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これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『遺書、公開。』(2025)

原作は陽東太郎(みなみとうたろう)の漫画。

 

監督 英勉(『賭ケグルイ』シリーズ、『トリガール!』『東京リベンジャーズ』シリーズ、『映像研には手を出すな!』『ぐらんぶる』『映画おそ松さん』他)

脚本 鈴木おさむ(『先生を消す方程式。』『M愛すべき人がいて』、『極悪女王』他)

音楽 未知瑠(『賭ケグルイ』シリーズ、『あの頃、君を追いかけた』他)

主題歌 THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Drown Out The Noise」

 

吉野北人、宮世琉弥(みやせりゅうび)、志田彩良、松井奏、髙石あかり、堀未央奈、忍成修吾、上村海成、川島鈴遥(かわしまりりか)、荒井啓志、松本大輝、星乃夢奈(ほしのゆな)、榊原有那(さかきばらありな)、藤堂日向、菊池姫奈、大峰ユリホ、阿佐辰美、兼光ほのか、日髙麻鈴(ひだかまりん)、大東立樹(おおひがしりつき)、金野美穂、鈴川紗由、浅野竣哉、青島心、楽駆、他。

 

4月、新学期が始まってすぐにSNSを通して送られてきた2年D組の「序列」。1位から25位まで、担任教師の甲斐原(忍成修吾)を含むD組全員のランク付けがされていた。しかも何の序列なのか不明。悪質ないたずらかと思われたが、日常は難なく過ぎ、そのうち生徒たちはその序列に見合った行動を取るようになる。

そうこうした半年後、序列1位の姫山椿(堀未央奈)が突然校内で自殺する。そして葬儀の翌日、クラス全員の机の上に、姫山からの個々人にあてた遺書が置かれる。

姫山は亡くなったのに、誰が遺書を置いたのか、本当に姫山からの遺書なのか、なぜ姫山は全員に遺書を残したのか、そもそも姫山はなぜ死んだのか、真相究明のために、それぞれの受け取った遺書を公開していくことになる。

姫山と付き合っている序列2位の赤﨑理人(松井奏)、部活が一緒で姫山とは親友関係にある序列3位の御門凛奈(髙石あかり)、1年の時から好きな漫画を共有し合う仲だった序列11位の相畑詩帆(日髙麻鈴)、同じ片親の境遇を分かち合っていた序列15位の谷地恵(兼光ほのか)、赤﨑と噂のある美人の序列13位の茅野鞠華(大峰ユリホ)、姫山にシンパシーを感じていた序列16位の千蔭清一(宮世琉弥)、人間観察が趣味の序列20位の廿日市くるみ(志田彩良)、クラスイチ陽気で明るいお調子者の序列11位の三宅雄大(藤堂日向)、そして実は小学生の頃仲良しだった序列19位の池永柊夜(吉野北人)、その他、密かに姫山に想いを寄せていた者、学級委員、不登校の生徒、クラス全員の姫山との関係、姫山に対する本心、本音が明らかになっていき、やがてすべてが白日の元へ…。

 

サスペンス。

推理しながら、探りながら、そうきたかと思いながら、面白かった。なにより、女優さんたちの演技がぶっ飛んでて良かった。男子生徒と比べると悪どいのがまた(^^;;。姫山が女子なので、どうしても女子同士の関係を描くことになる。序列のせいで嫉妬心がより強く煽られるわけだ。

 

ネタバレはしないけど、自殺する理由が薄いかな。16〜7歳ならなくはないし、家庭環境によっては有りでもあるんだけど、もっと劇的な理由が欲しかった。ただ、生徒たちが感情は爆発するものの、姫山の死に対しては心を傷めるというより淡々と現実を受け止めているのが良かった。ギリギリ年齢的に、自分のことで手一杯、自分中心に世界が回ってると思ってる、思いたい時期なので、他人との線引きが出来てるというかなんというか。そういうドライなところに逆に人間味を感じた。

 

原作(未読)はあれど、鈴木おさむ脚本らしい展開だった。『先生を消す方程式。』を思い出しながら見てた。

監督も英勉ということで、得意分野じゃないかな。

印象に残ったのは兼光ほのかのお芝居で、とても良かった。

 
★★★(★)

 

 

 

 

配給 松竹

 

 

 

 

『陽光桜 YOKO THE CHERRY BLOSSOM(2015)

原作・監督・脚本 髙橋玄

音楽 ベンジャミン・べドゥサック

 

笹野高史、的場浩司、宮本真希、長谷直美、野村宏伸、川上麻衣子、風祭ゆき、津川雅彦、ささの翔太、宮本大誠、速水今日子、貴山侑哉、水上竜士、グ・スーヨン、永倉大輔、牧島輝、森壮太郎、木村桜、可野浩太郎、コンタキンテ、田中章、真由子、小野進也、出光元、他。

 

家業の造園業を営む高岡正堂(的場浩司)に良縁が訪れた。父親の正明(笹野高史)が曲者で、話し出すと止まらなず、話題は派生して何時間にも渡り自論を語り出す。その正明の桜の新種を作り出すための借金も多大な額となっている。そんな正明を長年支えいる母親艶子(風祭ゆき)も正明のやることは全て容認し、楽観的だ。ところが正堂の妻となった恵子(宮本真希)はどれも意に介さず、献身的に家計を預かるのだった。

正明にはどんな気候にも土地にも耐え得る新種の桜を産み出さねばならない理由があった。それは戦争当時、教え子たちを戦地に送り出す際、最後に桜の木の下で撮った一枚の集合写真、そこで「また桜の下で会おう」と、無事の帰還を約束したのだった。けれど現実は、生徒たちは一人を残してあちらこちら知らぬ土地に散った。桜の下での再会が叶わず、自責の念からも、それぞれが散った暑い国、寒い国、どこでも開花する桜の種を編み出そうと研究していたのだった。

その桜「陽光桜」が完成するまでの30年以上の期間(1979完成1981種苗法品種登録)を、日常に生きる人々、平和を思ってやまない正明のまっすぐな心、その行動に翻弄されながらも感謝と尊敬を抱かざるを得ない周りの人々が描かれる。実話をもとにした作品。

 

高岡正明が亡くなったのが、あの2001年9月11日、通称9.11の前日の10日で、テレビニュースで流れた崩れるツインタワーを見て恵子が言った「亡くなった翌日に戦争が始まった」が印象的だった。

 

融資はその人が返せる額しか出さないとあって、なるほどだった。信用と信頼。バブル時はいざ知らずだが、少なくとも日本の経済社会はこれで成り立っているのかと思った。

 

気になったのは、正堂の線香の火の消し方で、親指と人差し指で線香を挟んですっと滑らせ消すのだ。熱くないのか火傷はしないのか気になったし、そういうしきたり?礼儀?風習?があるのだろうか?

 

面白いのは、感心したのは、その時代時代の趣きがスクリーンに現れていること。例えば正堂と恵子が結婚する年代と陽光桜が完成した年代では服装はもちろん背景小物までもが違い、その時代を表現している。当たり前のことかもしれないけど、ずっと住んでる家屋、町並みでその新旧の差がとてもわかりやすく、サッと時間の流れが読み取れることに感心した。映像作品を作る者としては当たり前か(^_^;)。

 

★★★★★

 

 

 

 

メモリアルブック『25時、赤坂で Season2』(2025)

写真集

 

羽山麻水/駒木根葵汰白崎由岐/新原泰祐





盛りだくさんでした。


⚫︎撮り下ろしグラビア

⚫︎駒木根葵汰×新原泰祐対談

⚫︎キャラクター紹介

⚫︎ストーリー紹介(S1、S2)

⚫︎スタイリスト森宗大輔コラム

⚫︎劇中劇「昼のゆめ」、「雨と懺悔」、「ラストノート」あらすじ

⚫︎美術黒羽陽子コラム

⚫︎プロデューサー江川智インタビュー

⚫︎座談会(駒木根葵汰新原泰祐宇佐卓真南雲奨馬夏生大湖

⚫︎撮影現場レポート

⚫︎チーフ監督安川有果インタビュー

⚫︎インティマシーコーディネーター西山ももこ×LGBT Qインクルーシブディレクターミヤタ廉インタビュー

⚫︎原作夏野寛子×編集梶川恵×プロデューサー江川智鼎談

⚫︎ロケ地紹介

⚫︎キャスト&スタッフクレジット

⚫︎ドラマ関連グッズ紹介及びプレゼント企画


という構成。

 




グラビアはSeason2後、つまり二人の仕事が一段落した日の一日を撮ったもので、ちゃんと物語風になっていて、その全てのカットがエモい(o^^o)。これはもう駒木根葵汰と新原泰祐の持つビジュと表現力に尽きます。素晴らしい絵ばかり。このグラビアだけで購入の価値はあります!


そして二人の対談ではそれぞれの魅力、俳優として劇中劇への向き合い方、Season3への期待が話されていて、作品どうのより、今後の二人の飛躍に期待が膨らみます。


スタッフコラムやインタビューからは、まあどんな作品でも当たり前なんだろうけど、スタッフ自身の作品への愛、真摯さがうかがえて、映画であれドラマであれ大勢の人の力と才能によって1作品が出来るのだなぁとあらためて感じました。


原作ありきの製作には、原作者の理解はもちろん、プロデューサー、監督、脚本家の意思疎通が一番重要で、軸をしっかり立ててから、演者を導く。善かれ悪しかれの化学反応が起きることも折り込み済み。その中でその道の専門職の方々が空間を仕立て上げる。すごいなぁと思います。


誌面で『25時、赤坂で』の記憶をたどりつ楽しめ、ちょっとした裏話に二度三度作品を見返す楽しみも得られる一冊でした。

 

 

東京ニュース通信社

税込3500円

 

『カニの夢を見る』(2022)

 

監督・脚本・編集 GEN TAKAHASHI

 

川本淳市、茜結、風祭ゆき、川瀬忠行、本多摂(ほんだおさむ)、桜田昌三、速水今日子、近藤善揮(こんどうよしき)、はしぐちしん、他。

 

モノクロサイレントムービー。でも時代は現代〜近未来。

 

不治の病を患っている母親(風祭ゆき)と二人暮らしのつる(茜結)は女給だけでは治療費はもちろん生活費もままならず、闇金牛久から借金をしている。その日は返済日で、およそ足らぬ金を返しに行く途中でミスター・ポイントと名乗る男(川本淳市)とぶつかる。つるの様子が気になったミスター・ポイントは後をつけ、借金のかたに売り飛ばされんとするところ、全額肩代わりをして助ける。実はこの世、階級制で成り立っており、つるは下層国民で、ミスター・ポイントはデジタル通貨投資で稼ぐ富裕層の投資家だった。二人は互いに惹かれあい、婚約へと進むのだが、ミスター・ポイントはカニ漁を行う貧しい男の夢にうなされ始める…。

 

闇金は現金(キャッシュ)主義。また、同じ投資家でもキャッシュ主義のミスター・キャッシュ(近藤善揮)がいて、互いに危ない橋を渡りながら金儲けに精を出している。

 

ポイントというデジタル通貨とキャッシュの混在する今、近しい未来はどちらに傾くのか。もし、デジタル通貨になった場合、永遠の命も夢ではなくなるかもしれない、でも同時にお金の価値も見えなくなっていくかもしれない、そして愛も…。結局、本当に大切なものは何か、実は今日の空が青く眩しいと感じる心なんじゃないか、と、ラストシーンが言ってる気がする。

 

金に翻弄されながらも愛を求め、手に入れた愛の中の更なる愛によって限りある命の問題もかぶせてくる。コミカルだが、なかなか考えさせる作品。

 

つるはメイドカフェで働いているのだけど、人気がないのか指名されない。客が入ってきた時のあふれる笑顔と、結局指名されなかったときの落胆する顔の差がみごとで目を見張る。茜結。

 

カニの夢が何なのかはよくわからない。夢占いでは防御と警戒、攻撃など、危険な暗示と母性や幸運なども含まれるとあって、都合がいい。ミスター・ポイントは悪夢ととらえている。実体のない通貨からくる強迫観念かもしれない。ただ、つるとの出会いからミスター・ポイントにも運がついてくる。

つるはたまたま見つけたカードからミスター・ポイントとの素敵な出会いを果たしたので、出るタロットカードの良い目には素直に歓喜する。幸運の鍵は気持ちの持ちようということか。

どこか浮遊感のあるミスター・ポイントと、地に足のついた生き方をするつるが対照的。

 

★★★(★)

 

 

 

 

 

カラー版ティザー

 

 

『銀河特急 ミルキー⭐︎サブウェイ』(2025)全12話

昨年TOKYO MXでも放送されたとのことだけど、YouTubeで見られます。

 

原作・脚本・制作 亀山陽平

音楽 yuugen6土井浩平

主題歌 「銀河系まで飛んで行け! 」キャンディーズ(作詞:喜多條忠、作曲:吉田拓郎、編曲:馬飼野康二)

挿入歌 「ときめき★メテオストライク 」水無瀬ミナミ(作詞:亀山陽平、土井浩平/作曲:石黒峻平、土井浩平/編曲:土井浩平/CV:佐々木春香※ミルキー☆ハイウェイ版、田村ゆかり※ミルキー☆サブウェイ版)

『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』告知PV楽曲及び1話オープニングテーマ 「Altair and Vega」MindaRyn(作詞:亀山陽平、作編曲:土井浩平)

 

企画制作 シンエイ動画

製作 タイタン工業

 

地球外世界(つまり宇宙?)バルナディア合星連邦が舞台になっており、昔地球人が入植し過酷な環境にも耐え得る人間を目指し、長年かけて作り出した強化人間と、一部を機械化したサイボーグが住んでいるという設定。

その強化人間であるチハル(cv:寺澤百花)とその友達でサイボーグのマキナ(cv:永瀬アンナ)が主人公。

 

スピード違反で捕まったチハルとマキナ。他にも公務執行妨害、警察車両を爆破した罪が問われ、人間である巡査リョーコ(cv:小松未可子)に調書を取られた後、刑務所が満杯なので刑期短縮と称し奉仕活動を課せられる。それが惑星間走行列車「ミルキー⭐︎サブウェイ」の清掃。

他に、スピード違反で捕まったゾクの総長で強化人間のアカネ(cv:金元寿子)とアカネの弟分で同じく強化人間のカナタ(cv:小市眞琴)、砂糖の密輸で捕まったサイボーグのカート(cv:内山昂輝)とカートと共に防衛サービスに勤務するやはりサイボーグのマックス(cv:山谷祥生=やまやよしたかも一緒になる。清掃パートを二両ずつあてがわれたが、トラブルが起こり六人を乗せたまま「ミルキー⭐︎サブウェイ」は誤発進してしまう。

六人は徐々に交流を始め、列車を何とか止めようとする。そして実は故障していると思っていた人工知能を搭載した古い型の車掌ロボットO.T.A.M.=オータムcv:藤原由林)の犯罪者、社会不適合者排除機能が作動していると判明する。また、マキナの出自も明らかになる。六人は力を合わせてO.T.A.M.と警備ロボ軍団に立ち向かうが…。

 

軽快で早口、被せ気味の会話が魅力。少し気だるい感じも持たせてるあたり、たぶん、時代性。主人公である女の子もかわいいし、キャラクターがしっかりわかれていてみんな魅力的。カートはイケメン枠だし、マックスとのコンビネーションで目をひくし、心あたたかくなるエピソードもある。アカネとカナタの関係では愛(人のあたたかみ)も感じる。

ラストのマキナがとんでもないものに姿を変え、実質その容姿は「死す」わけで(といってこれまでの成長過程でマキナの容姿は変化してきているのだが)、そのドライさがなんとも言えない気持ちにさせる。おそらく、年代が上の者にとっては複雑(笑)。

 

ただただ、面白い。

主題歌が最終回以外は歌詞一節なところ、スタッフロールやタイトルなどのフォントがレトロなところにセンスを感じる。

ピーポくん(みたいなキャラクター)が潰れてサトちゃんみたいになるのも郷愁美🤣

 

劇場版が現在公開されており、こちらはこの12本のアニメを軸にサイドストーリーがかためられたものになっているらしい。

 

★★★★★

 

 

監督の亀山陽平が映像系の専門学校の卒業制作として作った『ミルキー⭐︎ハイウェイ』(2022)が前日譚となっており、こちらはチハル(cv:文月瑞輝)マキナ(cv:小林花菜)か高速道路をドライブしていて、マキナの好きなアイドル水無瀬ミナミの歌声がカーステレオから流れ、調子に乗って速度違反をし、捕まってしまう話。

音楽(石黒峻平、土井浩平)以外は全て亀山陽平によるもの。当作品はYouTubeにて視聴可能。

 

 

公式サイト

 


公式・ミルキー⭐︎サブウェイはこちらからも観られます


 

亀山陽平公式チャンネル(ミルキーハイウェイはこちらから)

 

 

『王様になれ』(2019)

原案・音楽 山中さわお

監督・脚本 オクイシュージ

 

ロックバンドthe pillows結成30周年記念のひとつとして、制作されたとのこと。原案はthe pillowsのボーカル山中さわお。

 

岡山天音、後東ようこ、岡田義徳、岩井拳士朗、オクイシュージ、野口かおる、奥村佳恵、平田敦子

村杉蝉之介、他。

 

ゲストミュージシャン:TERU(GLAY)、JIRO(GLAY/THE PREDATORS)、高橋宏貴(ELLEGARDEN/THE PREDATORS)、ホリエアツシ(STRAIGHTENER)、ナカヤマシンペイ(STRAIGHTENER)、日向秀和(STRAIGHTENER)、THE KEBABSCasablancaTHE BOHEMIANS宮本英一(シュリスペイロフ)、SHISHAMO藤田恵名有江嘉典(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)

 

なかなか芽が出ないばかりか、同期(岩井拳士朗)に先を越され悶々とするカメラマン志望の神津祐介(岡山天音)は、カメラマン古志野(村杉蝉之介)のアシスタントとして勤めていたが、限界がきたこと、父親が亡くなったことで、アシスタントを辞め、叔父(オクイシュージ)のラーメン屋でバイトを始める。宙ぶらりんの状態でバイトにも身が入らなければ、カメラにも気が向かない。そんなある日、昔叔父がいた劇団の団員だという藤沢ユカリ(後東ようこ)が食べに来て、一目で恋に落ちる。ユカリはロックバンドthe pillowsの大ファンで、祐介は話をしたいばかりに情報を得てライブハウスにも通い、つながりを得る。ユカリにオススメのCDを借りるなど、そのうちthe pillowsはもちろん他バンドにも興味を持つようになる。そしてライブを中心に写真を撮るカメラマン虻川塁(岡田義徳)の下についてカメラマンへの道を再び模索し始める。そこには失敗もあり、また良い関係に進展しつつあったユカリとの間にわずかな亀裂が入るなどして自身を見つめ直したり、なにより、ユカリの持病が発覚するなど、祐介の人生の過渡期が描かれる…。

 

面白かった。なにしろ、こういう停滞する役、岡山天音が上手いので。

ユカリとの距離感もきれいだったし、この作品で魅力的だなぁと思ったのは、表情の映し方。役者の技量にかかっているのだけど、全てが素晴らしかった。あ、本職の役者さんに限ってのことね。

残念ながら、ミュージシャンの方々は、演奏や歌は素晴らしく、ライブシーンも長尺で流すだけあるものだったけど、台詞演技が専門外というのがはっきりはかるようなもので、重要なシーン、台詞であろうに効力が6割程度にしかなってなかった。

でもまあ、夢を追う者、何者かになりたくて足掻いてる者、ずっと続けて人の心をとらえてきた表現者たちの今、これからを生きようとする人の今、がよく描かれていて、伝ってきて、なんとも言えない、頑張れ、という気持ちにさせられた。んで、良い作品だった。

 

★★★(★)

 

 

 

 

しばらく見てなかったんですぐに気がつかなかったんだけど、TERUが劣化してて驚いた。無理もなし。でも歌は素晴らしい。

 

 

制作 ブースタープロジェクト

配給 太秦

 

『愚か者の身分』(2025)

原作は西尾潤の小説。

 

監督 永田琴

脚本 向井康介(『マイ・バック・ページ』『ふがいない僕は空を見た』『ある男』『悪い夏』他)

音楽 出羽良彰

主題歌 tuki.「人生讃歌」

 

北村匠海、綾野剛、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、田邊和也、松浦祐也、加治将樹、嶺豪一、他。

 

松本タクヤ(北村匠海)は闇ビジネスに手を染めていた。戸籍売買を主体に金を稼ぎ、現場脱却を視野に入れてはいるものの、一度染まった世界から抜け出るのは難しく、自分がこの世界に引き入れてしまったともいえる弟分の柿崎マモル(林裕太)にもわずかながら責任を感じていた。そんな時、この世界から足を洗えるチャンスが訪れる。それは直接指示を下してくる佐藤(嶺豪一)やその上のジョージ(田邊和也)らを騙すことにもなり危険が伴う。そして案の定、臓器売買も手がける彼らの手中に落ちる。それでもマモルを守りながら、自分がこの世界に入ったきっかけを割くとなった先輩梶谷剣士(綾野剛)の手を借り、どうにか逃げ切ろうとするが…。

 

みんな育児放棄や虐待など、家庭が機能していない環境育ち。昔から思春期独特の反抗心を除いたら、だいたい育ちで将来の道が決まっている。反骨心がうまいこと利けば悪環境からの脱却はできるだろうけど…自立した大人になり生計を立てる家庭を持つまでいくのは稀なんじゃないか? おそらくその前に命が果てる。

にしても、社会の複雑さを感じ入った。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

制作 Lat-Lon

配給 THE SEVEN、ショウゲート

 
 
 

 

 

ネタバレするとタクヤは両目を失うのだが、まともな治療をせずに2〜3日も過ごせるのだろうか? そんなこと野暮な心配だけど、それがすごく気になった。あと、この手のストーリーは疑りぶかくなるもんで、梶谷の嫁(木南晴夏)がはめにくるんじゃないかとか、客引き役の希沙良(山下美月)もどうにかなってしまうんじゃないかとか、もっと最悪な展開を想像してしまった。

こんな荒れた世界でも、タクヤはハメた客(矢本悠馬)に情を持っていたり、マモルを実弟と重ねていたり、タクヤ×マモル、タクヤ×梶谷の関係には金や損得云々ではない愛が感じられて、それが救いだったりした。

また、同じくハメた客(松浦祐也)が刑事だったりするのも、話の締まりがあって良かった。

 

 

『DIVOC-12』(2021)

「異常は続く。それはやがて日常となる。かつてない閉塞感と、不確かな未来。そんな中でも、新たな才能は息づいている。12人の映画監督による、12の物語。ウイルスは都市機能を麻痺させた。しかし、何かを生み出す動きまでは侵さない。立ち止まるな、作り続ける。創造だけが、すべての不安を超えていける。」DIVOC-12プロジェクトステイトメントより

 

…というわけで、コロナの弊害を受けているクリエイターたちにソニー・ピクチャーズエンタテインメントが立ち上がり、12人の映画監督による12本のアンソロジームービーを制作。その収益の一部は日本芸術文化振興基金へ寄付されるとのこと。

また、タイトルはコロナ=COVID-19を逆さに読んだもので、コロナをひっくり返したいという思いが入っている。とのこと。

 

大きく三つにカテゴライズされ、三人の監督のチーム作品となっている。(わかりやすいように色分けします)

藤井道人監督チーム「成長への気づき」🟣

上田慎一郎監督チーム「感触」🟢

三島有紀子監督チーム「共有」🔴

 

 

🟣「名も無き一篇・アンナ」★★★

監督 藤井道人(『青の帰り道』『デイアンドナイト』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『ヤクザと家族』『ヴィレッジ』『最後まで行く』『正体』他)

亡くなった恋人アンナ(ロン・モンロウ)に夢の中で会い、ようやっと前へ進む男(横浜流星)


今は深い悲しみから抜け出せなくても、いつかは立ち上がれる時がくる、それは自分にはっぱをかけるということではなく、自然の流れがそうさせるということか?

 

 

🟣「流民」★★

監督 志自岐希生(しじききお)

昔暮らした家へ行く女(石橋静香)。そこは宿に変わっていて、部屋の鍵を渡されるが、開けても開けても人がいる。自分の部屋が見つからない。部屋を占領している煩わしい多くの人間から逃げ、消そうとするが、結局自分からその場を後にする…。


冒頭に出る一文↓だが、これはこれで完結されてて、映像との関わりが分からなかった。

「暗黒の空の背後には 星を実らした歯の林があるにちがいないそれを信じることは、私のもの黒い洋傘の中は、私のもの。」 小熊秀雄「流民詩集」より "Behind the pitch black sky There must be a forest with fruits of stars To believe that is all mine What's underneath my black umbrella is all mine" - Hideo Oguma "Poctry of Vagabonds"」

 

 

🟣「タイクーン」★★★

監督 林田浩川

中華料理店の下働きのシン(小野翔平)は周りにいいように扱われている。この日も高い時計を買わされ酒を盛られ潰れかけで古い時計を川へ落としてしまう。探しに川べりの釣り船に乗るが見つからず寝てしまう。気づくと船の持ち主(窪塚洋介)が乗っている。しばらく話したあと、岸に降りてから開けろとプレゼントを渡される。再び眠りにつき起きると持ち主はあとかたもなく消え、手元のプレゼント箱には落とした時計が…。


遅れたり早まったり、時にせきたてるように新しい時を刻む。何度も何度もやり直せる、人生は繰り返しを重ねながら進んで行く、ということか? シンは中国人で要領も悪く、日本へは働きにきたぽい。

 

 

🟣「ココ」★★★★★

監督 廣賢一郎

妊娠をした女佳奈(円井わん)が彼氏熙舜=ひろみつ(笠松将)にそのことを告げるもつれない。子供ができたことでお互いに今までと未来を天秤にかけ始める。結局二人は子供に前向きになるものの、流産からの破局となる…。


けっこう痛い。佳奈の生活と虚勢を張る感じ、熙舜の家庭観、父親(渡辺いっけい)を見る目など。とにかく役者の演技が素晴らしくて、一つ一つのカットに感情が読み取れる。

流産がまずかったのではなく、きっかけに過ぎずおそらく幸運というとらえ方。そんな生き方をこの二人はしている。これを機に、未来が少し明るくなるかもしれないと思わせる。人は自分の「生」に貪欲なもの。

 

 

🟢「ユメミの半生」★★(★)

監督 上田慎一郎(『カメラを止めるな!』他)

映画監督になりたい少年(石川春翔)は、採用されたとたんに閉館が決まった映画館のお姉さんユメミ(松本穂香)に声をかけられ、ユメミの半生を聞かされることになる。ちょうど「わたしの半生」という映画を観ようとしていたところだった。お姉さんは生まれた時声が出ず、以降父親(濱津隆之)が飛行機事故で亡くなった時、初めて声を得たのだった。それから恋人テツオ(小関裕太)ができるものの、地球と火星との問題の狭間で命を取られてしまう。組織の仲間と落ち合い火星人の地球侵略に立ち向かうことになる。そこで敵方に父を見つけるが毒されたのか記憶がない。父と対決し、ユメミは一応地球を救ったことになるのだが…ということころで、ふと現実にかえる少年の前にはお姉さんはいなかった。そればかりか、映画館の支配人(塚本晋也)によると融資があったおかげで映画館の存続が決まったと言う。そして話の続きは少年に託される…。


ユメミの話はいろんな映画作品がモチーフとなってるのだろうけど、そこまでの知識がないからわからない。ファンタジックコメディ。

 

 

🟢「魔女のニーナ」★★(★)

監督 ふくだみゆき

ニーナ(安藤ニコ)はイギリスに住むまだまだ新米の魔女。一人前になる段階の一つの試練として、日本のとある湖にある薬草の花を採取する旅へ出ることになる。人間の前で魔法を使ってはいけないのに、家出少女めぐ(おーちゃん)に見られてしまう。お互い子供扱いされることに不満を抱いており、なんとなく仲良しになる。そして目的の花をめぐの協力のもと採取する…。


子供じゃないの、もう大人よ!と自我が芽生えてきた頃の子供を描いたものかな。作品はミュージカル調で、ニーナ役の子はバレエやってたのがわかるスマートなダンスを見せ、コンテンポラリーなミュージカルソングとマッチしてた。魔女だある正体バレはめぐの記憶を消すことでなかったことになるけど、半人前の二人を象徴するかのような、イヤリングを分け合う、その行為が現実に起こった事の証拠となる…というファンタジー。

 

 

🟢『死霊軍団 怒りのDIY』★★★★(★)

監督 中元雄

ホームセンターで働くかわさきマリ(清野菜名)はデート中に悪漢に襲われ、空手有段者の腕前で危機を乗り切ったものの、その強さに恋人(濱正悟)から引かれてフラれてしまった。そんな時、友人から合コンの誘いがある。今度は失敗しないようファッションも趣味も整えるが、その日、店にゾンビが現れる。店長(大迫茂生)がやられる中、同僚のさいとう(高橋文哉)と共に、いや、マリが女ランボーがごとくゾンビと格闘し…。


アクションホラーコメディ(盛りだくさんだなオイ)。

清野菜名の華麗なアクションが楽しめるし、高橋文哉のポンコツぶりが面白い。

 

 

🟢『あこがれマガジン』★★

監督 エバンス未夜子

向き合って座るミオ(小川紗良)とその友達ナオ(横田真悠)。芸能人(アイドル)を目指してるミオだけど、最近鏡の中に不思議な現象が起こるという。いつの間にか鏡の中の人物が自分の夢を食ってしまってるのだ。そしてその人物はナオ。ミオの話はいつの間にかナオのものとして語られていく…。


ちょっと意味わからない。ラストもどう捉えることも出来ず。だいたいミオとナオの区別が髪型でしかつかない上、テレビの中のアイドル歌手(小泉萌香)とも区別が難しいくらいイメージが似てて、まあ、単に私みたいな年寄りには同じに見えるということ…なのかな?それとも狙ってる?だとしたらそこは素晴らしい。

タイトルから察すれば、年頃の女の子がよくする雑誌モデルと自分を同化させる「憧れ」の具現化かも。

 

 

🔴『よろこびのうた Ode to Joy』★★★(★)

監督 三島有紀子(『Red』『ビブリア古書堂の事件手帖』他)

浜辺で転んだのか立てなくなっているひとりぼっちの老女(冬海富司純子)に地方訛りのある青年(歩藤原季節)が声をかける。青年は老女にとある仕事を一緒にしないかと誘う。老女は迷った挙句引き受ける。保険金詐欺の加担で、対象者を殺める役だった…。


モノクロの手前というか、なんというのかわからないけど色のない画で、浜辺が勝手ながら日本海に思える暗さ。やることがやることなので前後の葛藤も描かれる。老女は引き受ける前に、青年は終わった後に。色々察してくださいという受け手の感性に任せ切るような作品で好みなんだけど、何か足りなくて、突き放された感じが否めなかった。富司純子の演技の素晴らしさが光る。藤原季節は窪田正孝でもできるような役でちょっと残念だった。

 

 

🔴『YEN』★★★(★)

監督 山嵜晋平

夏希(蒔田彩珠)冬美(中村守里)は親友同士。インスタントカメラ(チェキ)で写真を撮っては値段をつけ、気に入らないやつは破格の値を書き川に流す。ある日、冬美に彼氏ができる。部屋に貼った高額どころかプライスレスの夏希との写真が彼との写真に変わっていく。苛立つ夏希は冬美の父親(渋川清彦)を撮って「リストラオヤジ」と「1円」の値をつけ、ついに友情が壊れる。けれどしばらくして、冬美の恋が終わったことで二人は仲を取り戻す。今度は「円」ではなく「希」という単位で写真を撮る…。


友情の証が円という単位で表せられる。互いに結びつきを確認する方法だろう。子供の頃はそういう目に見えるものでしか他人との仲を保てない。

そういえば画角がチェキサイズ。

 

 

🔴『海にそらごと』★★★★

監督 齋藤栄美

海斗(髙田万作)は父の遺品から母親とのツーショットを見つけ、自分らを捨てた母親を訪ねる。海辺の街でスナックを営む母親茜(中村ゆり)はすぐに息子とは認識できず、海斗は荒ぶれた茜にがっかりして飛び出すものの、写真を見た茜は察し、追いかけ連れ戻す。その日夜になって客も入り、親子を名乗り楽しい時を過ごす。しかし自分が本当の子ではないことを知る。なぜ茜は母親のふりをしたのか、二人の間に互いを受け入れる空気が生まれる…。


血のつながりではなく情であり、茜にとっては望んでも得られなかった子供であること、海斗にとってはずっと欲しかった暖かみだ。なかなか良かった。なにより、子役の演技が表情が素晴らしい。

 

 

🔴『睡眠倶楽部のすすめ』★★

監督 加藤拓人

様々な理由で心を病んだ人が入る施設に、透子(前田敦子)も世話になっている。でも日々、ねまき姿で寝ては起き、また寝る静かな空間にいて、何か大切なことを忘れていっている気がしている。ある日、透子の夫(大友律)が、必要になったらとボストンバッグを預けていく。中は透子の洋服。透子は外出を試みて道を歩く。往来する人々の声が耳に入ってくる。徐々に人の存在を認識し、家へたどり着く…。


社会生活を営むにあたり、過度な接触や個人の適応能力によっては適度な休養が必要ということか。

 

 

12人の監督のうち、廣賢一郎、エバンス未夜子、加藤拓人は一般公募とのこと。

 

 

 

 

公式チャンネルにて配信中(期間不明)

 

 

本編より長いドキュメンタリー

 

 

 

『君が描く光』(2016)

韓国映画。原題は『계춘할망』で意味はケチュンばあちゃん 。英題は『CANOLA』で菜の花を意味すると思われる。

 

監督 チャン

 

済州島で海女を生業とするケチュンばあさん(ユン・ヨジョン)は孫のヘジと二人暮らし。豚のトヤもいる。ヘジの父親はケチュンの息子でもうこの世にはいない。母親は出て行ってしまった。ヘジはお絵描きが好きで得意。クレヨンを買ってもらってからは絵をたくさん描いた。幸せに暮らす日々だったが、出先のソウルの市場でヘジが行方不明になってしまう。それからいくら探しても見つからない。そして12年が過ぎた。

ヘジ(キム・ゴウン)には一緒に生活する友達ミニ(パク・ミンジ)がいたが、悪い仲間に囲われ美人局のような真似で金を得ていた。それでトラブルになり、客となった男を傷つけ、拠点の部屋から逃げるはめになる。

ヘジは実は市場で実母にさらわれ、継父とその娘と四人で暮らしていた。けれど事故で実母と義姉を亡くし、ギャンブルに明け暮れる継父は養育を拒否したのだった。

一方、ヘジを失ったケチュンのところには連日家を売らないかと不動産屋が詰めてくる。ヘジの帰る場所を無くすわけにはいかないと頑なに断り続けるケチュンのところへ、上記のような事情からヘジが戻って来る。

高校生となったヘジはケチュンによって学校へ通うようになり、幼馴染みのハン(ミンホ)がサポートする。絵の得意だったヘジは画家兼美術教師(ヤン・イクチュン)に指導を受けるようになる。古い家屋での暮らしはなかなか慣れるものではなかったが、ケチュンばあさんはもちろん海女たちの船を出す船頭のおじさん夫婦(キム・ヒウォンシン・ウンジョン)も優しく、ヘジは徐々に馴染んでいく。そんな時、ミニの窮地、継父が金を無心しに現れるなど状況が悪くなってくる。絵画コンテストのためにソウルへ行くことになったヘジは、そこで提出作品を描き終えると姿を消す。ミニを救うためでもあったが、警察沙汰になり過去の事件も明るみになってしまう。そしてヘジは本物のヘジではなく、事故に遭った際、保険金欲しさに継父がとっさにヘジと実の娘ウンジュを入れ替えたことも明るみになる。ヘジとウンジュは年頃も一緒で、ウンジュはヘジからケチュンばあさんのことも村の生活も、そして絵も教わっていたのだった。

時は経ち、ケチュンは認知が進み始め、家も売却し施設に移っていた。その頃、ヘジ(ウンジュ)はミニ以外の腐れ縁の仲間との縁も切れていて、絵を描きながらコンビニで働いていた。そこへやっとヘジ(ウンジュ)を探し当てたおじさんがケチュンばあさんがいなくなったと伝えに来る。ウンジュはソウルのあの市場でケチュンばあさんを見つけ、済州島へ戻る。おじさん夫婦や不動産屋、村のみんなで売却後手付かずだった家を住めるよう片付け、ウンジュとケチュンばあさん二人の生活がまた始まる…。

 

ケチュンばあさんは最期はウンジュの名を呼び、菜の花に包まれヘジのもとへ旅立つ。ウンジュは画家として大成を果たす。

 



 

田舎暮らしには慣れているはずのヘジが、いくら年頃とはいえ嫌な顔をしたり、妙によそよそしかったりするのには観てる側からも「ん?」とは思った。そしてヘジが本物でないことはうすうす勘付いているケチュンだったが、それが決定的となったのが「海と空とどっちが広い?」というヘジの問いだったと思う。当然空の方が広いのに、ヘジが子供の頃ケチュンは海の方が広いと答えた。それを今になってケチュンがヘジに問う。当たり前のようにヘジは「空」と答える。この伏線は素晴らしかった。それが絵画にも現れて、海と空が繋がって広い海が出来上がる。海が空を包み込んでいる。おばあちゃんは私の海。他にも繋がりを表すものは自然の中にあって、その一つが菜の花だったり、なかなかにきれいな展開だった。

美術の授業であんなに絵が得意だったヘジがなかなか描けなかったこと、いざ描いてみると心の奥に何か秘めてることがわかる素晴らしい絵を仕上げたこと、これらもちゃんと合点がいくように作られているし、ウンジュとして描いたタイトル「告白」の大会で入賞した絵画には罪悪感も滲み出ていたし、被写体の向かう先が海の中から光を求めてのぼるであることにはやはり感心した。絵を描くにあたって光があるから影がある。いち早く苦しみに気づきその光の方向に目を向けさせようとする美術教師も良かった。また、子供の頃ケチュンばあさんの顔を描き、髪の色を金色で塗るのを楽しみにしていたのが出来ずに行方不明になってしまったこと、その時のバッグに金色クレヨンが入っていたこと、それもちゃんと拾われる。小物としては派手で子供向きのリボンのピンが最後まで使われていることはあったかい気持ちにさせられた。日焼け止めと絵の具の使い方も、豚のトヤの使い方も。

そして再びケチュンばあさんのもとへヘジとして帰ってきたウンジュ、その二人の暮らしはじんわりするほど優しいものだったし、ウンジュへ向けたメッセージも泣ける。素晴らしい脚本だなと思ったけど、やはりどうしてかラストが冗長気味になる。ヒューマンドラマの中でも悲劇ものにはありがちで、泣かせようという意図が見えて興醒めする。そこが残念だった。

 

それにしてもユン・ヨジョンの演技が素晴らしい。同じアジア人でも人種の違いから表現も違うものと思っているので、通じないのは半ば当たり前のように思っているけど、この演技表現はすごく伝わってきた。やはり人間なのだから感情表現は万国共通なのではないかと思ったくらい。キム・ゴウンは日本では河合優実みたいな感じか、もちろん良かった。また、ハン役のミンホは瀬戸康史みたいなかわいさでこれまたなかなか良かった。

 

★★★★(★)

 

 

 

ところでケチュンの家を欲していたのが中国人という話で、さらに購入後放置という話、もしかしてすでに韓国で問題化していたのだろうか…と勘ぐってしまった。

 

 

 

 

 

 

『ハドソン川の奇跡』(2016)

実際にあった2009年のUSエアウェイズ1549便のハドソン川不時着水事故を映画化した作品。原題はチェスリー・サレンバーガー機長の愛称である『Sully』

 

監督 クリント・イーストウッド

脚本 トッド・コマーニキ

原作 チェスリー・サレンバーガージェフリー・ザスロー

 

2009年1月15日、シャーロット空港へ向かいラガーディア空港から飛び立ったUSエアウェイズ1549便がバードストライクに遭ってしまう。二つのエンジンがやられ、早急の対応を迫られる機長のチェスリー・サレンバーガー(トム・ハンクス)と副操縦士のジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカード)。ラガーディア空港に戻るかディーターボロ空港へ着陸するか、しかし、チェスリーはハドソン川への着水を選択する。

チェスリーは子供の頃からパイロットに憧れ、16歳で飛行機操縦を習い、その後軍へ入り旅客機のパイロットになったあらゆる困難を乗り切ってきた敏腕の操縦士で、その技術のおかげもあって衝撃を最大限に軽減し、ハドソン川に不時着水を成功させる。155人の乗員乗客は誰一人欠けることがなかった。

たちまち英雄ともてはやされるのだが、一方で、国家運輸安全委員会の本当に失策ではなかったかの調査と厳しい検証に迫られる。ただでさえ、過度なプレッシャーの中の操縦で悪夢にうなされる日々で、血圧が高い値を示すほど心身ともに疲弊してるというのに。家族(妻:ローラ・リニー)もまたマスコミに追われストレス化していく。

しかし、検証委員会ではチェスリーの選択が間違ってなかったことの証明がされ、何より、全員の無事救助が讃えられることになる…。

 

国家運輸安全委員会は人為的ミスを問題視する。155人の無事よりも、今後に活かすためとはいえ、膨大な人員、経費をかけずとも安全な方法があったんではないかと正解を導き出すのに懸命なのがなんとも…。乗客はサリー始めジェフ、クルー(ジェーン・ガバード、アン・キューザック、モリー・ヘイガン)らに感謝している。人の命の捉え方が立場によってまるで違うことがよくわかる。

結果的にはサリーの腕もジェフの冷静さもあろうが、クルーのお客様の安全第一という迅速かつ冷静沈着な誘導、そして近辺にいた船舶らの救助協力の賜物であり、安全委員会の机上の空論よろしく人間の感情と諸所のタイミングを外した理論詰めの検証ごっこでは役に立たないことがわかった。「ハドソン川の奇跡」と言われる所以もいかにも。

サリーは軍で操縦訓練を受けながら一緒に学んできた仲間を失っている。命の重みと安全性への危惧を忘れずにいることはもちろんだが、天職というものがどういうものか知った気がした。それは天才とも違う気もする。

 

トム・ハンクスの味が出てる。面白かった。

 

★★★★★