これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

2020年7月の下旬から10月までの3ヶ月で100本を超える作品を配信で観ていました。単純計算で1日3~4本。(今はさすがにそんなに観ません。)
こんなに観てると内容を忘れてしまうだろうと、当初覚え書き程度に都度都度Twitterに書いてたのですが、ツイートは他のことも書くので流れてしまってメモにもならない、そんなわけで10月17日スタートで、ブログにすることにしました。
ただ、観ていた本数が多いのと、観出したきっかけが三浦春馬の急逝だったので、一応流れを考えて調整し、8月26日が初投稿になってます。

以降、これまで観てツイートしてきたものを、観た順番ではないですが、毎日1本ずつ加筆してアップしてます。また、新たに観た作品はブログのみに書くことにしました。
本当は記憶を手繰るためにもネタバレまで書きたいのですが、そこはまあ人目に触れることへの配慮で、今のところ、たまにやってる程度です(タイトルに明記してます)。

※2023年11月より不定期更新になってます※
     ↓
※2024年2月より毎週月曜と金曜に更新に変更※
     ↓
※2025年1月より毎週月曜、水曜、金曜に更新に変更※

ー★評価基準ー

★★★★★ 面白かった。オススメ。
★★★★ 良かった。
★★★ ふつう。可もなく不可もなく。
★★ イマイチ。好みに分かれる。
★ つまらない。
(★)は0.5


なお、内容の解釈はあくまでも私が感じたものであって、作品が伝えたい事と合致してる可能性は低く、つまらないと思ったものも、1年後に再視聴したら面白いかも、その程度の感想になります。あと、小生意気なうんちくみたいなものをたまに垂れてますが、素人なので言えることとご理解ください。


【補足】

●たまに、音楽や書籍、舞台の感想、役者さんについて書いたものもあります。それらでは★評価はつけていません。

●各補足についてはWikipediaを参照してます。

●新たに補足するもの(キャストスタッフ名、リンク先など)が出た場合、遡り更新しています。

●監督、脚本家、その他スタッフの手がけた作品名は私自身が観たことがあるもの、または有名作新作だけ載せています。

●タイトルは基本作品名になってます。

●敬称は略しています。

●予告編などの動画はなるべく公式のものを貼っていますが、リンク切れあった場合はごめんなさい。(※大河ドラマ『青天を衝け』に関する投稿のリンクは公式サイト削除でほとんど切れていますが、記録のためそのままにしています。)



(コメント欄、いいね、ペタなど交流ツールは閉じています。すみません。)



基本的に演技にクセや節がなく、作品の中に溶け込める役者さんが好きです。

『愚か者の身分』(2025)

原作は西尾潤の小説。

 

監督 永田琴

脚本 向井康介(『マイ・バック・ページ』『ふがいない僕は空を見た』『ある男』『悪い夏』他)

音楽 出羽良彰

主題歌 tuki.「人生讃歌」

 

北村匠海、綾野剛、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、田邊和也、松浦祐也、加治将樹、嶺豪一、他。

 

松本タクヤ(北村匠海)は闇ビジネスに手を染めていた。戸籍売買を主体に金を稼ぎ、現場脱却を視野に入れてはいるものの、一度染まった世界から抜け出るのは難しく、自分がこの世界に引き入れてしまったともいえる弟分の柿崎マモル(林裕太)にもわずかながら責任を感じていた。そんな時、この世界から足を洗えるチャンスが訪れる。それは直接指示を下してくる佐藤(嶺豪一)やその上のジョージ(田邊和也)らを騙すことにもなり危険が伴う。そして案の定、臓器売買も手がける彼らの手中に落ちる。それでもマモルを守りながら、自分がこの世界に入ったきっかけを割くとなった先輩梶谷剣士(綾野剛)の手を借り、どうにか逃げ切ろうとするが…。

 

みんな育児放棄や虐待など、家庭が機能していない環境育ち。昔から思春期独特の反抗心を除いたら、だいたい育ちで将来の道が決まっている。反骨心がうまいこと利けば悪環境からの脱却はできるだろうけど…自立した大人になり生計を立てる家庭を持つまでいくのは稀なんじゃないか? おそらくその前に命が果てる。

にしても、社会の複雑さを感じ入った。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

制作 Lat-Lon

配給 THE SEVEN、ショウゲート

 
 
 

 

 

ネタバレするとタクヤは両目を失うのだが、まともな治療をせずに2〜3日も過ごせるのだろうか? そんなこと野暮な心配だけど、それがすごく気になった。あと、この手のストーリーは疑りぶかくなるもんで、梶谷の嫁(木南晴夏)がはめにくるんじゃないかとか、客引き役の希沙良(山下美月)もどうにかなってしまうんじゃないかとか、もっと最悪な展開を想像してしまった。

こんな荒れた世界でも、タクヤはハメた客(矢本悠馬)に情を持っていたり、マモルを実弟と重ねていたり、タクヤ×マモル、タクヤ×梶谷の関係には金や損得云々ではない愛が感じられて、それが救いだったりした。

また、同じくハメた客(松浦祐也)が刑事だったりするのも、話の締まりがあって良かった。

 

 

『DIVOC-12』(2021)

「異常は続く。それはやがて日常となる。かつてない閉塞感と、不確かな未来。そんな中でも、新たな才能は息づいている。12人の映画監督による、12の物語。ウイルスは都市機能を麻痺させた。しかし、何かを生み出す動きまでは侵さない。立ち止まるな、作り続ける。創造だけが、すべての不安を超えていける。」DIVOC-12プロジェクトステイトメントより

 

…というわけで、コロナの弊害を受けているクリエイターたちにソニー・ピクチャーズエンタテインメントが立ち上がり、12人の映画監督による12本のアンソロジームービーを制作。その収益の一部は日本芸術文化振興基金へ寄付されるとのこと。

また、タイトルはコロナ=COVID-19を逆さに読んだもので、コロナをひっくり返したいという思いが入っている。とのこと。

 

大きく三つにカテゴライズされ、三人の監督のチーム作品となっている。(わかりやすいように色分けします)

藤井道人監督チーム「成長への気づき」🟣

上田慎一郎監督チーム「感触」🟢

三島有紀子監督チーム「共有」🔴

 

 

🟣「名も無き一篇・アンナ」★★★

監督 藤井道人(『青の帰り道』『デイアンドナイト』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『ヤクザと家族』『ヴィレッジ』『最後まで行く』『正体』他)

亡くなった恋人アンナ(ロン・モンロウ)に夢の中で会い、ようやっと前へ進む男(横浜流星)


今は深い悲しみから抜け出せなくても、いつかは立ち上がれる時がくる、それは自分にはっぱをかけるということではなく、自然の流れがそうさせるということか?

 

 

🟣「流民」★★

監督 志自岐希生(しじききお)

昔暮らした家へ行く女(石橋静香)。そこは宿に変わっていて、部屋の鍵を渡されるが、開けても開けても人がいる。自分の部屋が見つからない。部屋を占領している煩わしい多くの人間から逃げ、消そうとするが、結局自分からその場を後にする…。


冒頭に出る一文↓だが、これはこれで完結されてて、映像との関わりが分からなかった。

「暗黒の空の背後には 星を実らした歯の林があるにちがいないそれを信じることは、私のもの黒い洋傘の中は、私のもの。」 小熊秀雄「流民詩集」より "Behind the pitch black sky There must be a forest with fruits of stars To believe that is all mine What's underneath my black umbrella is all mine" - Hideo Oguma "Poctry of Vagabonds"」

 

 

🟣「タイクーン」★★★

監督 林田浩川

中華料理店の下働きのシン(小野翔平)は周りにいいように扱われている。この日も高い時計を買わされ酒を盛られ潰れかけで古い時計を川へ落としてしまう。探しに川べりの釣り船に乗るが見つからず寝てしまう。気づくと船の持ち主(窪塚洋介)が乗っている。しばらく話したあと、岸に降りてから開けろとプレゼントを渡される。再び眠りにつき起きると持ち主はあとかたもなく消え、手元のプレゼント箱には落とした時計が…。


遅れたり早まったり、時にせきたてるように新しい時を刻む。何度も何度もやり直せる、人生は繰り返しを重ねながら進んで行く、ということか? シンは中国人で要領も悪く、日本へは働きにきたぽい。

 

 

🟣「ココ」★★★★★

監督 廣賢一郎

妊娠をした女佳奈(円井わん)が彼氏熙舜=ひろみつ(笠松将)にそのことを告げるもつれない。子供ができたことでお互いに今までと未来を天秤にかけ始める。結局二人は子供に前向きになるものの、流産からの破局となる…。


けっこう痛い。佳奈の生活と虚勢を張る感じ、熙舜の家庭観、父親(渡辺いっけい)を見る目など。とにかく役者の演技が素晴らしくて、一つ一つのカットに感情が読み取れる。

流産がまずかったのではなく、きっかけに過ぎずおそらく幸運というとらえ方。そんな生き方をこの二人はしている。これを機に、未来が少し明るくなるかもしれないと思わせる。人は自分の「生」に貪欲なもの。

 

 

🟢「ユメミの半生」★★(★)

監督 上田慎一郎(『カメラを止めるな!』他)

映画監督になりたい少年(石川春翔)は、採用されたとたんに閉館が決まった映画館のお姉さんユメミ(松本穂香)に声をかけられ、ユメミの半生を聞かされることになる。ちょうど「わたしの半生」という映画を観ようとしていたところだった。お姉さんは生まれた時声が出ず、以降父親(濱津隆之)が飛行機事故で亡くなった時、初めて声を得たのだった。それから恋人テツオ(小関裕太)ができるものの、地球と火星との問題の狭間で命を取られてしまう。組織の仲間と落ち合い火星人の地球侵略に立ち向かうことになる。そこで敵方に父を見つけるが毒されたのか記憶がない。父と対決し、ユメミは一応地球を救ったことになるのだが…ということころで、ふと現実にかえる少年の前にはお姉さんはいなかった。そればかりか、映画館の支配人(塚本晋也)によると融資があったおかげで映画館の存続が決まったと言う。そして話の続きは少年に託される…。


ユメミの話はいろんな映画作品がモチーフとなってるのだろうけど、そこまでの知識がないからわからない。ファンタジックコメディ。

 

 

🟢「魔女のニーナ」★★(★)

監督 ふくだみゆき

ニーナ(安藤ニコ)はイギリスに住むまだまだ新米の魔女。一人前になる段階の一つの試練として、日本のとある湖にある薬草の花を採取する旅へ出ることになる。人間の前で魔法を使ってはいけないのに、家出少女めぐ(おーちゃん)に見られてしまう。お互い子供扱いされることに不満を抱いており、なんとなく仲良しになる。そして目的の花をめぐの協力のもと採取する…。


子供じゃないの、もう大人よ!と自我が芽生えてきた頃の子供を描いたものかな。作品はミュージカル調で、ニーナ役の子はバレエやってたのがわかるスマートなダンスを見せ、コンテンポラリーなミュージカルソングとマッチしてた。魔女だある正体バレはめぐの記憶を消すことでなかったことになるけど、半人前の二人を象徴するかのような、イヤリングを分け合う、その行為が現実に起こった事の証拠となる…というファンタジー。

 

 

🟢『死霊軍団 怒りのDIY』★★★★(★)

監督 中元雄

ホームセンターで働くかわさきマリ(清野菜名)はデート中に悪漢に襲われ、空手有段者の腕前で危機を乗り切ったものの、その強さに恋人(濱正悟)から引かれてフラれてしまった。そんな時、友人から合コンの誘いがある。今度は失敗しないようファッションも趣味も整えるが、その日、店にゾンビが現れる。店長(大迫茂生)がやられる中、同僚のさいとう(高橋文哉)と共に、いや、マリが女ランボーがごとくゾンビと格闘し…。


アクションホラーコメディ(盛りだくさんだなオイ)。

清野菜名の華麗なアクションが楽しめるし、高橋文哉のポンコツぶりが面白い。

 

 

🟢『あこがれマガジン』★★

監督 エバンス未夜子

向き合って座るミオ(小川紗良)とその友達ナオ(横田真悠)。芸能人(アイドル)を目指してるミオだけど、最近鏡の中に不思議な現象が起こるという。いつの間にか鏡の中の人物が自分の夢を食ってしまってるのだ。そしてその人物はナオ。ミオの話はいつの間にかナオのものとして語られていく…。


ちょっと意味わからない。ラストもどう捉えることも出来ず。だいたいミオとナオの区別が髪型でしかつかない上、テレビの中のアイドル歌手(小泉萌香)とも区別が難しいくらいイメージが似てて、まあ、単に私みたいな年寄りには同じに見えるということ…なのかな?それとも狙ってる?だとしたらそこは素晴らしい。

タイトルから察すれば、年頃の女の子がよくする雑誌モデルと自分を同化させる「憧れ」の具現化かも。

 

 

🔴『よろこびのうた Ode to Joy』★★★(★)

監督 三島有紀子(『Red』『ビブリア古書堂の事件手帖』他)

浜辺で転んだのか立てなくなっているひとりぼっちの老女(冬海富司純子)に地方訛りのある青年(歩藤原季節)が声をかける。青年は老女にとある仕事を一緒にしないかと誘う。老女は迷った挙句引き受ける。保険金詐欺の加担で、対象者を殺める役だった…。


モノクロの手前というか、なんというのかわからないけど色のない画で、浜辺が勝手ながら日本海に思える暗さ。やることがやることなので前後の葛藤も描かれる。老女は引き受ける前に、青年は終わった後に。色々察してくださいという受け手の感性に任せ切るような作品で好みなんだけど、何か足りなくて、突き放された感じが否めなかった。富司純子の演技の素晴らしさが光る。藤原季節は窪田正孝でもできるような役でちょっと残念だった。

 

 

🔴『YEN』★★★(★)

監督 山嵜晋平

夏希(蒔田彩珠)冬美(中村守里)は親友同士。インスタントカメラ(チェキ)で写真を撮っては値段をつけ、気に入らないやつは破格の値を書き川に流す。ある日、冬美に彼氏ができる。部屋に貼った高額どころかプライスレスの夏希との写真が彼との写真に変わっていく。苛立つ夏希は冬美の父親(渋川清彦)を撮って「リストラオヤジ」と「1円」の値をつけ、ついに友情が壊れる。けれどしばらくして、冬美の恋が終わったことで二人は仲を取り戻す。今度は「円」ではなく「希」という単位で写真を撮る…。


友情の証が円という単位で表せられる。互いに結びつきを確認する方法だろう。子供の頃はそういう目に見えるものでしか他人との仲を保てない。

そういえば画角がチェキサイズ。

 

 

🔴『海にそらごと』★★★★

監督 齋藤栄美

海斗(髙田万作)は父の遺品から母親とのツーショットを見つけ、自分らを捨てた母親を訪ねる。海辺の街でスナックを営む母親茜(中村ゆり)はすぐに息子とは認識できず、海斗は荒ぶれた茜にがっかりして飛び出すものの、写真を見た茜は察し、追いかけ連れ戻す。その日夜になって客も入り、親子を名乗り楽しい時を過ごす。しかし自分が本当の子ではないことを知る。なぜ茜は母親のふりをしたのか、二人の間に互いを受け入れる空気が生まれる…。


血のつながりではなく情であり、茜にとっては望んでも得られなかった子供であること、海斗にとってはずっと欲しかった暖かみだ。なかなか良かった。なにより、子役の演技が表情が素晴らしい。

 

 

🔴『睡眠倶楽部のすすめ』★★

監督 加藤拓人

様々な理由で心を病んだ人が入る施設に、透子(前田敦子)も世話になっている。でも日々、ねまき姿で寝ては起き、また寝る静かな空間にいて、何か大切なことを忘れていっている気がしている。ある日、透子の夫(大友律)が、必要になったらとボストンバッグを預けていく。中は透子の洋服。透子は外出を試みて道を歩く。往来する人々の声が耳に入ってくる。徐々に人の存在を認識し、家へたどり着く…。


社会生活を営むにあたり、過度な接触や個人の適応能力によっては適度な休養が必要ということか。

 

 

12人の監督のうち、廣賢一郎、エバンス未夜子、加藤拓人は一般公募とのこと。

 

 

 

 

公式チャンネルにて配信中(期間不明)

 

 

本編より長いドキュメンタリー

 

 

 

『君が描く光』(2016)

韓国映画。原題は『계춘할망』で意味はケチュンばあちゃん 。英題は『CANOLA』で菜の花を意味すると思われる。

 

監督 チャン

 

済州島で海女を生業とするケチュンばあさん(ユン・ヨジョン)は孫のヘジと二人暮らし。豚のトヤもいる。ヘジの父親はケチュンの息子でもうこの世にはいない。母親は出て行ってしまった。ヘジはお絵描きが好きで得意。クレヨンを買ってもらってからは絵をたくさん描いた。幸せに暮らす日々だったが、出先のソウルの市場でヘジが行方不明になってしまう。それからいくら探しても見つからない。そして12年が過ぎた。

ヘジ(キム・ゴウン)には一緒に生活する友達ミニ(パク・ミンジ)がいたが、悪い仲間に囲われ美人局のような真似で金を得ていた。それでトラブルになり、客となった男を傷つけ、拠点の部屋から逃げるはめになる。

ヘジは実は市場で実母にさらわれ、継父とその娘と四人で暮らしていた。けれど事故で実母と義姉を亡くし、ギャンブルに明け暮れる継父は養育を拒否したのだった。

一方、ヘジを失ったケチュンのところには連日家を売らないかと不動産屋が詰めてくる。ヘジの帰る場所を無くすわけにはいかないと頑なに断り続けるケチュンのところへ、上記のような事情からヘジが戻って来る。

高校生となったヘジはケチュンによって学校へ通うようになり、幼馴染みのハン(ミンホ)がサポートする。絵の得意だったヘジは画家兼美術教師(ヤン・イクチュン)に指導を受けるようになる。古い家屋での暮らしはなかなか慣れるものではなかったが、ケチュンばあさんはもちろん海女たちの船を出す船頭のおじさん夫婦(キム・ヒウォンシン・ウンジョン)も優しく、ヘジは徐々に馴染んでいく。そんな時、ミニの窮地、継父が金を無心しに現れるなど状況が悪くなってくる。絵画コンテストのためにソウルへ行くことになったヘジは、そこで提出作品を描き終えると姿を消す。ミニを救うためでもあったが、警察沙汰になり過去の事件も明るみになってしまう。そしてヘジは本物のヘジではなく、事故に遭った際、保険金欲しさに継父がとっさにヘジと実の娘ウンジュを入れ替えたことも明るみになる。ヘジとウンジュは年頃も一緒で、ウンジュはヘジからケチュンばあさんのことも村の生活も、そして絵も教わっていたのだった。

時は経ち、ケチュンは認知が進み始め、家も売却し施設に移っていた。その頃、ヘジ(ウンジュ)はミニ以外の腐れ縁の仲間との縁も切れていて、絵を描きながらコンビニで働いていた。そこへやっとヘジ(ウンジュ)を探し当てたおじさんがケチュンばあさんがいなくなったと伝えに来る。ウンジュはソウルのあの市場でケチュンばあさんを見つけ、済州島へ戻る。おじさん夫婦や不動産屋、村のみんなで売却後手付かずだった家を住めるよう片付け、ウンジュとケチュンばあさん二人の生活がまた始まる…。

 

ケチュンばあさんは最期はウンジュの名を呼び、菜の花に包まれヘジのもとへ旅立つ。ウンジュは画家として大成を果たす。

 



 

田舎暮らしには慣れているはずのヘジが、いくら年頃とはいえ嫌な顔をしたり、妙によそよそしかったりするのには観てる側からも「ん?」とは思った。そしてヘジが本物でないことはうすうす勘付いているケチュンだったが、それが決定的となったのが「海と空とどっちが広い?」というヘジの問いだったと思う。当然空の方が広いのに、ヘジが子供の頃ケチュンは海の方が広いと答えた。それを今になってケチュンがヘジに問う。当たり前のようにヘジは「空」と答える。この伏線は素晴らしかった。それが絵画にも現れて、海と空が繋がって広い海が出来上がる。海が空を包み込んでいる。おばあちゃんは私の海。他にも繋がりを表すものは自然の中にあって、その一つが菜の花だったり、なかなかにきれいな展開だった。

美術の授業であんなに絵が得意だったヘジがなかなか描けなかったこと、いざ描いてみると心の奥に何か秘めてることがわかる素晴らしい絵を仕上げたこと、これらもちゃんと合点がいくように作られているし、ウンジュとして描いたタイトル「告白」の大会で入賞した絵画には罪悪感も滲み出ていたし、被写体の向かう先が海の中から光を求めてのぼるであることにはやはり感心した。絵を描くにあたって光があるから影がある。いち早く苦しみに気づきその光の方向に目を向けさせようとする美術教師も良かった。また、子供の頃ケチュンばあさんの顔を描き、髪の色を金色で塗るのを楽しみにしていたのが出来ずに行方不明になってしまったこと、その時のバッグに金色クレヨンが入っていたこと、それもちゃんと拾われる。小物としては派手で子供向きのリボンのピンが最後まで使われていることはあったかい気持ちにさせられた。日焼け止めと絵の具の使い方も、豚のトヤの使い方も。

そして再びケチュンばあさんのもとへヘジとして帰ってきたウンジュ、その二人の暮らしはじんわりするほど優しいものだったし、ウンジュへ向けたメッセージも泣ける。素晴らしい脚本だなと思ったけど、やはりどうしてかラストが冗長気味になる。ヒューマンドラマの中でも悲劇ものにはありがちで、泣かせようという意図が見えて興醒めする。そこが残念だった。

 

それにしてもユン・ヨジョンの演技が素晴らしい。同じアジア人でも人種の違いから表現も違うものと思っているので、通じないのは半ば当たり前のように思っているけど、この演技表現はすごく伝わってきた。やはり人間なのだから感情表現は万国共通なのではないかと思ったくらい。キム・ゴウンは日本では河合優実みたいな感じか、もちろん良かった。また、ハン役のミンホは瀬戸康史みたいなかわいさでこれまたなかなか良かった。

 

★★★★(★)

 

 

 

ところでケチュンの家を欲していたのが中国人という話で、さらに購入後放置という話、もしかしてすでに韓国で問題化していたのだろうか…と勘ぐってしまった。

 

 

 

 

 

 

『ハドソン川の奇跡』(2016)

実際にあった2009年のUSエアウェイズ1549便のハドソン川不時着水事故を映画化した作品。原題はチェスリー・サレンバーガー機長の愛称である『Sully』

 

監督 クリント・イーストウッド

脚本 トッド・コマーニキ

原作 チェスリー・サレンバーガージェフリー・ザスロー

 

2009年1月15日、シャーロット空港へ向かいラガーディア空港から飛び立ったUSエアウェイズ1549便がバードストライクに遭ってしまう。二つのエンジンがやられ、早急の対応を迫られる機長のチェスリー・サレンバーガー(トム・ハンクス)と副操縦士のジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカード)。ラガーディア空港に戻るかディーターボロ空港へ着陸するか、しかし、チェスリーはハドソン川への着水を選択する。

チェスリーは子供の頃からパイロットに憧れ、16歳で飛行機操縦を習い、その後軍へ入り旅客機のパイロットになったあらゆる困難を乗り切ってきた敏腕の操縦士で、その技術のおかげもあって衝撃を最大限に軽減し、ハドソン川に不時着水を成功させる。155人の乗員乗客は誰一人欠けることがなかった。

たちまち英雄ともてはやされるのだが、一方で、国家運輸安全委員会の本当に失策ではなかったかの調査と厳しい検証に迫られる。ただでさえ、過度なプレッシャーの中の操縦で悪夢にうなされる日々で、血圧が高い値を示すほど心身ともに疲弊してるというのに。家族(妻:ローラ・リニー)もまたマスコミに追われストレス化していく。

しかし、検証委員会ではチェスリーの選択が間違ってなかったことの証明がされ、何より、全員の無事救助が讃えられることになる…。

 

国家運輸安全委員会は人為的ミスを問題視する。155人の無事よりも、今後に活かすためとはいえ、膨大な人員、経費をかけずとも安全な方法があったんではないかと正解を導き出すのに懸命なのがなんとも…。乗客はサリー始めジェフ、クルー(ジェーン・ガバード、アン・キューザック、モリー・ヘイガン)らに感謝している。人の命の捉え方が立場によってまるで違うことがよくわかる。

結果的にはサリーの腕もジェフの冷静さもあろうが、クルーのお客様の安全第一という迅速かつ冷静沈着な誘導、そして近辺にいた船舶らの救助協力の賜物であり、安全委員会の机上の空論よろしく人間の感情と諸所のタイミングを外した理論詰めの検証ごっこでは役に立たないことがわかった。「ハドソン川の奇跡」と言われる所以もいかにも。

サリーは軍で操縦訓練を受けながら一緒に学んできた仲間を失っている。命の重みと安全性への危惧を忘れずにいることはもちろんだが、天職というものがどういうものか知った気がした。それは天才とも違う気もする。

 

トム・ハンクスの味が出てる。面白かった。

 

★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

監督・脚本 小南敏也(『クロガラス』シリーズ、他)

音楽 Big Shallows

主題歌 崎山つばさ「正偽」(3)「叫べ」(0)

 

崎山つばさ、植田圭輔、菅田俊、渡部秀(3)、越智ゆらの(3)、徳山秀典(0)、中﨑絵梨奈(0)、他。

 

新宿歌舞伎町を拠点に、裏社会のトラブル解決を引き受ける解決屋「クロガラス」の話。どんな依頼も金さえ払えば引き受ける合理主義で冷静沈着さを持つその「クロガラス」リーダー神崎黒斗(崎山つばさ)と、身体能力にも長け裏稼業にも精通している実務担当の真郷悠哉=まさとゆうや(植田圭輔)が主人公。

 

 

『クロガラス-黒鴉-3』(2021)

 

かつて歌舞伎町でその名を馳せていたものの、悠哉も属していたチームの仲間を裏切り、金を持ち逃げした真柴理玖(渡部秀)が再び名をあげようと戻って来る。当初は黒斗の「クロガラス」を買収するつもりだったが、物別れに終わったので、同じ解決屋「ホワイトナイト」を立ち上げる。

さっそく政治家権藤(稲森誠?)の愛人で女子大生の香月沙織(越智ゆらの)の捜索依頼が「クロガラス」「ホワイトナイト」に舞い込む。解決屋は二つもいらないという、歌舞伎町を牛耳るヤクザ加奈井組の組長加奈井(菅田俊)の企みも入り、成功すれば多額の報酬、失敗すれば抹消という勝負に挑むことになる。

実は沙織はただの愛人ではなく、凄腕のハッカーであり、権藤が必死になるのも当然だった。汚い手を駆使する「ホワイトナイト」、頭脳戦の「クロガラス」の勝敗は…。

 

まあ、勝つんだけども。その代わり沙織は別人になる必要があり、その後日菜という名前で「クロガラス」のメンバーに加わることになる。つまり、前作に出ている日菜の誕生編とも言える。ちなみに、整形もすることになるので、配役が変わっててもOKなわけ…よ…。

 

 

 

『クロガラス-黒鴉-0』(2021)

 

黒斗が解決屋「クロガラス」を立ち上げる前日譚。

幼少期に両親を亡くし兄と離れ離れになった黒斗。最後の手紙の消印が新宿だったことから、ヒーローになることを夢見ていた黒斗は歌舞伎町の警察官になる。理想に燃え、正義を貫く黒斗だったが、この街の警察官は賄賂はあたりまえ、事なかれ主義で汚職にまみれており、半グレ相手に大物政治家の息子ユアサ(石橋侑大)というだけで頭も上がらない。そんな中、黒斗は熱い刑事兵頭一馬(徳山秀典)にみそめられ下につくことになる。そして連続タタキ事件で共に街の清浄に取り組むが、兵頭には真の目的があった…。

 

黒斗は兵頭に裏切られる形になり、警察を辞めて独自の方法、解決屋として街の健全化に務めるようになったわけだ。実の兄にも会えるが、そうとは知らず黒斗の目の前で命を落とすことになる(その時の黒斗の慟哭がなかなか良かった)。そんな兄の思いも継がれている。また、赴任当初の先輩警官イザワムラタダオが、その後のホームレス情報屋(森羅万象=しんらまんぞうとなる過程も描かれている。

 

どちらもそこそこ面白かった。設定が古い気がするけど。これからも続くのかな。一応前日譚(日菜、ホームレスじーさん含め)が描かれたんでこれで終了でもきく。

 

 

★★★

 

 

 

制作 LEONE

配給 エイベックス・ピクチャーズ

 

 

 

 

『人間標本』(2025)Amazon prime 全5話

原作は湊かなえの小説。

 

監督 廣木隆一(『やわらかい生活』『軽蔑』『きいろいゾウ』『オオカミ少女と黒王子』『彼女の人生は間違いじゃない』『ママレード・ボーイ』他)

 

西島秀俊、市川染五郎、伊東蒼、荒木飛羽、山中柔太朗、黒崎煌代(くろさきこうだい)、松本怜生、秋谷郁甫(あきやいくほ)、宮沢りえ、他。

 

花の周りを蝶が舞い、小川が流れる美しい山中で、六人の少年の遺体が標本が如く飾られたガラスケースが発見される。その遺体は体を切断され、きれいに残されてるのは顔を含む頭部だけ。そして蝶をコラージュしたアーティスティックな作品に昇華されていた。

ほどなく、大学で蝶の研究をする榊史朗(西島秀俊)が自分がやったと出頭してきた。その六人の中には自分の息子である至(市川染五郎)もいた。史朗は取り調べようにも狂気じみていて「人間の一番美しい時を標本にした」と言うのだが、経緯を語っているうちに五人の少年を殺害し作品に仕上げたのが至だったことが判明する。それにより、全罪を背負うため至を手にかけたことがわかる。さらに、収監された史朗に、昔からの友人であり今回の事件の発端ともなった画家の一ノ瀬瑠美(宮沢りえ)の娘杏奈(伊東蒼)が面会にやってくる。そこで衝撃の新事実が明かされる…。

 

話は余命いくばくもない瑠美が自分の後継者を選出するという名目で、五人の芸術家を目指す少年を集める。さらに至も招かれ、史朗も青年たちの送迎を担った。というのも、そこは史朗の画家だった亡父(村上淳)のアトリエもある別荘で、瑠美に譲った家だった。瑠美の母親は病死していて、美しい時の母親の肖像画を父が描いた縁があった。

子供の頃、蝶には人間には見えない色覚があるということに興味を持った史朗は蝶の世界を標本にする。その標本をいたく気に入った瑠美にプレゼントした。瑠美は史朗が望んでも得られない蝶の目を持っていて、画家の道へ進んだ。自分には才能がないと気づいた史朗は画家になるのを諦め蝶の研究者になった。そんな背景がありながら、果たして本当の目的は何だったのか、本当は何が発端だったのか、そもそも本当に史朗がやったことなのか、じわじわと真実が判明していく。

 

ミステリー。

 

てか、やはり湊かなえは面白い(未読)。ドラマでは適度に不自然な表現、演出があり、気にはなっていながらもうまいこと先に進められていく。少しずつ明らかになってく事実と真実が今更どうにもならないことであり、ものすごく気分悪くモヤモヤし、しんどいのが気持ちいい。

もう、至も絵はうまいが秀でた才能はなく、杏奈もどう頑張っても瑠美の後継者にはなれず、という背景がもうキツくて心地よい。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

『麻希のいる世界』(2022)

 

監督・脚本 塩田明彦(『さよならくちびる』他)

劇中歌 NUMBER GIRL「排水管」向井秀徳アコースティック&エレクトリック「ざーざー雨」

 

新谷ゆづみ、日髙麻鈴、窪塚愛流、井浦新、青山倫子、鎌田らい樹、八木優希、大橋律、松浦祐也、他。

 

青野由希(新谷ゆづみ)は子供の頃からの重い病気をかかえている。昔からの病棟仲間城島聡美(八木優希)とは誰々が亡くなったと、生きている仲間より亡くなった仲間を数えているほど、生死の不安に常に面している。それでも1年遅れだが高校2年生になった。そんな由希の環境は、主治医の井波宗介(井浦新)と母親の青野良枝(青木倫子)が不倫の末の再婚に向かっている。その井波の息子の祐介(窪塚愛流)は同じ高校生で、宗介の不倫からの家庭崩壊に複雑な思いを持ちながらも由希に想いを寄せている。由希は自分の病気、馴染めない学校生活に孤独を感じているのだから、母親と宗介の関係、祐介の想いには到底応えられない。そんなある日、父親が犯罪者であり、自身も悪い噂が立っているため徒党を組まず常に一人で行動している同級生牧野麻希(日髙麻鈴)と出会う。他人の声など気にもせず誰に媚びることもしないその姿に由希は惹かれ、交友を深める行動に出る。やがて麻希の音楽の才能に気づいた由希は、軽音部に所属している祐介の力を借りながらなんとか麻希をその道に導いていこうとする。けれど、麻希のことばかり気にかける由希に、どうやっても想いが届かない祐介は、ついに思い詰めて事件を起こしてしまい…。

 

麻希は記憶をなくして別の街、別の名前で違う人生を送る。由希は事件とそこから派生した事案のショックから失語症になってしまう。それでも麻希に会いたい由希は宗介にかけあい居所をつきとめ訪ねる。何も覚えてない麻希がいたが、唯一、由希を友達だったと認識し、そして男関係で揉めてることだけは変わってなかった、そのことが、おそらく由希は「麻希が麻希であること」の最たるものと思え涙が溢れてきたのではないか。

由希の麻希への想いは恋愛というよりは執着のように思える。麻希の才能を開花させようと躍起になったのは、自分が生きた証にもなるから。「生きる」ことへの執着が形を変えて現れてたのではないか。もちろん、「好き」という気持ちはあるだろうけど、その「好き」さえも、麻希の頭の中に自分を残し、自分が生きてる実証を得たいが故のように思った。たぶん、麻希に倣って男たちと体を重ねることも同じ理由。麻希は金のためであったり、ある種自暴自棄気味であったけど、由希のはそうではないと思った。まだ生きている実感、生きている自分を他人に植え付ける、それだけが欲しかったのではないか。

 

冒頭に「風を見張る 風はわたしたちを目的地へも地獄へも連れていくから」という言葉が表示される。私の解釈からは、この意味はわからなかった。でも、風が人間関係や抗いようのない自分を含める人の行動であるならば、それを一般的には運命と言うのだろうけど、風を見張ったところでなるようにしかならない、つまり人生は受け入れるしかないという諦念じゃないのかなと思える。

 

塩田明彦の作品は、『さよならくちびる』しか観たことないけど、それは音楽と女の子同士の友愛だった。どうもこの時、新谷ゆづみと日髙麻鈴も出ていて、役名が今作と同じだったようだ(記憶にない)。描きたいものがそこで触発され出来たということなのかな。

 

日髙麻鈴はどこか池脇千鶴のイメージがあって、その麻希としての芝居も緩く柔らかく、期待してしまう役者さんだった。役柄もあるだろうから、仕方ないかもしれないけど、窪塚愛流の芝居は常に喧嘩口調で疲れた。同じように周りの者全てが敵であるかのような口調の由希(新谷ゆづみの芝居)もいまひとつ納得がいかなかった。

 

★★★★(★)

 



 

 

 

配給 シマフィルム

『でっちあげ』(2025)

原作は福田ますみのルポルタージュ著書。

 

監督 三池崇史(『ジョジョの奇妙な冒険ダイヤモンドは砕けない』『クローズ』シリーズ、他』

脚本 森ハヤシ

 

綾野剛、柴咲コウ、亀梨和也、小林薫、北村一輝、光石研、木村文乃、安藤玉恵、大倉孝二、美村里江、迫田孝也、東野絢香、高嶋政宏、峯村リエ、小澤征悦、飯田基祐、三浦綺羅、他。

 

事実に基づいた作品。

 

2003年、小学校教諭の薮下誠一(綾野剛)は土砂降りの雨の中、保護者面談に出かける。家庭訪問にしては遅すぎる時間。薮下が担任を務めるクラスの生徒、氷室拓翔(三浦綺羅)のマンションに着くと、その母親氷室律子(柴咲コウ)は申し訳なさそうに迎え入れる。少し乱暴な印象の薮下に、機嫌をうかがいながら対応する律子。話は拓翔の発達障害の話、祖父がアメリカ人で純粋な日本人ではないこと、太平洋戦争の反米意識、そこから派生して「穢れた血」が拓翔には流れていることなどで律子を否定していく。その会話は当然拓翔にも聞こえていて…。

その後、拓翔への体罰以上の虐めばかりか、自殺未遂まで起こさせ、PTSDで入院にまでなったと学校へ乗り込んできた氷室律子とその夫(迫田孝也)。ことなきを得たい校長ら(光石研大倉孝二)はとにかく薮下に謝罪を強要。しかし問題は大きくなる一方で、保護者会での断罪、偏向意識の強い記者(亀梨和也)による週刊誌報道、ついには民事訴訟までに発展する。けれど、真実は…。

子供好きで一念発起して教師となった薮下を信じ支える妻(木村文乃)、息子も力になる。また、拓翔に虐めを受けていた純也の母親(安藤玉恵)の協力、人権弁護士湯上谷(小林薫)が味方となり「殺人教師」とレッテルを貼られた薮下の名誉回復、「でっちあげ」を解いていく。

 

報道の怖さ、今ならSNSの拡散で誤った情報の流布、それら、善意の第三者、無関係の者の正義感による誤解はなかなか解けないという怖さが描かれている。ついに記者は誤りに気づくことなく(いや、もしかしたら気づいたけど撤回出来なかったのかも。自尊心が上回って)終わったのが腹立たしいが、現実そんなもんだろうと思えてリアリティがあった。世間の目も、その時々盛り上がり、誤った解釈で延々継がれていくんだろうなぁというのがまた腹立たしい。でもそれもそんなもん。

これよりは軽い話になるが、よく芸能人の不倫が話題になると、どちらかに味方につき相手方を否定しまくる。自分の生活には1ミリも関係ないのにだ。この延長線にこの作品のような正義の断罪があると思う。暇なのかな。

 

10年後、薮下の懲戒停職の記録も抹消される、そこまで描いていたけど、テロップで良かったんじゃないかな。小学校教諭が続いているのも数枚の写真コラージュでいいんじゃないかと思ったし、妻が亡くなってるのも描く必要なかったんじゃないか、息子の教育実習に向ける言葉も、あまり気の利いた台詞ではなかったし、ラストは冗長すぎたように思う。泣けるしムカムカするしと、とてもいい話に展開だったのでもったいないなと思った。

 

亀梨和也の使い方(脇に徹底させてる)が冷淡で感心した。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

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ヨーロッパ企画第44回公演『インターネ島エクスプローラー』(2025) 本多劇場

作・演出 上田誠

音楽 王舟(おうしゅう)

 

石田剛太、金丸慎太郎、 酒井善史(さかいよしふみ)、角田貴志、諏訪雅(すわまさし)、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、藤谷理子 、呉城久美、金子大地

 

 

面白かった。

演劇の何が素晴らしいかって舞台演出で、一つしかない狭いステージをいくつもの場所に見せる、それがいつもすごいなと感心させられる。当たり前かもしれないけど、私にはそういう能力はないから。




 

イースター島の近くに、「インターネ島」という謎につつまれた島があるという。それを知った冒険家に焦がれるハタノ(金丸慎太郎)は、大学時代には冒険部と出会い、いっそうその島へ行きたいと熱望する。そして卒業後、結婚もしたハタノだったが、妻エマ(呉城久美)のアロマオイルを無断で大量に使ったことを機に離婚へ発展。ハタノはそのまま、いよいよインターネ島を目指す。

しかし30日分の食料や水が絶えてもその島が見つけられない。いよいよこれまでかと思った矢先、ついにそれらしき島を発見…!

気を失い流れ着いたその島にはイースター島のモアイ像よりもはるかに精巧なモアイ像がいくつも立ち並んでいた。そして未踏の地と思っていたそこで、ハタノは大学時代からの部活仲間かつ冒険魂に合致点のないキクチ(金子大地)と再会、&先客に迎えられる。犯罪歴のある裏社会の人物ラウ(土佐和成)、2年間前に辿り着いていた教授(永野宗典)、登山で死亡したことになってしまってるヒラタケ(石田剛太)。そして彼らのこれまでの調査上、ここは財宝、秘宝の眠るエルドラードだと言う。流れでお宝ゲットの冒険となるが、インターネ島族、祖父の話に感化されやってきたナオミ(藤谷理子)海賊(諏訪雅角田貴志)雪男(中川晴樹)、ハタノの元嫁エマと、その関連の技術者サイモン(酒井善史)など、次々と人の存在が明らかになっていく。

果たして、インターネ島はなんの島なのか、みんなはなぜそこへ辿り着いたのか、夢か現か、ファンタジックな冒険物語が展開される…。

 

ハタノが実は自分は死んでるんだと言い出した時、まさかの夢オチ⁈と半分納得半分ガッカリしたけど、それでは終わらなかったというか、決着とならなかったのは、さすがコメディだと感心した。笑いの中に、心くすぐるような遠い昔に置いてきた冒険心、対人関係の可笑しさ、人間の思考の幅広さがうかがえて、豊かな気持ちになった。


そうそう、アロマオイルというアイテムもきちんと最後まで活躍する。

 

客層は演劇好きといった感じの老若男女。彼らがクスクスと、あるいは思いっきり笑う。空間が一体化するのを、演者たちは感じてるのかもしれないな、それが小さい劇場での魅力だよなぁ、と思った。

 



 

2025年12月より2026年3月まで、全国14ヵ所(栗東、京都、新潟、東京、仙台、魚津、大阪、広島、北九州、高知、横浜、名古屋、倉吉、札幌)を回る公演。

 

(観劇日20260119)

 

 

 

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ハタノも我が強いというか、自分なりの理想と思想があって、それにがんじがらめになるほどのこだわりを持ち、ウザいけど、それ以上にキクチも応用力に欠け自尊心が高く横柄で、二人、実は似てる。お互い気に入らない面はあるものの、実は好き合ってるみたいな意識が見えて、友愛ってこんな感じよなとしみじみした。

それで、言いたいことは、金子大地は「惚てってるズ」で観てるので、そこでのキャラとかぶっているな、と。脚本家のあてがきじゃないかと思うくらいタイプが似てるんで、それが金子大地の魅力であり個性なのかなと妙な説得力を感じた。

とすれば、私は役者金子大地が好きで、ほぼほぼ作品は観てるのだけど、私の中で『腐女子、うっかりゲイに告る。』は最高の演技で、あれと同等かそれ以上にキャラを外したものを見たことがないんで、あれくらいタイプが違う役柄を見てみたいと、またも思った。



『不適切にもほどがある!スペシャルドラマ(2026)TBS系列0104

 

脚本 宮藤官九郎(『池袋ウエストゲートパーク』『タイガー&ドラゴン』『あまちゃん』『ゆとりですがなにか』『いだてん』『俺の家の話』『木更津キャッツアイ』シリーズ、『土竜の唄』シリーズ、他)

演出 金子文紀(『俺の家の話』『カルテット』『タイガー&ドラゴン』『木更津キャッツアイ』シリーズ、他)

音楽 末廣健一郎(『闇金ウシジマくん』シリーズ、『任侠学園』他)、MAYUKO(『闇金ウシジマくん』シリーズ、他)、宗形勇輝(『地獄の花園』他)

主題歌 Creepy Nuts「二度寝」

 

阿部サダヲ、仲里依紗、磯村勇斗、河合優実、坂元愛登、三宅弘城、袴田吉彦、中島歩、江口のりこ、錦戸亮、八嶋智人、吉田羊、小野武彦、彦麻呂、古田新太、山本耕史、成田昭次、他。

 

日付が変わる前に帰って来なければならない縛りはあるものの、2054年、井上昌和(小野武彦/中年期:三宅弘城)によってどの時代にも行けるタイムトンネルが出来上がった。もちろん出入口は喫茶「スキャンダル」のトイレ。さっそく小川市郎(阿部サダヲ)と「スキャンダル」のマスター(袴田吉彦/老齢期:沼田爆)は井上の案内のもと1986年から2026年の1月を訪問。事情を熟知している小川市郎の孫になる渚(仲里依紗)らいつメンがちょうど新年会をやってるところへ現れるも、残念なことに、そこでマスターの死がわかる。

さて。やはり愛娘であり渚の母親でもある純子(河合優実)の震災死があきらめきれない小川市郎は、そもそもの純子と、渚の父親となるゆずる(錦戸亮/壮年期:古田新太)との出会いを阻止するよう井上の息子で純子に夢中となったキヨシ(坂元愛登)を1987年に向かわせる。しかしうまくいかず、ならばと震災に遭わないよう1995年1月へ…。ところがそこにはすでに先客が…。

一方、ムッチ先輩(磯村勇斗/壮年期:彦麻呂)の息子秋津昌彦(磯村勇斗)と一緒になった2026年の渚は一児の母になっていた。仕事も報道局に移動になり、都議の平じゅん子(江口のりこ)の政治観に傾倒していっていっている。そうして報道局の在り方に疑問を持った渚は国政に打って出る平じゅん子の秘書に転職する。

その平じゅん子は2036年女性初総理大臣になるも、10年前のスキャンダルが報道される。2026年のことだ。その相手が「秘書の夫」というので秋津昌彦と判明。それを防ぐために奔走する小川市郎。純子を守れなかったため全力で渚の幸せを守る。また、平じゅん子が総理大臣を辞めてはいけない理由(もはやパラレル設定)もわかり、なんとしてもスキャンダルを防ぐ。しかし…実際は相手は秋津昌彦ではなく、タイムトラベルしたムッチ先輩だった…。とはいえ、現状秋津昌彦以外の誰とも見えない。市郎は自分がなんとしても止めねばと暴挙を決断! 社会を良くするために!!

 

井上にくれぐれもタイムパラドックスは起こさないよう念を押されていたが、かわいい娘、母を思う孫には勝てず、なんとかと思う親心が描かれているのと、相変わらず時代時代の不適切表現の解釈が面白い。言い訳テロップが駆使されいい効果(笑いに転換)となっているし。不適切って何だろうって考えちゃうくらいには時代の力が大きいなと今回も思った。

クドカンの思想にしても、こんなにも嫌味なく入れられるのが凄いなと毎度関心する。キャラクターに入れ込めば入れ込むほど思想が反映され、たいがい鼻につく感じに仕上がるものだから。


ミュージカルスタイルも健在。やはり歌での語りはわかりやすいし、表現が柔らかくなる。


純子と渚が会話するシーンがある。過去と未来が混じるシーンだ。純子は今ゆずると出会って恋をし、渚は娘であることを言う。そしてお腹には待望の二人目がいる。これがなかなか感動する。


沼田爆さんが2024年8月に亡くなられていた。

 

★★★★★