと忍耐が必要で

私の力量ではとても読めないなぁ~と思いました。

きっと、最初で最後の花村作品。


本を読む、ということは

楽しい、面白いだけではないのだな、と改めて思い知る

いい機会となりました。




 カズオ イシグロ  わたしを離さないで

沖縄旅行中に読んだ本。

バカンス中に読むのに適した本ではありません。

しかし、この本でなかったら

暇をもてあましてしまったでしょう。

そしてバカンス中だったからこそ、

じっくりと味わって読むことができたのかもしれません。


物語はイギリスを舞台とした、若者3人の青春の日々を

主人公キャシーが回想する形で淡々と語られています。

でもどこか、奇妙な彼らの青春時代。

何か事情がありそうな・・・なんだろう?とその謎に誘われまま

物語の世界に導かれていきました。


その謎こそが物語りなので、

内容に触れることはできませんが・・・なんともいえぬ、悲しい物語でした。

そして

人間が人間であるということ、

その存在とは何なのか―そういうことを深く考えさせられる本でした。


カズオ・イシグロ氏の小説を読むのは

映画化もされた「日の名残り」以来。

自分に英語の能力があったら

是非、原文で読んでみたいものです。

(彼の日本語の文章を読んでみたいですね)


そして、今回も「日の名残り」と同じ土屋政雄氏の素晴らしい翻訳です。

「Never Let Me Go」を

「わたしを離さないで」と訳されるとは!

この美しい日本語が、

この物語をまたひと味もふた味も

味わい深いものにしているように思われました。