4日目
4日目のルート
Gunung Minodtuhan登頂
前日に辛い思いをしてほとんど登り切っているため頂上まではすぐそこです。
日の出前からご飯を食べて出発準備。
今日の行程としては頂上まで登ってウツボカズラを見た後下山をして、管理支所まで帰ります。
朝準備しているとやってきたコガネムシ
アシナガバエの仲間
という訳で出発!
ベースキャンプ周辺はまだ熱帯ジャングル感がありましたが、少し登ると一気に周囲の景色が雲霧林に変わりました。
周囲の雰囲気が雲霧林に
上から下まで蘚苔類だらけ
こうしてあっという間に頂上へ。
頂上、マレーシア国内8番目の山です
やったぁ!と皆で写真を撮ります。
しかし、我々の目的は山に登ることではありません。
ネペンテスを見ることです!!
まだN. tentaculataしか見ておりません!
ハイランドネペンテスの自生地は頂上よりもう少し奥だということであと少しだけ歩きます。
"A Guide to Orchids of Kinabalu"の図鑑の表紙の蘭かな?
小さい花が集まっていると全部オサランに見える
着生Cym. 格好良い!!
N. tentaculataの数は多い
そして前を行く人達から歓声。
必死になって写真を撮る人
あまり見ないタイプの袋
N. edwardsianaや!!!
野生下で見るのはもちろん初めてです。
でかい!牙がすごい!本当に着生してる!でかい!
感動(´;ω;`)
皆テンションが上がりまくって写真を撮ります。
このために苦しい苦しい登山を頑張ったのですから!
さらに奥に進むとN. lowiiも!
逆光が酷い(-_-;)
N. lowiiもめちゃくちゃでかい!
キナバル山の系統ということで袋がめちゃくちゃでかい!
以前見たMantapokとはサイズ感がちゃうなぁ~。
この自生地は本当に谷を挟んでキナバル山のお隣で、2,300m付近の非常に涼しい環境でした。
温度計を全員忘れたので正確な数値は分かりませんが、昼夜で23℃-10℃ぐらいじゃないでしょうか。
空気は非常にmoisture。
お肌がしっとりプルプルになるようなひんやりとした空気がゆったり流れており、あまり風は強くありません。
生育環境的にはN. edwardsianaがやや木が茂っている少し日陰に、N. lowiiは木の密度が低かったり、木の上の方の風通しと日が強い場所にという感じで生え分けているようでした。
どちらの種も地面からは生えておらず、地面にあるのはN. tentaculataのみという感じ。
N. edwardsianaもN. lowiiも雲霧林の苔に着生…というよりは積もりに積もった落ち葉や枯れた草木等の腐葉土から飛び出しているような感じです。
両種の交雑種は見つからず。
そもそもこれらの種間の自然交雑種の存在は聞いたこともないんですけど。
雄花雌花の花殻は両種ともありましたので同じようなタイミングで花を咲かせていると思うのですが、交雑しないもんなんですかね。
花殻の腐り具合的に2~3か月前ぐらいかと思うのですが…
ツルの長さはどちらも数mほどですが、N. edwardsianaの方が節間も最大長が長め。N. lowiiはそれと比べるとコンパクトにまとまっています。
親指ほどの太さの主茎をぐんぐん上に伸ばしていたかと思えば主茎を枯らして脇芽を出したり、その脇芽も数m伸ばしたりとカオスです。
想像以上になんか汚い生え方していました(笑)
生えている用土は雨の影響もあるのかもしれませんがびしょびしょです。
そして冷たい。用土が乾燥気味?そんなもん知らんわ的な感じです。
乾燥する暇なんてあるのでしょうか。
世界最大の立ち上がり苔
Dawsonia longifolia
そうして皆でパシャパシャ写真を撮っていると、ガイドさんより先に行く気はあるかと聞かれました。
ここから更に2時間行ったところにもっとN. edwardsianaが生えており、そこにはN. ×harryanaもあるぞと。
ここから2時間…。
行き帰りで3時間ちょい。
距離にして片道2~3㎞ぐらいでしょうか。
工程的には今日中にこの山から下りてまた管理支所で泊ることになるので、今日一日で約8時間、距離にして12㎞弱歩くことになります。
正直体力的にはかなり厳しい…
ですが行くしかないっしょ!!
ハリアナやでハリアナ!!
という訳で行くと返答。
体力に不安のあるアウラパパさんとネペンランドさんはここまでとし、他の4人で往復3時間ほどさらに山に潜ることになりました。
名もなき自生地
ぶっちゃけ言ってこの行き帰り3時間は地獄でした。
通常このG Minodtuhanの登山というのは頂上までが正式なルート。
先ほどの自生地は頂上からすぐ奥にあるため、まだ人が来るかなぁ程度。
さらにその先は誰も人が来ず、ほぼ道がありません。
行く奴は同類だけでしょうが、正直数えるほどしか行っていないでしょう。
少なくとも検索では引っ掛からなかった。
道中も道がきちんとないのでガイドさんが道を間違えるわ、鉈で道を切り開くわ。
崖をカニ歩きしていると道がなくなり、ここを登ると。
急な崖を進んでいたら行き止まり
と思ったら上へ登る
崖下は何mあるか分かりません。とりあえず下界が見える。
落ちたら数百m落ちる
崖もいわゆるポルダリング等でよく見る岩場やガレ場ではなくぬるぬる滑る泥の崖。
滑って落ちたら一気に下界です。
ガイドさんはするすると命綱なしで崖を登って細い木にロープを巻き付け、足元が崩れるドロドロぐしゃぐしゃの崖を登ることになりました。
高所恐怖症でもない私が流石に足がすくんで動けなくなりました(´;ω;`)
さっきが頂上という割にはどんどんきついアップが続くわ、ダウンも続くわでガチのマジできつかったです。
たった2時間、されど2時間。
疲労困憊になりながらも道を進んだ先にあったのは大量のウツボカズラでした。
N. tentaculataはたくさん生えている
N. edwardsianaの色が先ほどと変わった
先ほどの場所より標高が高いのか、日当たりは良いもののN. lowiiは一切生えておりません。
先ほどのN. lowiiと入れ替わるように樹上にもN. edwardsianaが生えています。
後ろがキナバル山
カエルの卵が産みつけられていた袋も
サイズも大きく色のバリエーションも非常に多く、真っ黄色の美しいエドも生えておりました。
そしてメインのN. ×harryana!!
赤系
これを探しに来たんや!
これは1株(塊)だけ、ということでしたが、奥でうろちょろしているともう1株(塊)あるのを見つけました。
黄色系
襟が少し歪んでいるが立派な袋
この山にはN. villosaはないということなので、N. ×harryanaは真横に聳え立つキナバル山から種子が飛んできたのでしょう。
以前のMantapokの記事でも実演しましたが、特にハイランドネペンテスの種子は両脇の紐(?)部分で風に乗り、空を飛びます。
そうして山の頂上から頂上に渡って生育範囲を広げているのだと考えられます。
ガイドさんが下界のジャングルを挟んで向こうにある山の頂上にもN. villosa等が生えていると教えてくれました。
あの小高い所に生えているそうな
そこは本当に道もルートもなく、レンジャーがジャングルの中を4晩突き進んで登って発見した場所だそうです。
ここも同じように見つかった場所らしいですが、おそらくこの周辺には他にも未踏の場所が多くあり、そこにも色々ネペンが生えているのでしょう。
いや、素晴らしい。
めちゃくちゃ苦労してここまで来たかいがあった。
土砂降りの中の下山
N. edwardsianaやN. lowiiをたくさん見れて、N. ×harryanaまで見れてもう満足…
これでこの山の探検は終了!!
という訳にはいきません。
今日中に麓の管理支所まで下る必要があります。
先ほど通った難所を戻ること1時間半ほど。
なんとかお昼ごろにベースキャンプ場に帰ってきました。
崖では皆が一気に登ったせいで足場が崩れ去っており、下は見れずガチで足が浮き落ちかけました。もうあそこ誰も登れないのでは…?
既に3時間ほどアップダウンを繰り返し、精神的にも体力的にもかなり疲労がたまっています。
しかしここからさらに5時間ほどかけての下山です。
足は既にヘロヘロ、太ももの付け根あたりの筋肉痛も激しく、下りと言えど全く楽ではありません。
そんな中ひぃひぃ言いながら必死になって下っていると、14:00を過ぎたころから猛烈なスコールが降り始めました。
ジャングル内で独りぼっち
流石にロープを使うような傾斜が急な場所は過ぎていたので滑落の心配はなかったのですが、あと4㎞ほど道は残っております。
私は既にひどく疲れていたのと筋肉痛でゆっくりとしか歩けず、皆に置いて行かれており(ただし、皆がさらに奥に行っている間にN. edwardsianaの撮影中、滑落しかけて負傷したアウラパパさんと連れのポーターさんは更に後ろにいた)、周囲に誰もいない中ジャングルに一人になってしまいました。
雨具も着ていましたが完全防水ではなかったようで、長時間しかも熱帯雨林の豪雨に対処できるものではありません。
本来は雨宿り・避難するまでの緊急用。
そのせいで上から下まで全身びしょ濡れ。
靴の中まで水がたまって足が常時水に浸かり、靴下と足の裏がこすれることで非常に痛み始めました(足の裏全体がふやけてしわくちゃになり、全体が水膨れしたみたいな状態)。
しかし歩かないと帰れませんので一人半泣きになりながら豪雨の中3時間ほど歩いていると、ようやく尾根ルートを突破。
ここからは傾斜もそれほど酷くなく、帰り道はあと少しです。
と逸る心を抑えて一人下山していると。
麓に近づいて傾斜が緩やかになったせいか、林床全体が周囲から流れ込んできた雨水で完全に水没して川になっていました。
踏み固められた跡程度の登山道もあちこちから溢れる水のせいで完全水没し判別できません。
体力はほぼ限界。
即席の大量の川のせいで足首まで水に浸っており、靴はびしょびしょどころか水の中状態。
帰り道は分からず。
正直こうやって人は遭難するんだなと思いました…(´;ω;`)
日没も近づき、後ろの方にいるはずの足を痛めたアウラパパさんとポーターさんもどれだけ離れているか分かりません。
後ろを待つか先に進むか。
悩んだのですが、林床の植物が山道脇とその辺に生えているタイプで異なることに気が付き、水没していてもなんとか山道が見分けられることが分かりました。
その植物に沿って進むときちんと距離標が存在し、何とか遭難することなく帰路に就くことができました。
とはいえ標識の間隔が長かったのでびくびくしながら歩きました。
後方のアウラパパさんは何度も道を間違え、ガイドさんに指摘されていたそうです。
一人だった私が本当に遭難しなくて良かったです。
最初に渡河した川も増水していたものの、既に濡れているのでバシャバシャ膝まで水に浸かりながら渡り、あと少しでゴール。
…という直前に、即席のターフが山道に。
ガイドさんや先に行っていた同行者が雨宿りをしておりました。
内心一人じゃなくなってホッとしましたが、何故今更雨宿り?もう全員びしょびしょやし、あと少しでゴールやろ。
なんて思っていると。
どうやら最初に渡河した河川は実はまだ超えておらず(あちこち川だらけなので誤認した)、本物の最初の川は豪雨により大増水しており渡れなくなっていたため、水位が下がらないと帰れない状態になっていました。
最初の川が大増水して渡れない
水が跳ね時折ゴロゴロと巨大な岩が流される音が豪雨の中響きます。
これは待つしかないと待つこと30分。
豪雨(と雷)はいつになっても止まず。
標高が低いといっても1,000mは優に超え、全身びしょ濡れでありじっとしていると身体が冷えます。
ヒルもたくさん寄ってきますが、もう皆ヒルを気にする体力も気力も残っておりません。
さらに待っても雨は止まず。
遅れていたアウラパパさんも合流しましたが、まだ川は渡れません。
この川も普段は規模が小さく集水域も狭いため、雨が弱まりさえすればすぐに水位も下がると思うのですが、そもそも全く雨が止みません。
これは夜まで待機コースかなと半分観念しておりました。
が、比較的少し雨が弱まった瞬間、ガイドさんらが周りに生えていた細い竹を編んで即席のロープを作成し、無理やり川を渡ってロープの支えを作成しました。
渡るなら今です!
という訳で腰まで激流に浸しながらの渡河。
仕事柄趣味柄それなりの流れの川は渡ることが多いのですが、完全着衣で10㎏以上の荷物を背負っての激流の渡河は初めてです。
川を渡れば管理支所まではすぐです。
痛む足裏と筋肉を庇いながらやっとゴール!!!
の前にキャンプ場内を流れる川がまたもや大増水して溢れていました(-_-;)
そこも渡って正真正銘のゴール!!
私の荷物を運んでいたポーターさんは雨が強まって川が増水する前に帰って来ていたらしく、管理支所でタバコを吸ってダラダラしておりました。
どれだけ下山早かったんや…。昼出発で頂上から3時間切らんと無理やぞ(-_-;)
屋根のある場所で寝ようと思うともう一度キャンプ場中央の川を渡る必要があるのですが、そんな気力も起きず。
豪雨の中テントを張ってお着換え。
やっとずぶぬれネズミから解放されました。
夕食はあまりの疲れと足の裏の痛みからほとんど食べずさっさと就寝…
5日目につづく