七月大歌舞伎 in 松竹座 | akaneの鑑賞記録

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待ちに待ったこの日がやってきました!!

実は大阪名物の「肉吸い」を食べてみたくて…
ただ営業時間「10時半~14時」じゃ、松竹座遠征派には無理な時間帯。
でもこんな38度もあるような夏の日に朝から並ばないだろうと期待して、ちょっと早めの新幹線で大阪入り。
開店20分前、10:10に行ってみたら、すでに3組、6人のお客様が並んでいました!
10分前にはもう長蛇の列!!!凄い!見くびってたわ!
きっちり10時半に開店。

 

 

店内の座席は18席、無事一巡目に入店でき、肉吸いと小玉(卵ご飯の小)を注文。

フロアはおっとりしたおばちゃんが1人で仕切っていて、なんとなくオーダーを取って、なんとなく厨房に伝えたり伝えなかったり(肉吸い豆腐入り…2つやったかなぁ…とか笑)なんだけど、ちゃんと注文を受けた順番に間違いなく提供されるという不思議。

 

 

真夏ですけど、容赦なくあっつあつ!
ちょっと濃いめのお出汁ですが、関東風の醤油味ではなく、あくまでもお出汁の味が濃い!
ホロッホロの柔らかい牛肉は全く臭みもなく、お出汁も全く濁っていない。
おつゆの中にはポーチドエッグが1つ入っています。
いや~美味しかったわ~!
でも、寒い時期にゆっくり味わいたい一品です。

火傷しながらおつゆを飲み干し、ダッシュで松竹座へ!
なんとか滑り込みセーフ!!11時の幕開きと同時に着席。ふー。



●廓三番叟

孝太郎さんの、いかにも太夫然とした貫禄と、瑞々しい新造の壱太郎さん。
壱太郎さんの踊りって、指先の動きがとても綺麗で、首の傾け方なんかも初々しくて本当に可愛い。
太鼓持ちの歌昇さん、ちょっと珍しい配役だけどとぼけた感じが出ていました。
太夫と新造とで彼を取り合ったりしていて役得(笑)
着物の下の股引みたいなのが柄モノで、いや~こんな見えないところにお洒落するのね!と、歌舞伎衣装の奥深さに感動。
 

 


●菅原伝授手習鑑 「車引」

なんといっても鴈治郎さんの丸々っぷりが!
歩くより転がる方が早いんじゃない?みたいな。
力強くてパワー漲るキレッキレの梅王丸でしたよ。
扇雀さんの桜丸はちょっとピンとこなかったなぁ
又五郎さんの松王丸が素晴らしかった。
決まったときの形の美しさ。
普段、なんとなく松王丸だけ別格で偉い人、みたいになってるけど、又五郎さんの松王丸は、桜丸や梅王丸と同じ兄弟、同じ舎人という境遇(身分)
が感じられる役作りだった。
その方がなんとなく親近感があっていいな。
杉王丸の種之助君も、ピタッと形は決まるし、声は良く通るし立派!!
この頃メキメキ実力付けてきてますね。

松竹座の大きさだと、声も良く届くし、役者さんも楽な感じがしました。
無理のない発声で芝居ができる感じ。体に負担も少なそう。
やっぱり歌舞伎座は大きすぎるよね。

         
●河内山

白鴎さんの河内山は、もう鉄板というかでき上がってますからねー
「ぶぁ~かめ!」の声も朗々と響き渡って。安定の一幕。
あのオレンジ色の袈裟、色がとっても綺麗でお洒落だわー。
夏っぽくシースルーで涼しげだし、裾にはプリーツ入っててお洒落だわー。
今回の座組、若い女形が壱太郎くんだけなので、ここでの腰元浪路のほか、夜の部では中臈お喜世、妹おかちと、四役大活躍です。
    

 

●勧進帳              
いや~、凄かった。
これを見るために松竹座に来たのだよ。
幸四郎さんの弁慶、3度目ですが、どんどん大きくなりますね。
太く朗々と轟く声が出るようになって。
初演の時は、まだ多少苦しそうな発声がありましたけど、今や全くそんな気配もありません。
幸四郎さんの弁慶はパワー200%で、壮年の力がみなぎる弁慶。
全智全霊をかけて義経を守り、富樫に挑む。
全く気を抜けないというか、見ている方も手に汗握る70分。
みんなずーっと息を詰めていて、最後飛び六方ではけた後、客席中が「ふーーーー…」と息を吐くような状況。
もう少し年齢を経たら、緩急をつけて、少し余裕をもってユーモラスなところも出せるようになると良いのかな、とは思いますが、やっぱり今は全力で闘う弁慶であってほしいですね。
その全力で(でも決して独りよがりではない。ここ重要!)ぶつかってくる弁慶を、仁左衛門様が緩急自在に受け止める。
二人の問答は絶妙のバランスで迫力満点!
仁左衛門富樫は、物腰は柔らかくても眼光鋭く、ものすごく切れ者。
吉右衛門さんとはまた違った大きな壁となって行く手を阻みます。
昨年お正月に見た、中村芝翫さんとの勧進帳とは全然違いました。

あの時は退屈で途中で寝ちゃったもん。

でもつくづく、富樫は難しい役だなと思います。
完全に受けの芝居だし、美味しいところは弁慶が全部持っていくし、でも問答は富樫がリードして流れを作らないといけない。
労多くして実り少ないお役かも。

ずっと弁慶に憧れて、でも線が細くニンではないと言われ続け、ずっと演じる機会が巡って来なくて、ようやく41歳になって初演できた幸四郎さん。
でもこの短期間で、すでに新 幸四郎の弁慶ができあがりつつあるって凄いことです。
仁左衛門様からは毎日、手の上げ下げに至るまでしっかり教わっているのだとか。素晴らしい。
弁慶って誰でも知っている人気役ですけど、團十郎さん亡きあと、今メインで演じているのは白鴎さんと吉右衛門さんだけ。
次の世代、って見回すと幸四郎さんしか思い浮かばない。

これって冷静に考えると恐ろしいことです。

 

申し訳ないけど、私、海老さんは歌舞伎役者としては認めてません。

宗家とかお家的に、誰でも演じられる演目ではないというのもありますが…
 

 

さて、昼の部終了。

会場内は、襲名関連の展示が一杯あります。

 

 

 

 

 

 

外は暑い~~~!

 

 

 

 

お昼ご飯は、去年も食べて感激した「今井」の「白波そばセット」

 

 

美しい前菜 なんかわからんけど、全部美味しいのよ~

 

 


冷たい鱧そば

 

 

これがまたお出汁が抜群に美味しいのですよ!!

関西の出汁!最高!
絶対まねできないなー どうやって作っているんだろう
梅の乗った鱧がこれまた美味しいんだ!

くーーー

そしてデザートは氷わらび

 

 

ふわふわかき氷の下には、わらび餅!

 

 

満足!



さ~夜の部行ってみよう~
 

 

●御浜御殿綱豊卿

綱豊卿といえば、もう仁左衛門様!文句なし!
鷹揚な佇まい、自在に助右衛門をコロコロ転がして、時に鋭く刺す。
声音の使い方も変幻自由、セリフ劇の面白さがたまりません。
今年の新春浅草歌舞伎、松也さんと巳之助さんの綱豊卿も面白かったですが、やっぱり大人の魅力というか、数段上のお芝居でした。
中車さんもくらいついていきますね。
「将軍、江戸を去る」の山岡鉄太郎からは格段の進歩だと思いました。
声も割れなくなったし、もともとこういうお芝居は巧い人ですから。
でもなんだろう、ちょっとだけ空気感が違うんですよ。
芝居の空間の作り方なのかな?発声かな?
歌舞伎役者の演技とやっぱりちょっとだけ肌ざわりが違う。
う~ん、うまく言えないけど。


●口上
猿之助さんが列座していることに胸熱…
そしてフリーダムでキュートな仁左衛門様


●女殺油地獄

 

素晴らしかった!

現時点で最高のキャスティングだったんじゃないかな。
幸四郎さんの与兵衛は、きちんと仁左衛門様に倣って手堅い感じでしょうか。
2014年、金丸座で見た時より、もっと人物造形がくっきり迷いなく描けている感じ。

ほんとに「今」のことしか考えていない、甘ったれ。

ビビりで虚勢はってるだけで1人では何もできない。

18~9歳ぐらい、新宿とかでいっぱしに遊んでるつもりのチャラ男。

でも前半の可愛らしさ、もう恐るべしだよねー
仁左衛門様だと子供っぽくしていても色気ダダ漏れな感じはあるんだけど
そこは個性というか幸四郎さんの与兵衛を作っていけばいいんじゃないかな

金丸座の与兵衛は、もうちょっとサイコパスみが強いように感じたんですが、今回は「親に迷惑かけられない」そういった感情も出していたようでした。

 

→借金でもう首が回らない、どうしよう

→親が用意してくれたお金じゃ全然足りないし

→お吉さん貸してくれないかな

→えー、ダメなの?じゃあ不義をして貸したってことにしてよ

→それもダメなら・・・もう殺すしかない!

 

と非常に短絡的というか考えが幼い、でも芯は悪い子じゃない、というのが出ていた気がします。

猿之助さんのお吉。
いいよね~幸四郎さんと猿之助さん。
やじきたも良いけど、やっぱりこうやって男女での配役、もっと見たいな~。
与兵衛より年上で、人妻で、余裕があって、やんちゃな近所の男の子を気にかけ、時にはお小言もいうお吉。
若いけれど人妻の艶やかさや落ち着きが素敵でした。

油まみれでの殺しの場面、スッテーーーン!って転ぶと、最近のお客さんは笑っちゃうので、その辺は抑え気味でした。
あくまでも逃げまどう中ですべって転んでしまう、といった感じ。
あまり大げさに転ぶと猿之助さんの手のことも心配だし、これぐらいの方が芝居として自然だなと思いました。
ここでの与兵衛はイッちゃってギラギラしているというよりは、なにもかももう自分でコントロールできなくなっちゃった空っぽの男。

悲しみ、恐ろしさ、放心、虚ろ。

そして何より、歌六さんと竹三郎さんの油屋夫婦が素晴らしい。
番頭上がりの徳兵衛さんの遠慮、ダメ息子と分かっていても守らずにいられない母。
すっごく老人のように思ってしまうけど、まだ40歳代なんですよね。
お吉ダンナの鴈治郎さん、やっぱり関西の風味が出てとてもしっくりきます。
出来の良い兄役の又五郎さん、叔父役の中車さん含め、とてもバランスの良い座組でした。




1月2月の歌舞伎座から御園座博多座、松竹座、と襲名公演を全部追ってきましたが、今回の松竹座が一番良かった!
ニンとか高麗屋を受け継ぐ、ということだけでなく、自分が今やりたい演目とバッチリ合っていたのかな。
それにやっぱり半年間襲名公演を重ねるうちに、だんだん幸四郎になってきた感じがします。
もう「染五郎」の器じゃない感じするもん。
襲名が役者を一回り大きくする、というのを実感しました。
 

 

それにしても、弁慶と与兵衛を同じ日に演じる役者さんなんていないですよ。
全然違うキャラクター、流派ですからね。
しかも先月は春興鏡獅子と伊達の十役。
こんな演目の組み方をする役者さん、いないし、できないです。

ちょっと異常です(素晴らしい意味で)
幸四郎さんは高麗屋としての弁慶だけでなく、中村屋の鏡獅子、澤瀉屋の伊達十、松嶋屋の与兵衛までをも、次の世代に継承していくために奮闘しているんです。
だからこれだけ多岐に渡る演目を自分の襲名披露公演にも取り上げているんですよね。
自分の名跡とか人気とか、そんなもの全然考えていなくて、常に歌舞伎の未来を見つめている。
その心意気に、仁左衛門様ほか先輩方も、全力でサポートしてくれている感じがします。
襲名公演って、なんとなく寄せ集め、ご祝儀で共演している感じがするときもあるんですが、今回の襲名公演はどの舞台でも、幸四郎さんに託す熱い気持ちがこもっているように思いました。
 

 

それにしても、そのほかの花形メンバーも頑張ってほしいなぁ。
菊之助さんは音羽屋と播磨屋で手一杯な感じ。
猿之助さんはお怪我を直して万全な体になっていただくことが最優先ですが、もっと古典や舞踊を見せてほしい。
中村兄弟も新作の方にウェイトが偏りがちなんじゃないかな。
この3人がもっと幹部役者とがっつり組んでメインストリームを歩いてほしいです。
勘三郎さんと仁左衛門さんは良く共演していたはずなのに、中村兄弟と仁左衛門さんってこのところ全然ご一緒していないですよね。
どういう事情があるのか分からないですが、とても歯がゆいです。
大御所たちと舞台で共演できるのは、あと10年あるかないか…なのに。


終演後、ダッシュで最終の新感線という手もありましたが、今夜は実家へ。
朝から和食だったので、洋食を食べたくて「俺のフレンチ、イタリアン」へ。
ほぼ満席でにぎわう中、席には座れたのですが、メインディッシュは30分以上かかるということで、とりあえずペスカトーレ。

 

 

このボリュームで850円ですからね。ムール貝だけでも10個ぐらい入ってます。
う~美味しかった!

今回の大阪遠征、食べるもの、観るもの全部大満足でした!

7月の松竹座公演は、いつも充実しています。