『DIVOC-12』(2021)
「異常は続く。それはやがて日常となる。かつてない閉塞感と、不確かな未来。そんな中でも、新たな才能は息づいている。12人の映画監督による、12の物語。ウイルスは都市機能を麻痺させた。しかし、何かを生み出す動きまでは侵さない。立ち止まるな、作り続ける。創造だけが、すべての不安を超えていける。」DIVOC-12プロジェクトステイトメントより
…というわけで、コロナの弊害を受けているクリエイターたちにソニー・ピクチャーズエンタテインメントが立ち上がり、12人の映画監督による12本のアンソロジームービーを制作。その収益の一部は日本芸術文化振興基金へ寄付されるとのこと。
また、タイトルはコロナ=COVID-19を逆さに読んだもので、コロナをひっくり返したいという思いが入っている。とのこと。
大きく三つにカテゴライズされ、三人の監督のチーム作品となっている。(わかりやすいように色分けします)
藤井道人監督チーム「成長への気づき」🟣
上田慎一郎監督チーム「感触」🟢
三島有紀子監督チーム「共有」🔴
🟣「名も無き一篇・アンナ」★★★
監督 藤井道人(『青の帰り道』『デイアンドナイト』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『ヤクザと家族』『ヴィレッジ』『最後まで行く』『正体』他)
亡くなった恋人アンナ(ロン・モンロウ)に夢の中で会い、ようやっと前へ進む男(横浜流星)。
今は深い悲しみから抜け出せなくても、いつかは立ち上がれる時がくる、それは自分にはっぱをかけるということではなく、自然の流れがそうさせるということか?
🟣「流民」★★
監督 志自岐希生(しじききお)
昔暮らした家へ行く女(石橋静香)。そこは宿に変わっていて、部屋の鍵を渡されるが、開けても開けても人がいる。自分の部屋が見つからない。部屋を占領している煩わしい多くの人間から逃げ、消そうとするが、結局自分からその場を後にする…。
冒頭に出る一文↓だが、これはこれで完結されてて、映像との関わりが分からなかった。
「暗黒の空の背後には 星を実らした歯の林があるにちがいないそれを信じることは、私のもの黒い洋傘の中は、私のもの。」 小熊秀雄「流民詩集」より "Behind the pitch black sky There must be a forest with fruits of stars To believe that is all mine What's underneath my black umbrella is all mine" - Hideo Oguma "Poctry of Vagabonds"」
🟣「タイクーン」★★★
監督 林田浩川
中華料理店の下働きのシン(小野翔平)は周りにいいように扱われている。この日も高い時計を買わされ酒を盛られ潰れかけで古い時計を川へ落としてしまう。探しに川べりの釣り船に乗るが見つからず寝てしまう。気づくと船の持ち主(窪塚洋介)が乗っている。しばらく話したあと、岸に降りてから開けろとプレゼントを渡される。再び眠りにつき起きると持ち主はあとかたもなく消え、手元のプレゼント箱には落とした時計が…。
遅れたり早まったり、時にせきたてるように新しい時を刻む。何度も何度もやり直せる、人生は繰り返しを重ねながら進んで行く、ということか? シンは中国人で要領も悪く、日本へは働きにきたぽい。
🟣「ココ」★★★★★
監督 廣賢一郎
妊娠をした女佳奈(円井わん)が彼氏熙舜=ひろみつ(笠松将)にそのことを告げるもつれない。子供ができたことでお互いに今までと未来を天秤にかけ始める。結局二人は子供に前向きになるものの、流産からの破局となる…。
けっこう痛い。佳奈の生活と虚勢を張る感じ、熙舜の家庭観、父親(渡辺いっけい)を見る目など。とにかく役者の演技が素晴らしくて、一つ一つのカットに感情が読み取れる。
流産がまずかったのではなく、きっかけに過ぎずおそらく幸運というとらえ方。そんな生き方をこの二人はしている。これを機に、未来が少し明るくなるかもしれないと思わせる。人は自分の「生」に貪欲なもの。
🟢「ユメミの半生」★★(★)
監督 上田慎一郎(『カメラを止めるな!』他)
映画監督になりたい少年(石川春翔)は、採用されたとたんに閉館が決まった映画館のお姉さんユメミ(松本穂香)に声をかけられ、ユメミの半生を聞かされることになる。ちょうど「わたしの半生」という映画を観ようとしていたところだった。お姉さんは生まれた時声が出ず、以降父親(濱津隆之)が飛行機事故で亡くなった時、初めて声を得たのだった。それから恋人テツオ(小関裕太)ができるものの、地球と火星との問題の狭間で命を取られてしまう。組織の仲間と落ち合い火星人の地球侵略に立ち向かうことになる。そこで敵方に父を見つけるが毒されたのか記憶がない。父と対決し、ユメミは一応地球を救ったことになるのだが…ということころで、ふと現実にかえる少年の前にはお姉さんはいなかった。そればかりか、映画館の支配人(塚本晋也)によると融資があったおかげで映画館の存続が決まったと言う。そして話の続きは少年に託される…。
ユメミの話はいろんな映画作品がモチーフとなってるのだろうけど、そこまでの知識がないからわからない。ファンタジックコメディ。
🟢「魔女のニーナ」★★(★)
監督 ふくだみゆき
ニーナ(安藤ニコ)はイギリスに住むまだまだ新米の魔女。一人前になる段階の一つの試練として、日本のとある湖にある薬草の花を採取する旅へ出ることになる。人間の前で魔法を使ってはいけないのに、家出少女めぐ(おーちゃん)に見られてしまう。お互い子供扱いされることに不満を抱いており、なんとなく仲良しになる。そして目的の花をめぐの協力のもと採取する…。
子供じゃないの、もう大人よ!と自我が芽生えてきた頃の子供を描いたものかな。作品はミュージカル調で、ニーナ役の子はバレエやってたのがわかるスマートなダンスを見せ、コンテンポラリーなミュージカルソングとマッチしてた。魔女だある正体バレはめぐの記憶を消すことでなかったことになるけど、半人前の二人を象徴するかのような、イヤリングを分け合う、その行為が現実に起こった事の証拠となる…というファンタジー。
🟢『死霊軍団 怒りのDIY』★★★★(★)
監督 中元雄
ホームセンターで働くかわさきマリ(清野菜名)はデート中に悪漢に襲われ、空手有段者の腕前で危機を乗り切ったものの、その強さに恋人(濱正悟)から引かれてフラれてしまった。そんな時、友人から合コンの誘いがある。今度は失敗しないようファッションも趣味も整えるが、その日、店にゾンビが現れる。店長(大迫茂生)がやられる中、同僚のさいとう(高橋文哉)と共に、いや、マリが女ランボーがごとくゾンビと格闘し…。
アクションホラーコメディ(盛りだくさんだなオイ)。
清野菜名の華麗なアクションが楽しめるし、高橋文哉のポンコツぶりが面白い。
🟢『あこがれマガジン』★★
監督 エバンス未夜子
向き合って座るミオ(小川紗良)とその友達ナオ(横田真悠)。芸能人(アイドル)を目指してるミオだけど、最近鏡の中に不思議な現象が起こるという。いつの間にか鏡の中の人物が自分の夢を食ってしまってるのだ。そしてその人物はナオ。ミオの話はいつの間にかナオのものとして語られていく…。
ちょっと意味わからない。ラストもどう捉えることも出来ず。だいたいミオとナオの区別が髪型でしかつかない上、テレビの中のアイドル歌手(小泉萌香)とも区別が難しいくらいイメージが似てて、まあ、単に私みたいな年寄りには同じに見えるということ…なのかな?それとも狙ってる?だとしたらそこは素晴らしい。
タイトルから察すれば、年頃の女の子がよくする雑誌モデルと自分を同化させる「憧れ」の具現化かも。
🔴『よろこびのうた Ode to Joy』★★★(★)
監督 三島有紀子(『Red』『ビブリア古書堂の事件手帖』他)
浜辺で転んだのか立てなくなっているひとりぼっちの老女(冬海:富司純子)に地方訛りのある青年(歩:藤原季節)が声をかける。青年は老女にとある仕事を一緒にしないかと誘う。老女は迷った挙句引き受ける。保険金詐欺の加担で、対象者を殺める役だった…。
モノクロの手前というか、なんというのかわからないけど色のない画で、浜辺が勝手ながら日本海に思える暗さ。やることがやることなので前後の葛藤も描かれる。老女は引き受ける前に、青年は終わった後に。色々察してくださいという受け手の感性に任せ切るような作品で好みなんだけど、何か足りなくて、突き放された感じが否めなかった。富司純子の演技の素晴らしさが光る。藤原季節は窪田正孝でもできるような役でちょっと残念だった。
🔴『YEN』★★★(★)
監督 山嵜晋平
夏希(蒔田彩珠)と冬美(中村守里)は親友同士。インスタントカメラ(チェキ)で写真を撮っては値段をつけ、気に入らないやつは破格の値を書き川に流す。ある日、冬美に彼氏ができる。部屋に貼った高額どころかプライスレスの夏希との写真が彼との写真に変わっていく。苛立つ夏希は冬美の父親(渋川清彦)を撮って「リストラオヤジ」と「1円」の値をつけ、ついに友情が壊れる。けれどしばらくして、冬美の恋が終わったことで二人は仲を取り戻す。今度は「円」ではなく「希」という単位で写真を撮る…。
友情の証が円という単位で表せられる。互いに結びつきを確認する方法だろう。子供の頃はそういう目に見えるものでしか他人との仲を保てない。
そういえば画角がチェキサイズ。
🔴『海にそらごと』★★★★
監督 齋藤栄美
海斗(髙田万作)は父の遺品から母親とのツーショットを見つけ、自分らを捨てた母親を訪ねる。海辺の街でスナックを営む母親茜(中村ゆり)はすぐに息子とは認識できず、海斗は荒ぶれた茜にがっかりして飛び出すものの、写真を見た茜は察し、追いかけ連れ戻す。その日夜になって客も入り、親子を名乗り楽しい時を過ごす。しかし自分が本当の子ではないことを知る。なぜ茜は母親のふりをしたのか、二人の間に互いを受け入れる空気が生まれる…。
血のつながりではなく情であり、茜にとっては望んでも得られなかった子供であること、海斗にとってはずっと欲しかった暖かみだ。なかなか良かった。なにより、子役の演技が表情が素晴らしい。
🔴『睡眠倶楽部のすすめ』★★
監督 加藤拓人
様々な理由で心を病んだ人が入る施設に、透子(前田敦子)も世話になっている。でも日々、ねまき姿で寝ては起き、また寝る静かな空間にいて、何か大切なことを忘れていっている気がしている。ある日、透子の夫(大友律)が、必要になったらとボストンバッグを預けていく。中は透子の洋服。透子は外出を試みて道を歩く。往来する人々の声が耳に入ってくる。徐々に人の存在を認識し、家へたどり着く…。
社会生活を営むにあたり、過度な接触や個人の適応能力によっては適度な休養が必要ということか。
12人の監督のうち、廣賢一郎、エバンス未夜子、加藤拓人は一般公募とのこと。
公式チャンネルにて配信中(期間不明)
本編より長いドキュメンタリー
