『カニの夢を見る』(2022)
監督・脚本・編集 GEN TAKAHASHI
川本淳市、茜結、風祭ゆき、川瀬忠行、本多摂(ほんだおさむ)、桜田昌三、速水今日子、近藤善揮(こんどうよしき)、はしぐちしん、他。
モノクロサイレントムービー。でも時代は現代〜近未来。
不治の病を患っている母親(風祭ゆき)と二人暮らしのつる(茜結)は女給だけでは治療費はもちろん生活費もままならず、闇金牛久から借金をしている。その日は返済日で、およそ足らぬ金を返しに行く途中でミスター・ポイントと名乗る男(川本淳市)とぶつかる。つるの様子が気になったミスター・ポイントは後をつけ、借金のかたに売り飛ばされんとするところ、全額肩代わりをして助ける。実はこの世、階級制で成り立っており、つるは下層国民で、ミスター・ポイントはデジタル通貨投資で稼ぐ富裕層の投資家だった。二人は互いに惹かれあい、婚約へと進むのだが、ミスター・ポイントはカニ漁を行う貧しい男の夢にうなされ始める…。
闇金は現金(キャッシュ)主義。また、同じ投資家でもキャッシュ主義のミスター・キャッシュ(近藤善揮)がいて、互いに危ない橋を渡りながら金儲けに精を出している。
ポイントというデジタル通貨とキャッシュの混在する今、近しい未来はどちらに傾くのか。もし、デジタル通貨になった場合、永遠の命も夢ではなくなるかもしれない、でも同時にお金の価値も見えなくなっていくかもしれない、そして愛も…。結局、本当に大切なものは何か、実は今日の空が青く眩しいと感じる心なんじゃないか、と、ラストシーンが言ってる気がする。
金に翻弄されながらも愛を求め、手に入れた愛の中の更なる愛によって限りある命の問題もかぶせてくる。コミカルだが、なかなか考えさせる作品。
つるはメイドカフェで働いているのだけど、人気がないのか指名されない。客が入ってきた時のあふれる笑顔と、結局指名されなかったときの落胆する顔の差がみごとで目を見張る。茜結。
カニの夢が何なのかはよくわからない。夢占いでは防御と警戒、攻撃など、危険な暗示と母性や幸運なども含まれるとあって、都合がいい。ミスター・ポイントは悪夢ととらえている。実体のない通貨からくる強迫観念かもしれない。ただ、つるとの出会いからミスター・ポイントにも運がついてくる。
つるはたまたま見つけたカードからミスター・ポイントとの素敵な出会いを果たしたので、出るタロットカードの良い目には素直に歓喜する。幸運の鍵は気持ちの持ちようということか。
どこか浮遊感のあるミスター・ポイントと、地に足のついた生き方をするつるが対照的。
★★★(★)