★★★★★★★★★★

1976年 111min.

ネタバレ これはもう今更ですので

敬称略

 

 

 監督 リチャード・ドナー

 製作総指揮 メイス・ニューフェルド

 製作 ハーヴェイ・バーンハード

 脚本 デイヴィッド・セルツァー

 音楽 ジェリー・ゴールドスミス

 

 ロバート:グレゴリー・ペック

 ダミアン:ハーヴェイ・スペンサー・スティーヴンス

 キャサリン:リー・レミック

 ジェニングズ:デイヴィッド・ワーナー

 ベイロック婦人:ビリー・ホワイトロー

 ブーゲンハーゲン:レオ・マッカーン

 ブレナン神父:パトリック・トラウトン

 スピレット神父:マーティン・ベンソン

 ベッカー医師:アンソニー・ニコルズ

 

 

 

 まずはじめに。

 

 いや実はこの2022年9月にですね、わたくし転職いたしまして、なにやらもう突然めちゃくちゃ忙しくなったのですね。忙しい、いうか疲れてしまって……。齢56歳、なかなかにサスのまったくきかない、そして身長174cm、体重72㎏の元学生プロレスラー、現在草野球で捕手をしている身にとってあまりに狭いコックピットでの軽バン通勤片道1時間の劣悪なドライブは身体に応えるようでして、仕事を終えて家に帰って、お風呂入って晩ごはん食べたらまったく何もできずに気がついたら寝ている、という状況なんです。ということで、映画は観てはいるのですけれども、メモ取りながら感想を書いていくというのが困難な状況でして。そのうち身体が慣れてくればまたできるようになるのでしょうけれども、ちょっとここはセーブして、月一本くらい更新できればいいな、という感じであります。実際今日は野球の試合が午前中にあって、帰ってきてから1時間ほど道具を洗ったりして、それからちょっと寝て、「狗神」を見たのですけれども、8つはつけますが詳細な感想は書けない状態であります。ひょっとして楽しみにしていただいている方もいらっしゃってくれるのかと思いますが、そういう事情ですので気長にお楽しみにしていただければと思うわけです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 さて、とうことで。

 

 

 

 えと、以前に「オーメン(2006)」の2006年版でも書きましたように、「CUBE キューブ」があまりにもだったので正統派ホラーをとこちらの作品を観ようとしたら、スカパー!から録画したのがあまりにも昔だったために画面サイズがめちゃめちゃ小さくてですね、あわててこちらをTSUTAYA DISCAS で借りて、ようやく観ることができた、というわけです。今更、の感はありますが、あのリチャード・ドナーの事実上の大作デビューでありますし、なんといってもジェリー・ゴールドスミスの音楽がアカデミー賞を受賞しているということで、そりゃあもう観なくてはいけませんね、というわけです。もちろん、先に言っておきますが、ホラー映画界の王者として「エクソシスト」と並んで君臨している本作は、2006年にリメイクされたとしても色あせることなく、突っ込みどころもまったくなくって、わたしの中ではやはり10個、満点の映画、ということになっとりますよ。

 

 まあなにせ、オープニングからしてもうすごいのです。これだけでアカデミー賞を受賞したのではないかと思えるほど、なにしろジェリー・ゴールドスミスの音楽が素晴らしいです。これからいったいどんな恐ろしいことが起こるのか、と、一気に観客を不安に陥れるには十分すぎるほどの名曲は、おどろおどろしさしかありませんでした。

 

 先にも書きましたけれど、監督がリチャード・ドナーってのもまたオールドファンからすると感慨深いものがありますよね。この2年後には「スーパーマン」でSF映画界にも殴り込みをかけましたし、その後は「グーニーズ」、「リーサル・ウェポン」シリーズなどの監督をしながら、「フリー・ウィリー」シリーズや「Xメン」シリーズの製作もして、もう大監督なわけですよ。残念ながら昨年7月に91歳でお亡くなりになりましたけれど、ハリウッド映画史上にその名はさん然と輝いてますよね。そんな方が、実はデビューはホラー映画だったというのは若干驚きもありますけれども、でもよくよく考えたら、ウィリアム・フリードキンも「エクソシスト」撮ってますし、スティーヴン・スピルバーグだって「恐怖の館」とか「ジョーズ」だって、なんなら「激突!」だってホラーなわけですから、一流監督になるにはやはりホラー映画は登竜門というわけなのかもです。

 

 さて、で、始まりますと、主役のグレゴリー・ペックがむちゃむちゃ落ち着いていて、時代を感じさせますが、それはそれでとってもいいです。映画自体がなんかわちゃわちゃしてなくて、じっくり腰を据えて観られるのは、こちらとしても望むところ、ということでしょうかね。

 

↑グレゴリー・ペック。シブい!

 

 でグレゴリー・ペック、妊娠していた奥さんが流産したという知らせで病院へ来て、いや実はちょうど時を同じくして生まれたけれど、母親を亡くして身寄りのない赤ちゃんがいるので引き取らんか、と病院側からもちかけられるのですね。まあ要するにそれが「悪の子ダミアン」というわけですが、いくらなんでも妻には内緒でどこの子かもわからん赤ちゃんを引き取るのはいかがなものかとは、この映画を初めて観たときに子供心に思ったものでした。今ではその気持ちもわからんでもないです。妻のことを愛しているが故、ならばしかたないのかもですね。

 

↑ということで、こちらの方々が「元凶」なわけです。

 

 でもやっぱり実際のところ、まったく血がつながってないということをただ一人知っているグレゴリー・ペックは、そんなダミアンに愛情は湧くのでしょうか。子供が成長すればするほど、なんか両親のどちらにも似てないなあ、なんてことにもなりそうですしね。血液型が合っていればそうそうギモンも出ないかもですが、まあよくはわかりません。ないとは言い切れないですしね、あるとも断言はできないですし。まあそれを言っては映画が始まりませんから、深く掘り下げるところではないのでしょう、きっと。

 

 内容はリメイク版の「オーメン」とほぼ、というか、まったく一緒です。どこか変わってるとこあるか、と探すほうが困難ですね。というくらい、リメイク版は本作をリスペクトしているようです。だからもちろんカメラマンも出てきますよ。

 

↑カメラマン氏。若干リメイク版の方と似てるような気もします。

 

 とうぜん乳母も出てきます。

 

↑なかなかにおキレイです。こんな乳母ならわたしにも紹介していただきたいところですね、と久々に更新して親父ギャグをぶっかましてしまいました。

 

 で、やっぱりぶら下がるわけです。

 

↑あんな勢いでぶら下がったら首ちぎれるんじゃないかと思ってしまいました。

 

 日本は絞首刑ですけれど、実際首がこすれて血だらけになることもあるそうですよ。そのあとの掃除がタイヘンだと刑務官がおっしゃってたのを聞いたことがあります。

 

↑次から次へとシブい人が出てきますね。ブレナン神父です。

 

 えと、ひとつ思ったことがあります。グレゴリー・ペックの役名はロバート・ソーンなんですけれどね、これラストネームのほうを英語表記しますと “Thorn” となりますよ。なので、“Th” の部分をしっかり発音すると、「トーン」と聞こえないこともないのですね。それでじつはこの映画では、ブレナン神父はほかのみんながアメリカ英語っぽく「ソーン」と発音しているのに対して、一貫して「ミスター・トーン」って言ってましてね。ブレナン神父はたしかイタリアの方、でしたっけ?国が違うので、お国訛りで、という感じなのでしょうけれども、これリメイク版でもブレナン神父、ちゃんと「ミスター・トーン」って言ってたのですね。とことんオリジナルへの愛情が感じられるなあ、とこのとき思いました。ちゃんと順番通り観ておけばまた感慨も違ったのでしょうが、そうならなかったのはやっぱりクソパナのせいなのですね。パナクソニックなのです。まあいいです。

 

↑右がかわりに来た新しい乳母さんです。

 

↑奥さん役のリー・レミック。

 

 なんかどなたもオリジナルとリメイク版、よく似てます。そこまでせんでも、とは思いますが、それもやっぱりリメイク版製作陣のこだわりなのかもですね。とにかく再現度がすごいと、感嘆です。

 

 ただザンネンだったのは、リー・レミック、1991年に56歳という若さで、ガンと闘ったのちにお亡くなりになったことです。出演作調べましたら、そうとうな演技派だったようで、もったいないですね。心からザンネンでなりません。わたしと同い年ですからね。

 

↑とつぜんラグビーの場面が出てきました。

 

 あまりに唐突でしたが、よく考えたらイギリスだからラグビーなんでしょうね。アメリカだったら間違いなくアメリカンフットボールのとこですよ。でもサッカーじゃないのは違和感でしたが、年代が年代なだけに、当時は今ほどサッカーも盛り上がってなかったのでしょうかね。まあそもそもアメリカは、サッカー文化はないですしね。わたしもアメフトが大好きですからラグビーはキライだし、サッカーもキライだし、そう考えるとイギリスのスポーツは性に合わないのかもしれません。このシーンでそんなことを思ったりもしましたが、全編通してゆいいつそうやってホッとできる瞬間だったのかもです。

 

 映像もすごいですね。さすがのリチャード・ドナーとでもいいましょうか。わたし「IT」のときに、晴れてんのに雨降ってるけどなんとかならんか、なんて言ったりしましたが、本作は中盤あたりで、一天にわかに掻き曇り、というシーンがありましてね。あんなに晴れてたのにあっという間にものすごい風と雨になって、って、これほんとに監督のこだわりなのでしょうね。映画だからっていっても、細かいところをおろそかにせず、やっぱりここまでちゃんとこだわってこそだとわたしは思いますけどね。

 

↑よく撮れたなあ、って、またも感嘆です。

 

 いちいちジェリー・ゴールドスミスの曲もすごいですよ。内容に観入ってしまってなかなか音楽まで気がいかない場合もありますけれども、ひょんなところでちょっと音楽にも気を向けてみるといいかもです。

 

 で、ブレナン神父串刺し事件勃発です。これはもう語り草のシーンですから、映画ファンなら知らない人はいないでしょうが、それにしてもな衝撃シーンではあります。

 

↑上から鉄の棒(避雷針)が降ってきます。

 

↑で、こうなる、と。

 

 でもわたしこれ、じつは子供の時に、なんで神父逃げへんねや、って思ってました。今こうして観ても、逃げる時間は十分ありましたけれども、ただやっぱりこれ、なんかの力が働いて神父足がすくむ、という構図だということなのでしょうね。リメイク版ではこのシーンは、ブレナン神父はまったく逃げる時間がなく描かれてましたけれど、そこはリメイク版製作陣もちょっと修正した、という感じなのでしょうか。わたしは今ならどちらも好きですし、どちらも違和感はないです。ていうかこのシーン、串刺しになった瞬間に、なんかズドンって感じがものすごくして、これほんのちょっとしたことなのかもしれないですけれども、さすがリチャード・ドナーと思ったことでありました。

 

 さあそしていよいよ奥さん、落とされますよ。

 

↑そんなとこに乗るから……、

 

↑格好の餌食になってしまうわけですね。

 

 なんでそんなとこに乗るかね、という気はしないでもないです。手すりがこれでもかってくらいに低いですから、そもそも危険ではありますが。そういう家の構造なのだから仕方ないですかね。まさか自分の息子に落とされるとも思ってないのかもですが、もうここらあたりでは奥さん、ダミアンがおかしいということにうすうす感づいているわけですから、こうした軽率な行動は慎んだほうがよかったのでしょうね。それはそれでザンネンではあります。

 

 で、ブレナン神父の訃報と奥さんの事故を知ったグレゴリー・ペック、接触してきたカメラマンと合流して、ダミアンが生まれた病院に行くことになりますよ。

 

↑病院名、カプチーニ病院だそうです。

 

 イタリアっぽい名前ですが、コーヒーなのですかね。日本で言ったら、「お抹茶病院」てとこでしょうか。さすが異文化には何の興味もないアメリカならでは、ではあります。

 

↑で、お墓に。ここはいつ観てもキンチョーマックスであります。

 

 犬もこの映画では重要なアイテムで、地獄の使者的な感じで描かれてますけれど、ここのお墓の犬は野犬ですよね。なんかフツーにめちゃめちゃかまれてましたけど、悪魔云々の前に、狂犬病は大丈夫なのかと思ってしまいました。そんなこと言ってる場合じゃないですけどね。

 

 で、宿舎に帰って奥さんの訃報を聞くことになります、グレゴリー・ペック。リメイクでは奥さん、口ふさがれて点滴に空気を注入されて殺されてましたけど、本作では窓から突き落とされて殺されましたね。なんで変えたのかはわかりませんが、そこだけが唯一オリジナルとリメイクで大きく違うところでしょうかね。わたし的には、じわじわと空気が身体に入っていくところを奥さん自身も見てるって点ではリメイクもすごいとは思いますが、やっぱりここまで来たらド派手に下の車に頭から突っ込むってのほうがこの映画っぽくはあるというところで、オリジナルに軍配挙げますけどね。

 

↑訃報を聞いてます。名演です。

 

 さあそうなってくると、自分の力のなさを知らされて、なんもできなくなってしまうというのが人間の性ではありますよね。ここで悲しみに負けてしまうのか、それとも復讐心が勝るのか、というところですよ。がんばれ、グレゴリー・ペック!というわけです。山場なのです。

 

 ていうかですね、わたしここでもまたひとつ思いましたが、電話の鳴る音。これ昔のダイヤル電話ですから「リーン、リーン」てなるんですね。静寂に響き渡るその音が、けっこう効果的だったりもするわけですけれど、よく聞きましたら、ジェリー・ゴールドスミスの本作の曲の出だしに音といいリズムといい、そっくりだったんですよ。これ間違いなく狙ったのだと思うのですけれども、やっぱりジェリー・ゴールドスミスは天才なんだなと、ちょっと泣いてしまいました。そういう人のファンで良かった、と思った次第です。

 

 ただ、ちょっと若干ここらへんで、突然グレゴリー・ペックがやる気をなくします。ここだけは違和感でしたが、そのおかげで(?)カメラマンの首が飛ぶことになるわけですから、まあ目をつぶることとしましょう。

 

↑葛藤が渦巻いてます。

 

↑「おれがやる」とさえ言わなければ、なのです。

 

↑サイドブレーキのかけ忘れでトラックが動き出します。

 

 ここでわたし子供の時、「あぁぁぁ・・・」て思いましたよ。心臓バクバクだったのを覚えてます。今じゃもう数えきれないほどわたしホラー映画観てますから、ほんとにちょっとやそっとじゃ心臓バクバクどころかドキドキすらしないのですけれども、だからそんな無垢な子供の頃がうらやましく思ってしまいました。

 

↑迫りくる車に気づかない……

 

↑もうなにせ撮り方、魅せ方がうまいのですね。

 

 46歳のリチャード・ドナー。ほんとにこれが大作一本目の監督作品なのかと驚異ですよ。ていうか91歳で亡くなったリチャード・ドナー、本作までの生きてきた時間と同じ時間をさらに生きてたのですね。つくづくスゴイ人です。

 

↑飛びました。

 

↑首ちょんば、です。

 

↑これでもか、と。

 

 あーあ、てなりました。6カットでじっくり魅せてくれましたが、当時の映画館はどうだったのでしょうかね。絶叫マシン以上の絶叫が響き渡ったのではないかと想像してしまいます。見てみたかったですね。

 

↑衝撃映像なわけです。今でも怖いですね。

 

↑兵どもが夢のあと、ではないですが……。

 

 まあなにしろスゴかったです。リチャード・ドナー、これでもかと自分の名を世に知らしめた、という感じですね。当時でここまでされると、さすがに同じことはできませんから、リメイク版ではなかなかに凝った殺し方をしてましたけれど、こちらと比べるとちょっとあっさりしてた感はあって、映像でカバーした、という感じでしょうかね。衝撃という面ではやはりオリジナルにはかなわないのですね。

 

 これを目の当たりにしたグレゴリー・ペック、一大決心とともに家に戻りますが、ここでもまたジェリー・ゴールドスミスがやってくれます。効果的に怖がらせてくれるのですね。

 

 で。

 

↑まずは乳母を、と。迫真の演技であります。

 

 ラストはご承知のシーンとなりますが、リメイクでも書きましたけれど、これあんなにあわてさえしなければ警察に追われることもなかったろうにと思うと、つくづくもったいない気がしました。だってあとはもうゆっくり殺すだけでしょうに。「パパやめて」なんて懇願するダミアンをものともせずナイフを振り下ろそうとしたわけですから、決心はゆるぎなかったはずですよ。なにも警察に銃で撃たれることもなかったと思うわけです。ザンネンでございました。

 

↑衝撃のラストシーン、ですかね。

 

 ここのシーン、テレビの月曜ロードショーで観たときに荻昌弘さんが「恐ろしい」って絶賛してましたけど、わたしはちょっと笑いすぎなのでは、と思ったことでした。

 

 まあ、いろいろ突っ込みどころというか、若干の違和感もあるにはありましたが、でもそれらを凌駕するほどの恐怖は、過去にもこの先にもないと思えるほどの完璧な正統派ホラー映画。すべてに敬意を表して、10個としている次第です。

 

 

今日の一言

「なんじゃ、このおばはん……」

 

 

 

レビューさくいん

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