1990年 187min.

★★★★★☆☆☆☆☆

ネタバレ:盛大にあります

敬称略

 

 監督 トミー・リー・ウォーレス

 製作 ロリマー・テレビジョン ほか

 脚本 ローレンス・D・コーエン、トミー・リー・ウォーレス

 音楽 リチャード・ペリス

 原作 スティーヴン・キング

 

 ペニーワイズ:ティム・カリー

 ビル:リチャード・トーマス

 ベン:ジョン・リッター

 べバリー:アネット・オトゥール

 スタンリー:リチャード・メイサー

 マイク:ティム・リイド

 リッチー:ハリー・アンダーソン

 エディ:デニス・クリストファー

 ヘンリー:マイケル・コール

 オードラ:オリヴィア・ハッセー

 マイラ:シーラ・ムーア

 ジョージー:トニー・ダコタ

 ビル(12歳):ジョナサン・ブランディス

 ベン(12歳):ブランドン・クレイン

 べバリー(12歳):エミリー・パーキンス

 スタンリー(12歳):ベン・ヘラー

 マイク(12歳):マーロン・テイラー

 リッチー(12歳):セス・グリーン

 エディ(12歳):アダム・ファライズル

 ヘンリー(12歳):ジャレッド・ブランカード

 

 

 えと、クジではですね、「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」なんていうフザけた邦題の、2017年の映画を引いたんですけれども、そもそもわたし、まだこちらの1990年のテレビ映画を(全2話のドラマ形式)観たことがなかったものですからね、とりあえずこちらを観てからじゃないとアカンかな、と思いまして、187分という長時間に多少ウンザリしながらも、観てみることにしたのですね。

 

 その時はまだこれが、テレビドラマで2話構成、というのは知らなかったわけですから、わたしにとっては大英断、ということなのです。もしこれが映画だったとしたら、ウォルター・ヒルなら激怒しますよ、きっと。

 

 あ、原作はホラー小説界の大御所、スティーヴン・キングです。

 

 で、とりあえず1990年という昔のテレビドラマですからね、覚悟はしなくてはなりませんよ。ブラウン管の時代ですからね、テレビ自体も。

 

 出演者も、ティム・カリー、アネット・オトゥール、リチャード・メイサー、オリヴィア・ハッセーなんてまあ、懐かしい顔ぶれじゃないですか。もちろん演技力には優れた人たちばかりですからね、いくら単発テレビドラマとはいえそんな駄作とまではならないのでしょうし、逆にちょっと楽しみになったりもしました。あとの出演者陣はわたしの知らない人たちばかりで、おそらく映画ではなくテレビを中心に活躍していた人たちなのでしょうね。そういう人たちと映画俳優とが融合するなら、そうとう期待してもいいのかもしれません。そう思って観始めたのでした。

 

 ただ、ですね。じつはわたし、以前にこのブログで読書が趣味だと、それでもって大学時代はアガサ・クリスティとスティーヴン・キングを読み漁った、といったのですけれども、そんなスティーヴン・キングの作品において、この「IT」はまだ読んだことがないのですよ。

 

 というのもですね、当時はこの原作本、ハードカバーのみで文庫化されてなかったからなんです。

 

 お前、そんな読書が趣味だったんならハードカバーも文庫もちゃんと読めや、て言われそうですよね。確かに、ハードカバーはのちに文庫化されるのが常ですけれども、その際にいろいろ手直しが入って、内容がチョイチョイ変わったりもしてますからね、まずハードカバーを読んでおいて、文庫化されたらそれも読み直す、てのが本来の姿なのかもですよ。でもですね、読書が趣味といってもその当時のわたしの最大の趣味(て言い方が適当かどうかは知りませんけれども)は映画ですよ。バイト代はほとんど映画に費やす日々です。そこからなんとか捻出して本を買う、ということになれば、高いハードカバーではなく安くなった文庫本を買うというのは、そら学生としたら当たり前の行為なわけです。

 

 そもそもハードカバーって、あとがきとか解説とかないですし、だいたい大きくて持ち運びにも不便だし、本によって大きさはまちまちだし、わたしあんまり好きじゃないのです。

 

 なんて言ってましたら、わたしのその嘆きを知った当時の彼女が、わたしの誕生日にスティーヴン・キングのハードカバーである「IT」をプレゼントしてくれました。よかったよかった、ではないですね。けっきょくわたし、いただいたその年が卒業年でして、映画と卒論に追われ、ハードカバー全300ページが前編、後編の2冊なんていう大長編を読んでる暇もなく、けっきょく今に至るまで読んでおりません。

 

 ということですので、自称スティーヴン・キング・ファンなどといっているわたしも、この「IT」はまだどういう内容なのか知らないのでありました。でもだからこそ、意を決して187分に挑戦することになったからには、けっこうなワクワク感で挑んだのでありますよ。

 

 で。

 

 まあ冒頭は、いかにもなテレビの感じではありました。なんか「TWILIGHT ZONE」とか「TALES FROM THE DARKSIDE」とか、そんな感じです。ま、それはそれでいいでしょう。テレビドラマですからね。若干のB級感は否めませんが、それはそれで目をつぶりましょう、と。

 

 ただ、監督がですね、トミー・リー・ウォーレスなんですよねえ。聞きなじみはないかもしれませんけれども、わたしはあのザンネンな駄作「フライトナイト2」で存じ上げておりましてね、だからどうにも、期待と不安が入り混じった船出となったわけですね。

 

↑こんなん平気で撮っちゃうんですもんね……。

 

 いくら昔とはいえ、映像技術でどうにかならなかったのでしょうか。晴れてんじゃん、て……。

 

 女優さんはみなさんおきれいでしたよ。実際の物語には関係してきませんけれども、布施明と離婚した翌年のオリヴィア・ハッセーは38歳でめちゃめちゃ美人ですし、アネット・オトゥールもお歳を重ねるにつれかわいくなってますね。そこらへんは、ホラーを緩和させる華的な存在で、逆にこの花が後半どう踏みにじられていくのか、というのも期待感となるわけですよ。

 

↑布施明ならずとも、惚れてしまいます。

 

↑めちゃめちゃかわいいです。「刑事ナッシュ・ブリッジス」のときも好きでしたよ。

 

 話は、どうやら子どもたちが主役となっているようで、若干、というかそうとう「スタンド・バイ・ミー」感にあふれてます。そこらへんでちょっとスティーヴン・キングらしさが出てますかね。

 

 大人になった彼らが、子供の時のある凄惨な事件をほうふつとさせるような事件に再び遭遇して、「またあいつ(IT)がやってきた」となってみんな集まろう、と。で、じゃあ昔の事件って?ということで舞台が一転、子供時代の話になる、という流れです。そこらへんはよくある流れですかね。違和感はないです。

 

 まあ、大人になったマイクが、また繰り返された、とかで昔の仲間たちに電話をかけまくるんですけれども、よく全員の番号がわかるな、て思ったのはわたしだけなのでしょうかね。ま、いいですど。

 

 さて、子供たちの話になりますと、まずそれぞれの家庭環境が描かれていきます。大人になったマイクから電話をうけた一人一人が、子供時代を回想する、という手法ですね。だから、大人の自分と子供の自分が対になって描かれているわけですが、こういった細かい人物描写はスティーヴン・キングの得意技ですね。キングのほかの作品を読んでてわたし、若干ウンザリしたこともありましたよ。で、総じて子供時代の彼らの親がロクでもないやつばかりという。ま、話を盛り上げるには仕方ないのでしょうけれども、こうもロクでもないやつばかりだと、観ているこっちは息が詰まります。ここはガマンのしどころ、ということでしょうかね。

 

 エディという男の子がシャワーを浴びるシーンは、もちろんセクシーでもなんでもないですけれども、シャワー室のシーンが「キャリー」、ノズルが伸びてきてエディを襲うところは「クリスティーン」を思い出させて、こういうところはリスペクト的なところもあるのでしょうか。わたしの思い過ごしかもしれませんけれどもね。

 

 「スタンド・バイ・ミー」と違うところは、子供たちが4人から7人に、しかも7人には女の子が一人混じってる、というところなのでしょうが、女の子が一人だけ入っているというのも、斬新といえば斬新なのかもしれません。

 

 大人として最後に登場したのが、リチャード・メイサーでした。こちらも馴染みのない名前だと思いますけれど、ハリウッドではけっこうな重鎮さんですね。たぶん顔見ても、だれじゃこれ、ってなるのでしょうけれども、80年代の映画ファンにとってはなくてはならない存在ではありました。80年から90年前半は、毎年3~4本の映画に出演、俳優組合の代表もつとめたことがあって、ほんと大御所なのですね。いやあ、なつかしいなあ、なんて思ってましたら、早々に死んでしまいました。自殺です。「IT」が戻ってきたという恐怖に耐えきれずに、ということなんですけれども、子供時代の彼はそんなに弱い子には見えませんでしたから、そこは若干の違和感でした。いずれにしても、よっしゃあリチャード・メイサー、て思ってたこちらには肩透かしもいいところではありました。忙しかったんかな、とか思ってしまいますよね。ザンネンです。

 

↑見たこと、ないですか? 

 

 なんて思って観てましたら、第一部が終わって第二部に入ると今度は大人になってからの話がメインとなりました。小説読んでないのでまったくわからないのですが、原作もそういう構成なのですかね。

 

 どちらにしましても、ピエロのティム・カリーが楽しそうでよござんした、という感じではあります。ほんとに悪いヤツなんですよ。わたし観てて、何度も何度も「悪ぃやっちゃな~」て言いましたからね。でもホラーてそういうのがいいじゃないですか。明るい殺人鬼ほど怖いものはありませんよね。わたしが嫌う、大きな音でびっくりさせる演出もありませんし、こらなかなかの良作だぞ、と、掘り出しもんちゃうか、と、その後の展開への期待に胸が膨らんだのでありました。

 

↑楽しそうです。

↑それがこうなると、やっぱりけっこう怖いわけです。

 

 ただ、ですね、これわたしが全面的に悪いのですけれども、じつはわたし、映画観ているときって役名をほとんど覚えられないんですよ。どうしても役者名で物語を追っちゃってまして、もちろんインディ・ジョーンズとかランボーとかはわかりますよ。これわからなかったら映画も観ていられませんくらい重症ですよ。でもね、それら超有名な映画以外の作品の、どうしても役名が覚えられないんですよ。ドラマ観ててもそうです。なので本作、子供時代から大人時代に移った際、おわかりでしょう、誰が誰やらさっぱりわかんなくなっちゃったのですね。わかるのって、唯一の女性のアネット・オトゥールくらいで、主役的なビル(?)ですらわかりません。そもそも本作、出てくる名前が、ビル、ベン、マイクって、ようもようもそんなありふれた名前つけやがったな、スティーヴン・キングめ、て感じですよ。

 

 いや、わたしが悪いんですけどね。なんとかならんもんかと、いつも思っているのです。

 

 にしても大人になってからのみなさん、演技めちゃめちゃうまいです。だからぐっと観入ることとなりますよ。話に重厚感が増します。ここでまた、良質な映画やな、と感嘆することになりますね。なにせ、ティム・カリーも含めて、みんないいんですよ。3時間超なんてあっという間だな、なんて思ってたんですけれどもね、わたし第二部も半分過ぎたあたりにハタと思い当たりました。いやいやまてよ、これってホラーなんちゃうん、て。大事件ですよ。もう、なんかですね、すっかり「スタンド・バイ・ミー」感覚なんです。

 

 いやあ、「スタンド・バイ・ミー」の時にも思ったけど、大人になってもこんなに楽しめる子どものころの友だちって、いいなーって思うよねー。自分もボーイスカウト入ってて、たくさん学校とは違う友だちがいたけど、もうずー――っと連絡とってなくって、たぶん街ですれ違ってもわからんだろうし、会ったところで遠慮してこんな楽しく話なんかできないだろうしねー。今の生活が一番大切だから、うらやましいとは思わんけどさあ、でもやっぱ、いいよねー。だから「スタンド・バイ・ミー」もヒットしたんだよねー。

 

 あれ、え、ちょっとまってまって。え、ビル役の子役の子、ジョナサン・ブランディスって、もう20年も前に27歳で自殺しちゃってるの?うそー!なんかこの時代、この子といいコリー・ハイムといい、リバー・フェニックスといい、将来有望視されてた子役たちが早くに亡くなっちゃって、なんか悲しいなあ。死因はどうあれ、ほんとにザンネンだよねー。さびしいなー。

 

 なんて思ってましたからね。え、ちょっと待てよ、てことになりましたよ。ビックリ仰天です。ホラー、どこいったんや、て。

 

↑ジョナサン・ブランディス。なんか悲しいです。

 

 で、そうこうしてましたら、大人たちみんなが洞窟に入ってきますね。子供の時に探検した、あの洞窟ですよね。ああ、よかったよかった、ホラー、忘れてなかったんや、て思ったのもつかの間ですよ。

 

 誰が叫んだのかはわかりませんでしたけれども、「こいつだったんだ」という声とともに現れたのは、ティム・カリーのピエロではなく、なんか得体のしれない禍威獣、いや怪獣でありました。ここで二度目の「へ?」であります。

 

↑こやつです。

 

 いえね、たしかにこういう最後の最後で化け物が出てくるってのは、スティーヴン・キングらしいっちゃらしいんですけれどもね、いやいやここまで引っ張っといて最後はこれー?みたいなことになっちゃうと、もうなんともやるせないです。だってけっきょく最後はこの怪獣と肉弾戦なんですよ。実力行使。

 

 とりあえず、全然怖くないです。

 

 いや、なんか最終的に、自分の中での整理が難しくなっちゃいました。たしかにキングらしいんですけどね、もうひとつこう精神的な怖さみたいなのを期待していた身としては、期待外れ感がハンパなく、なんかスタンとエディを殺してしまったのも悲しすぎて、2つくらいかなあ、って思いました。

 

 え?5つついてるじゃないか、ですって?

 

 あ、そうなんです。最初は2つのつもりだったんですけれども、このあとに観た、最初にクジを引いた「IT “それ”が見えたら、終わり。」があまりにヒドすぎてですね、それとのバランスをとって、可もなく不可もなくの5つに格上げしたのでした。

 

 ので、次回の感想はそうとうすさまじいことになりそうですので、乞うご期待、ですよ。

 

 ところで本作、ラストのラスト、「マディソン郡の橋」が出てきて爆笑してしまいました。ま、オリヴィア・ハッセー、戻ってきてよかったね、ですかね。

 

↑クリント・イーストウッド、ではありません。

 

 

今日の一言

「え、アメリカって体育の授業の後、小学生のくせにシャワー浴びんの?」

 

↑楽しそうで何よりなわけです。照れ

 

 

レビューさくいん