食虫植物自生地図鑑の第2弾はボルネオのマリアウベイスンです。
マリアウベイスンはボルネオ島、サバ州中央やや南に位置する巨大なクレーター状の盆地です。
この盆地の内側は開発を逃れた原生林が広がっており、各種メディアではボルネオのLost worldなんて言われていたりもします。
そのため非常に自然豊かな場所であり、ボルネオゾウやオランウータン等貴重な野生動物も多く生息しているほか、植物などで新種が次々と見つかっている地域でもあります。
この盆地は南東側がやや削られたカルデラのようにも見えますが、火山活動由来の地形ではなく地殻変動で台地状に隆起した後に、中心部が長い年月を経て侵食されて今のような形状となったようです。
盆地の内部は標高1,000m前後、辺縁部は標高1,400m程度のやや標高の高い地域となっています。
盆地であることからMaliau Basinに降った雨は中央の低い場所に集積して川となり、南東の低い場所から流れ出ます。
この川は最終的にはキナバタンガン川としてボルネオ島の北東の太平洋へ注ぎ込みます。
盆地の気温はおおよそ26℃~18℃ぐらい。辺縁部は非常に風通しが良いのですが、中心の盆地部は風が滞ります。
上記の通り盆地内部には雨水とそれによって流されてくる有機物が集まることとなるのですが、集まった大量の水は分解者の活動を妨げることで有機物が分解されない、つまり有機物の堆積を促します。
堆積した大量の有機物からは大量の有機酸(腐植)が溶けだします。こうして有機酸(腐植)を含んだ低pHのブラックウォーターは土壌中の鉄やアルミニウムを溶脱していきます。
結果的に土壌中には低pHによって溶脱しない珪砂(白砂)が残されることで、珪砂を主体とした白砂林(ヒース林、ケランガスなんて言い方もします)が盆地内で発達することとなりました。
白砂林の特徴としては貧栄養土壌であること、それによって樹木の高さが低いこと等が挙げられますが、加えて食虫植物の自生地であることが多いことも挙げられます。
また、標高が1,000mを超えてくると湿度の高さから蘚苔類が増えてくるのですが、この程度の(中途半端な)標高だと湿度が足りずに雲霧林は成立しません。
一方で低地よりは湿度が高いため、樹木の1m程ぐらいまでが蘚苔類に覆われるという半雲霧林(?)的な森林が発達します。また、水分量が多いことから地面にはミズゴケが蔓延っており、大雨時等は水が溜まって湿地環境となります。
そんな貧栄養地帯に食虫植物、N. veichii、N. reinwardtiana、N. tentaculata、N. stenophyllaや自然交雑種が自生しております。特に木の幹を完全に抱え込んで登っていくMaliau Basinの木登りビーチは有名です。
N. reinwardtiana、N. tentaculata、N. stenophyllaの3種は完全な地生種ですが、やや地面が見える場所に生えるN. reinwardtianaやN. stenophyllaと、苔から生えているN. tentaculataというように棲み分けているようです。
N. reinwardtianaは林床環境では日当たりが悪く、開けた自生地と比べるとあまり大株にはなりません。
開花はせずに脇芽からの栄養繁殖をする場合が多いようです。
緑系も赤系も見られますが、斑点系の袋は見られません。
可能性としては斑点系は昔他の種が混ざった系統であると考えられるため、開花をあまりしない環境だと交雑の機会が少ないため斑点系があまり存在しない…というのが私の妄想です。
N. tentaculataはGunung Singsing、Kaingaranの記事でも書いたように株ごとの個体差は大きいですが、他の自生地と比較してもそれといった差はありません。
強いて言うのであれば標高が低い自生地の場合、小型の株が多く、苔に埋まったような形で生えていることが多い気がします。
マリアウベイスンのN. stenophyllaはほとんどがN. veichiiと交雑したものです。交雑をするとやや日陰に強くなるようで勢力的には原種が押され気味です。
林床では日当たりも悪いので、原種の立派な株はあまり見られませんでした。
N. veichiiは株によって異なり、地面に生えるものや着生しているものと様々ですが、他のウツボカズラと比べるとやや日陰を好みます(N. tentaculataほどではない)。生える場所も地面の露出部分や苔の上、湿っている場所乾いている場所と様々で、あまりえり好みをしません。
木に登る着生タイプ、いわゆる木登りビーチは葉の出方が独特で、シダの葉のように葉の面が同じ方向を向き続けるよう出ます。これが着生する際には幹を抱え込むように育つのですが、基本的に葉の向きは一緒です。
抱え込む幹は様々ですが、おおよそ直径が15cm~40cmぐらいのものを好むようで、それ以上でも以下でも綺麗に木登りはできないようです。
地生種はとりあえず地面を這いながら葉をいろいろな方向に出し、葉の面が一定ということはありません。着生もしないわけでもないですが、偶然木の上の苔から生えたという感じで大きくなるとうまく木登りできずに株の形が崩れてしまうようです。
もう一種、マリアウベイスンではN. hirustaを見ることができましたが、N. hirustaは内部の白砂林ではなく外縁部付近の登山道の脇で多く見られれます。
基本的には樹林内の日当たりが良くない林床に生育しており、さらっと乾いている場所が好きなようです。
ロゼット状態のまま這いまわる株が大半ですが、一部の株は徒長し樹冠まで伸びて(多分)開花しているようです。
マリアウベイスンへの行き方等ですが、マリアウベイスンは比較的有名なエコツアーもあり、目的に応じた様々なツアーが開設されています。
我々が行った際には2泊3日のツアーでした。
まずはコタキナバルから6時間ほどかけてマリアウベイスンの入り口(Maliau Basin Reception and Information Building)まで向かって申請等を行います。
その後、1時間ほどかけて車で事務所(Maliau Basin Studies Centre)に向かいます。
事務所ではコテージ等宿泊施設が整っており、スマホやカメラの充電も可能です。
ここで1泊したのち、次の日から登山となります。
事務所から車で30分ほど移動したのち、登山をするのですが我々が止まったNepenthes Campという小屋まではおおよそ6kmで700mほど登山することになります。
ただし、盆地の辺縁部にまで登ってしまえば後は下りと平坦部となっており、それほど難所もないため比較的初心者でも行きやすい道となっております。
Nepenthes Campは二段ベッドやトイレ&シャワー等が備え付けられております。
ただシャワーは雨水由来ですし、トイレは正直綺麗ではありません。
また、小屋の周りにはヒルが多く生息しており、十分気を付ける必要があります。
3日目はNepenthes Campから自生地に出発後、再度Nepenthes Campに戻ってきて、そのまま下山しました。
上記の通り難所もなくそれほどきつい登りもないため初心者向けの自生地となっています。
































































































































































































































































































































































































































