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これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『時の支配者』(1982)4K修正版

フランスのアニメーション映画。

 

原作 ステファン・ウル

監督 ルネ・ラルー

脚本 ルネ・ラルーメビウス

脚色 リュシアン・アデ

台詞 ジャン=パトリック・マンシェット

アニメーション監督 ティボー・ヘルナーディ

 




ペルディド星に居住する親子が巨大スズメバチに襲われ、母親は死亡、父クロード(声:サディ・ルボット)と息子のピエール(声:フレデリク・ルグロス)はなんとか逃げたものの、安全とされるドロンの森へ行く途中で事故に遭い、クロードも命を落とす。その時、遠く宇宙船で旅を続けていたクロードの親友ジャファール(声:ジャン・バルモン)との唯一の交信手段である高性能通信機器通称マイクをピエールに渡す。

そのジャファールは旅の途中で出会った、自分の惑星から多くの宝物をせしめてアルデバロン星へと逃亡をはかろうとしているマトン王子(声:イヴ・マリ)ベル王女(声:モニク・ティエリ)を宇宙船に乗せていた。そんな状況下、ピエールからのSOSを受信し、まずはペルディド星に詳しいデビルス・バル星のシルバードじいさん(声:ミシェル・エリアス)を訪ね、それからガンマ10星へ向かいブルー彗星が通るのを待ち、その磁場に乗ってペルディド星への着陸を目指すことに。しかしその過程で、マトン王子の悪だくみ、ベル王女との優しい時間、蓮の花から飛び立つ心を読むことのできる妖精ジャド(声:ルドヴィク・ボーガン)ユーラ(声:ピエール・トゥルヌール)との出会いと協力、ガンマ10星で危機的状態に陥る…等々ありながら、時を制御して植民地化を進めるタイム・マスター連邦の立ち入り禁止区域に入ってしまい…。


ピエールのSOSに応えるジャファールの旅。

 

苦手なタイムパラドックスものだったけど(そもそもSFが苦手)、最終段階でそれが判明するので、素直にストーリーを追え悩まされることも少なく、面白かった。

というか、最終段階で「ああ、そういうことか」という意表を突かれた感じが心地よかった。

 

ガンマ10星は自由を否定し人間を洗脳して個性を取り上げ統一化してしまう全体主義思想の惑星で、相手を倒すには取り込まれた際に自分を激しく憎み否定する気持ちが武器となる。だけど同時に自分も滅びてしまうという救いの無さ。これはそのまま作者の国家観に置き換えられる。

 

マトン王子の宝石の山を眺めながらのジャドとユーラの会話に、

「人間は物の美しさより価値に関心を持つ」

「価値ってなに?」

「人間の持つ概念だよ」

「概念ってなに?」

「たぶん人間の頭をおかしくする何かさ」

というのがあり、うすぼんやりと皮肉が効いてて解釈がいいなと思った。でもそれが人間というジレンマ。

 

『ファンタスティック・プラネット』の監督、原作者とのこと。なるほど。

 

★★★★

 

 

『私立バカレア高校』(2012)全12話

ジャニーズJr.とAKB48の初共演、森本慎太郎と島崎遥香主演。

 

原作 秋元康

脚本 山浦雅大松田裕子

監督 窪田崇守屋健太郎樹木雅彦

 

森本慎太郎、松村北斗、高地優吾、田中樹、ルイス・ジェシー、京本大河、髙木雄也、白水萌生(しらみずほうせい)、島崎遥香、大場美奈、光宗薫、永尾まりや、小林茉里奈、島田晴香、中村麻里子、川上達也、宮田俊哉、渡辺大、窪田正孝、阿部亮平、笠原秀幸、波岡一喜、北原里英、加藤慶祐、内博貴、佐野和真、小島雄貴、武雄、DJ HIDE、MY A FLOW、玉元風海人(たまもとふみと)、才川コージ、桜田通、前田公輝、小島藤子、猪塚健太、須賀貴匡(すがたかまさ)、小池里奈、他。

 

落ちこぼれが集う最凶ヤンキー男子校馬鹿田高校が名門お嬢様女子校第一カトレア学院と合併されることとなり、第二カトレア学院誕生となった。

実はヤンキーだらけで地に落ちた馬鹿田高校を進学校として生まれ変わらせたい源理事長(上川隆也)は、馬鹿田教諭西園寺(渡辺大)に持ち掛けられたまずはカトレア学院でも優秀な生徒を実験的に転入させる話を承諾したのだった。それが第二カトレア学院。しかし西園寺の本当の目的は源の所有する資産だった。

そんなこととは知らない、兄桜木蓮(内博貴)からその座を受け継いだ馬鹿田のトップ桜木達也(森本慎太郎)を始めとした馬鹿田の校風を守る7人グループ、裕福な家庭に育ち中学まで進学校に通っていたが家庭の事情によりそのまま進学することが叶わなくなった浅田哲也(松村北斗)、幼い頃母親に女の子として育てられたことがトラウマになっている中世的な美貌を持つ寺川麻耶(京本大河)、素手とタイマンがモットーのロボットものオタク野口聡(田中樹)、音楽好きなヒップホッパー里中ユウキ(ルイス・ジェシー)、ユウキとコンビを組むおチャラケ系神保誠(高地優吾)、無類の女子好きで喧嘩は苦手で弱いが男気はあり馬鹿田への愛は誰よりも強く仲間思いの2年留年してる立浪祥平(髙木雄也)は、カトレアから来た生粋のお嬢様で成績優秀信頼も厚い生徒会長真行寺文恵(島崎遥香)、文惠の親友でありカトレアでは副会長を務めていた後宮沙耶(大場美奈)ら、女子に伝統や校風を否定され、達也たちにとっては改悪、女子たちにとっては改善の闘いが始まる。同時に、因縁の高校、宇賀神高校、国木田高校などに共学校になることをバカにされ、それに付け込まれたバトルも繰り広げられる。

すぐに頭に血が上る達也たち、冷静沈着に物事に相対する文惠たち。最初は半目していたが、事あるごとに達也たちのまっすぐな心根、他人を思いやる優しさに触れ、また文惠たちのまっとうな意見、正義に触れ、互いの壁が溶解していく。やがて助け合うようになり、暗躍していた西園寺の策略に、学校の危機に、一緒に立ち向かうことになる。また、ほのかな恋心も描かれる。

 

メインは森本慎太郎、松村北斗、島崎遥香、大場美奈。


それぞれにキャッチコピーがある。達也が「最強にアツい男」、哲也が「最強にクールな男」、麻耶が「最強にキレる男」、聡が「最強にバカな男」、ユウキが「最強バイリンガル」、誠が「最強お調子者」、翔平が「最強ええカッコしい」。

カトレアの女子生徒はAKBらしいのだが、文惠と沙耶の他、隆宗小百合(光宗薫)本庄真奈(永尾まりや)財前麗華(小林茉里奈)宮田杏(島田晴香)篠原香(中村麻里子)と、一応メインとなるキャラクターが7人揃っている。

 

オープニング、他校から殴り込みにやってきたヤカラと無駄に校内でケンカかましてて(アクションね)ハイローかと思った。窪田正孝出てるんでなお。そして上手い。宇賀神高校番長の袴塚遼太郎役。

中学時代哲也と仲の良かった岡本役に桜田通。沙耶をストーキングした男シンジ役に前田公輝。どちらも良かった。やはり俳優業は違うなと思う。もちろん、森本慎太郎は主演だけのことはあったけど。

あと、2年C組担任教師古葉役の宮田俊哉もとても良かった。初めて演技を見たかも⁉

比べて女子たちがひどい。というか、扱いがあんまりだ。アップでとらえる表情演技ばかり。それがあまりかわいくない。もっときれいに撮ってあげたらいいのに。演技たいしたことないんだから。(←^^;

 

その他、西園寺の企みに手を貸す不良軍団リーダーの本郷佐野和真

国木田高校番長明石笠原秀幸

蓮の相棒だった梶原波岡一喜

文惠を逆恨みしているカトレア中退の梨紗小島藤子

 
話の構成、先読みできるくらい定番の流れ、わかりやすい演出、で安心して見てられる。そしてやはり見どころはアクションシーン。
 

まあ…人生のうちでごくごく短い学生という数年間、友達関係を通して社会を知る時期でもある。そんな時間に、一番本音でぶつかり合えるような大切な仲間ができる。友情、友達っていいね、と思える作品。

 

★★★(★)

 

 

 

 

『放課後アングラーライフ』(2023)

原作は井上かえるの小説(「女子高生の放課後アングラーライフ」)。

 

監督・脚本 城定秀夫(『ガチバン』『新宿パンチ』『性の劇薬』『アルプススタンドのはしの方』『女子高生に殺されたい』他)

音楽 林魏堂=はやしぎどう(『アルプススタンドのはしの方』他)

主題歌 #ババババンビ「ミカンセイ」

 

十味(とーみ)、まるぴ、平井珠生、森ふた葉、中山忍、カトウシンスケ、宇野祥平、西村知美、藤田朋子、三遊亭遊子、他。

 

前の高校で、ほんのちょっとしたことで仲間はずれにされ、昨日まで仲良しだった友達が今日からは敵となり、あっという間にクラス全体からイジメを受けることになってしまった追川めざし(十味)。転校先の高校では誰ともつるまず友達は作らず、波風立たないよう過ごそうと思っていたが、同じ魚系の名前だと反応したクラスメイトの白木須椎羅=しらぎすしいら(まるぴ)に声をかけられる。そして椎羅の友達でクラスメイトの汐見凪(森ふた葉)真詰明里(平井珠生)とで構成される、「アングラー女子会」なる海釣り同好会に勧誘される。印象を悪くしてはならないと、流されるように釣りを始める。

しかし、椎羅たちはフランクに言葉を投げかけるものの、方言の入ったその言葉使いがめざしにとっては苦しくなることも多々。そしてちょっとしたことから勘のいい汐見に前の高校でのいじめのことがばれるが、汐見は余計なことは言わずめざしの助けになるようなサポートを始める。椎羅推しの明里にはつっけんどんに時に意地悪に接せられるが、実はそれも本気で付き合うからこその言動。でもめざしにはそれらみんなの心が通じない。それだけ前の高校で傷ついていたのだった。

椎羅たちはめざしと本当に友達になりたくて接しているのに、めざしは関係を築くのが怖くて自分を出せない。そしてとうとう椎羅の冗談がめざしを傷つけてしまう…。

 

いじめのトラウマはなかなか解けない。狭い社会の中ではそれだけ深く傷つくのだ。解決法は本心をぶつけ合うこと。ということかな。

めざしは、椎羅が熱中症で倒れたにも関わらず、自分のことを心配し連絡をよこし、その度に謝罪をする真剣な気持ちに、本心を打ち明ける。それで本当の友達になれた。ようだし。

 

てか、名前よ…(^^;;

 

話はまっすぐでわかりやすく、無駄もなく良いのだけど、映像の部分でアラが目立ってしまい(私的には)、そこが残念だった。例えば、メイクが濃い。汐見以外。特にめざし。これはキャラ的に不自然で説得力に欠ける。序盤、引越し先に向かう車が運転されてない。時間がなかったのか、雨天なのに晴れてるテイでの撮影。及び数時間のシーンを(おそらく)日を違えて撮ってるのがわかる、など。

 

お話は良い。地方の女子高生のノリにリアリティがあり、かわいらしくとても良い。

椎羅の母親役の西村知美もすごく良いし、椎羅たちの行きつけの店のおばちゃん藤田朋子もあるあるでうまい。担任の教師三遊亭遊子も田舎の教師っぽくて良かった。

その他、椎羅の母親にお熱のおじさん役に宇野祥平めざしの母親役に中山忍父親役にカトウシンスケ

 

★★★★

 

 

 

 

制作 レオーネ

配給 マーメイドフィルム

 

 

『ムーラン・ルージュ』(2001)

原題は『Moulin Rouge!』。オーストラリア、アメリカ合作映画。ミュージカル映画。

 

監督 バズ・ラーマン

脚本 クレイグ・ピアースバズ・ラーマン

 

作家志望の青年クリスチャン(ユアン・マクレガー)はボヘミアンに憧れてイギリスからパリへと出て来た。居をとったモンマルトルの安宿で作家オードリー(デビッド・ウェナム)、画家のアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(ジョン・レグイザモ)、パフォーマーのアルゼンチン人(ジャセック・コーマン)らと知り合う。彼らは経営が傾いたキャバレー・ムーラン・ルージュが新しいパトロンを見つけるための新作舞台をあーでもないこーでもないと制作中で、そこへクリスチャンがタイミング良く作詞の才能を見せる。ぜひに一緒に舞台を作ろうという話になり、まずはクリスチャンを引き連れムーラン・ルージュのトップスター娼婦サティーン(ニコール・キッドマン)に取り入るチャンスを狙い、次に経営者のハロルド・ジドラー(ジム・ブロードベンド)に話をつけようと画策。ちょうどその日、ジドラーはジドラーでサティーンを差し出す代わりにパトロンから資金を調達しようとウースター公爵(リチャード・ロクスバーグ)とサティーンを会わせる算段だった。ここで入れ違いの誤解が生まれる。サティーンはクリスチャンをウースター公爵だと思い、クリスチャンは単純にパトロンとして新作舞台の話に乗ってくれるのだと思う。そして二人は惹かれあい恋に落ちてしまう。

誤解はすぐに解けるのだが、二人は関係性を隠し、シタール奏者VSマハラジャとの恋を描いた新作舞台創作が順調に進んでいく。けれど、ダンサー兼娼婦のニニ(キャロライン・オコナー)の嫉妬や、手薄なところから、ごまかせていたことが崩壊していく。ついにはサティーンがクリスチャンを守るためウースター公爵を選ぶ。また、サティーンは結核を患っており、先が長くなかったこともあり、お披露目のステージで不幸が起こる…。

 

愛の歌を掛け合うところは秀逸。

楽曲はヒット曲を使い、あまり洋楽に明るくなくともほぼどこかで聴いたことあるな、というもの。ジュークボックスミュージカルと言われる所以。「ネイチャー・ボーイ」「モンマルトルの丘」「ロクサーヌ」「チルドレン・オブ・ザ・レボリューション」「サウンド・オブ・ミュージック」「マテリアル・ガール」「愛こそすべて」「ヨア・ソング」「ラヴィン・ユー・ベイビー」「ヒーローズ」「オールウェイズ・ラブ・ユー」「ライク・ア・ヴァージン」「ショー・マスト・ゴー・オン」等々。

 

人生を彩るのは人との出会い、そして恋は生きる糧となる。と思わせてくれるラブストーリー。

 

映画より先に舞台で観ていて、あの舞台美術に納得がいった。そもそもキャバレー「ムーラン・ルージュ」が中心になるので、演出もファンタジックにしないとしょぼくなる。

やはり舞台で観たい作品。

 

★★★(★)

 

 

 

 

『ゴミ屑と花』(2024)

 

監督 大黒友也

脚本 小谷香織大黒友也

 

植木祥平、花柳のぞみ、岩本淳、木村知技、岩立紫竜、ステファニー・アリアン、中野剛、他。

 

事故が原因で自信をなくし自衛隊の航空パイロットを辞めた尾崎浩一(植木祥平)は、今は家族のためにゴミ収集の仕事に就いている。と言ってもまだ研修の段階で、自分より年下の若い女性橋本花(花柳のぞみ)の指導のもと深夜から明け方まで作業をこなしている。その中で、色々な人と出会う。横柄な態度の酔っ払い、あまり日本語が達者ではない外国人の介護職員、口下手だけどねぎらいの気持ちを持つ優しい店員、店を潰し借金だけが残ることに絶望してる飲食店の店長…。そして、花のつっけんどんな態度のわりに真摯な仕事の仕方、その裏にある家庭の事情に、尾崎も心を許し自分の生き方、仕事の仕方を考え直す。花もまた、尾崎の言葉に勇気づけられ、尾崎に対して少し柔和な態度に変わる…。

 

互いの経験や過去が協和を生み出す人間関係の暖かさを見ることができた作品だった。

 

ゴミ収集が社会の底辺の仕事であるかのような街他人たちの態度に腹は立つものの、では自分が逆の立場だった少し前はどうだったかと思い出させるシーンは痛かった。貴賤の差など思ってはならない。人には各々種々事情や理由、これまでの人生があるのだと思った。

30分ほどのショートムービーながら、とてもよくまとまってて良かった。外国人の介護職員の背景も、わずか数分で読み取れる。街他人たちの背景もその数分でわかるのは、脚本がうまいからだ。役者も良い。

 

良い作品だった。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

配給 OHGURO FILM
 

『バレエ男子!』(2025)MBS系列 0501~全8話

 

監督 綾部真弥(『おいしい給食』シリーズ、他)

脚本 岸本鮎佳

バレエ監修・指導 草刈民代

バレエ指導 菊池研

主題歌 舟津真翔(ふなつまなと)「魔法のコトバ」

エンディングテーマ 近石涼「フィナーレ」

 

戸塚純貴、大東駿介、吉澤要人(よしざわかなめ)、水上京香、久世星佳、宮崎心桜(みやざきこころ)、松永玲子、小橋めぐみ、福田桃芭(ふくだももは)、他。

 

小森川バレエ団の団員である小林八誠=こばやしはっせい(戸塚純貴)は良い意味で自己肯定感が高くナルシスト、明るくポジティブなのだけど、実は密かに20年も続けていたバレエを辞めようと考えている。でありながら、男子のバレエダンサーをもっと世に知らしめるべく動画配信活動などもしている。そして小森川バレエ新人公演、50周年記念公演を通し、八誠がそもそもバレエを始めたきっかけ、それが「ドン・キホーテ」のエスパーダ役へのこだわりにつながっていたこと、その役をやることが八誠のバレエ人生の集大成だったとわかる。という流れの中で、八誠のバレエへの思い、夢を追うことの意味などが描かれる。

また、同じバレエ団で仲の良いプリンシパルの守山正信通称マモさん(大東俊介)、同期の佐々木真白=ささきましろ(吉澤要人)とのやり取りを中心に、元カノのダンサーりさ子(水上京香)、真白とパドドゥを踊ることになるみゆき(福田桃芭)、八誠が受け持つバレエクラスの中学生の生徒咲良(宮崎心桜)、などそれぞれ問題を抱える人たちとの交流から、互いに成長する様、また視聴者にはバレエの世界をざっくり紹介していく。

 

コメディ。

 

小森川バレエ代表久世星佳、団員を仕切る先生牧本小橋めぐみ

八誠たちがよく行く定食屋のおかみさん波子(松永玲子)がなかなか良いキャラクター。けっこうフィーチャーされるので最後まで何かあるのかと思ってたけど、八誠を応援する以外、特に何もなく終わった。何か欲しかった。今に繋がるドラマティックな過去とか。

演目として「くるみ割り人形」「ライモンダ」「ドンキホーテ」が入る。

 

吉澤要人はバレエ経験者のようで、まあ見れた。女性陣(役者)も経験者のようで安心して見れた。戸塚純貴も大東俊介も頑張ってたけど、やっぱりバレエは特殊で(バレエに限らずだろうけど)、出来る人が出来ない役するのが一番いいなと『ミッドナイトスワン』で確信した通りだった。やっぱりただ立っているだけでも姿勢に目がいき、上半身は良くても脚に違いが出てしまう。もちろん、話が良ければ、出来る出来ないは関係なくなるのかもしれないけど、その話が…(^^;;

ほぼアドリブのような台詞展開は興醒めするものが多い…と感じるくらいキャッチボールが長い。

あと、50周年記念公演のわりには意外とあっさり中止にする。機材に支障が出るなら別日を立てればいいし、そもそもそれくらいのスケジュールは組んでおくものではないのか、と"ドラマ"を無視した疑問が湧いてしまった。これが災害級の集中豪雨ならまだしも。結局はスタジオでの「ドン・キホーテ」上演&配信になる。バレエはどこでも踊れるという台詞もあるのだけど、それは身内の発表会レベルね。

レッスンやリハの様子だけで、舞台映像は無し。それではバレエの魅力は伝わらない。

とまあ、バレエ男子、バレエダンサーの苦悩も、扱いの軽さ、表面的な解決策で、ほぼ伝わってこないし、コメディというわりには笑えなかったり、と残念なドラマだった。

戸塚純貴の良さも出ていない。

 

良かったのは、りさ子が持つ一般クラスのレッスンで、そこの生徒の様子。リアリティがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

制作&吉澤要人インタビュー

 

 

『国宝』(2025)

原作は吉田修一の小説。

 

監督 李相日(『フラガール』『悪人』『怒り』他)

脚本 奥寺佐渡子(『しゃべれどもしゃべれども』『八日目の蝉』他)

歌舞伎指導 中村鴈治郎

撮影 ソフィアン・エル・ファニ

音楽 原摩利彦(『流浪の月』、舞台『フェイクスピア』他)

主題歌 「Luminance」作詞:坂本美雨/作曲:原摩利彦/歌:井口理(King Gnu)

 

吉沢亮、横浜流星、渡辺謙、田中泯、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、宮澤エマ、嶋田久作、中村鴈治郎、他。

 

 

 

 

任侠一門に生まれながらも舞踊に傾倒し歌舞伎に心酔する立花喜久雄(吉沢亮/少年期:黒川想矢)。1964年、その女形姿を立花組の新年の宴席で披露し(「関の扉」)、父親立花組組長立花権五郎(永瀬正敏)に招かれていた歌舞伎役者の花井半二郎(渡辺謙)の心をつかむ。その日ちょうど組同士の抗争が勃発し、権五郎は喜久雄の目の前で命を落としてしまう。同じ一門で仲良しの早川徳次(下川恭平)と復讐に燃える喜久雄だったが、それは失敗する。その後、喜久雄は権五郎と母親立花マツ(宮澤エマ)の望みもあり、花井半二郎に引き取られ、部屋子となる。

憧れの歌舞伎の世界に入った喜久雄は、半二郎の息子大垣俊介(横浜流星/少年期:越山敬達)と勉学を共にし、部屋子と御曹司という格差はあれど稽古に励み切磋琢磨し名前も花井東一郎(俊介は花井半弥)ともらい、“東半コンビ”と呼ばれ「二人藤娘」〜「二人道成寺」を踊るまでになる。

厳しい稽古を続け実力も上がる一方で、喜久雄は梨園ながらの派手な世界も知る。幼馴染みであり共に彫り物を入れた仲の福田春江(高畑充希)という存在がありながらも、愛人でも良いからと言う芸妓藤駒(見上愛)とも関係を持つ。

順調に見えたが、ある時、半二郎が事故に遭い、「曽根崎心中」の代役を喜久雄が担うことになる。その「曽根崎心中」のお初を見事に演じる喜久雄に、俊介は敗北を自覚し、家を出ていく。春江と共に…。

俊介が出て行って数年の後、糖尿病で目が見えなくなりつつあった半二郎から三代目花井半二郎を継ぐのは喜久雄だと決まる。喜久雄は藤駒との間に娘綾乃をもうけていたが、正式に父親を名乗ることはなかった。そして襲名披露のその日、花井半二郎改め四代目花井白虎は舞台で倒れて帰らぬ人となってしまう。しかし今際の際に名を呼んだのは俊介の名前「俊ぼん」だった。芸ではなく、血が勝った瞬間に喜久雄は打ち砕かれる。

背中に背負ったみみずくの刺青、長崎のヤクザ出身であることから、血の前に無力であることを思い知らされる喜久雄。防壁だった四代目花井白虎が亡くなって、喜久雄が舞台に立つことはなくなってしまった。端役でもいいから立ちたい喜久雄に、恥晒しの汚名だけが響く。

歌舞伎に魅せられ芸を磨き舞台に立ちたい一心の喜久雄は歌舞伎役者の大御所吾妻千五郎(中村鴈治郎)の娘吾妻彰子(森七菜)に取り入る。しかしその行動が千五郎の怒りに触れ、歌舞伎界から排除されると時を同じくして各地を旅芸人がごとく渡り歩いていた俊介が春江と息子一豊を連れて舞い戻る。

そうして俊介と喜久雄の生活が入れ替わる。喜久雄は彰子と共にドサ周りの身となる。それでも喜久雄は舞台からの景色、憧れていたどこか記憶の隅にあるキラキラ光る景色を追い求める。そんな時、国宝となった女形小野川万菊(田中泯)や俊介に呼び戻される。昔一緒に踊った「二人道成寺」、それを目玉に興行を打つ。しかし、幾度目かの舞台で俊介が父親と同じ糖尿病に侵されていることがわかる。片足を失っても舞台に立ちたい俊介はいわくありの「曽根崎心中」を喜久雄と踏み、渾身の演技を見せる。

歌舞伎役者として、花井の名を継承する者として、再び舞台に立つことができた喜久雄。時は流れ俊介も世を去り、人間国宝の称号を与えられる。そしてその記念すべき写真を撮るのは娘綾乃(瀧内公美)だった。その娘さえも怨みながらも珠玉と認める喜久雄が舞うのは万菊の十八番「鷺娘」。半世紀に渡り追い求めずにはいられなかった歌舞伎に魅せられ翻弄され、舞いながら喜久雄には何が見えたのか…。

 

ずっと追い求めていたキラキラと光が舞う孤高の景色は、おそらく雪の日に目の前で散った父、権五郎の美しさだったのかもしれない、そうだといいなと思ったけど、それは違って、たぶん、見果てぬ夢のことだろう。どんなに追いかけても掴み取れない歌舞伎の世界、「(人間)国宝」の名をもらってもなお近づけない光なのではないか。

 

呼吸や衣擦れの音、ちょっとした息遣いも聞こえて、それが生命=人生を感じさせてるのかもしれない。涙が流れる音まで聞こえそう。ってくらい、音(音楽)と映像のピタッと合う演出が素晴らしいなと思った。作品の魅力を音楽と融合させた映像美に持ってきてる印象だ。シーンの重ね技とか切り替えとかも美しい。ワンカットであれ、ワンシーンの流れであれ、役者の演技(表情)には目が止まるし、普通の役者が歌舞伎役者を演じてるのがみごとで、作品の内容…話ではなく、とにかく映像美に感心した。

というのも、話はダイジェスト感がいなめなかった。しかも感情面でフィーチャーしてるのが喜久雄ではなく俊介に思えてならない。喜久雄より俊介の葛藤、辛さ、生き様の方がよく伝わってきた。俊介の話だっけかと思ったくらいだ。喜久雄が悪魔と取り引きをしたという台詞も深みがなかった。なぜだかわからない。二人の愛憎は均等だし、どちらも詳細には描かれてなく、観てる者の脳内補完にかかっている。その補完がちゃんと出来るように作られてる。必要なものだけをつなぎあわせ、無駄なもの、なくてもわかるだろうという信頼をかけてそぎ落としている。それはみごとな構成。…そもそも喜久雄の50年を3時間足らずにまとめたのだからダイジェスト感は当然か。

 

主役が吉沢亮であらねばならない理由もわかった気がした。

この美は文章では難しい。だから映像作品の意味がある。きっと小説とは別物(原作未読)。

 

普段は普通の人間、「(人間)国宝」は演じている時に「国宝」となるという言葉を誰ぞの何かで見かけた。それがラストの鷺娘でわかった。ここの吉沢亮、顔を上へ向け、クッと首をわずかに傾げる、このシーンがこの映画の中で一番美しく情感もあった。スイッチが入ってる最高潮の瞬間、一瞬をとらえたかのような画だった。なるほどこれが「国宝」かと。前述した追い求める光は、もしかしたら、「国宝」として立つ舞台上で得られているのかもしれない。そしてその光は上がる度に違って感じ、次は、次はと求めてしまうものなのかもしれない。恍惚感か。

 

キャストの演技は全員素晴らしい。脇に至るまで。俊介の母親大垣幸子役である寺島しのぶの内心が手に取るようにわかる演技、高畑充希の心が揺れ動く様がじわりと伝わる空気、渡辺謙はいわずもがな。田中泯の舞踊を合わせた国宝然としたたたずまい、本当に素晴らしい。そして何と言っても横浜流星の助演男優賞級の演技よ…。みごとに主演を光らせた。吉沢亮はそれ以上を出さないとだから大変だったろうな。ま、キャラが違うしベストキャストなのでそんなに苦しまなかったかな、演技では。歌舞伎では努力のあとが見えた。横浜流星との違いが如実だったし(俊介と喜久雄の違いなのでディスりではありません)、三代目を任せたのも致し方無しと思えた。そうした説得力を見せられたのはすごい。

 

その他、二人の舞台に入れ込む興行会社三友の社長梅木嶋田久作、その社員竹野三浦貴大

 

そういえば、春江がさしてた赤いマドラスチェックの傘、知り得る古い時代を感じて、あれはとても良い小道具と印象に残った。

 

★★★★

 

 

公式サイト

 

 

 

 

国宝公式X 

 

 

 

 

実は2回観た。たまたまそうなったのだけど、1回目観て、高評価が理解できず、何を見落としたんだろうと思ったんでちょうど良かった。結局、解説の類は作品を見るにあたって邪魔でしかないと常々思っていたのに、感想や撮影裏話を見過ぎたのかもと。とはいえ、映像美、とその映像力を数段引き上げる音楽、役者の素晴らしい演技力、そして程よくまとめたお話、と感想そのものは何も変わらなかった。

 

2回目の収穫は徳次が社会で生きていることがわかったことで、ホッとした。

あと、1回目のエンディングロールで水間ロンの名を見つけた時、どこに?!と思ったのが、見つけられて良かった。

その他、細かい小道具にも目がいく余裕があったことで発見もあった。

 

 

『やぶさかではございません』(2025)テレビ東京系列0403~全12話

原作はMaritaの漫画。

 

監督 安村栄美井上雄介山下宏樹

脚本 川﨑いづみ

音楽 金民智今村良太

オープニング曲 DXTEEN「Tick-Tack」

エンディング曲 可憐なアイボリー「恋のガイドブック」

 

松村沙友理、駒木根葵汰、濱正悟、田畑志真、安藤聖、東根作寿英(とねさくとしひで)、片山萌美、櫻井淳子、木﨑ゆりあ、後藤希愛、他。

 

中学時代、同級生の拓也(阿久津慶人)に告白され付き合うことになったものの、1週間で「なんか、違ったわ」とフラれた不思議麻衣=ふしぎまい(松村沙友理/中学時代:後藤希愛)。以降、それがトラウマとなり、母親(櫻井敦子)の助言もあり、彼氏より勉学、多種多彩な資格習得に励み、正義感が強く他人を思いやれる完璧で、仕事の出来る女性へと成長した。そしてなぜか、ふとした拍子で他人の心の声が聞こえる能力も備わっていた。

仕事を辞めて引越しをした麻衣はフラッと入ったサイレントカフェ「アサガオ」が気に入り、ちょうどスタッフ募集していたので、そこで働くことになる。店長の各自一弘=かくじかずひろ(東根作寿英)、シェフで店長の妻の各自桃子=かくじももこ(安藤聖)、スタッフの手相なな=てそうなな(田畑志真)に、その仕事ぶりに感心され大歓迎で迎え入れられる。そしてもう一人、カフェで大人気のスタッフで、他人との距離感にバグのある上下亮=かみしもりょう(駒木根葵汰)とときめきの出会いをする。

上下もまたこれまでの恋愛がなぜかうまくいかず、人目を惹くのにいつもフラれてしまう。そこで、上下は欠点を知るためにも自分を観察して欲しいと麻衣に願い出る。麻衣もまた中学時代の苦い経験から、同じことを申し出る。でも、上下のそれは本当は麻衣とお近づきになりたい下心が大分働いてのことだった。

麻衣にとってお互いに観察し合う関係になってわかったことは、上下にはなんら落ち度がないこと、そして徐々に惹かれていく自分だった。しかも時折り上下の心の声が聞こえる…。

各自店長の親戚筋の臨時スタッフ縫目玄=ぬいめげん(濱正悟)や、麻衣の親友戸棚千尋=とだなちひろ(片山萌美)、上下の元カノであり麻衣が仕事の恩人でもあった水面綾=みなもあや(木﨑ゆりあ)が絡み、二人の想いが通じ合い交際〜同棲へと発展するファンタジー色もある幸せいっぱいのラブコメ。

 

いや、名前よ…(^^;)

 

フレンチキスに留まり、悪い人が一人もいない良質なまさに少女漫画然としたドラマだった。だいたい相思相愛の関係で、どこまでもラブラブな二人を見せつけていくドラマに悪役は必要なく、綾も麻衣を慕う役だし、麻衣に少し好意を寄せる玄も生き方が恋愛至上主義ではない。スタッフのななは推し活女子だし。各自夫妻は他人をまま受け入れる良い人たち。

上下の距離のバグはそのまま愛情過多につながり、一歩間違えば嫉妬深く束縛欲求の強いめんどくさい男なのだが、少年のような心情が表立ち、その容姿の良さから愛おしさの方が先立つ。主人公の麻衣もひょっとするとぶりっ子で潔癖症な奥手女でイラつきの対象にもなりやすいところ、やはり心情や変顔で憎めない愛らしさの方が先立つ。なんとなく深田恭子を彷彿とさせるキャラクターだった。

 

ちょっと皮肉かな残念かなと思ったのは、拓也のその後で、たまたま鉢合わせた妻子(あいだあい金子晟士=かねこじょうじ、小松優里亜)連れの拓也(宮澤佑)がヤンキッシュで人の心がわからないような身勝手な男のような態度を取った点。そしてお芝居も下手だった(^_^;)

あと、心が読める設定の甘さよ…(^^;)

 

それにしても、最初はお決まりのクールさを持つこれまでと違わぬ駒木根葵汰色のキャラクターかと思ったけど、回が進み恋愛がうまくいき出すと、麻衣への想いが溢れ出し、コミカルさが出てくる。ああ、こういうコメディもイケるのかと新たな面を見た。松村沙友理は先にも書いたけど、第二の深田恭子みたいで、もっともっと突き抜けていいと思った。『体感予報』の万さんはとても良かったし、『賭ケグルイ』にも出てたんだし。

あと、そうそう、濱正悟もこれくらいコミカルな役がいい。この路線で数本見たい。

 

にしても、櫻井淳子が三十代女性の母親役かぁ…(´;ω;`)。。。

 

恋愛第一ではなく、他に好きなこと、夢中になれことをたくさん作る、という生き方を推奨してるのはいいなと思った。もちろん、結果的には人とのつながりを大切にする生き方なのだけど。

 

★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余計なことだけど、駒木根葵汰の入浴シーンがある。駒木根葵汰もイケメン俳優だけど、これまで観た入浴シーン(湯舟に浸かる)で最も美しかったのは、映画『さくら』での吉沢亮。あれはなかなか超えられない。と思った次第(^^;)


『25時、赤坂で』シーズン2が10月から開始とのこと。楽しみ。

 

 

『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』(2025)

原作は鈴木おさむで、もともとは朗読劇(2019年初演)。2024年3月で放送作家及び脚本家引退の鈴木おさむの最後の映像作品。とのこと。

 

脚本 鈴木おさむ(『M 愛すべき人がいて』『先生を消す方程式』、『極悪女王』他)

監督 木村真人

音楽 横山克=よこやままさる(『3D彼女』『心が叫びたがってるんだ。』『AI崩壊』他)

主題歌 FANTASTICS「春舞う空に願うのは」

エンディング曲 FANTASTICS「魔法みたいな日々」

 

八木勇征、井上祐貴、櫻井海音、椿泰我、カンニング竹山、阿部亮平、高橋洋、馬淵英里何、田辺誠一、笹野高史、工藤美桜、平野宏周(ひらのこうしゅう)、他。

 

自然豊かな景色が広がるとある田舎の村。その村には18歳を迎える男子に20歳になるまでの2年間、人生で1回だけ魔法が使えるという不思議な伝統がある。今年18歳を迎えるのは、子供の頃からずっと仲良しだったアキト(八木勇征)ナツキ(櫻井海音)ハルヒ(井上祐貴)ユキオ(椿泰我)の四人。この村の重鎮テツ爺(笹野高史)に集められ、詳細を説明される。禁忌事項は1つ、命に関わることに魔法を使ってはならない、ということ。以前、使った者がいて、その時は村に不幸がおとずれたという。四人は将来の夢や、今の願望などふざけ合いながらも語り、何に魔法を使うか考え始める。

母親を早くに病死で亡くし、プロピアニストになれなかった父親(田辺誠一)と二人暮らしのアキトは、音大へ進み同じくピアニストを目指したいと思っている。ただ、父親は自分の経験からそれには反対の立場をとっている。

心臓に疾患をかかえるハルヒは小学生の頃に転校してきた。アキトとは一番に友達になり、以降、ずっとみんなと楽しい学生生活を送っていたが、心臓の具合は悪くなる一方だった。

造園業を営む父親(阿部亮平)に、好きなサッカーの道をすすめられていたナツキは、ある日父親が倒れ、諦めざるを得なくなる。さらにアキトたちと喧嘩になったその日、父親から魔法の禁忌を犯したことを聞き、高校卒業を待たずに村を出て行ってしまう。

物作りが得意なユキオは高校で工作部を発足し恋もし充実した日々を送っていたが、建設業の父親(カンニング竹山)が、村の自然を壊したダム建設に関わっていたことを知りショックを受ける。

それぞれ問題を抱えて卒業を迎え、アキトは念願の音大へ、ユキオは家業を継ぎ、ナツキもよその地で造園業の修行をしていた。そして、余命を知ったハルト以外魔法を使わないまま20歳の期限が近づいてきていた。

三人は何に魔法を使うのか、そこには固く結ばれた絆、仲間への思いやりがあった…。

 

ハルヒ、ユキオ、ナツキのキャラクターは一貫性があり何をするにも言うにも違和感がなく、確かにそこにハルヒ、ユキオ、ナツキがいるのだが、肝腎要のアキトがひどい。おそらく役者の技量の問題。口調、声のトーンでキャラブレは防げる。とすれば、なぜそれで良しとしたのか、演出に疑問が湧く。例えば、父親と話す時、先生と話す時、友人たちと普通の会話をする時、モノローグ、優しさが先立つキャラクターなのに、友人たちとふざけ合う時、一瞬でキャラが乱暴なイメージに変わる。それが声色、口調。アキトはそんな言い方しない。それが前述のシーンで出来上がってるのに。

うまかったのはナツキ役の櫻井海音。『推しの子』ではアクア役だった(ミスチルの桜井の息子だったと今作で知った)。それからユキオ役の椿泰我。さすがIMP.。

 

ファンタジー。にしては男子18歳という年齢設定が痛々しい。話自体は悪くないし、展開も起承転結わかりやすく悪くない。のに、つまらなくて驚く。というか、鈴木おさむには期待はしてなかったけれど、出来る役者が気の毒だったし、出来ない役者をカバーできなかったのは残念。

それと、泣かせのシーンが長すぎる。「さあ、泣け!」とジリジリ迫られてる感じでどんどん冷めていく。エンディングのしつこさたるや…。あと、今どきダム建設を単純に悪者扱いするのも見識に欠けると思う。


そうそう、音大合格は大変だという話だったが、努力のすえ合格したアキト。仲間の誰かが合格するよう魔法を使ったんじゃないかと思った。喧嘩してたナツキあたりが。でも違った。大学でのアキトの技量は下の方で、合格は半ば運だったかのような設定。おそらく、そこで壁を乗り越える姿を描きたかったのだろうけど、あまりにきれいな展開。なのにナツキ、ユキオの対峙する現実は厳しめ。主人公だから当然だろうけど、アキトが恵まれすぎ。これがキャラブレがなければ納得もいったのだけど。

 

音大のピアノ科教師南雲馬淵英里何

 

★(★)

 

 

 

 



制作 共同テレビジョン

配給 ポニーキャニオン

 

『燕 Yan』(2020)

 

監督 今村圭佑

脚本 鷲頭紀子

 

水間ロン、山中崇、テイ龍進、平田満、一青窈、長野里美、田中要次、宇都宮太良(うつのみやたいら)、南出凌嘉(みなみでりょうか)、林恩均(リン エンジュン)、他。

 

以下、内容と解釈がごっちゃになった、文章的にもまとまりのない感想になります。すみません。

 

早川燕(水間ロン/幼少期:宇都宮太良)は癌を患い後始末をし始めてる父親(平田満)に呼び出され、久しぶりに実家を訪ねる。実家には明るく頼もしい継母(長野里美)がいる。実母(一青窈)と父親は燕が5歳の時に別れたのだ。実母が生まれ故郷の台湾へ、兄の龍心を連れて帰るという形で。確かに、なかなか日本語に慣れない、台湾の文化を生活に持ち込む台湾人の母親の存在は、まだ幼かった燕の自尊心を傷つけもした(燕は実母に「イェンイェン」と呼ばれていた。燕は台湾語でイェン)。けれど、まさかいなくなるなんて、しかも兄だけをつれて…と、燕は捨てられたことの事実の方が、成長するにつれて大きくなっていった。そして連絡を取り合うこともなく、亡くなった実母の葬式に出向くことさえもなく月日は過ぎた。

さて、父親の頼みは借金があるために相続を放棄するよう龍心のサインを得てきてくれというものだった。本来であれば父親が直に出向けば済むことだが、父親は父親なりにわだかまりを持った兄弟関係の修復、そして実母がどんなにか燕を愛していたかを肌で感じとってもらうためにも、台湾に行き、龍心と会うことを望んだのだった。

いざ台湾に着いてみると、騒がしく、燕は不快感をあらわにする。それは幼い頃からの実母への恋慕の裏返し、抵抗のひとつなのかもしれない。

龍心の友人だというトニー(テイ龍進)を介してようやく会えた兄龍心(山中崇/幼少期:南出凌嘉)には子供(林恩均)がいた。離婚していて、たまに会う存在。ちょうどその子供が緩和剤的存在にいるのだが、龍心は壁を作り、燕は線を越えられない。けれど、トニーの悩みを聞いた燕は龍心にようやく本心をぶつける。

 

言いたいことを言い合い、母親の愛の深さを知り得た燕、燕が自分と同じように苦悩していたことを知り得た龍心。今後のそれぞれの生き方が変わっていくかもしれないし、まだまだ自我と向き合う時間が必要なのかもしれない。そんな感じの終わり方だった。

 

龍心が離婚しているのは、おそらくハーフであるということと関係があるのではないか。この作品のテーマでもある人種の問題だ。


台湾人でも日本人でもない、日本にいたかったけど、自分が母親についていかないと母親が心配だという犠牲心が働いたと思える龍心の選択。龍心は龍心なりにうまく歩めていなかったのだ。それが兄弟喧嘩で現れる。痛々しい。

ハーフである苦悩が子供にあり、そんな子供を他国の社会で育て、自身も生活していかねばならない、文化の違いが母親に重くのしかかる。愛しているからだけでは乗り越えられないこともある。切ない。

大人になったらなったで龍心の我慢の人生が悔いとなって生活に現れる。どちらの国の者でもない自分をおさめきれない苦しさがよく描かれていた。親の愛情だけでは乗り越えられない多感な子供時代は特につらい。

龍心の子供に自分は台湾人と日本人、どっちに見えると聞くシーンが最後の方にある。どっちでもいいよと答える。子供はわがままで残酷で正直で、基本自分以外のことには無関心だ。それが大人のこだわりに響く。

他人ではない、近しい人間でもない、自分の中に二国の人種がいるのだ。どちらの国に暮らそうと、折り合いをつけるのは難しい(かもしれない)。

 

兄にくってかかる弟の立場、喧嘩から気持ちの吐露にうつる過程も丁寧でいい。その前に中国人であるトニーの居場所のない自身へのジレンマ、悩みが話され、きっかけとなるのもいい。

もちろん借金を子供に残さない策ではあっても、父親が設けた兄弟の和解(およそ23年ぶりに会う)…というか相互理解のチャンスというそんな親心も良い。

 

 

監督がこれまでカメラマン、撮影監督をやってきたということで、光の使い方、何を写すと効果的か、その画で語らせることに力を注いでいるようで、映像が雄弁。役者の、殊更水間ロンの表情が各シーン良くて、その表情をとらえる監督、素晴らしい。映像力がすごい。幼い頃母がまだいる時暮らした実家の様子、思い出につながるものがチラホラと面影を残している映像は秀逸だった。

 

子供と親とどちらの愛が長く続くか、無性の愛について言及するところもある。一般的には愛は親の方が強いかもしれないけど、一生親が親であることは変えられない。切っても切れない、そういう関係で繋がっているのだと改めて思った。

 

映画って2度見ると見えなかったものが見えてきて驚いたりする。

 

とても良かった。

 

★★★★★ 

 

 

 

 

燕は台湾で生まれ、季節がくると海を渡って日本へ行く、とあった。台湾に限らず、東南アジアの燕が渡って来るようだ。まさに、生まれも育ちも、終の住処も、本人が心地よく過ごせればそれがどこであろうといいのだ。そのくらいおおらかになる人間力が試されるような映画だった。

 

私はまだまだ小さい。